2017年11月22日

期待をわき目に本音の旅へ

11月は中東、その1カ月半後にアフリカ。
そんな渡航先の話をしていると、

「行き難いところが好きなんですね〜」

と、しばしば言われます。

が!
そりゃビッグな誤解なんですよ。

確かに難易度の高い旅も嫌いではありませんが、
正直申しまして、
何回も飛行機を乗り換えての長旅や陸路での国境越えは疲れます。
行き慣れた先進国の方が治安面での不安も少ない。
それに何より僕は平和で楽な旅が好き。

となれば、自ずと行き先はイタリア、フランス、スペイン、イギリス、
近くであれば中国、韓国、台湾、
タイ、ベトナムあたりが「いいねぇ〜!」となるじゃないですか?
なのに直近の渡航先は先の通り。

そのココロは?

行き易い国の料理を特集しても、お客さまが来ないからです。
特に「行き難いところが好きなんですね」というような方々が。

これは僕の思い付きを話しているのではありません。
何ごともやってみなければ分からない。
そこで実際にやってみました。

2016年春の『シンガポール料理特集
2015年夏の『インドネシア料理特集

で、結果は?

ビジネス的には見事にコケました。

料理そのものはとても美味しかったし、
食文化のコンテクストも興味深い内容だったのですが、
あきらかにお客さまたちの反応が鈍い。
問合せも殆どなし。

反対に2012年夏の『ヨルダン料理特集』や、
2013年夏の『チュニジア料理特集』、
2015年冬の『アゼルバイジャン料理特集』なんかは爆発的大人気!
終了しても問い合わせが続いたくらい。

この差は激しい。実に。

という訳で、僕らも仕事です。
興味を持たれないところに行ってもしょうがない。
で、来週のUAE(アラブ首長国連邦)とオマーン、
そして来年1月の南アフリカ、スワジランド、モザンビークなんですよ。

あ、それから料理だけじゃなくて旅そのものの話題性も同じ。
このブログで本来の趣旨通り、
食文化関連のことを真面目に書いている記事より、
旅行中の「うぎゃ〜っ!」なアクシデントの方が、
圧倒的にアクセス数が上がるじゃありませんか!

む〜・・・僕らは何を期待されているのかしらん?

と首を傾げつつ、
最後は本音で締めくくりましょう。

僕らがいま一番行きたい旅は・・・

箱根の温泉一泊旅行です。

えーじ
posted by ととら at 15:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年11月19日

第5回研修旅行の準備 その2

今朝の東京地方は大分冷え込みました。
いよいよ冬の入り口ですね。

こうなると気になるのが風邪。
僕たちも旅行の準備段階で一番気を遣うのが健康管理なんですよ。
出発直前にインフルエンザにでも罹ったら大変ですからね。

という訳で、
一昨日は行きつけの病院で二人して予防接種を受けてきました。
今年は製造過程のトラブルでワクチンが不足しているらしく、
先に病院へ電話をしてみると、

「今日の午後には入荷しますが予約して下さい」

とのこと。
さながらiphoneXのような人気商品ですね。

健康管理と言えば、
僕たちにとって風邪の予防以上に難しいのが疲労対策。
ただでさえ慢性的なオーバーワークなのに、
休業の前後は通常にはない仕事が増えます。
ですから可能な限り休める時は休んでおきたいものの、
店の忙閑は100パーセントお客さま次第ですから、
予定というものが立てられないのですよ。

例えば一昨日の金曜日は超ヒマ。
僕はカウンターのお客さまと語り合っていました。
ところが昨日は予約で満席。
片付けが終わった24時ごろには二人共もうフラフラ。
睡眠時間もそれに合わせて普通になったり短くなったりします。

そろそろ体の老朽化も進んできたことだし、
これまでのように、とことんやって飛行機の中で爆睡!
ってのは卒業したいのですけどね。

ともあれ先日飛行機のe-チケットも発給され、
準備は順調に進んでいます。
渡航地のUAE、オマーンともに平和。
隣接する図体の大きいサウジアラビアが少々お取込み中のようですけど、
あんまり大ごとにはならないでしょう。

来週は月火の2日間がお店はお休み。
ここで少し睡眠時間を取り戻したいと思っています。
なので今夜はまた Hotel TOTORA 泊りかな?

