2019年04月10日

第17回取材旅行番外編 その4

うとうとしているうちに夜が明けていました。
予想通り、二人の体調はさらに悪化しています。

時刻は・・・7時半か。
食堂に行って何か食べ物とチャイをもらってこよう。

「どうだい?」

部屋に戻るとともこが起きていました。
彼女は測っていた体温計を取り出し、うかない顔で、

「38度6分・・・」
「下がらないな。食欲は?」
「少しなら食べられるかなぁ・・・」
「薬を飲むには先に何か食べておかないとね。
 それから温かいチャイを飲むと喉が楽になるよ」

僕はジャムを付けたエキメッキ(トルコのパン)を齧りながら、
プランAを考え始めました。

ともこは長距離の移動どころか取材もできない。
僕も『予定通り』体調が悪化してきている。
ってことは『順調に』行くと、
あと4時間前後で二人とも行動不能ってわけだ。
よし・・・

「手持ちの薬じゃ効かないみたいだから病院に行こう。
 実は僕も具合が悪くなってきていてさ」
「ほんとに!?
 ・・・ゴメンね、伝染しちゃって・・・」
「この狭い部屋に居れば無理はないよ。
 それより悪化のスピードからすると、
 あんまりのんびりはしていられないと思うんだ。
 これから保険会社に連絡して病院を紹介してもらおう」

そこで出発前に加入していた海外旅行保険の連絡先に電話をかけ、
担当者に状況を伝えると・・・

「たいへん申し訳ございませんが、
 ご滞在地域で紹介できる病院が当方のリストにありません。
 ご自分で探していただけますでしょうか?」

さんきゅ〜べりまっち。

「どうしたの?」
「プランBに変更だ。フロントに行って相談してみるよ」

と言って部屋を出てから、
このホテルには英語の話せるスタッフが一人しかいないことを思い出しました。
案の定、フロントにいた朝番のおじさんは、片言の英語しか分かりません。

なんとかチェックインの時に話をした女性とコンタクトしなくちゃ。
時間があんまりない。

「おはようございます。
 昨日僕が話しをした女性はいませんか?」
「・・・・?」
「あ、女性ですよ、女性。昨日会った人」

僕はジェスチャーを交えて意思疎通を試みました。

「レディ? もうすぐ来るデス」
「僕とワイフは頭が痛いのです。病院に行かなくてはなりません。
 それで彼女と話がしたいのです」

ん〜、分かってちょうだい!

しばらく考え込んでいた彼はどこかに電話をかけ、
僕の顔を見ながらトルコ語で何かを話すと、
おもむろに受話器を僕に差し出しました。

「どうしましたか?」

やった!

電話の声は昨日話した女性です。
僕が事情を話すと、

「まぁ、それは大変! 私はちょうどホテルに行くところです。
 あと10分で着きますから待ってて下さい」

まもなく到着した彼女と僕は具体的な話をし始めました。

「病院を紹介して欲しいのですが、
 英語が通じて料金の高くないところに行きたいのです」
「そうですね、この辺でお勧めできるのはクズライホスピタルです。
 私たちは通常、具合が悪い時はそこへ行くのですよ。
 たぶんドクターは英語が話せるでしょう。
 でもトルコの健康保険に入っていない外国人の場合、
 どのくらいの金額になるかは分かりません」
「ありがとうございます。
 その病院はここから遠いですか?」
「いいえ、タクシーなら10分もかかりませんよ」
「ではトルコ語でその病院の名前を書いていただけますか?」

僕は部屋に戻ってPCを立ち上げ、病院名から場所を特定しました。
なるほどここから直線距離で3キロメートル程度しかありません。
しかしこの寒さの中、徒歩で行くの現実的ではないでしょう。

「ともこ、病院が分かった。今から行くから暖かい服に着替えて。
 あと貴重品を忘れずに」

フロントに戻るとオジサンが心配顔で待っていました。

「さっきはありがとうございました。
 これからクズライホスピタルに行きますので、
 タクシーを呼んで頂けますか?」

今度は意図を察してくれただけではなく、
オジサンはドライバーに行き先の説明までしてくれました。
病院は新しい近代的な建物で、入院病棟までありそうです。

よし、ここまでくれば安心だ。

1階の待合室には、
20人ほどの患者と思しきトルコ人の人たちがいました。
入って左側が会計、右側はオフィス、そして正面に受付があります。

「ここで待ってて」

そうともこに言い残した僕は受付に歩み寄り、
突然現れた外国人に驚く女性に、

「メルハバ(こんにちは)。
 僕たちは熱があり、咳も出ています。
 ここで診察を受けたいのです」

「・・・・・・・・・・・・・・」

彼女は僕をじっと見つめたままフリーズしています。

「英語を話せますか?」

たのむよ。

「・・・・・・・・・・・・・・」

彼女は僕を手招きして会計の窓口に行きました。
そこで僕はもう一度、窓口の女性に状況を説明すると、

「ア、あ〜、ちょっト、待ってクダサイ」

病院職員だけではなく、
居合わせた患者さんたちすべての視線が僕たちに向いています。

僕は以前、メキシコのブラジル大使館に、
ビザを取りに行った時のことを思い出しました。

まがりなりにも大使館なんだから英語は通じるし、
申請書も英文併記に違いない・・・と思い込んでいたのですが、
行ってみたら誰も英語を話す人がおらず、
しかもすべての書式はスペイン語だったのです!

ま・・・まさかね・・・

僕は祈るような気持ちで周りの人々を見回しました。

to be continued...

えーじ
posted by ととら at 15:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記