僕らがどのようにして野方に行き着いたのかは、
以前「野方への道」シリーズでお話しましたが、
では僕らにとって、その野方とは何だったのか?
12年の歳月を過ごしたあの街は、
生まれ故郷とは別の意味で特別な場所でした。
何より引っ越しを繰り返した僕らには、
出生地に次いで圧倒的に長く過ごしたところですからね。
しかしながら居住地であり勤務地であった。
以上!
と、ドライに片付けられるわけではありません。
そこには多くの出会いがあり、
職場というより、学校に近かった気がしています。
街との関係もこれまでにないものでした。
たとえばアパートを出てお店まで歩くたった400メートルの間に、
いったい何人の人と挨拶を交わしたことでしょう。
お客さま、商店街のフェロー、
そして野方を職場とする郵便局や宅急便の人々。
みんな顔だけではなく、名前も知っている間柄です。
今の世の中で、こういうことはあんまりないでしょう。
とりわけ東京のような都会では。
思えば野方は出会いのときからフレンドリーでした。
こういうのを相性というのでしょうか?
不動産会社から出店地として紹介を受け、
初めて訪れたのが2009年11月上旬のこと。
昭和の雰囲気を残す細い路地の商店街を歩き、
いい感じのところだな・・・と思ったのを覚えています。
それから出店を決断するまで1カ月半。
住んでみると、思った以上に住み心地の良い街だと分かりました。
さまざまな個人店が軒を並べ、区役所の出張所もあり、
普段使いのものなら何でもそろいます。
また新宿まで15分程度とアクセスもいい。
そして何より、僕らのような風来坊にも、
土地の大先輩方が親切に接してくれたこと。
こうした風土だったからこそ、ととら亭が育ち、
僕らが12年間も住んでいられたのだと思います。
そうですね、僕らにとって野方とは、
旅先で出会った古い友人、そういう関係なのかもしれません。
えーじ