えーじ
posted by ととら at 14:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年11月16日

遠い国の小さな希望

先日、タンザニアで子供たちに
コンピュータプログラミングを教えていたという、
女性のお客さまがいらっしゃいました。
これからはその経験を活かし、
日本の教育の現場で仕事を始められるそうです。

素晴らしいですね。

それじゃ僕もエールを送らねば! と、

「今後ますますITは重要性を増すでしょう!
 ぜひ日本の子供たちも早くからコンピュータに馴染めるよう、
 プログラミングを教えてあげて下さい!」

てなことは言いませんでした。

ととら亭の開業資金の大半を
IT稼業で稼いだ僕が言っちゃあ噴飯物でしょうが、
はっきり申しましてパソコンだ、
プログラムだなんて枝葉末節な話はどうでもよろしい。

それより彼女に期待したいのは、
価値観の違う文化圏での経験をシェアすること。

外国に行って直面するのは、
僕たちが日本で当たり前と信じきっている価値観とは異なる、
別の価値観です。
それは『常識』や『考え方』と言い換えてもいい。

駆け出しの旅人はそうした異質性に出っくわすと、
得てしてメードインジャパンの優劣二元論の物差しを持ち出し、
良いの悪いのと批評を始めますが、
(僕もさんざんやりましたよ)
やがて気が付く、いや、気が付かざるをえなくなります。

価値とは単独で成り立っているのではなく、
広大な文化の網の目に浮かんだひとつの結節点でしかないという事実に。

だから個人の選択肢もまた考え方次第で減りも増えもするんですよ。
絶対にこうでなきゃいけないものなんてない。
その生きた例を僕は彼女にシェアして欲しいと思ったのです。

たとえば周りを見回しても、

好きだった彼女に振られてしまった!
がぁ〜ん!
僕には彼女しかいないのに!

とか、

志望校に入れなかった!
がぁ〜ん!
わたしが行きたいのはあの学校だけなのに!

とか、

業績のいい会社に入れなかった!
希望した部署に配属されなかった!
予定していた年収が得られなかった!
欲しかった一戸建てが買えなかった!

なんてのは他人事のみならず、
僕自身にもいくつか該当しています。
(特に最初のはねぇ・・・)

で、振り返ると、その時の頭の中は、
きまって『××××しか!』状態じゃありませんか?

でも、現実はそうじゃなかった。
やがて僕は別の人を好きになったし、
別の進路に進み、当初思い描いていた人生とは、
違う方向へ歩き始めていました。

そして今、
僕は未だ小さなアパート暮らしで自家用車も持っていませんけど、
身の丈に応じてハッピーですよ。

僕が旅の中で教えられたことのひとつは、
こうした可能性の、生き方の多様性だったのです。

これしかない!
なんてことはそうそうありません。
常に何かしらの選択肢はあるものです。
ただそれを行き詰まった本人が見ようとしていないだけ。

家族も友人もいない! もう生きている意味がない!
なんてこともない。
誰からも必要とされていない人なんていません。
どこかで誰かが、その人を必要としている。
(本当ですよ)
ただそれを落ち込んでいる本人が気づいていないだけ。

嘘だと思ったら、スマホやパソコンは部屋に置き、
心を開いて、ひとりで旅に出てごらん。

一億総活躍なんて誰かさんにやってもらわなくても、
陳腐なプライドと賞味期限切れの価値観を捨てれば、
やがて自分のやるべきこと、
自分の居るべき場所が見えてくる。

そう、目の前のドアはね、
閉められていたのではなく閉めていたんだよ。
だから、開けられる。
君が開けようと思えば。

異文化圏を彷徨って、僕に見えて来た風景というのは、
こうした広がりを持っていました。

タンザニアから戻った彼女も、
かの地で彼女なりの風景を見ていたことでしょう。
それは小さいながらも、
子供たちの可能性の扉を開く希望の鍵になるかもしれない。

こんな日本だからね。
僕にはそう思えるのです。

えーじ
posted by ととら at 23:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年11月13日

Just like old days.

