2023年08月31日

夏の終わりの小旅行

火曜日から連休を頂いておりますが、
昨日までの2日間は、ともこの実家がある高崎に行っていました。
1年半ぶりの自動車小旅行です。

lakeharuna.jpg

実家の片付けが終わってから榛名湖を経由して水沢観音へ。
といってもお参りではなく、お目当ては水沢うどん!

oosawaya.jpg

訪れたのは老舗の大澤屋さん。
わが家ではときどき半生タイプを取り寄せて楽しんでいるのですけど、
やっぱり現地で食べる生うどんは、
こしといいのど越しといい格別ですね。
さすがは日本三大うどんのひとつ。

そこからすぐ近くの伊香保で温泉に浸かり、
心身ともにリフレッシュして帰京しました。

しかし、こんな旅でも次を忘れたわけではありません。
11月末に予定している取材旅行はオーストラリアの中央縦断。
その際、ともこもハンドルを握る予定なのですが、
いかんせんペーパードライバー歴20年以上。
そこでちょっと練習してみよう!ということになったのです。

とはいえいきなり公道ではちと怖いですから、
まずは平日で人気のない榛名湖畔の駐車場でリハーサル。

「じゃ、運転を変わろうか」
「えっと、シートの位置を調整して・・・うん、こんなもんかな?」
「ぐり丸(27年前のジムニー)はマニュアルだからね、
 まずギアがニュートラルに入ってるのを確認して」
「はい、オーケー」
「ではエンジンをかけてみよう」

ぶるるん!

僕と同じくロートルながら、ぐり丸は絶好調。
今回は出発前にETCを装備し、
なんちゃってカーステまで搭載しました。
(本物は車体が古すぎて取り付けられなかったため、
MP3プレーヤー付き携帯ラジオを買ったのです)

「よし、それじゃギアをローに入れて、
 駐車場をゆっくり周ってみようか」

ともこはかなり緊張している様子です。

「いいよ、走っても」
「・・・・・」
「大丈夫だよ、ゆっくり走れば」
「・・・あれ? ・・・あれ?」

ぷすん。

「エンストしちゃった!」
「落ち着いて。もう一回最初から」

ぶるるん!

「さぁ、行ってみよう」
「・・・あれ? ・・・あれ?」

ぷすん。

「どうしたんだろ? 動かない」
「アクセル踏んでる?」
「踏んでるよ」
「そう? エンジンの回転が上がってないよ」
「・・・?」

ここで彼女は怪訝な顔をしながら下を向き、

「ねぇ、この右側の細いペダルはなぁに?」
「アクセルだよ」
「じゃ、わたしが右足で踏んでるのは?」
「それをブレーキという」
「だから動かないんだ!」

というわけで、第1回教習は終了となったのでございます。

先は長し。

えーじ
posted by ととら at 11:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2023年08月27日

迷ったときには その3

う、うう・・・
息が・・・出来ない・・・
何も・・・見えない・・・どうなってるんだ!

苦痛で意識を取り戻しましたが、
頭が混乱して何が起こったのか理解できません。
何かが全身に覆いかぶさっているような・・・

うぉ〜っ!

力任せにもがくと、突然、両腕が自由になりました。

はっ、雪だ! 雪に埋まってるんだ!

頭上の雪をかき分けて頭を上げた途端、
粉雪の混じった冷たい空気が肺に流れ込み、
僕は咳き込みながらも自分の置かれた状況が、
次第に分かってきたのです。

そうだ、山頂直下から滑落したんだ。
新雪の吹き溜まりに突っ込んで止まったのか?
ふぅ・・・ラッキーだったな。
怪我は? 体はどうなってる?

落ち着いてくると左ひざの裏側に痛みを感じ始めました。

いててて・・・曲げられるか? 大丈夫。
骨は・・・良かった、折れてないみたいだ。
でもひざ裏の筋を傷めた感じがする。

次は装備です。
幸いバックパックはすぐ近くに落ちていました。
そして手首に巻いたコードを引っ張ると雪の中から、

よし、いいぞ、ピッケルもある!

しかし左足のアイゼンが無くなっていました。

まぁいい、これならここから脱出できる。
とはいえ、

ここはどこだ?

