2023年03月09日

ととら亭というビジネス

「当店には競合がないので大丈夫です!」

これは移転に伴う融資の件で、
銀行に行ったときの僕の言葉。

公務員や会社員の方にはピンと来ないかもしれませんが、
個人事業主というのは社会的に信用がありません。

加えて10年以上の経営実績があっても、
野方から柴又への移転となれば、
固定客数は完全にリセット状態。
融資担当者が慎重になるのも無理からぬ話なのです。

そこで先方を安心させるために、
僕は旅の食堂というビジネスの「優位性」を説明したのでした。

え? ずいぶん大きく出たもんだ?

いや、これは十八番のはったりじゃありません。
本当にライバルがいないんですよ、ととら亭には。

なぜか?

儲からないからです。

そのわりに大変だからです。

つまり労働対効果がやたらと低い。
おいしい仕事は追従者が増えますけど、
その逆を真似する経済マゾヒストがどこにいます?

だからライバルなんて、頼んでも出てこないんですよ。
(もちろんこれは銀行で言いませんでしたが)

ではなぜ儲からないかと申しますと、
ビジネスをミニマムにチューニングしているからです。

住宅地型の商店街で非日常型のレストランをやる場合、
集客数のギャップはオフィス街などに比べて、
とてつもなく大きくなります。
たとえば先の週末の場合、

土曜日 → ランチがらがら → ディナー満席
日曜日 → ランチ満席 → ディナーとほほ・・・

ここで教科書的な経営者なら満席状態に規模を拡大し、
「すみません、ただいま満席でして・・・」を避けるでしょう。
稼げるときに稼いでおくのはビジネスの鉄則ですからね。
しかし規模を拡大すれば人件費などの固定費が上がり、
新型コロナショックのような急激な変化が起きると、
持ちこたえられなくなってしまいます。

ところがととら亭の場合、
がらがら&とほほにチューニングしているので、
従業員さんのいる中規模以上の店が景気良く稼いでいる時に、
や〜、うちも儲かった! とは残念ながらなりません。
反面、売り上げが悪くてもダメージは少なく、
ま、こんな日だってあるさ、と気分を変えてお風呂に入っちゃう。

大変さについては、
経費を節約するために可能な限り外注を避けているのに加え、
そもそも旅の食堂は頻繁にメニュー替えがあるため、
少なくとも4半期ごとに新しい料理をマスターしなければなりません。
そうなると労働時間が爆発的に増えるだけではなく、
精神的なプレッシャーも上がるので、
それこそ好きでなければできなくなるのです。

これがととら亭というビジネス。

誰も真似することが出来ないものではなく、
真似する気にはなれないお仕事なのでございました。

えーじ
posted by ととら at 09:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記