不思議なもので、
飲食店に来るお客さまの年齢層は、
ホール担当の年齢に近くなるといいます。

なるほど、
だからととら亭は僕とほぼ同世代のお客さまが中心なのかな?
それもその世代はご夫婦でいらっしゃるケースが多いですね。

皆さん、子供たちが手を離れ、
もう一度ふたりの時間を取り戻したご様子で。

見ていて興味深いのは、そうしたご夫婦が、
お子さんたちと一緒に来た時と、二人だけの時とでは、
がらっと雰囲気が変わることです。

きっと二人は数十年前、ああしてデードしてたんだろうな。
僕はそう想像しながらサーブしていることがあります。

さて今日は、
そんなお二人にお勧めのタイムトラベルをひとつ。
チケットは格安で、すぐに手に入りますよ。

帰りに花束を買いませんか?

そして自宅で待っている奥さんに突然プレゼントするのです。

今日が誕生日や結婚記念日でなければ彼女は訊くでしょう。

「え? どうしたのこれ?」

そうしたら、あなたはにっこり笑ってこう応えて下さい。

「君にだよ」

その瞬間に彼女が浮かべた表情から、
10年前か、20年、30年前かもしれませんが、
どこか、出会ったころの彼女の面影を、
あなたは見つけるでしょう。

そう、

Just like old days.

えーじ
posted by ととら at 14:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年11月10日

ととらな本 その11

このシリーズの『その10』でお話しましたように、
筆者である僕の校正が当てにならないため、
ともこを始め、村尾編集長や校了さんのトリプルチェックで
ようやく世に出た『世界まるごとギョーザの旅』。

ところが人間の限界と申しますか、
それでもバグを完全に潰すことはできませんでした。

こうした文章のバグとは大きく分けて3つあります。

ひとつ目は誤字脱字系。
パソコンのテキストエディターやワープロソフトで書いていると、
キーを押せば簡単に漢字変換されるものの、
システムの誤変換が珍しくないのは皆さんもご存知の通り。
そもそも書いている本人が分かっていなければ、
変換候補を正しく選択できませんしね。

次が文法的な間違い。
『てにをは』など助詞の使い方が間違っているケースのほかに、
「食べれる」「食べられる」などの『ら抜き言葉』も僕がよくやるミス。
こんな風に軽薄な口語体で書いているから尚更なんですよ。

最後が意味的な間違い。
これを炙り出す難易度はかなり高いと思います。
何と言っても内容ごとに専門的な知識が求められますからね。
たとえば僕の本に限っても、
範囲は料理に留まらず、地理、世界史、複数の言語などに跨っているので、
精度を上げるなら、各分野の専門家の助けを借りるほかないでしょう。

ともあれ、誤脱字、文法エラーはさておき、
この意味的な間違いはひとえに筆者の責任だと僕は考えています。
ですから発行されて暫くの間はドキドキものでした。
そして半年が経ち、ここまでくればもう安心・・・
と高をくくっていた先日、
ふと適当なページを開いて読み返していると・・・

ん? あれ?
ここ、送り仮名が違うじゃん!

が〜ん・・・

見つけてしまいました。
イージーミスです。

む〜・・・このくだりは何度も読み直したところだったのにな。
ま、仕方ないか、人間だもの(相田みつお風)。

しかし、思わぬミスに気付くのはこれが最後ではありませんでした。

その数日後、
本を買ってくれたドイツの言語と文化に詳しい元大学教授のお客さまがご来店し、

「やぁ、なかなかよく書けた本だったよ」
「ありがとうございます!」

ふんふん、そうでしょうとも。頑張りましたからね。
評価はAマイナス・・・いやプラスかな?

「だが、何カ所か間違っている所があったな」

 え? な、何カ所も!

「付箋を貼っておいたから参考までに確認してみてくれるかい?」

閉店後、渡された本を恐る恐る開いてみると、
第3章の『行ってみなければ分からない 〜ドイツのマウルタッシェン〜』を中心に、
料理名の表現など、数カ所で赤ペンが入っていました。

うへぇ〜、なんてこった・・・
次回は事前に添削をお願いしようかしらん?