僕は自分が滑り落ちてきた急な斜面を見上げ、

ん〜・・・ざっと150メートルから200メートル、ってとこか。
これを登って戻るのは・・・片足アイゼンじゃ難しそうだ。
どうする?

あたりはだいぶ暗くなり、気温もさらに下がってきたようです。

急がなくては! ここで雪洞を掘ってビバークするか?
いや、こんな雪崩の巣みたいなところに留まるのはまずい。
かといって・・・
そうだ、稜線上から反対側の尾根に小屋が見えていたな。
あれは・・・こっちの急な斜面の上か・・・

角度はおおよそ60度から70度。
高さはだいたい50メートル。
僕は寒さに震えながら目を閉じて考え始めました。

選択肢は?
頂上側の稜線には戻れない。
かといって、ここでビバークするのも危険すぎる。
他には? 考えろ。考えるんだ・・・

このとき、僕は人生で初めて死神の息吹を首筋に感じたのです。
これは言葉にできない、背筋が凍るような感じでした。

マジでピンチだ。じっとしていたら、たぶん死ぬだろう。
しかし、残された方法は・・・この反対側の急な斜面を、
このコンディションで登るしかない・・・のか?

よし、一か八かだ。
アイスクライミングの方法でやってみよう。

僕はピッケルを手の届く、最も高い位置に打ち込みました。
次にぐいっと体を持ち上げ、
アイゼンを付けている右足で雪の壁をけり込み、
体重を移して左足を右足より高い位置にけり込む。
そして再びピッケルを打ち込み・・・

オーケー、この調子でいけば、
何とか小屋のあるテラスまで登れるだろう。
でもザイルで確保は出来ない。落ちたらそれまでだ。
気を付けなくては。
常に動かすのは一カ所だけ。3点確保を忘れずに。
行くぞ!

こうして登ること10数メートル。
コツが呑み込めたと思った矢先、

うわっ!

アイゼンを付けていない左足で、
体重をかけた雪が崩れてしまったのです。
頼みのピッケルも同時に抜け、
僕は再び斜面を転げ落ちてしまいました。

くっそ〜、振り出しに戻ったか!
せっかくあそこまで登ったのに。
やっぱりアイゼンがないと深くけり込めない。
つま先の爪もないから引っかかりが悪い。
こんな状態で登れるわけないじゃないか!

って泣き言を言ったところで聞いてくれる人すらいないんだ。
自分でどうにかするしかない。
もう一度やろう。もう一度。
今度はペースを落とし、けり込みを深くするんだ。
気持ちを集中して、落ち着いてやればできる!

僕はまた雪の壁に取り付きました。
そしてこの単調な作業を繰り返し続けたのです。

もう一回やったらテラスに出る。
もう一回やったらテラスに出る。
まだか?
もう一回やったらテラスに出る。
まだか? 気が遠くなるぜ。

日はとっくに沈み、西の空の残照が唯一の明かりです。

もう一回やったらテラスに出る。
余計なことは考えるな。
もう一回やったらテラスに・・・

何分が経ったのかわかりません。
僕はただひとつひとつの動作に集中していただけ。
ここでピッケルが崖の縁に引っかかりました。

はっ!おおっ!やった!登り切ったぞ!
最後の力を振り絞って懸垂で体を引き上げると、
目の前には頂上直下の稜線から見えた、
あの山小屋が半分雪に埋もれて佇んでいたのです。
僕はその場で仰向けにひっくり返りました。

オーケー、えーじ、よくやった!
雪のドツボから脱出したぜ!

息が整ったところで体を起こし、
僕はピッケルで山小屋の鎧戸をこじ開けました。
そして中に転がり込み、達成感を噛みしめながら、
一杯の熱い紅茶を淹れたのです。

外は再び雪が降り出していました。

to be continued...

