2021年10月30日

さらに言ってしまうと

「方便で結婚するなんて信じられない!」

前回のお話でそう思った方は少なくないかもしれません。
いや、けっこういるんじゃないかな?
しかし、僕らを知る人はお察しのとおり、
このずれた結婚観は異端の一角でしかないのですよ。

どうせ暴露するならもう少し言ってしまうと、
僕らにとって結婚とは、人生における必須事項ではなく、
個々人が自由に選ぶべきライフスタイルの選択肢にしか見えないのです。

つまり結婚する自由があれば、しない自由もある。
しなければならない、しなければおかしいというものではない。

その延長でいうと、子作りもそう。

子供を作るも作らないも、当事者の自由であって、
生まねばならない、生まなければおかしいというものではない。

夫婦ふたりで生きるという選択肢だってある。

さらに勢いでいってしまうと、
僕らは相手が異性であらねばならん理由や根拠を理解できていません。
同性婚の何が悪いのか、まったく分かってない。

僕らは偶然ヘテロセクシャルですけど、
それがワールドスタンダードであり、
違う人々を再教育キャンプに送り込むべきだとは思わない。

え? 同性愛は生物学的に不自然だ?
主の保存に反している?

それを言うなら、そもそも人類は本能が破綻した動物じゃないですか?
発情期を失って四六時中発情型の動物なんていないでしょ?
(僕なんかハイティーンの頃は夢もエッチな内容でしたから、
 24−365型でしたし)

とまぁ、こんな調子ですから、
夫婦別姓うんぬんかんぬんの議論も「はぁ〜、まだやってるの?」な感じ。
家族の定義をこねくり回す前に、核家族化の結果をシビアに受け止める方が、
よほど社会不安を少なくできるんじゃないかしらん?

でも、こういいつつ誤解されたくないのですが、
僕らはアナーキストではありません。
ましてやニヒリストでもない。
(少なくとも自分たちはそう思ってます)

ただ、「まともな人間ならかくあるべし」という暗黙の社会圧を、
手放しで受け入れられないだけ。

そう、あるがままの自分でいいんですよ。
僕らも。

そして、あなたもね。

えーじ
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2021年10月27日

僕らの結婚観

先週の読売新聞の記事は、僕らにとっても興味深いものでした。

今まで取材を受けたことは何度かありますけど、
旅や料理ではなく、
結婚観について訊かれたのは初めてでしたからね。

記者さんが興味を持ったとっかかりは、
出会い(同棲)と結婚のタイミングがあまりにも離れていたからです。

それというのも、僕とともこの中には、
ハイティーンの頃から結婚について素朴な疑問がありました。

結婚というのは、恋愛と同じように、
基本的に個人の自由意思に基づく関係であるにもかかわらず、
なぜ第三者の、とりわけ行政のお墨付きが必要なのか?

たとえば具体的にいうとですね、
僕らは練馬区に住んでいた時に結婚したので、
練馬区役所に婚姻届けを出したわけですが、
受理したのは書類上、志村豊志郎さんという当時の区長です。

でね、僕らは二人とも、この人と面識はないんですよ。

え? だからどうした?

いや、一般的にはノープロブレムなんでしょうけど、
こういうのって、僕らにはけっこう違和感がありまして。

それにそもそも、Before After でいうと、
僕らの個人的な関係はまったく変わりません。

ではなぜ結婚したのか?

端的に言えば方便です。

まず日本では事実婚だと、いろいろ不都合が多い。
(世間体ってのはどうでもよろしい)
たとえば記事にもあったように、
建前上、僕がととら亭の事業主である場合、
入籍前のともこは従業員となり、
経営者として雇用保険に入れなくてはなりません。
つまり僕らは労使関係になってしまうんですよ。
(変でしょ?)