そしてダメ押しは村尾編集長から連絡があり、

「編集部に読者の方から問い合わせがありまして。
 ポーランドの北部が接しているのは北海ではなくてバルト海ですよね?」

当たり前じゃないですか。バルト海ですよ。
え? そうなってない?

慌てて該当ページを繰ってみると・・・

おいおい、誰だ北海って書いたのは?

・・・・・・?

僕じゃん!

とまぁ、こんな具合に出るわ出るわで目眩がしてきました。

でも正直申しまして、嬉しかったです。

書いた本人以上に、真剣に読んでくれた人がいる。
著者にとって、これほど名誉なことはありません。

そして何より励みになったのは、
誤りを指摘してくれた読者さんの読み方です。

外国に行ったことがないというその方は、
世界地図を片手に僕らの旅行ルートを追いながら読むことで、
地理的な間違いに気付いたとのことでした。

僕たちと一緒に紙上で旅をしてくれたのか・・・

この仕事が出来て本当に良かったな。

そう思えた瞬間でした。

えーじ
posted by ととら at 12:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年11月07日

今年のニューモデル 2018

2017年は本が出たこともあって、
出版社を始め、新聞、テレビ、ラジオなど、
いろいろなメディアの方々にお世話になりました。

それでよくお客さまから頂戴するのが、

「もう予約が取れなくなっちゃいますね」

とか、

「これで大繁盛ですね!」

というお言葉。

ん〜・・・

確かに閑古鳥の鳴いていた店が、
マスコミ、特にテレビで紹介された途端、
行列が出来る大繁盛店に!

という話は、
この商売をする前からしばしば耳にしていましたけどね。
しかし僕の限られた経験から申しますと、
これは都市伝説のひとつではないかな?

たとえば、ととら亭がデビューした2010年。
運よく野方の大先輩たちに混ざって、
『アド街ック天国』で取り上げて頂いたことがあります。

放送の翌日は野方の街が昔日の活気を取り戻し、
そこかしこで行列が。
無名のととら亭ですら開店前から、
お店の前に数名のお客さまが並んでいるじゃないですか!

おぉ〜、凄いな!
たった1分くらい映っていただけなのに、これほどの効果とは!
さすがはテレビ。
これでととら亭も安泰だ。

と喜んだのも束の間。
1週間も経たないうちに、野方は普段の『静かな』商店街に戻り、
当然うちもぐるっと回って元通り。

そして、その翌年は『ぶらり途中下車の旅』で取り上げられるも、
やっぱりマスコミ景気が続いたのは2カ月間くらいだったかな?
しかもピークはもっと短いし。

なので、やっぱり地道に真面目にやるしかないのですよ。
棚ぼた大繁盛は宝くじが当たるようなもの。

しかし自力だけでは覚束ないのが飲食業界です。
生き残るには何か拠り所が欲しい。

と、いうわけで今年も行って参りました酉の市。
日程が合わず、残念ながら屋台のはしごは出来ませんでしたけど、
(賄い用に広島焼きを買って帰りました)
練馬の大鳥神社まで自転車を走らせ、2017年モデルを奉納した後、
神社純正の2018年モデルをゲット。

kumade2018.jpg

え、相変わらず一番小さい熊手じゃないか?

いいんですよ、志もそんなものですから。

日々のご飯が食べられて旅に出られれば、
僕らには十分なのです。

えーじ
posted by ととら at 11:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年11月04日

観たいけど観たくない映画

東京地方は秋晴れの3連休。

遠出もいいですけど、
近場で美術館や映画館に行くのもまた一興ですね。

映画といえば、
ずいぶん映画館に足を運んでないなぁ・・・

多分、最後は2006年の秋に恵比寿ガーデンプレイスで観た、
『ニキフォル 〜知られざる天才画家の肖像〜』だった気がします。
地味でしたけど、いい作品だったんですよ。
86歳になるポーランドの女優クリスティーナ・フェルドマンが、
同じくポーランド人の画家、
ニキフォル(男性)の晩年をリアルに熱演していました。

最近は映画館どころか自宅のDVDプレーヤーもほこりを被り、
僕がフィルムに接するのは主に取材旅行の移動中。
つまりあの小さいエコノミーシートの画面だけ。

いかんね、それじゃ久し振りに行こうかしらん?
と思って調べてみれば、
10月27日から『ブレードランナー2049』がやってるじゃないですか!

