ひとりで料理を待っている間、
ほとんどの人がスマホを眺めている昨今、
ととら亭では読書派が少なくありません。
しかも興味深いことに若手が多いのですよ。
ん? 何を読んでいるのかな?
サーブするときにちらっと見れば、
これまたみんな硬派だね〜。
今日のランチでも20代の青年が読んでいたのはユリイカ。
僕も彼くらいの頃に愛読していた青土社の月刊誌です。
「へぇ、ユリイカじゃないか。
雑誌が売れない時代と言われているけど健在なんだな。
おもしろいかい?」
「ええ、でも少し硬い内容なのでつまみ読みですよ」
またある時はカバーに躍るキリル文字が目に入り、
「それ、ロシアの本?」
「あ、ロシア系ウクライナ人作家の本です。
アンドレイ・クルコフのウクライナ日記」
「ん〜、なんかそそられるね。
ウクライナはベラルーシ、モルドバと絡めて取材を考えてるんだ」
「現代のウクライナ情勢を理解するにはいい資料かもしれません」
「なるほど、あとでチェックしてみるよ」
こんな具合に若手から本を紹介してもらうこともしばしば。
世代を超えたケースもありました。
ある青年が真剣な面持ちで文庫本を読んでいるかと思えば、
どこかで見たような陰鬱なイラストが・・・
「おや? それ、ラブクラフトかい?」
「え? は、はい」
「クトゥルー神話シリーズ?」
「そうです」
「じゃ、君はポーやボルヘスなんかも好き?」
「え、ええ、まぁ・・・」
「実家の書架には今でもその辺の作品が並んでるよ」
ふ〜ん、まだゴシック小説を読む若者がいるとはね。
てっきりそんな子は絶滅したかと思っていたけど。
こうして若手から紹介されたり、
インスパイアされた本を読むのも視点が変わっていいものです。
そうか、彼らと同じくらいの年頃に、
読んでいた作品を読み返すというのも一興だな。
フィッツジェラルドやサリンジャー、
サローヤンにケルアック・・・
バロウズあたりもいま読んだらまた新鮮かもしれない。
間もなく読書の秋の入り口。
茶色くなった文庫本を引っ張り出し、
青春時代への小旅行を楽しみませんか?
ね、ご同輩?
えーじ