他にも税制上の不利益は数あるし、
入院した時なども家族でないと不便が絶えません。
調べていないから分かりませんが、
事実婚状態で子供ができた場合はさらに大変でしょう。

面倒なのは外国を旅しているときも同じです。
イミグレーションで This is my wife. といえばスルーですが、
ファミリーネームが違うと、
一緒に審査を受けることすらできない場合があります。
(ともこ語では細かいやり取りが難しいときがありまして・・・)

イスラム教圏など、未婚の男女の交際に厳格な国では、
婚姻関係がないと鉄道の同じコンパートメントに入れてくれなかったり、
ホテルの同室を断られることもあるんですよ。
(売春を防ぐためでもあるみたいですけどね)

だからといって、
僕らは個人を越えた家族の関係を無視しているわけではありません。

これまた自然な流れで、お互いの両親、兄弟姉妹は、
結婚する前からファミリーとして親しく接していますし、
Before After での変化もまったくないのです。

つまり、根本的に僕らのメンタリティに、
行政の介入や第3者認証は不要なんですよ。

ただこれはあくまで僕らの個人的な考えであって、
異なる人々を批判するとか、
社会通念を変えようとして話しているのではありません。

僕らはいろいろな面で一般的ではない価値観を持ち、
それに従って生きている。
そうした自覚はあります。

まぁ、こんな風にずれているところが、
記者さんの目に留まったのかもしれませんけどね。

えーじ
posted by ととら at 10:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2021年10月24日

At last!

明日から10カ月ぶりに殆どの営業規制から解放されます。

ディナーは通常通り、
 18:00 オープン
 21:30 オーダーストップ
 22:30 クローズ

もちろんお酒も終日OK!

いやはや、今回のトンネルは長かった!
11月28日のグランドフィナーレまであのままだったら、
本当にどうしようかと思ってましたよ。
やっぱり最後まで全力で走り切りたいですからね。

しかしながらソーシャルディスタンスを確保するために、
すべての席を使うことはできませんし、
5人以上でのご来店はワクチン接種が条件となります。

なので、
ランチのご来店はお早めに。(特に週末は!)
ディナーはぜひご予約をお願いします。

えーじ
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2021年10月22日

ととら亭の音楽

ランチは民族音楽、ディナーはジャズ・・・
ととら亭ではその日の雰囲気に合わせて音楽を流しています。

なかでも僕のお気に入りは、お客さまの会話。

これもまた、
その場の雰囲気を決める音楽のようなものなのですよ。
とりわけととら亭にフィットしている旋律のひとつは、
やっぱり旅の話題でしょう。

先日もトルコの周遊ツアーで出会った方々の囲むテーブルがありました。

「パムッカレの水の色は忘れられないね」
「名前は忘れちゃったけど、
 カッパドキアで食べた壺入シチューは美味しかった」

こんな会話がパントリーまで聞こえてきます。
こうした時、僕の出番はありません。

そこには職業や年齢、性別による垣根のない、
ただ、旅と思い出をシェアした方々いる。

旅の食堂での再会が、新しい旅の始まりになってくれるかな?

僕はそんな風に思いながら、旅人たちを見送ったのでした。

えーじ
posted by ととら at 13:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2021年10月19日

夢を追う人、追った人

「楽器はこのベースとキーボードの他に何かありますか?」

先日、引越しの見積りで業者さんに来てもらったときのこと。
料理関係の資料の他に、
楽器や音楽CDが散らばる僕の仕事部屋で、
荷物のチェックが始まりました。

「え〜っと、その本棚の後ろにギターが2本あります」

・・・?
ソフトケースからヘッドの一部が出ているだけなのに、
彼はなぜベースだと分かったんだろう?

「ギターは・・・エレキとアコギですか?」
「そうです。お詳しいですね?」
「ええ、以前バンドをやっていたんですよ」

なるほど、訊けばプロデビューを目指して、
横浜を中心に活動されていたそうで。

「担当は何だったのですか?」
「ヴォーカルです。
 でも、僕の力不足で契約までいけませんでした」
「実は僕も横浜でバンドをやっていたのですよ」
「え! そうなんですか?」

こんな話でつい盛り上がってしまいました。

ととら亭でも、彼のような元バンドマンや、
役者、声優、ダンサーを目指していた人は珍しくありません。
また現役で下積みをしながらプロを目指している人も沢山います。

僕は彼、彼女たちの夢を追う、あの眼差しが大好きなんですよ。

たとえそれが過去のことであり、
今は別の仕事をしていたとしても、
自分の限界まで走り切った人の持つ心の輝きは、
いつまでも失われないものです。

僕もまたその一人として、
音楽や詩や小説に没頭していた時期がありました。

え? それでようやく堅気になったのか?

いや、夢を追う人っていうのは、
対象が変わっても、別の何かを追い始めるものです。
(諦めの悪さも自信がありますし・・・)

僕の今の夢は、遠くまで行くこと。

一生をかけてもこの星は旅しきれません。
だから、残された時間でどこまで行けるか?