むわぁ〜、観たい!
でも・・・観たくない・・・

この戸惑いに共感して頂けるあなたは同世代。
でしょ?

最初の『ブレードランナー』と言えば、今を遡ること35年前、
1982年に公開された、SF映画の金字塔。
いや、一般的な評価ではなく、
僕自身、この作品を超えるSF映画は今でもないと思っています。

ハリソン・フォード、ルトガー・ハウアー、
ショーン・ヤングの素晴らしい演技はいざしらず、
それまでの小奇麗で流線形だった未来像を、
廃墟のように描いたシド・ミードのパンクなデザイン、
美しくも物悲しく心を打つヴァンゲリスの音楽は、
ステレオタイプと化したSF映画のスタイルに一石を投じる斬新さがありました

そして何より光っていたのは、SFだけではなく、
他のジャンルの映画ですら達しえなかった深甚なストーリー。
フィリップ・K・ディックの原作、
『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を大きく書き換えた、
ハンプトン・ファンチャーとデヴィッド・ピープルズ の脚本は、
涙なくして語れない切実さと美しさをあわせ持っていたのです。

何をもってあなたは『それ』を人間と呼ぶのか?

これが若かりし頃の僕が読み解いた『ブレードランナー』のテーマでした。

『工業製品』でありながら、生まれた記憶を追い、
懸命に生きようとするレプリカントたち。

そして、その生に目覚めた製品を処分しようとする人間たち。

社会に浸透した『人間の定義』とは、
遺伝子や生物学的な特徴によるものではなく、
むしろ単純に『人間から生まれた生物を人間と呼んでいる』だけなんだろう。

これが当時、構造主義者を標榜してしばしば朝まで議論していた、
僕らの音楽、演劇仲間の共通見解でした。(若いねぇ)

しかし、命を慈しむ心を失った『人間』と、
自他の境界を超え、命の重みを知った『製品』が対峙した時、
僕たちはそこに何を見るのか?

自分を殺そうと付け狙い続けたデッカード(ハリソン・フォード)を、
殺せるところまで追いつめたロイ(ルトガー・ハウアー)が助け、
希望を象徴する白い鳩を抱いたまま息絶える時に呟いた科白を、
僕は今でも原語で暗唱することができます。
(著作権の関係でここでは書きませんが)

そしてロイの腕の中から飛び立った白い鳩が、
陰鬱な天気が終始続いていた劇中で、
唯一開かれた青空に向かって羽ばたいて行く。

命あるもの、心あるもの、それは何なのか?

僕はここで目頭を押さえましたよ。マジで。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

なぁんて自分の青春時代と重ね合わせたイメージを、
『ブレードランナー』に持っているものですから、
もし続編がただのコンピュータグラフィックのスキルを開陳しただけの、
中身のない駄作だったらどうしよう?

そんな懸念もあるので、正直観るのが怖いのですよ。

これまでもそうして幻滅したことが何度かありました。

たとえば1968年に公開された、
スタンリー・キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』。
もちろん僕が観たのはリバイバル版でしたが、
自分自身に行き詰まっていた僕は、
冒頭で『ツァラトストラはかく語りき』が鳴り響いただけで、
おお、それからどうなるんだ!
と期待レベルは急上昇。
もしやニーチェの超人思想の謎が解かれるのか?
と盛り上がったところで更なる謎のモノリスが現れておしまい。

ぜんぜん『ポスト』じゃない、
ポスト構造主義にがっかりしていた僕には、
これじゃ蛇の生殺し。

そこで新たなる人間像が描かれているに違いないと、
いやがうえにも期待を募らせて観た1985年公開の続編である『2010年』。

ところが!

