2016年03月26日

地獄のリストラ

ここはトルクメニスタンのダルヴァザ。
大地に開いた地獄の門を降って1時間のところにある、
天界ホールディングスの関連会社の取締役室で・・・

「お頭、何をそわそわしているんですかい?」
「なんだど?」
「あ! す、すいやせん、ショチョう。」
「ふぅ・・・ベルゼブブ、いつまでたってもお前は発音が悪いな。
 そんなことだから仕事も上手く行かんのだ。
 現代はイメージが大切だと言っただろう?」
「へい。」
「お頭とか頭領などと古臭い言い方では今どき社員も集まらん。」

「それはそうと、連絡はまだないのか?」
「連絡?」
「はぁ・・・どうして我が社は、
 お前のような悪魔を総務部長にせにゃならんのだ。
 人材不足は飲食業界だけの問題ではないな。」
「あ、天界からの?」
「そうだ。お前は分かっていないのか?」
「あ、ああ、ああ、分かっていますとも!
 今年は2016年、丁度前回の人事から100年経ちましたよね?」
「その通り。」
「この前は誰も異動しませんでしたね。」
「だからだ、今回は組織編成も含めて、
 大きな動きがあるとわしは睨んでいるのだ。」
「さっすがは頭領・・・じゃなかった、ショチョう。
 あったまいい。」

そこへインターフォンから声が。

「ルシフェル社長。」
「なんだ?」
「天界からスカイプが入っております。」
「ふん、ようやく来たか。誰だ?」
「ガブリエル様です。」
「よし、こちらのメインモニターに繋げ。」
「かしこまりました。」

「やぁ、ルシフェル!お元気そうですね?」
「元気も何もねぇよ、ガブリエル。
 この天界の分社に何年いると思ってるんだ?
 俺はほとほと疲れたぜ。」
「そうでしょうね、地上は相変わらずの荒れ模様。
 勤務地が近い冥界では苦労も絶えないでしょう。」
「分かってるじゃねぇか。
 で、出たんだろ?」
「はい。主からの人事異動報がさきほど天使長室へ届きました。」
「よしよし、全く永いこと待っていたぜ。
 早速読み上げてくれ。」
「では、開封します。
 アスモデウス
 2016年4月1日をもってエンゼルカンパニー人事部人材開発課勤務を命ずる。
 プルフラス
 2016年4月1日をもって、
 エンゼルカンパニー情報システム部システム管理課勤務を命ずる。
 ベルゼブブ
 2016年4月1日をもってエンゼルカンパニー営業部営業課勤務を命ずる。」

「え? あっしも? わぁ〜いっ!ついに帰れるんだぁ〜!
 これでこの蠅のコスチュームともおさらばだ!」

「で、次は?」
「次?」
「以上です。次はありません。」
「な、なんだとっ!よく見てみろ!俺の名前もあるだろう?」
「いいえ、残念ながら。
 異動は先の3名だけです。」
「ありえん!
 ここに飛ばされて3300年、100年ごとに異動願を出しているというのに!」
「ルシフェル。
 それだけ主はあなたを評価しているということですよ。」
「冗談じゃねぇ!ボスは適材適所ってことが分かってねぇんだ。
 誰が見たって俺よりもあの暴力天使のミカエルの方がずっと適任だろう!」
「彼にはあなたほどの才能はありませんよ。
 苦しみは成長の糧。それを人間たちに与えるのがあなたの大切な仕事です。」

「ちくしょ〜、何てこった。また100年もここで働かなきゃならんのか。
 で、こいつらボケ社員3人の代わりに誰が来るんだ?」
「地獄の増員はありません。」
「で、てめぇふざけてんのか!」
「天界に冗談はありませんよ。あなたもご存じでしょう?」
「このくそ忙しいのに手下、じゃなかった、社員を引き抜かれて終わりか?」
「主は正確にそちらの業務量を把握していらっしゃいます。」
「いいや、ボスは現場の苦労が分かっていねぇんだ。
 最近の業績だって知らねぇだろう?
 見込みのありそうな人間たちから、才能ある人材をスカウトしてるんだからよ。」
「というと?」
「なんだっけ、ベルゼブブ!
 効率よく不和と憎しみを撒き散らせるメディアの?」
「シャルリーヘブド社ですか?」
「そうだ!あいつらの憎悪の煽り方なんて大したもんじゃねぇか。
 子供にも分かり易いようにマンガを使うなんてセンスいいよな。
 これも我が社の努力と指導の賜物だぜ。」
「お、お頭・・・」
「なんだ?」
「あいつらは当社と関係ねぇんですよ。」
「何? お前がスカウトしたんじゃなかったのか?」
「はい。」

「じゃ、あいつだ。次のアメリカ大統領にする、ホラ?
 ホランプ!
 あいつはOBのスターリンやポルポトみたいにいい仕事するぜ。
 景気よく核ミサイルだって撃ちかねねぇ。」
「お、お頭・・・」
「なんだ?」
「あいつも当社とは関係ねぇんで。」
「なんだと!」

「ルシフェル。知らなかったのですか。
 人間たちは、いまや自主的にあなたの仕事をし始めています。
 ですから、かつてのように私たちが努力して苦難の糧を与えなくても、
 自分でその種を撒いているのですよ。」
「ISに原発に遺伝子組み換え生物も?」
「すべて人間だけでやっていることです。」
「いや、ヘイトスピーチくらいはうちの仕事だぜ!」
「お頭、あれも当社は関与していません。」
「ベルゼブブ!てめぇたち、サボってたな!」
「いや、行きましたよ、現場に。
 でも、最近はいつだって出番がないんですよ。
 人間どもの悪戸さ、じゃなくて勤勉さときたら、
 まったく大したもんでして。」
「てめぇ、変な所に感心してるんじゃねぇ!」

「ルシフェル。分かりましたか、地獄の人員削減の理由が。
 あなたも少し楽をして、人間たちに任せてはいかがでしょう。」
「じゃあよ、いっそのこと、
 ここの仕事は全部、人間どもにアウトソースしたらどうだ?」
「それは残念ながらできません。
 彼らだけならいいのですが、
 地球には他の生き物たちも沢山住んでいますからね。
 迷惑はかけられないでしょう。」
「まったく忌々しい人間どもめ! 何て厄介な奴らなんだ!」
「そういいなさんな。
 主は彼らに任せる仕事のヴィジョンを持っていらっしゃいます。
 その日が来るまで、私たちも待ちましょう。」
「やれやれ、だからって俺まで道連れか?
 せめて地獄のネット回線のスピードくらい上げてくれよ。
 こう退屈じゃ、ユーチューブの動画ぐらいしか慰めがねぇ。
 ここは今どきでもADSLなんだぜ。」
「分かりました。主はこう言い給えるでしょう。」
「何だ?」
「光あれ。」

通信終了。

えーじ
posted by ととら at 17:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記