えーじ

P.S.
下山して山小屋の持ち主を探し出し、後で謝ってきました。
そして春、山開きの前に山小屋へ戻り、壊した窓を直して来たのです。
posted by ととら at 09:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2023年08月24日

迷ったときには その2

僕の20歳代の旅はオートバイに乗って国内を周るものでしたが、
正しくはライダーではなく、登山ライダーでした。

若者にありがちな悩みとして、
当時僕は自分の限界に直面しており、
それを突破するには物理的に2次元から3次元の世界へ出たらどうだ?
と短絡的に考えていたのです。

そう、スピードはオートバイで、
新しい次元、つまり「高さ」は登山で、というわけです。

しかし若さというのは恐れを知らぬが故に、
無謀と勇気の違いを理解できないもの。
僕は夏山登山に飽き足らず、ロッククライミングから、
冬山にまで手を伸ばしてしまったのでした。

当然、痛い目に遭います。(お約束ですな)
あれは20歳代の後半のこと、僕は真冬の仙丈ヶ岳を登っておりました。
緩やかな山並みとはいえ、曲がりなりにも3000メートル峰のひとつ。
頂上に近付くころには、
膝上からときに腰まで埋まる新雪のラッセルで、
疲労は極致に達していました。
晴れてはいても稜線は風が強く、
体感温度はマイナス20度以下だったでしょう。

く〜・・・きついな。
膝が上がらない。

北側のやや低い尾根沿いに、
半分雪に埋もれた山小屋が目に入りました。

そうだ、頂上直下まで行けば、あんな避難小屋があるはずだ。
もう少し、がんばろう。

と自分を鼓舞したものの、最短ルート上は雪が深く、
フルパワーでラッセルしても、牛歩のようにしか進めません。
耳元で小雪交じりの風が唸りを上げています。

ダメだ、別のルートを探そう。
風は北から・・・ということは稜線と南の斜面の雪が深い。
ならば北側から斜面をトラバースして回り込めば、
雪の浅いルートで行けるかもしれない。
この方が早道かも。やってみよう!

思えばこれが大きな間違いでした。

斜面のトラバースはバランスを崩しやすく、
ましてやすでに僕はくたくた。
さらに北側の斜面ということは、
新雪のすぐ下が凍っている可能性もある。

斜面を少し下りながら弧を描くように少しずつ登り始めたところで、

おわっ!

力をかけていた左の山足のアイゼンが氷ではじかれ、
僕は山側に転倒してしまったのです。
そして体を斜面に打ち付けた瞬間、最悪の事態を瞬間的に悟りました。

ヤバイ! 薄い新雪の下はアイスバーンだ!
滑落停止!

反射的に体を捻って全身でピッケルを打ち込みましたが、
あっという間に滑落スピードが上がっており、
氷を切り裂きながらも減速できません。
斜度が最初よりきつくなってきました。

止まれ〜っ!

そう叫んだ矢先、両手で押し付けていたピッケルの刃が岩に当たり、
その衝撃で僕は完全にバランスを失ってしまったのです。

そこからはどんどん加速しながら、急な斜面を転げ落ちるだけ。
自分がまき上げる雪煙で息が詰まりそうです。

ダメだ! 姿勢を制御できない!

ああ、もうすぐ岩か立木に激突して終わりか・・・

そう思った途端、僕は重い衝撃を全身で感じ、
気を失ってしまったのです。

to be continued...

えーじ
posted by ととら at 01:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2023年08月21日

迷ったときには その1

ここは何処だ?

振り返ると、
僕の旅人生で最も多く直面した問題はこれかもしれません。

ライダー時代、
コンパスと昭文社のツーリングマップルを頼りに旅をしていましたが、
実によく道に迷ったものです。

いや、地図の精度に問題があったわけではありません。
僕はしばしば国道や県道を外れて走っていましたからね。
また、実際には県道レベルでも地図に載っていない枝道が幾つもあり、
判断の難しい表示のない交差点もたくさんありました。

たとえば、とある夏の日の午後、
紀伊半島の尾鷲から橿原市へ向かったときのこと。
海岸沿いを走るR42から内陸部のR425に入ると、
たちまち道幅が狭まり、
見通しの悪い急カーブが連続するようになりました。

ほどなくして・・・

よっと、おっと!
細かいワインデングがよくもまぁ続く・・・よっと!

こうして右へ左へハングオンを繰り返しながら走ること30分以上。

ひどい道だな、いったい何処まで続くんだ?
よっこらせ!
それよりこの方向であってるんだろうか?