おいおい、謎のモノリスのオチがこれかい?

長くなるので詳しくはここで申しませんが、
結局、主人公のデビッド・ボーマン船長(ロイ・シェイダー)が言う、
「なにか素晴らしいことが起こる」とは、
幽体離脱の凡庸な二元論に先祖返りしているだけとしか思えないし、
魂の肉体からの解放という神学的実存主義の幕が下りておしまい・・・
じゃあ別の意味で泣けるじゃねぇか!

閑話休題。

まぁ、こんな風に議論できるならまだいいのですが、
昨今のSF映画はおしなべて、
コンピュータグラフィックの派手な表現に拘泥しているだけで、
役者の演技はおろか、ストーリーの陳腐さには閉口しています。
だから観終わっても何も記憶に残らない。
きらびやかな絵に驚いて「へぇ〜」で終っちゃう。

とゴーマンかますと現役映画人に怒られちゃうかもしれませんけど、
SF映画ランキングの自己評価の1位が『ブレードランナー』、
2位がアンドレイ・タルコフスキー監督の『惑星ソラリス』を挙げる、
(正直に言わせてもらうぜ、ジョージ。
 あのハリウッドリメイク版もひどかった!)
偏愛的おじさんが言っていることです。

気にしないで下さい。

えーじ
posted by ととら at 15:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年10月31日

Keep our business small.

今日はお馴染みの休日ならぬ定休日。
午前中、僕は経理関連の月末処理(地味だなぁ・・・)、
ともこは仕込みを黙々とこなし、
午後からお店の床のワックスがけです。

飲食店の平均寿命3〜4年という過酷な日本の飲食業界の中、
皆さまのお蔭で生き残ってはいるものの、
独立後7年8カ月を経過してなお、
相変わらずのD.I.Y。

これは今日やっている経理やメンテナンスのみならず、
機材の修理やウェブサイトの管理など、
ととら亭の仕事はすべからく、
『自分たちでやれることは自分たちでやる』となっています。

と申しますのも、その理由は懐事情の問題だけではなく、
(確かにそれはビッグプロブレムですが・・・)
度々お話している『ととらポリシー』のひとつだからなんですよ。

旅の食堂ととら亭とは、
僕たちのネイティブな部分を可能な限り形にしたもの、
つまりバックパッカーの旅のスタイルが、
そのまま仕事に反映されています。

ですから独立前に作った事業計画の中でさえ、
ビジネスサクセス本でお約束の『チェーン展開』や、
『スタッフ教育』云々という厄介な項目がありません。

旅人の身上である『自由』と『身軽さ』を失わずにいるには、
色気を出して事業規模を拡大しないことに尽きます。
『所有する』ということは、
同時に『所有される』ということでもありますから。

なぁんて云うとカッコイイかもしれませんが、
やり過ぎは疲れますね、実際。

ま、この年齢にしてジムに行かなくても健康を保っていられるのも、
肉体労働のお蔭かもしれませんが。

お、洗った床が乾いてきたようです。
それでは、もうひと汗流すとしますか!

えーじ
posted by ととら at 16:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年10月28日

第15回取材旅行の準備 その1

え? 『第5回研修旅行』の間違いじゃないのか?

いや、これでいいんですよ。
実はこの時期、毎年11月末の『研修』と、
翌年2月の『取材』の準備を同時に進めておりまして。

紛らわしいので皆さんにお知らせするのは、
どちらも出発の1ヵ月ほど前からにしていたのですが、
今回、取材の方を1月中旬に早めた関係で、
実際の作業通り、同時にお話することにしました。

行き先はちょ〜っと、遠いです。

航路から説明しますと、
まず成田から香港へ飛び、そこでトランジットではなく、
字義通りの給油。
乗客の乗降もあるかもしれませんが、
駐機時間はほんの50分間だけ。

そして再び離陸した飛行機が目指すのは、
アフリカ大陸東部の国、エチオピアのアジスアベバ〜!

あ、何となく分かって来ましたか?

