2016年02月12日

第11回取材旅行 その4

昨日朝7時。
辺りがようやく明るくなり、
僕らは黄色い車体の政府系タクシーの駐車場へ。

「タクシーですか?」

落ち着いた50歳前後の男性が話しかけてきました。

「ええ。」

僕は宿の地図を広げ、

「ピアッサのタイトゥホテルです。分かりますか?」
「OK。」
「幾らです?」
「250。」

ん? 聞いていた相場より大分安いじゃないか。

「ブル?」
「もちろん。」
「二人で?」
「はい。」

渋滞するチャーチルロードを北へ、最後は急な坂を上り、
空港から約25分でホテルに到着。
レセプションは回転ドアのエントランス内ではなく、
建物の左側面を回り込んだ場所にありました。

「おはようございます。予約していたものですが。」

事務所のような雑然とした室内のカウンターにいたのは、
20歳くらいの小柄な女性。

「ここ名前はありますか?」

彼女が見せた名簿の日付は2月11日のもの。
僕たちは本来早朝3時にチェックインする予定だったので、
10日の名簿に載っている筈です。

「僕は10日に予約しています。昨日の名簿はありますか?」

彼女はカウンターの裏を探していますが出てきません。

「ああ、いいですよ。
 今日の早朝チェックインする予定で昨日の分から予約し、
 今朝のピックアップサービスをお願いしていたのですが、
 残念ながらドライバーが空港に現れませんでした。」
「・・・そうですか。」
「それで空港で一晩明かしたのです。」
「それはお気の毒に。おかしいですね、
 ドライバーは行った筈なのですが、あなたと会えなかったのでしょう。」

いいや、そうじゃないと思うよ。

「まぁ、いいでしょう。僕たちはすぐチェックインできますか?」
「部屋がいっぱいで掃除をしてからになりますので、
 1時間半ほどお待ち頂けますか。」

部屋がいっぱい?
ということは、僕の予約も取り消されていたって訳だ。
はぁ・・・

「レストランはもうやっていますか?」
「ええ、朝食を召し上がれます。」
「では1時間半後に戻ります。」

「どうだった?」
「ま、僕の悪い予感は的中していたってことさ。」
「忘れられちゃったの?」
「多分、全部ね。それにレセプションの作りからして、
 24時間開いているようには見えないな。」
「だから電話にも出なかったのかしら。」
「うん、ま、いいさ。
 部屋は掃除をしたら入れるってさ。
 1時間半くらいって言うから、1階のレストランで朝食にしよう。」

このホテルは老舗のレストランも併設しています。
コロニアル調の広い客室でゆっくり朝食を楽しみ、

「ん、そろそろ時間だな。レセプションに行って来るよ。」

「部屋に入れますか?」
「はい。彼がご案内します。」

初老の男性が入り口に立っていました。
彼について行くとレストランの手前の階段を昇り、
手前の部屋のドアを開けてくれました。
1898年に作られた、歴史を持つ邸宅風のホテルは、
大分老朽化が目立つものの、さながら領主の館か小型の博物館のよう。

「ここは如何です?」

部屋は質素ながら悪くありません。
しかし、

「シャワーとトイレ付きの部屋がいいのです。」
「分かりました。」

そこで彼は一番奥の部屋に行き、ドアノブを回そうとすると、

「鍵が閉まっています。」

と言うなり階下へ足早に歩き始めました。

「僕はここで待っていましょうか?」
「別の部屋にご案内します。」

そこで僕たちは別館の方へ。

おじさん、僕はまだ高度適応していないんで、
早歩きはしたくないんだけどな。

彼は別館の入り口にいた男性から鍵を受け取り、
僕の方に来ました。

「行きましょう。」

はいはい。
ってまたさっきのところへ戻るの?

階段を昇るくらいなんてことはありませんが、
寝不足 + 空港で夜明かし + 高度未適応 = 調子が悪い
階段をゆっくり上っても脈拍が大分速くなりました。

おいおい、ここに戻るなら、僕は待っていればよかったんじゃん?

そしてようやく部屋のドアが開くと、
ベッドはくしゃくしゃ、サイドテーブルにはオレンジの皮の山、
おまけに床には誰かのトランクが!

「あの〜、この部屋は誰かが泊っていますよ。」
「いや、チェックアウトしました。」
「しかし、この荷物は?」
「問題ありません。」
「問題ない? では、いつ入れます?」
「30分後に。」

「どうだった?」
「報告しよう。部屋は素晴らしい。」
「よかった!」
「しかし、僕らのベッドはまだまだ先だ。」
「どうして?」
「これから掃除をする。」
「え? さっきまで1時間半かけてしていたんじゃないの?」
「結論はノー。怒っても仕方ない。
 取り敢えずレセプションで手続きをしてくるよ。」

くたくたの僕たちは再びレストランで待ちぼうけ。
そして30分後。
部屋を覗きに行くと掃除をしていた少女が出てくるところでした。

「入ってもいいですか?」
「ええ。」

「うぁ〜、疲れたっ!」

時刻は11時。
こうして僕らはようやくベッドに寝ころべた次第です。

予定より8時間遅れた、遥かなるベッドへの旅でございました。

えーじ
posted by ととら at 23:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

第11回取材旅行 その3

今は現地時間午前3時45分。
(日本との時差は6時間)
僕たちはエチオピアの首都、アディスアベバのボレ国際空港で、
夜明かし中です。

何故か?

