2022年05月16日

旅立ちの儀式

1999年から2002年まで、僕は文京区の小石川に住み、
新橋にある会社に勤めていました。

そこを退職したある春の夜、
レンガ通りにある床屋へ寄り、さっぱりしたところで、

「気持ちのいい夜だな。
 最後の晩だ、家まで歩いて帰るのも悪くない」

そうして皇居を反時計回りに進み、
白山通りを北上して帰ったのです。

あれから20年。

昨日は10年間住んだ野方のアパートの引き渡し。
不動産屋さんと待ち合わせた正午に行くと、
何もない部屋はどこか神妙な面持ちで僕を待っていました。

ととら亭のあった物件もそうでしたが、
鍵を返す時の気持ちは、なんとも言えないものがあります。

そうだな、これもまた街と同じように、
ただ一言、

ありがとね。

そう心の中で呟いて表に出たのです。

そしてその後、
長らくお世話になった美容室でさっぱり。
これもまた僕の儀式なんですよ。

さすがに柴又までは歩いて帰りませんでしたが、
身も心もすっきりして旅立ったのは同じ。

この宿も、この街も、いいところだったな。
ほんと、来て良かったよ。

西武新宿線の車窓から眺める見慣れた風景。
前から後ろへ、現在から過去へ流れて行く世界。

人生とは、旅そのものだと肌で感じながら、
柴又の家へ帰った僕でした。

hanseikan.jpg
Thanks Room 201!

えーじ
posted by ととら at 11:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記