2021年12月21日

スーパーが消えて行く街 後編

「これから買い物はどうしよう?」
「まったく無責任だ!」

スーパー廃業のニュースが駆け巡った野方では、
僕の知る限り、批判的な反応がほとんどでした。
それもよく聞いていると、
批判度は僕ら業者より一般消費者の方が高い。

このギャップもまた、さもありなん。

これはスーパーに対する依存度に比例するものではなく、
商店街ビジネスの見え方の差に起因しているのですよ。

公の発表では建物の老朽化が廃業の理由でした。
しかし、それを真に受ける業者はまずいないでしょう。
業種がどうあれ、ビジネスマンなら説明不要ですが、
儲かっている商売は辞める理由がありません。
儲かっているんですから。

でしょ?

故に逆もまた然り。

なぜ辞めるのか?

儲からないからです。

以上。

こういうのは経済学や経営学を勉強するより、
独立して商売を始めた方がずっとよく分かります。

で、ここまでなら僕にとって他人事です。
しかし移転を前提としてでも、そうではないから考えちゃう。

なぜか?

まずは今さらながらに質問です。

スーパーマーケットって、何を売っている店でしょう?

まぁ、今どきいろいろやらなきゃやって行けないので、
大きいところは生活百貨店化していますけど、
基本的に肉、魚、野菜、乾物など、料理素材を売る店です。

それが乗降客数18,888人/日の駅のお膝元で、
3店もいらないその訳は?

料理をする人、つまり内食が減ったからです。

ほら、あなたの街でも総菜屋が増えてきているでしょう?
それも売っているものは唐揚を中心として大差ないにもかかわらず。

これは馴染の八百屋さんの話からも裏付けられています。
今はじゃがいもや白菜など、調理しなければ食べられない野菜は売れず、
レタス、トマト、キュウリなど、
切るだけで食べられるものが主流になっているとか。

ここで次の質問です。

ではなぜ料理をする人が減ったのでしょう?

核家族化が完了し、世帯の構成員が最小化されてきたからです。

料理というのはすべからく生産経済性と紐づいています。
簡単に言うと、手間とレシピ上の条件から、
大人数であるほどレパートリーが増え、その逆もまた真なり。

ひとり暮らしの方ならご存じのとおり、
いくら料理好きでも煮物系や揚げ物を作る気にはならないでしょう?
前者は少量作ってもおいしくないし、
かといって大量に作ったら食べるのに飽きてしまう。
後者は1人前のエビフライを作って頂ければ説明不要だと思います。
片付けてるときに2度とやるまいと心に誓いますよ。

また世帯構成員が少ないことは、忙しくなるという意味でもあります。
仕事以外に家事もしなければなりませんからね。
ですから21時過ぎに帰ってきて、
「さぁ、うまい手料理を作るか!」って気にはまずなりません。

さて、これを核家族の一般的なライフスパンで考えると、

若年の一人暮らし        → コンビニ
30代の子供なし2人暮らし    → コンビニ、中食、外食
40代の子供あり3人暮らし    → スーパー、コンビニ、中食
50代の子供が巣立った2人暮らし → スーパー、中食、外食
60代以上の1人暮らし      → 中食、コンビニ

おおむねこんな食事傾向となり、スーパーで買い物をする、
つまり生産経済性と余暇の観点で内食が妥当な範囲は、
人生の中でたった20年しかない。

遠からず日本の大都市は香港やバンコクのように、
スーパーマーケットや市場がほぼ業者専用に集約し、
一般消費者は朝食から夕食まで中食と外食が中心になるのではないか?

2店のスーパー丸正が看板を下ろしたのを見ながら、
僕はそんな風に考えていたのでした。

えーじ
posted by ととら at 10:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記