2019年12月10日

第7回研修旅行 その9

ビジュアルレポート後編はトリポリの折り返しからですね。
ビブロス、バールベックと歴史を巡る旅を続けつつ、
さまざまな文化が混淆した料理のいくつかをご紹介しましょう!

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トリポリバスターミナルは道路封鎖されていて使えなかったため、
僕たちは無料のシャトルタクシーで街はずれまで運ばれ、
そこで往路と同じようなバスに乗り換えました。
ビブロスはそれと分かるバスターミナルがあるわけではなく、
(バス停すらないのですよ)
ご覧のような幹線道路の『どこか』の路肩で降り、
そこから徒歩で遺跡まで行くしかありません。
とうぜん僕らはその場所がどこか分からない。
しかし心配は無用でした。
親切なドライバーさんは、僕らがビブロスで降りますと伝えておいたら、
ちゃんと一番近い所で停まって「着いたよ」と教えてくれましたから。

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幹線道路から西へ10分ほど歩いたところにあるビブロス遺跡。
その歴史は古く、紀元前15世紀頃から紀元前8世紀頃にかけて、
ラテン文字の元となるフェニキア文字を発明した、
フェニキア人の都市のひとつだと言われています。
またその地名は本来のグブラより、
エジプトのパピルスがこの地を経由してギリシャに伝わったことから、
ギリシャ語で紙を表すバイブルスが転訛した、
ビブロスという名で知られるようになり、
さらにその言葉から書物を表すビブリオン、
はてや聖書を表すバイブルという言葉が生まれたそうな。
そんな深遠な謂れをよそに、
現代のこの街は、ひっそりと地中海から寄せる波に打たれていました。

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フェニキア人の発祥地としても知られるこの場所は、
新石器時代の住居跡まで残っており、
300メートル四方という狭い範囲ながら、
1万年を超える時間の堆積が体感できます。
遺跡に入ると目の前に聳えているのが十字軍時代に造られた城。
それぞれの時代にさまざまな民族がこの地を支配し、
そして消えて行きました。
散在する各時代の遺構を縫うように歩いていると、
あまりひと気がなかったせいか、
ひょっこりローマ人やフェニキア人と出っくわしそうな気がしてきます。

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入場口から街の中心まで延びる土産物屋横丁。
ここに出ると、とつぜん現代に引き戻されます。
数千年を一挙にジャンプするので、
暗い映画館から日中の街に出てきたような、ちょっと白々しい感じ。
そういえば今、この地の多数派はアラブ人なんですよね。
でももし歴史は繰り返すのであれば、
今から数百年経つと、
また別の民族がここに住んでいるのかもしれません。
いや、もしかしたら誰もいないかも・・・

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時計は16時15分。
さぁ、いい時間です。港まで行ってみましょう!
で、ベストタイミングで見られたビブロスの夕焼け。
古代の港に沈む夕日はまた格別の美しさがありました。
ここから地中海の西へ向けて、レバノン杉で作った帆船に乗り、
フェニキア人たちは旅立って行ったのですね。
ちなみにその一派の作った街がカルタゴです。
そう、今のチュニジアですよ。

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ああ、ここから悠久の旅が始まったのか・・・
と、感慨にふけってばかりはいられません。
お仕事に戻りましょう。
中東の食事で面白いのがこれ。
オーダーした料理以外に、この野菜セットと(あえてサラダとは言いません)、
ピクルスの盛り合わせが付いてくるのです。
ん〜、でもピクルスはともかく、この野菜はどうしたもんだろう?
見ての通り、ナイフでざくざく切って食べるのかしらん?

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これは香ばしく焼き上げたラムケバブのキシュカシュソース添え。
中東の料理はこんな見かけをしていても、
それほどスパイシーではありません。
この料理も例外ではなく、ソースはトマトベースで、
ほんのりガーリックとスマックの酸味を感じる程度。
これがまたサフランライスとよく合うんですよ。

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同じラムケバブでも、
料理がより洗練されたレバノンではバリエーションも豊富です。
いかがです? ちょっとデザートみたいでしょ?
これはヨーグルトソースにドライフルーツのソースを合わせたもの。
酸味と蜂蜜を思わせる濃厚な甘みが絶妙なハーモニーを奏でていました。

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これもレバネーズならではと思われる、
シーフードのタヒーニ(ゴマペースト)ソース添え。
ゴマとチーズの濃厚なソースと淡白な白身魚の相性は、
ちょっと想像できないものかもしれません。
実はこの料理、今年の1月に行ったカイロのレバネーズレストランで、
一度食べていたのですよ。
あんまりおいしかったものですから、
ぜひ本場で試してみようと思っていました。
ん〜・・・さすが!

