この1年を振り返って思い浮かぶのは、
忍耐と原点回帰の感覚でしょうか。
前者は言わずもがな、去年に引き続き、
今年も旅に出られませんでしたからね。
陸に上がった河童も2年続くと、
自分が河童であることを忘れてしまいそうです。
しかし、忘れてしまえば、それほどストレスにはなりません。
それより日々フラストレーションを溜めた原因は、
まともな仕事が出来なかったことかな?
時短営業に狭小店舗でのソーシャルディスタンス、
しまいにゃ、お酒を出しちゃダメだったでしょう?
ああなるともう、旅の食堂としての体をなさないんですよ。
これにはホント、参りました。
さいわい移転公表から閉店までの2カ月間は規制が緩和され、
本来のスタイルで駆け抜けられましたけどね。
あのままだったら何とも虚しいフィナーレになってしまったと思います。
そうそう、その移転を公表してから、
「ととら亭をやめちゃう」「ととら亭がなくなっちゃう」
というお言葉を沢山いただきました。
その度に「いやいやそうじゃないんですよ」と説明を始めたわけは、
ひとえに感覚のギャップに求められると思います。
確かに野方のととら亭はなくなってしまいます。
(というか実際もうありません)
僕らも閉店とかフィナーレなんて言葉を使いました。
でも、感覚的には純粋に原点回帰なんですよ。
とりわけ店舗を引き渡すために片づけていた時など、
みるみるものがなくなり、開業当初の状態に戻るととら亭を見ていたら、
2010年の始まりの日々が鮮やかに蘇ってきました。
そしてそれは客観的なイメージにとどまらず、
僕らの感覚の中心にまで及んできたのです。
既存の生活でのルーチンから未知の世界へ一歩踏み出すことは、
まさしく新しい旅のはじまりと同じ。
ですから僕らのなかには、
『終わり』という感覚がまったくありませんでした。
原点回帰。
それは河童が本来の自分に戻る場所でもあるのですね。
えーじ