でもここでは降りません。
懐かしの、いや因縁のボレ国際空港でトランジットして、
(ターミナル1じゃなくて本当に良かった!
 悲しい詳細はこのブログで「第11回取材旅行」を検索してみて下さい)
最初の目的地、南アフリカのケープタウンへ行きます。

そう、あの街は去年の2月に行ったところです。
しかし目的地は更に別の場所なのですよ。

ケープタウンでも5日間ほど取材はするのですが、
そこから僕たちは一度ヨハネスブルグへ戻り、
飛行機を乗り換えて次に降り立つのはスワジランド!

え? そりゃどこだ?

となりますよね?

その説明をする前に最終目的地まで話を進めましょう。

スワジランドではマツァパ国際空港の近くにある都市マンジーニと、
首都のムババネで取材し、
そこからは陸路で国境を超えてモザンビークのマプトへ。
(アフリカでは初めての陸路の国境越えだ〜!)
ここがこの旅の最終目的地です。

この長い旅のきっかけは、
今年の夏にととら亭で特集していた南アフリカ料理でした。
ご来店された方は記憶に新しいと思いますが、
その中に『ペリペリチキン』という料理がありましたよね?
どうやらあれの発祥地がモザンビークらしいのですよ。
となれば、食のルーツを追う僕たち『旅の食堂』としては、
行かない訳にはまいりません。

加えて、ペリペリチキンを追いかけるのは、これが最初ではないのですよ。
そう、ちょうど去年の今ごろ。
僕たちが研修目的で訪れたのがマカオと香港。
研修地の香港にマカオを絡めたのは偶然ではありません。
まさしく、アフリカ南部で生まれたペリペリチキンを、
ポルトガルがマカオに伝え、
『アフリカチキン』となって根付いていたからなのです。
(詳しくはこのブログで「第4回研修旅行」を検索してみて下さい)

南アのペリペリチキンとマカオのアフリカチキンを食べ比べたからには、
モザンビークの『元祖ペリペリチキン』を調べてみなくては、
この物語が終わらないじゃないですか。
そこで周辺も調べてみようと加えたのがスワジランド。

この国は南アの北東とモザンビークの南部に挟まれた小さな内陸国で、
面積は四国とほぼ同じくらい。
アフリカ最後の古王国とも言われるからには、
ここにも特徴的な食文化が残っているのではないか?
もしかしたらペリペリチキンの変種があるかもしれないし。

そんな訳で初日のフライトタイムは、
成田     →  香港     4時間30分
香港     →  アジスアベバ 11時間
アジスアベバ →  ケープタウン 6時間30分
トランジットタイムを除いても22時間!
あ〜、考えただけでお尻が痛くなりそうだ。

年明け早々、料理を探して地の果てまで行く僕らでありました。

えーじ
posted by ととら at 17:21| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記

2017年10月23日

嵐が去って

昨夜のディナーは予想通りの展開となり、
最後は一人で貸切状態のお客さまと、
衆議院選挙の開票速報を見ながら幕引きとなりました。

そして片付けが終わった後は、雨脚も強くなってきたので、
そのままHotel TOTORAにチェックイン。
ま、こうなることを予想してシュラフや着替えを持って来ていたのですよ。
その方が朝もゆっくりできますしね。
寝るだけのアパートにはコーヒーすらありませんから。

一夜明けてニュースを見れば、
首都圏の交通網はこれまた予想通りの大混乱。
いやなタイミングに当ってしまいました。
皆さんは無事に職場へたどり着けましたでしょうか?
僕らも今日、明日はお店を休んで高崎市に住む母を訪ねる予定でしたが、
湘南新宿ラインが運休し、高崎線も遅延するなどダイヤが大きく乱れ、
明日に延期しました。
早く復旧するといいですね。

選挙結果を見てみれば、
これまた下馬評通りの一人勝ち・・・か。
やっぱりなぁ。

外は台風一過の眩しい秋空が広がっていますけど、
永田町を中心に改憲という新しい嵐が始まる前触れのような気がします。
この国は何処へ向かって行くのだろう?

ともあれ、いま僕に出来ることは何か?

まずは洗濯だな。

えーじ
posted by ととら at 11:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記