2022年03月09日

痛みを知る人

先日の入院初日に薬剤師さんと会ったとき。
僕の手持ちの薬を一瞥した彼女は、

「めまいがあるのですか?」

急に声のトーンが落ちて、僕の目をのぞき込みました。

「いや、3、4年前に2回続けて困ったことがあって、
 それ以来、起こっていないのですが、
 念のためにファーストエイドとして持ち歩いているんですよ。
 いつ、どこでなるか分かりませんから」
「実は私もメニエールなんですよ」
「え? そうなんですか!」
「仕事中になっちゃったこともあって」
「それは大変でしたね。
 僕は良性頭位性めまいだったみたいで、寝ていれば大丈夫でしたが、
 メニエールだとそれでも回っちゃうでしょ?」
「ええ、もうひどかったですね・・・」
「きついよねぇ、あれは」

賢人なら痛みや身体的な不自由さを、
本を読むなり相手を見るだけで分かるのでしょうけど、
僕ら凡人は、自らの体験を持って学ぶしかありません。

でも、だからこそ病気やけがの痛みや、行動の制限、
失敗による挫折感などは、単純に悪いだけではなく、
他人へのやさしさとシンパシーを教えてくれる、
先生でもあるんですよね。

そういえば、先のめまい事件で病院にいたとき、
親身になって接してくれたのは経験者の看護師さんだったし、
あとでアドヴァイスをくれたのも同じ悩みを持つ旅人だったな。

自分の身をもって痛みを学び、他人の痛みを知る。

これって、もしかしたら、
学校のお勉強や仕事のスキルより、ずっと大切なことなのかもしれない。
たとえば、思いやりとか、やさしさ、
それから、人を好きになる気持ちみたいに。

えーじ
posted by ととら at 22:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記