ラップランドの空で踊るオーロラ、
コバルトグリーンの海に崩れ落ちるアイスランドの氷河、
轟音と水しぶきで世界を覆うビクトリアの滝、
静寂に包まれたナミブ砂漠の夜、
ボルネオの森で聞く虫や獣たちの歌声、
密林に囲まれたオルメカ文明の遺跡・・・

そんなことを夢見ながら、
僕は現実の旅を考えているのです。

えーじ
posted by ととら at 08:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2021年10月16日

リミックスととら亭 アゲイン

「ここのお店はね!」

ととら亭を知り、家族や友人、恋人を連れ立ってご来店された方が、
その人なりのイメージで説明されている声をたまに聞きます。

原作者の僕たちからすると、これが実におもしろい。

旅にフォーカスしている方、
料理にフォーカスしている方、
はたまた僕らにフォーカスしている方、

そこには、同じご意見がふたつとなく、
僕ら自身が持っているイメージとも違います。

では誰が正解なのか?

え? もちろん僕ら?

いや、そうではないのですよ。

僕はそれぞれのイメージが正解なのだと思います。
そう、僕らのととら亭、そして皆さんのととら亭。
それぞれのととら亭。

この場の楽しみ方が人それぞれであるように、
イメージもまた人の数だけある。

10月18日(月)から22日(金)まで5日間、
読売新聞の夕刊コラム『しあわせ小箱』にととら亭が登場します。
元バックパッカーでもある記者さんのインタビューは、
旅や料理から僕らの結婚観まで多岐におよびました。
はてさてどんな記事になっているのか?

これもまたひとつのととら亭リミックス。

楽しみにしています。

えーじ
posted by ととら at 13:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2021年10月13日

行き先を決めるもの

移転告知から13日が経ちました。

ここまで、お客さまだけではなく、
野方のフェローや取引先の方々まで、
沢山のあたたかいお言葉を頂きました。

本当にありがとうございます。

この街で生まれ育ったととら亭を移転させることは、
言葉にできないものがありますけど、
こうした皆さまの声が、
僕らを正しい方向へ導いてくれているような気がしています。

12年前、ゼロからスタートした時は、
こうではありませんでした。

ただ自分たちを信じるしかない。

でも、今は違います。

それ故に、6年に及ぶ隠密プロジェクトは、
ときに胸の痛むこともありました。
とりわけ、

「就職してもまた来ますね」
「来年の誕生日にもまた来ます」

そんな風に言われると、
何とも言葉が詰まったものです。

柴又は同じ東京23区内とはいえ、
城西の野方の真逆、城東ですからね。
電車だと最低でも3回乗り換えて70分はかかります。

遠いですよ、実際。

それでも選択肢がなかったことは、
反対に、運命だったといえなくもありません。
12年前、野方は無名の僕らに居場所を与えてくれ、
そして12年後、旅立つ時だよ、と背中を押してくれた。

ああ、そうなんだね。

僕らはこうして納得したのです。

えーじ
posted by ととら at 14:54| Comment(5) | TrackBack(0) | 日記

2021年10月10日

旅立ちのお知らせ その5 最終回

テナント、アパートという借り物ではなく、
自分の土地に自分の店と住居を建てることは、
僕らの場合、
単なる所有欲求を満たすための手段ではありませんでした。

建物についての制約から解放され、
経済的な負担に伴う時間不足を解決するには、
これしか方法がなかったのです。

そこで6年前に立ち上げた二人だけのプロジェクト。
TReP(トレップ Totoratei Renewal Project)は、
ここまでお話したように、
当初から『ベストを目指す』というより『ワーストを避ける』、
アフリカ・南米型オペレーションとなっておりました。

まず土地の取得については、

プランA 野方 
 → 高くて買えない。

プランB 隣接商圏(都立家政・沼袋・練馬)
 → 買えないか、買えても狭小地しかない。
   そうすると最低60平方メートルを要する旅の食堂は無理で、
   『立ち飲みととら亭』か、『バーととら』になってしまう。

プランC
 → 東京23区全域に範囲を拡大。
   2年以上探しまくって、ようやく柴又に行き着く。

そして住宅は、

プランA
 古民家を購入し、なるべく自分たちで住宅兼レストランに改装する。
 → ボロボロ過ぎて改装不能。

で、プランBは選択の余地なく、
廃屋を解体し、新築するしかありませんでした。
(資金繰りの話はまたいずれ)

それでもこれで第2フェーズに入れる!