旅人の勘と申しますか、
「第11回取材旅行の準備 その2」でお話しましたように、
エチオピア到着はすんなり行かないだろうな、と思っていたのですよ。

25時という深夜の到着と治安の悪さを鑑み、
宿が提供しているピックアップサービスをお願いしていたのですが、
やはりドライバーは現れませんでした。
そこで宿に電話を入れるも誰も出ず。

ほらほら始まったぜ。

仕方なく夜明けを待ってタクシーで行くことにしたのです。

しかし初めて訪れる文化圏のサプライズはこれだけではありませんでした。

ボレ国際空港に着陸した飛行機が停まり、
タラップを降りた目の前の建物がイミグレーション。
それはさながらバスで乗り付けたような感覚。
アライバルビザの窓口は、乗客が並んだら開きました。
入出国カードは廃止されたよう。税関申告書もなし。
こんなものは全然序の口。

次なるサプライズはインスペクター。
私服です。それもよれよれのパーカーとジーンズ。
キューバでもこれと似たものがありましたが、
もうちょっと小奇麗にしていましたよ。
あれではIDカードを下げてなかったら、
見送りのローカルと見分けはつかないでしょう。

ともこを受け付けている時に横からブースの中を見てみると、
雑然と置かれたPCやスキャナーはかなりの年季もの。
そういえばミャンマーのタチレイイミグレーションでも、
埃にまみれたPCが奇跡的に動いていたっけ。

そして一番驚いたのがバゲッジクレームで両替をしていた時。
窓口はガラス窓のスリット部分をPCが塞ぎ、
その隙間から落とさないようにお金をやり取りします。
僕がエチオピアブルを受け取り、数えていると、
左わきの下からぬっと高校生くらいの少年が潜り込んで顔を出し、
「お金をちょうだい」と手を差し出して来たじゃないですか!

物乞い?
あ、あり得ん、ここはバゲッジクレーム、セキュリティエリアだぜ!

見回すと、ターンテーブルの廻る小さな倉庫のような部屋の隅には、
裸足でうずくまる15歳から25歳くらいの男性が何人もいます。

彼らはここで何をしているんだ?
いや、いったいどうやってここまで入って来れたんだ?

空港職員と思しき人々は彼らの存在を無視しています。

なぜ誰もなにもしない?

「どうしたの?両替は出来た?」
「ああ、でもここは様子が変だ。
 セキュリティエリアに物乞いがいる。荷物に気を付けて!」
「え?」
「それに空港職員なのか偽者なのかも区別がつかない。」
「みんな私服だね。それもちょっとだらしない着こなし。」

そしてなんと、この空港には「到着ロビー」がありませんでした。
税関を抜けたら夜の闇。
そう、外は外灯も少なく、ひっそりとしています。

「まずい、外へ出ちゃった。」
「どうする? 何もないよ。」
「仕方ない出発ロビーに入ろう。」

そこでもう一度手荷物検査を受け、
出発ロビーに入るも、免税店やカフェはおろか、キオスクすらなし。
つまり水を買うことすらできない。
狭いロビーに置かれたいくつかのベンチでは、
出発を待つ乗客の他、僕たちのように着いたものの、
動きが取れない乗客がベンチで疲れた顔をしています。

「具合はどう?」
「疲れたね。」
「高山病の症状は?」
「ちょっとフワフワした感じで頭が軽く締め付けられてるみたい。」
「僕もだよ。
 急に2300メートルを超える高地に入って脱水症状はまずいな。
 なんとか水を手に入れなくちゃ。」
「でも売店なんかないよ。」
「空港職員に訊いてくる。」

身なりのしっかりしている職員を見つけ、
尋ねてみると、水は外の売店で買うしかないとのこと。

売店? 外の?

「という訳でもう一度外へ行って来るよ。」
「え〜っ!やめなよ、危ないじゃない!」
「暗くて気味が悪いから遠くまでは行かないさ。
 すぐに帰って来るから荷物を見ていて。」

念の為に手荷物検査のお兄ちゃんに一声かけ、
外へ出てみると、少し先に行って左に下る坂があるようです。
警備小屋を越えるとその下は駐車場になっていました。
自動車が結構停まっています。

「旦那、タクシーですか?」
「いや、違いますよ。」

売店? なんて何処にあるんだ?
ん? あの薄暗く明かりの点いている小屋は・・・
中に人がいる。

入ってみると小さなキオスクのようです。

「こんばんは。この水は幾らですか?」
「20ブルだよ。」

20ブル・・・概ね120円か。倍額でふっかけたな。
ま、いいよ、今夜はもうくたくたさ。

もう一度出発ロビーの入り口で入ってもいいかというと、
「それならセキュリティチェックだ。」

さんきゅーべりまっち。

ほんの30分の間に靴も脱がされ金属探知機の検査を3回も受けました。

「あ、お水買えたの?」
「うん、取り敢えず水分を補給しておこう。
 外に出たらちょっと坂を下りたところに駐車場があってね、
 政府系の黄色いタクシーが何台か停まってた。
 夜が明けたらあれで宿まで移動しよう。」

そんなこんなで宿に着いたのは予定から5時間遅れた朝8時でした。

しかし、まだまだベッドは遠かったのですよ。
そのお話はまた次回。

えーじ
posted by ととら at 01:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記