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へぇ〜、この料理にも歴史を感じさせられますね。
『トマトキッベ』とメニューにあったのでオーダーしてみたら、
なんと出てきたのは、ととら亭でも紹介したことのある、
アルメニア版タブーレのアルメニアンイーチじゃないですか!
それもそのはず、第1次世界大戦中、
アナトリア半島のトルコ領に住んでいたアルメニア人は、
強制移住を強いられ、その一部がレバノンに辿り着いていたのですから。

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となればこれもあるかな?
そう思って探したら、やっぱりありました!
ソースに埋もれていて分からないと思いますが、
エレバンで食べ損ねたアルメニアギョーザのマンティです。
かりっと焼いたラムギョーザが暖かいヨーグルトソースに入っていました。
表面に振られているのはスマックです。
人と食は一体であり、その人が移動すれば自ずと食もまた移動する。
そして食は環境の変化を柔軟に吸収し、ローカライズされて根を下ろす。
こんな一皿でも、料理はまさしくタイムマシンのように、
時間を横断したものなのですね。

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さて、せっかく念願のレバノンに来たのですから、
もう一か所、足を延ばしましてみましょうか。
行き先はローマ時代の遺跡が残るバールベックです。
しかしホテルのフロントで行き方を訊いてみると、
「治安に問題はありませんが、
 あなたたちがローカルの交通機関を使うのは・・・
 どうでしょうねぇ?」
とのこと。
で、コーラにあるバスターミナルに行ってみたら・・・
なるほどこういうことか。
バス停はご覧の通り、ただの駐車場。
シャールへロウバスターミナルも同じでしたが、
公衆トイレはなかなかの恐ろしさがありました。
バスもトリポリに行ったとき乗ったようなものではなく、
だいぶ草臥れたミニバン。
ま、これはこれで僕らの旅にはよくあることですけどね。

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僕らを乗せたバンはベイルートから東に向かい、
息を切らせながらレバノン山脈の急な上り坂を登り始めました。
やがて標高1400メートルほどの高さの峠を越えると間もなく、
ベカー高原の街、シュトゥーラです。
奥に見える山脈はアンチレバノン山脈。
そしてあの向こう側はもうシリアなのですよ。
ここはアラビア半島とは思えない緑に覆われていました。
南部のクサラではワイン造りも盛んです。
(ここのワイン、ととら亭で出していたことがあったっけ)
そして田園地帯を1時間弱、北東に進むと・・・

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着きました、1世紀、ローマ時代に建造されたバールベック遺跡です。
内戦で荒廃した国の遺跡とは思えないほど保存状態が良くてびっくり。
10月から始まった騒動の影響か、
ほとんど観光客の姿がなく、ひっそりとしていました。
ん〜、これぞ廃墟というムード。

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かつて巨大なジュピター神殿があった場所に残る6本の列柱。
この遺跡のシンボル的な存在です。

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アテネのパルテノンを上回る大きさのバッカス神殿。
保存状態がよく、ギリシャ風の壁模様もはっきり残っているので、
内側からゆっくり見れるのもいいですね。

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さて、歩き回ってお腹が空きました。
バールベックの街に戻って入ったお店は中東定番のシャワルマ屋。
(トルコのドネルケバブがアラブ圏ではこの名で呼ばれています)
直感で入った小さなお店でしたが地元の大繁盛店だったようで、
テイクアウトも多く、ひっきりなしにお客さんが入って来ました。

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ここでの取材対象はローカルファーストフード。
他の地域と比較するため
僕たちはここでチキンシャワルマとファラフェルを注文してみました。
出てきたのは野菜やピクルスと一緒にラヴァシュでロールしたもの。
で、お味の方は・・・どちらもほど良くスパイシーでうまい!
なるほど人気があるわけだ。

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ベイルートへ戻ったのはちょうど16時過ぎ。
天気は晴れ。となれば間に合うかな? 
と一縷の望みをかけて途中でミニバンを降り、
タクシーに乗り換えて鳩の岩まで急ぐと・・・
おお、これまたジャストのタイミングでした!
地中海に沈む夕陽。
こんな夕焼けをぼ〜っと見ていられることが、
僕たちにとって、旅の中で一番の贅沢なのかもしれません。
ほんと、美しい・・・

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え? わたしにはこれが一番のご褒美だって?
どうやらこの『バルコニー・ビール』を出発前から企んでいたそうです。
これまた普段はまず出来ないことですからね。
ま、取材も無事、予定通り終わり、あとは帰国するだけですからいいか。
あ〜、もしもし!
それもいいけど取材ノートのまとめもよろしくね!

次回はいよいよ最終回。
UAE・レバノンの旅のちょっとディープな裏事情をお話しましょう。

to be continued...

えーじ
posted by ととら at 15:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記