と喜んだのも束の間、
僕たちの前途にはまだまだ難関が待ち受けていたのです。
駅直近の近隣商業地域にもかかわらず安かった土地は、
更地にしなければ誰にも分からない、それなりの理由がありました。
それは・・・

1.再建築可不可条件となる道路への接続幅が不明。
2.程度が分からない隣家の越境箇所が複数ある。
3.店舗部分が隣店舗に接触しており、解体の影響が不明。

なるほど、これじゃあ誰も手を出さないわけだ。

しかし、この程度のハードルでくじけるほど、
諦めのいい僕らではありませんでした。

道路の接続幅は建物の内寸から問題なしと判断。
その他の不明点は想定される問題の影響を最小限にするべく、
売主さんと不動産会社の言質を取り、
ついに2019年11月、ゴーサインを出したのです。

そして無事、2020年3月に土地の名義が変わり、
5月末にはハウスメーカーと契約締結。
引き渡しの予定は2021年6月となりました。

さぁ、ここまでくれば安心です。
僕らはTRePのマスタースケジュールを確定し、
9月末に野方のととら亭を閉店した後、
10月中に引っ越すことにしたのです。
ああ、めでたし、めでたし・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

え? 日付が間違ってる?
本日10月10日でもととら亭は営業してるし、
最終営業日は11月28日だろう?

はい。
しかも店舗の退店期日は12月20日。
アパートの方は来年の1月10日というのも決まっています。

にもかかわらず、9月17日現在の建設現場は・・・

sitezero.jpg

じゃあ〜ん!

なんですよ。
これが何を意味するのか?

そう、TRePはアフリカ・南米型オペレーション。
何ごともすんなり進みません。

いったいいつ、僕らは柴又で再スタートできるのか?
いや、その前に、
12月上旬にととら亭から運び出した機材は、
どこへ持って行けばいいのか?
1月10日以降、僕らはどこに住めばいいのか?

ととらの旅は、まだまだこうして続いて行くのでありました。

End

えーじ
posted by ととら at 16:11| Comment(5) | TrackBack(0) | 日記

2021年10月07日

旅立ちのお知らせ その4

柴又を訪れたのは15〜6年ぶりでしょうか。

tora01_station.jpg
(ミニ開発前の柴又駅前)

2019年8月下旬。
高砂駅から新柴又駅を経由して歩いてみた印象では、
当時からあまり変わっていない気がします。
僕らはUターンするように帝釈天方向とは真逆に曲がり、

tora01_street.jpg

「ん〜・・・いい感じだね」
「こういう下町の雰囲気って好き」
「北千住に住んでいた頃を思い出すな。
 このすぐ先の右側にその物件があるらしい」

印刷した不動産情報を片手に、
古めかしい商店街を50メートルほど進むと・・・

tora01_fasade.jpg

「・・・? ここ?」
「ん〜・・・そうだと思う。
 うん、あってる。不動産情報の写真と同じだ」

立地は抜群でした。
柴又駅改札からの距離は、ほんの70メートルほど。
これなら今の野方駅からととら亭までの距離とほぼ同じです。

店舗前は幅4メートルの公道。
ときわ通りと違って自動車が通りますけど交通量はごくわずか。
正面はパチンコ店が取り壊されて、
6階建てのマンションが建設中でした。
駅前を中心にプチ開発が進んでいる様子です。

「どう思う?」
「私は気に入ったよ!
 商店街の活気は野方ほどじゃないけど、
 雰囲気がととら亭にぴったり!」
「そうだね。駅からのアクセスも申し分ない。
 でも中を見てみないと判断はできないな」

その物件の土地はT字型をしており、
縦棒の下先端が道路に面していますが、
奥の部分は隣家と駅に囲まれていて殆ど見えません。

僕らの計画は古民家を購入し、
可能な限り自分たちの手で住宅兼飲食店に改装すること。

ね?
こういうのって、ととら亭らしいと思いません?