日中、普段なら時刻と太陽の位置で方向は分かりますが、
四方を山に囲まれているため、肝心の太陽が見えません。

しかたない、バイクを止めてコンパスで確認しよう。
尾鷲から平均時速40キロ程度で30分走ったから、
現在位置は概ね下北山村あたり・・・だな。
ってことは、ここから北へ向かえばいいんだ。

しかし分岐で北側に進んでも、
すぐに道は西へ南へと蛇行を繰り返し、
結局どっちへ向かっているのか分かりません。

なんてこった! この道は本当にR425なのか?
いや、そもそも現在位置は何処だ?

思えば尾鷲から山道に入って1時間以上が経ちましたけど、
この間、一台の対向車ともすれ違っていません。
夕暮れが迫ってきています。
僕はだんだん不安になってきました。

イヤなムードになって来たぜ。
ガソリンは・・・大丈夫、あと50キロは走れるな。
それはともかく日が暮れてきた。
なんとか暗くなる前に、この気味悪い山道を抜けたいもんだ。
お、右側に川が見える!

僕は路肩の窪んだ場所に入ってバイクを止めました。

ワインディングは好きだけど、
1時間以上もハングオンを続けるとさすがに疲れるな。
ここで休憩して考えよう。

僕は川に降りて水を汲み、
キャンプ用に持っていたガソリンストーブでお湯を沸かしました。
そして紅茶を淹れ、

オーケー、落ち着いて考えよう。
まずプランA。
ここなら車道から離れたところで安全だし、
水場もあるから、キャンプして明日、移動する。

プランB。
現在位置を確認して、このまま橿原まで走る。

はてさて・・・

静まり返る深い谷を見回して僕は即決しました。

こんなオカルトちっくなところで夜を迎えたら、
幽霊やらゾンビやら、何が出てくるか分からん!
プランBで行こう!

というわけで残った紅茶を飲み干し、
ヘルメットをかぶってエンジン始動。
そこからさらに1時間近く走り、
大淀町の明かりが見えてほっとした頃には、
時計が20時を周っていました。
そしてほどなく橿原市の安いビジネスホテルに滑り込み、

はぁ〜・・・参った。くたくただ。
ん? なんかひりひりするぞ。

シャワールームで裸になると、
シフトチェンジを繰り返した左足親指の付け根と、
ハングオンでこすれた、
お尻の内側の皮がむけているじゃないですか。

やれやれ、
紀伊半島の3桁国道があんなに恐ろしい道だとは知らなかった。

僕の旅人としてのキャリアは、
こうして迷って体で覚えたものなのでございます。

to be continued...

えーじ
posted by ととら at 00:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2023年08月18日

僕が走る、そのわけは・・・

夏も折り返しなんですが、天気予報によると、
関東地方は今後も当分、厳しい暑さが続くそうな。

やれやれ・・・と思いつつ、
僕は少々うわの空でして。

と申しますのも、入道雲を見上げて思い出すのは、
夏の旅の日々。
どうしたわけか、
僕の旅は暑さと結びついていることが多いのですよ。

思えばライダー時代も長い旅はきまって夏でした。

バイクに乗っていると、
「涼しくて気持ちいいでしょう?」ってよく言われましたが、
ところがどっこい!
今日みたいな日にアスファルトの道路を走るというのはですね、
ストーブを抱いてフライパンの上を走るようなものなんですよ。
1時間もすればヘルメットの中はもう汗でぐちゃぐちゃ。

休憩して走り出すときが最悪で、
その臭う「汚物」を再び被り、
触ると熱いシートにお尻からも焼かれるのですから、
もう、なにをかいわんや。

キャンプ?

ああ、高原ならともかく、海岸沿いなんかでは、
とてもじゃありませんが、テントの中でなんか眠れません。
あれは別名「移動式サウナ」ですからね。
八重山諸島を旅していたときは、よく海岸で寝ていました。
あそこなら海風が吹いていて蚊が寄って来なかったので。

海外でも寒くて震えたことより、
暑さにあえいだことの方がずっと多かったな。

最高気温44度を経験したのはインドのブッダガヤでしたし、
それ以外にもモンスーン前の東南アジアや、
冬を除いた中東、アフリカでは、
正午を周ると、たいてい異臭漂う物体と化していたものです。

僕が酷暑の中でもジョギングを欠かせないのは、
こうした理由があるからなんですよ。
実は11月下旬に予定している次の旅でも、
35度を超える環境で10キロ以上歩くことが想定されておりまして。

ですからこの酷暑も、
タダでトレーニング環境を提供してくれていると思い、
ポジティブに付き合っている今日この頃でございます。

えーじ

P.S.
こうしたマゾ型トレーニングは急にやるとたいへん危険です。
え? そんなこと誰もやらない?

