コロナ禍の影響で取材旅行に出れなかったブランクは3年半。
再開するにあたり、最も不安だったことは体力の低下・・・
ではなくて、
食べられる量です。若かりし頃はひょうろひょろながら、
「歩くブラックホール」の異名すら持つ大食漢でしたが、
その僕も間もなく還暦。
当然かつてのようには食べられなくなりました。
(特に脂っこいものがねぇ・・・)
しかし料理の取材には不本意ながらフードファイトの側面があります。
限られた期間内に多くの料理を調べなければならない場合、
とにかくフォアグラのように詰め込み続けなければなりません。
久しぶりだけど大丈夫かしらん?
これが出発前に一番気になっていたことでした。
しかし、ラッキーだったのは、取材地が東南アジアだったこと。
料理の量は日本とほとんど同じですからね。
と、安心したのも束の間。
プラナカン料理がこれほど種類に富み、
店舗や地域の差が大きいとは予想していませんでした。
こうなると一皿の量は多くなくても、かなりの数を食べねばならないのです。
そんなわけで腹八分目のヘルシーな日常から、
エネルギー充填120パーセントの過酷な取材に飛び込んだ次第でございます。
今回はその努力の成果をちょろっとお見せしましょう。
オタオタこれはマラッカの夜市でお見せした料理のペナンバージョン。
マレーのオリジナル版、マラッカ版に比べてムースのように柔らかく、
辛味を押さえ、バイマックルの爽やかな香りが強調されています。
ペナンではかなり洗練された印象をうけました。
ポピアニョニャの春巻き、ポピアは地域差が少なく、
マラッカ、クアラルンプール、イポー、ペナンでも、
大体同じものでした。場所によってはこれを揚げ、
ホッケンポピアもしくはポピアゴレンとして出していたところも。
ロバック以前、シンガポール料理特集で紹介したンゴーヒャンのバリエーション。
湯葉でポークのひき肉を巻き、油で揚げています。
タレは甘いケチャップマニスよりチリソースが多かったですね。
パイティー米粉で薄い生地を作り、小さなカップ状に成型したものを揚げ、
ポピアの中身に近いものを詰めた、ちょっとお洒落な前菜。
これもチリソースを添えて頂きます。
ウダンルマックナナスマラッカのプラナカン料理店では定番の料理。
エビとパイナップルをココナッツミルクとスパイスのソースで軽く煮込んだもの。
甘味、うま味、辛味が絶妙に調和した傑作です。
この料理は店ごとの差が大きいのも特徴でした。
食べ比べてみるのも面白いと思います。
バリエーションとしてイカを使ったソトンルマックナナスもおいしいですよ。
ペルットイカンイポー以北ではウダンルマックナナスが姿を消し、代わりに現れるのがこの料理。
ペルットイカンは直訳すると「魚の肝」なんですが、その実体は、
ハーブ風味の魚介のスパイス煮込み。
これまたミントを中心とした複雑な香りと、
隠し味的に使われているパイナップルの仄かな甘味、
それに魚介の旨味とアクセントの辛味が複雑に絡まりあい、
ひとつのマスターピースとなっています。
名前となっている魚の肝の塩漬けはちょっぴりしか使わないので、
ほとんど分からないかも。
アッサムぺダスマレーシア南部生まれの料理と言われていますが、
今ではペナンでも食べられます。
酸味と辛味が絶妙にマッチしたタイのトムヤムとはまた違う、
強烈なパンチ系のスープ料理。
マラッカではクレイポットで出す専門店もあり、
中身も魚介からチキン、ビーフとさまざま。
ペナンではこれが洗練されて、よりマイルドなタイプが楽しめました。
カリーニョニャニョニャ版のカレー。タイのゲーンカリーに近い気もしますが、
ナンプラーを使っていないので、また違った印象です。
多分、皆さんの意表を突いたのは、
このカレーより画面左側の青いごはんではないでしょうか?
これはナシクラブといい、バタフライピーという花で着色したもの。
香りや味があるわけではありませんから、
目をつむって食べれば普通のご飯と変わりません。
ま、確かにビジュアルのインパクトはありますけどね。
アヤムポンテプラナカン版の鶏肉じゃが。甘い醤油風味でシイタケも入っているため、
一瞬「和食か?」と思うかもしれません。
ハーブやスパイスが苦手な方にもお勧めです。
チキンレンダンレンダンと言えばパダンなんですけど、
それをより洗練させたのが、プラナカンバージョン。
店によっては後述するチキンキャピタンと同一化しているケースもあり、
料理が地域と時期により、収斂したり分化する例のひとつかもしれません。
一般的には汁気が少なく、ココナッツフレークとフライドオニオンでコクを出し、
辛味とスパイス感を押さえた穏やかな料理です。
ニョニャラクサこの取材旅行を思いついたきっかけが、このラクサと呼ばれる麺料理でした。
最初に知ったのはシンガポールラクサでしたが、
これはどうもニョニャラクサに最も近いのではないかと思います。
他にもペナンのアッサムラクサなど様々なバリエーションがあり、
まさに日本でいうところのラーメンのような料理です。
ニョニャフライドチキンマレー料理の特徴のひとつがココナッツをさまざま形で利用すること。
それもココナッツのフレークやミルク、ジュースにとどまらず、
黒糖とはまた違ったコクのある甘味のパームシュガーは、
欠かせない食材のひとつです。
これはカラッと揚げた手羽先に、パームシュガーのソースを絡めたもの。
日本でも唐揚げはブームですが、
このフライドチキンはありそうでない料理でした。
カピタンチキンカリーカピタンとはキャプテン(船長・リーダー)が転訛した語といわれ、
なにゆえ船長カレーなのかは未だ諸説紛々のようですが、
プラナカンの間で生まれたということについては見解が一致しているそうで。
食べたか限りではニョニャカリーに近いケースや、
チキンレンダンとほぼ一緒の場合もあり、
この3つの料理は明確な境界線がないか曖昧なのかもしれません。
呼称もアヤムカピタンとなっていたこともありました。
さて、ざっと代表的なプラナカン料理をご紹介しましたが、いかがです?
どれもおいしそうでしょう?
いや、実際に美味しいんですけどね。
話を戻すと取材をきつくしているのは、
調査の軸がこれ一本ではないからなのですよ。
実際はプラナカン料理に限らず、
マレー系、インド系、中華系それぞれの料理も調べているので、
夜、ホテルに帰りつくころにはもうお腹ぱんぱん。
ん〜・・・こういう仕事は30歳代のころにやるべきだったかな?
明日もがんばらねば!
to be continued...
えーじ
プラナカン料理大好き!