そこで僕らは元付の不動産会社にコンタクトし、
内見を申し込んだのです。

時は2019年9月の第1週。
不動産会社の方と物件前で待ち合わせした僕らは、
名刺交換した後、おもむろにアドバイスを、
いや、警告を受けました。
それは・・・

「内部はかなり損傷が進んでいます。
 入るのは十分注意してください」

そして店舗のシャッターがきしみながら上がり、中に入ると・・・

tora01_shop.jpg

内部の様子から化粧品店は10年以上前に閉店しているようです。
ともあれ、ここで見る限り、それほどひどい損傷は受けていません。
しかし担当者さんはここでさらに重々しく付け加えました。

「ここから先は本当に危険なんです。
 いつ屋根が崩落するか分かりません。
 内部に入るのであれば自己責任でお願いします

ま、マジですか? 怖いことを言うね。
そこで壁の向こうをのぞき込んでみると・・・

tora01_floor.jpg

うげ、ヤバイじゃん・・・

「ともこ、確かにちょっと危ない感じだ。
 天井だけじゃなく床も抜けてる。
 ここからは僕ひとりの方がいいな」
「わかった。気を付けてね!」
「写真を撮ってくるから後で見せるよ」

危険地帯に入ると天井以上に床が問題でした。
そこかしこが陥没していますし、
床や畳が残っているところでも体重をかけるとグラグラです。

やれやれ、地雷原か。慎重に行こう。

僕は片足ずつゆっくり加重し、
足元の強度を確認しながら奥に進み始めました。
そして目に入ったのは・・・

tora01_roof.jpg

こ、こりゃひどい。想像以上だ。
建物の1/3の屋根が崩落してる。
これじゃオープンエアのレストランになっちまう。

tora01_bath.jpg

あいやぁ〜、おまけにこっちは露天風呂かい?

できるだけ細かく調べようとしましたが、
水たまりで繁殖した蚊がむらがり始めました。

こりゃたまらん!

僕は手早く写真を撮り、店舗部分に戻りました。

「大丈夫?」
「ともこ」
「どうだった?」

「プランBだ」

to be continued...

えーじ
posted by ととら at 17:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2021年10月05日

旅立ちのお知らせ その3

より大きな自由を得るためには、
自分たちの物件を手に入れ、時間の制約を広げるしかない。

こうしてTRePを動かし始めてみたものの、
机上の検討時点で僕らは越えねばならない壁の高さを実感していました。
なぜなら、ただの転居とは次元の異なる内容だったからです。

今までも、ただ引っ越すだけなら、ある意味、気楽なものでした。
勤務地にアクセスしやすい街を歩いて探し、
気に入れば不動産屋に入って適当な物件を提案してもらう。
後は内見後に最終判断をして申し込めば終わり。

ところがこれに店舗が加わり、
賃貸ではなく購入するとなると、話は別物になるのです。
このAND条件はかなりシビアなものでした。

1.店舗部分の面積が現在のととら亭と同等か、それ以上であること。
2.最寄駅から徒歩5分圏内。
3.用途地域が商業地域か近隣商業地域。
4.借地権ではなく所有権が得られる。
5.私道ではなく公道に面している。
6.再建築不可物件ではない。
7.ビジネスの市場が見込まれる。
8.交通量の多い道路、工場等に隣接せず住環境もいい。
9.自然災害の可能性が低い。

そして何より、

10.僕らが買える値段であること!

そこでまず検討したのは、当然のことながら野方です。
そもそも僕らは住み慣れたこの街を離れる理由がありませんし、
ビジネス上でも不確定要素が最もない地域ですから。

ところが!

高くて買えませんでした。

野方の地価は僕らの乏しい予算を大きく上回り、
現在のととら亭の面積約40平方メートルの店舗を建てる土地となると、
建蔽率にもよりますが、60平方メートルは最低でも必要になります。
その場合のお値段は・・・はぁ〜・・・

で、プランB。

隣接する都立家政、沼袋、練馬にも範囲を広げましたが、
(高円寺はそもそもコスト的に論外)
どうにも10項目のAND条件を満たす物件はありません。

で、プランC。

さらに範囲を広げ、都内をさまようこと2年3カ月。
2019年の8月にとある物件が僕の目に留まりました。
詳細を読み込むと、TRePの条件をほぼ満たしているように思えます。

・・・! これはいけるかもしれない。

僕の直感がそう囁きました。

「ともこ! ちょっと見てくれる?」
「なぁに? 良さそうな物件はあった?」
「ああ、ここはどうも今までと違うんだ」

その場所とは、葛飾区の柴又でした。

to be continued...