ですよね〜。
posted by ととら at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2023年08月15日

僕らが泊まる安宿とは? 後編

信じられない!

前回のブログを読んで、
そう思われた方は少なくないでしょう。
まぁ、無理もありません。
僕らだって初めの時は「なんじゃこりゃ?」でしたからね〜。

しかし、それでもなぜ安宿に泊まっているのか?
理由は言わずもがな、

安いからです。

長く旅をするとなれば、予算を切り詰めなければなりません。
そこで筆頭に上がるのが宿泊費。
ま、ここのところは説明不要でしょう。

僕らが今でも安宿に泊まる二つ目の理由は、
その土地の文化に直接触れたいからなんですよ。
料理を取材するという面でもこれはとても大切なのです。

たとえば、ホテルを価格帯によって、
日本の生活水準をもとに分類するとですね、

高級 プールやジャグジーなど自宅にはない贅沢が楽しめる。
中級 自宅とほぼ同等の質が保証されている。
安宿 いろいろな面で自宅より不便。

ということは、中級以上のホテルは、どこの国にあろうと、
基本的に先進国の生活水準が保証されていると言っていいでしょう。
つまり very comfortable!
しかし、そこはやはり非日常的な環境なんですよね。

反面、安宿は単純にサービスレベルが低いだけ、とは限りません。
とりわけ第3世界の場合、
よそ者が市井の文化を体感できる身近な場所のひとつなのです。

僕らが空港リムジンに乗らず、公共の交通機関で移動し、
高級ホテルに泊まらず、安宿に投宿し、
星付きレストランで取材せず、ローカル食堂で食事をするのは、
ひとえに「その国をありのまま体感したいから」なんですよ。
そう、良くも悪くも、
よそ行きの顔ではなく、素顔のその国との出会い。
僕ら日本人の日常だって、新幹線のグリーン席ではなく、
平日朝8時の山手線にあるでしょう?

ここで誤解なきよう付け加えますと、
僕は「自分たちの旅こそが正統派である!」
と宣言しているのではありません。
人の数だけ旅のスタイルはあり、そのいずれもが個々の正解です。

ただ、ととら亭を訪れ、料理から外国の文化に興味を持たれたとしたら、
安宿とは何かを知ったうえで、
「モロ」安宿ではなく、
「やや」安宿に泊まってみるのも一興かもしれません。

なぜか?

その答えは、ここではなく、
たぶん、安宿で一夜明かした朝にあるのではないかな?

旅とはこれ、経験そのものですからね。

End

えーじ
posted by ととら at 01:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2023年08月12日

僕らが泊まる安宿とは? 中編

バックパッカーには説明不要ですが、
前回の若いカップルのように、
海外の安宿って、あんまり知られていないかもしれませんね。

最近「思わぬ(不幸な?)遭遇」が増えてきたのは、
たぶん、ネットの予約サイトが一般化したからじゃないかな?
あれで見るとサイトによっては、
高級ホテルも安宿も十羽ひとからげに表示されますからね。

そこで前回に続き、
安宿とは一般的なホテルとどう違うのか?
そこを具体的に掘り下げてみましょう。

まず、目につくのが字義通りの価格の安さ。
場合によっては中級ホテルの10分の1以下で泊まれます。
(日本円で500円とか)
しかしその違いは・・・

1.フロントは24時間ではない
フロントスタッフは20時くらいになると帰ってしまい、
翌朝9時前後にならないと来ないことがよくあります。
(最近では終日無人のところも出てきました)
シーズンオフで宿泊客が他にいないと、
夜は自分たちだけになって肝試しムードに。
反対に朝、ロビーに降りたら、
フロント前のソファーでスタッフが寝ていた!ってのもあったな。

