昨日の午前中、東部の街、マシュハドに着きました。
これでイランの北部を西から東へ横断したことになります。
とにかく情報が少ない国なので、
毎回「しばらく音信不通になるかも・・・」と結んでいますが、
とりあえずマシュハドまでは何とかなったようですね。
メディアが伝える一部の情報が拡大解釈され、
「圧政に牛耳られた好戦的なイスラム国家」という、
ステレオタイプのイメージが定着してしまったイラン。
しかし、一歩足を踏み入れれば、
それが現実と一致していないことが、すぐにわかる気がします。
とはいえ気を使わねばならないのは、イランは「戦時国」であるという事情。
イスラエルとは「停戦」したもの、パレスチナを見れば明らかなように、
この言葉は絵に描いた餅なんですよ。
街行く人の表情から緊張感こそ読み取れませんが、
モサドの暗躍を警戒する当局は、かなり神経質になっているはずです。
そこで注意すべきは、スパイと勘違いされるような行動をしないこと。
いつもなら到着したときに駅やバスターミナルで写真を撮りますが、
交通インフラは兵力の移動を測る情報にもなるので、
見つかったが最後、洒落にならないことが起こるでしょう。
国境も含め、他にもそうしたレッドゾーンがそこかしこにあります。
現地に不慣れな旅人が困るのは、
そうした場所に必ずしも「撮影厳禁」という表示がないこと。
そこで一番無難な対策が、「周囲の人がやっていないことはやらない」です。
また、撮影が問題ないと思われる場所でも、
一眼レフでバシバシ撮るのは目立ちすぎでしょう。
そんなこんなで、イランでは写真の撮影枚数がぐんと減りました。
なぁんて話をしつつ、先日テヘランで地下鉄に乗った際、
考えられないような事件が発生。
「お、珍しいな」
僕らの斜前に東洋系と思しき20歳代のカップルが座っています。
中華系か? それとも韓国系か? 少なくとも日本人ではなさそうです。
ふたりは仲良く1台のスマホに目を落とし、なにやらひそひそおしゃべり中。
数分経った後、再びふと視線を向けると、
ちょうど顔を上げた二人と目が合いました。
双方ともににっこり。
だったのですが、ここで唐突に、
彼女がスマホのディスプレイをこちらに向けたじゃないですか。
・・・?
そこには何やら動画が再生中。
・・・? 何を見せようとしてるんだ?
あ、ああ、そうね、そこに映ってるのは・・・オレだ、オレだよ。
うん、オレ。
え? なんでオレが映ってんの!
わが目を疑うとはまさにこのことです。
僕は状況が理解できず、一瞬頭がハングしてしまいました。
なぜならディスプレイに映っているのは対面に座っている僕らではなく、
どこか別のところで撮られた僕らの動画なのです。
それもかつてテレビやユーチューブで収録されてものではありません。
つい最近の恰好をしていますから。
な、なんだありゃ?
あの動画のオレは何をやってんの?
いや、ともこまで映ってる!
あ、ああ、あれはまさか!
ともこの登場シーンで、
僕らはそれがいつどこで撮られたものかがわかりました。
あれはタブリーズの市場で取材中、
いきなりローカルの若い女性二人から声をかけられたのですよ。
それも早口のペルシャ語で。
見ればひとりの子が一眼レフカメラを、もうひとりはなぜか花束を持っています。
「あ、ああシャッターを押して欲しいんだね?」
しかしカメラを僕に渡そうとせず、しきりに何かを訴えてきます。
「ん? 違うの? そうか、僕らと一緒に写真が撮りたい?
え? それも違う? ん〜・・・わからん、何を言っているんだろう?」
そこへ取材で入ったレストランの英語を話すスタッフが現れました。
「やぁ、ちょうど良かった! 彼女たちが何を言っているか通訳してくれる?」
「ええ、いいですよ」
そこでローカル同士が話を始め・・・
「彼女たちはあなたがたお二人を撮りたいそうです」
「僕らを? あ、そうだったのか。僕らをねぇ・・・まぁ、いいですよ」
するとまた話が始まり、
「では奥さまは、この花束を持ってください」
「え? あたし? これを持つの?」
「いや、違います。彼女(カメラを持っていない方)が花束を渡しますので、
それを受け取ってください」
「はぁ・・・」
「ん? 動画を撮ろうとしているのかい?」
「よくわかりません」と通訳さん。
「なんだかテレビの収録みたいだな。まぁいいや。じゃ、キューを出して」
「ご主人はちょっと後ろに下がってください」
「はいはい」
「じゃ行きますよ」
ここでともこに花束が渡され、アドリブでお礼を言っています。
「では次です」
「ほぇ、まだなんかやるの?」
「今度は二人で並んでください」
「こう?」と僕ら。
「そう、奥さまは花束を持って。もうちょっと上に。そうそう。
で、ご主人は体をもっと斜めに。手はパンツのポケットに入れて」
「こう?」とふたたび僕ら。
「あ、いいそうです。では撮ります」
今度は静止画で数カット撮られ、
「メルシー、メルシー(どうもありがとう!)」
で解放されたのです。
「何だったんだろう? 今の?」
「わからないな。外国人の僕らは確かに珍しいけど、
なんてったってこの歳だ。フォトジェニックにはほど遠いよ」
「それはえーじの場合でしょ!」
「年齢からしても、あの子たちなら孫にだってなりうる」
「それもえーじの場合!」
「おいおい、一方的にひどいこというなぁ」
「う〜ん、でも確かに謎ね。
大きなカメラだけじゃなくて小道具まで持ってたし。
花束はくれるのかと思ったら持って行かれちゃった」
そう、その花束で、僕らは動画の撮影場所がわかったのです。
「ということは、タブリーズのあの子たちが動画をアップして、
それをテヘランの地下鉄で対面に座ったふたりが見て、
偶然その前にあたしたちが座ってたってこと?」
「む〜・・・そうなる・・・かな? 確率はめちゃ低いけど」
ほんと、摩訶不思議な事件でございました。
さて、明日からイランより、さらにガチな某国へ向かいます。
今度こそ本当に1週間ほど音信不通になるかも。
ま、ブログは休みでも、
またどこかで撮られた動画が流れてわかるかな?
ひゃあ〜。
to be continued...
えーじ
謎の撮影ガールズ 有名人なのかしらん?