えーじ
posted by ととら at 10:50| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記

2021年10月03日

旅立ちのお知らせ その2

ととら亭を始めたばかりの頃は、
いや、独立する準備を始めた時から、僕らは試行錯誤の連続でした。

旅の食堂を立ち上げるための教科書やマニュアルなんてありませんし、
教えてくれる人もいませんでしたからね。
とにかくすべてが手探りだったのです。

そしてようやくととら亭の仕事と取材旅行の形ができたのは、
オープンしてから2年の歳月が流れたころでした。

しかし、形ができるということは、
形に拘束されるということでもあります。

言い換えると、できることが分かれば、
できないこともまた分かってしまう。

日常の仕事の中で、最も大きな限界を感じたのは、
まず料理についてでした。

量と質が反比例の関係にあるのは飲食店とて例外ではありません。
とりわけ一人の料理人が殆どの料理を手作りする、
ととら亭のようなレストランの場合、
数をこなす仕事は料理の質に大きな影響を及ぼします。

キッチンできりきり舞いするともこを見ていた僕は、
これをずっと最も重い経営課題だと考えていました。
プロデューサーの立場でもつらかったのは、
彼女が本当の実力を発揮できるよう、
ととら亭をチューニングしきれなかったことです。
身内びいきに聞こえるかもしれませんけど、
彼女の実力は現状をより上回るものなのですよ。

そして、もうひとつの限界が取材旅行でのこと。

取材に出る前は、かなり深く事前調査をしています。
その結果をもとに取材対象料理のリストを作り、
伝播ルートや示準料理の比較軸を決めて行くのですが、
現地で思わぬ料理に出会い、
シナリオが大きく変わってしまったケースも珍しくありませんでした。

そんなとき、「よし、それじゃ別の角度から掘り下げてみよう!」
とか、「場所を変えて調査範囲を広げてみよう」みたいに、
臨機応変な対応ができればよかったのですけど、
いずれもスケジュールがみっちりで時間の制約が多い旅では、
「む〜・・・仕方ない。今回はここで打ち切ろう」
と後ろ髪ひかれる思いで帰国するより他はなかったのです。

こうして月日は流れ、独立して6年ほどが経ったころ、
僕らがこれらの問題を解決する手段は、自分たちの物件を手に入れ、
時間の制約から解放されるしかない、という結論に至っていたのでした。

たぶん、ここまでの話を聞いて皆さんは奇妙に感じているでしょう。
自分の土地を、家を、店を持つといえば、
一般的にそれ自体が夢であり、目的そのものです。
しかし、僕らにとっては旅を続けるための手段でしかありません。

この仕事をしていて気付いたことがあります。
地球は、僕らが想像している以上に大きい。
そしてその自然と文化の多様性は、
情報の世界からでは汲み取り切れない深みと広がりがあります。

僕らはこの生のうちに、どこまで遠くまで行けるだろうか?

こうして始めた二人だけの移転プロジェクトを、
僕らはTReP(トレップ=Totoratei Renewal Project)と名付けました。

そしてそれはお約束どおり、6年を超える茨の道となったのです。

to be continued...

えーじ
posted by ととら at 16:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2021年10月01日

旅立ちのお知らせ その1

いつぞや僕らの肩書についてお話したことがありました。
経営者、店長、オーナー、代表・・・
ともこは、料理長、料理人、シェフ・・・

名刺に記載するならそんなところでしょうか。
いずれもお互いピンと来ないまま11年余が過ぎて行き、
ここであらためて振り返ると、
やっぱり旅人というのが一番しっくりくるようです。

そしてその旅人とは、
肩書というより、むしろ生き方なのかもしれない。
今ではそんな風にも思えてきました。

こんなことを言うと、
堅気の皆さまには戯言に聞こえるかもしれません。
でも、旅人は旅を続けるもの。
だから、

旅の食堂ととら亭は移転することになりました。
野方での最終営業日は11月28日(日)です。

今まで黙っていて申し訳ありませんでしたが、
実は6年くらい前から新たな、長い旅が始まっていました。

なぜ僕たちは野方を旅立つのか?
そして、ととら亭はどこへ行こうとしているのか?

そのお話をする時がきたようです。

to be continued...

えーじ
posted by ととら at 00:15| Comment(5) | TrackBack(0) | 日記