2017年02月05日

パラレルワールドの入り口で

「えーじさん、スマホから印刷ってどうやるの?」

先日、大学を受験する息子さんのいる友人から、
こんなヘルプコールがありました。
最近では受験にも、ある程度のITリテラシーが求められるのか、
僕らがよくやるe-VISAを入力してから申請用紙を印刷するような手続きが、
多くの大学で採用され始めているそうです。

詳しく訊けば、友人のプリンタが壊れており、
願書の提出期限も迫っているとのこと。
そこで手っ取り早く、
僕のPCで受験者のパーソナルページから申請用紙をダウンロードし、
自宅にあるプリンタで印刷することにしました。

「すみません。よろしくお願いします」

間もなく、ととら亭に来た息子さんがカウンターで僕の隣に座りました。
聞いた大学名からウェブサイトの受験ページにアクセスし、
IDとパスワードの入力画面まで来たところで操作を息子さんにパス。
彼は真剣な面持ちで入力を始めました。

こういうシチュエーションは、思えば初めてだな・・・
もし、僕に息子がいたら、ちょうど彼くらいの年齢かもしれない。

僕の中で子供と言うと、かつては赤ちゃんをイメージしていたものですが、
この歳になると、イメージも歳を取っていかないとおかしい。
しかし、自宅に帰ったら髭の生えた息子や化粧した娘が待っていて、
「ねぇ、おとうさん! 新しいスマホに乗り換えたいんだけど!」
なんて言われる自分は、まったく想像が出来なかったんですよ。

いろんな人生があるものです。

僕は自分の選択でここまで来ました。
良くも悪くも、今ここにいる僕は、過去の僕が作り上げた結果です。
振り返れば、くねくねと曲がった過去の航跡には、
例えば、3カ月間に及ぶ中南米の旅や、ととら亭の開業など、
無数の分岐点が見え隠れしています。
その節目は、可能性と選択と言う言葉で言い換えられるのかもしれません。

あの日、あの時、あの分かれ道で、もし反対方向へ進んでいたら、
今ごろ僕は、どこで、誰と、何をしているのだろう?

皮ジャンとブーツ姿でオートバイに乗り、
ひとりで日本を旅している僕。

スーツ姿で会社に勤め、
自宅に帰れば受験を控えた子供のフォローをしている僕。

日本を捨て、遠い外国で現地の人々の大家族の一人になっている僕。

もしかしたら、この世界と並行する世界で、
僕は、それぞれの可能性と、
選択の先にある人生を歩んでいるのかもしれないな・・・

「あ、あの、えーじさん、すんません!」
「え? ああ! 出来たかい?」
「はい、このページです」
「じゃ、ダウンロードするから操作を変わろう」

おっと、ぼんやりしていました。

自分で考えている以上に、選択肢の数は多いもの。
しかしながら、同時にふたつの人生を生きることはできない。

そう考えると自分の下した判断の自信が揺らぐかもしれませんけど、
自己評価はどうあれ、
ひとは結果的に、自分にとってベストの選択をしている。
だから平凡に見える日常が、ある意味、ひとつの究極的な奇跡なんだ。

僕は最近、そんな風に思えてきました。

えーじ
posted by ととら at 17:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記