2017年09月10日

僕の小宇宙 その3 神保町2

僕の辞書にない言葉。
それは『出世』と『定年』。
こんな話を本にも書きましたが、実はもうひとつない単語があります。

それは『退屈』。

昔から趣味が服を着て歩いているような人間ですから、
時間さえあれば、やりたいことが今でも沢山あります。

そんな僕にとって神保町は、
音楽以外にも重要なニーズに応えてくれる小宇宙的な街なのです。
では中古CDショップの他に行くところといえば・・・

それは山屋。

この街にはICI石井スポーツさんやサカイヤさんをはじめ、
登山に軸足を置いたスポーツ店が点在しています。
20歳代の頃から登山ライダーだった僕は、
度々ここを訪れては装備を調達していたのです。
キャンプツーリングとトレッキングのギアは殆ど重複していますからね。

思えばアウトドア用品はここ30年で大きく変わりました。
たとえば皆さんが日常的に着ているフリース。
あれは当時パタゴニア社のシンチラベストくらいしか輸入されておらず、
価格もすこぶる高価だったので、
「へぇ〜、ウールに代わるそんな素材があるのか」
程度の認識しかなかったのですよ。

しかし新しい物好きな僕は、
ちょっと値段を下がってリリースされたノースフェイス社製を気張ってゲット。
しかも上下です。当時はなんとボトムもあったんですよ。
当然強度が足りませんから、
お尻や膝はナイロンの黒い生地で補強されていました。
これを着て山に行った時には注目されましたね。
「その毛布みたいな服はなんだい?」ってな具合に。
ところがやっぱり無理があったんでしょう。
5回も使わないうちにボトムのフリース部分がへたったり、
破れたりして程なく使い物にならなくなりました。
どうりであれ以来、再版されないわけですね。

そしてこれまた今では誰もが知っているグレゴリー社のバックパック。
当時はキスリングタイプがまだ主流でしたから、
すらっと縦に長いナイロンタイプはクライマーの間でも、
あまり使われていなかったのです。
これにも僕は飛びつきました。
カッコウから入る。これです。
しかも背負ってみると明らかにキスリングタイプよりバランスが良く、
2気室タイプは底のものもすぐに取り出せるので、
便利なことこの上ない。
以来、メーカーはミレー、カリマー、ノースフェイスなどに変えつつ、
30リットルのデイパックから100リットル超の遠征用まで、
行き先に応じて使い分けています。

当時は冬山もソロで登っていましたから、
各ギアの重さは重要なファクターでした。
ですからコッヘルやガスコンロ、はてや魔法瓶まで、
まだまだ高価だったチタン製を早くから取り入れていたのです。
どうしても手が出なかったのは、同じくチタン製のアイゼン。
あれはさすがにちと高過ぎた!
それでもとにかく荷物を減らし、必要なギアを軽量化することは、
膝上の新雪をひとりでラッセルしながら進まねばならない僕にとって、
至上命題だったのです。
ほんと、フルパワーで15メートルほど雪の斜面を登ったと思ったら、
滑ってズルズル元の場所まで落ちてしまったときなど、
放送禁止用語連発で毒づいていましたよ。

軽量化と言えば、
テントはICI石井スポーツさんのゴアライト1〜2人用を愛用していました。
これは本当に優れモノで、驚くべき軽さもさることながら、
ゴアテックスならではの通気性には驚いたものです。
たとえばテントで一夜明かすと大切なシュラフの下側がぐっしょり濡れた!
なんてことがよくあるのですが、
これは自分の体から出た水蒸気がテント裏側の表面で結露し、
じわじわ垂れて来るのが原因。
ところがゴアテックスだと、
テントを締め切っていても水蒸気は外に排出されるので、
1週間の縦走中でさえシュラフはさらっと乾いたままです。

旅に出る前に神保町で幾つかの装備を新調する。
僕にとってはこの時点でもう新しい旅が始まっていました。
この街の山屋もまた、一つの旅の入り口なんですね。

今日の東京地方は素晴らしい秋晴れ。
ああ、トレッキングに行きたい!

えーじ
posted by ととら at 17:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記