2.英語はあまり通じない
ウェブサイトで「英語対応」となっていても、
スマホの翻訳ソフトを使うだけってのもよくある話。
それなら僕だって100か国語ぐらい「話せる」けどね。

3.鍵は自己管理
中級以上のホテルではキーがカード型ではない場合、
フロントに預けるのが一般的ですが、
安宿はフロントが無人になってしまうので、
チェックアウトするまで自己管理。
なくさないように気を付けましょう。

4.鍵は最低2個
フロントが不在のため、部屋のほかに建物(共用部)に入るための鍵も渡されます。
また治安が悪い国では、建物の前の門も施錠されることがあるため、
キーが3つになるかもしれません。(アフリカでサハラ以南の国など)
使い方をよく聞いておいた方がいいですね。
開けるにはちょっとしたコツがあるときもありますから。

5.掃除は期待しない
日本の旅館を基準にするような期待は捨てましょう。
ベッドに髪の毛が残っていたくらいで怒っちゃダメです。
エジプトで前のお客さんが使ったタオルがそのままになっており、
気付かず顔を拭いて「げげっ!」となったこともありました。

6.耳栓と睡眠導入剤を持参で
安宿は基本的に立地条件が悪く、交通量の多い幹線道路に面していたり、
階下がバーだったりして安眠は期待できないケースがあります。
隣の部屋との壁も薄いですしね。
そこで、ぐっすり眠りたいときは耳栓か睡眠導入剤をどうぞ。
(泥酔はお勧めできません。別の意味で危険です。)

7.火災報知器、消火器、スプリンクラーはない
寝る前に必ず避難経路を確認しておきましょう。
そもそも雑居ビルの奥で窓のない部屋など、
脱出不能な部屋には泊まらないことです。
火事の時の警報や避難誘導はありませんからね。
自分の命は自分で救うしかないのです。

8.セキュリティは甘い
窓の鍵が壊れていたり、隣の建物から屋根伝いに侵入しやすいなど、
セキュリティに問題がある部屋は珍しくありません。
そうした部屋にどうしても泊まらなければならない場合は、
侵入を試みた段階で気付けるよう、
ドアや窓にちょっとしたバリケードを置きましょう。
外出するときは貴重品を置かないなどの対応も必須です。

9.トイレは現地仕様
ローカル向けの宿の場合、トイレは自ずと現地仕様となります。
欧米ならまぁ問題ありませんが、
左手文化圏ではトイレットペーパーがないこともしばしば。
また持参したものは使っても流せないので、
(下水管が細いので流すと詰まってしまいます)
自分でまとめて失礼のないように処理してもらいましょう。

10.シャワーは期待しない
寒冷地でさえお湯が出ず、修行僧用の宿か?
とたじろぐことがあります。
また、シャワーがあると謳っていても、
先客が貯水タンクの水を全部使い切ってしまい、
結果的にシャワーどころか歯を磨く水も出ない! なんてことも。
比較的安全なのは、20時前など、
早い時間にシャワーを浴びてしまうことです。
何ごとも先手必勝。これが安宿の鉄則です。

11.Wi-Fiはあるけど使えない
「Wi-Fiあり」となっていても、アクセスポイントが遠くて接続できなかったり、
回線が細くて誰かが動画を見たりするとモデム並みのスピードに落ちる、
なんてのもよくある話。
ダメだこりゃ、となったらクレームを入れたところで始まりませんから、
(たいていスタッフは直し方を知らないので)
近くのカフェなどに行きましょう。
ま、たまにはスマホなしってのもいいと思いますけどね。

12.相部屋もある
ドミトリー(以下ドミ)とは相部屋のことです。
日本でもユースホステルは男女別相部屋が基本ですが、
外国の安宿のドミは、男女混合の相部屋ですのでご注意を。
また、ドミで所有物は完全自己責任ですから、
必ずロッカー等に入れ、それにかけるダイヤル錠も持参しなければなりません。
うさん臭い宿では盗まれるだけではなく、
警察の手入れがあった場合、
ご禁制の品を「入れられる」リスクもありますので、
外に置くバックパックにも鍵は必須です。

13.停電もお約束
これは宿の問題ではなく、地域のインフラの問題。
インドやウズベキスタン、エチオピアではよく落ちたなぁ。
(今はどうだか分かりませんが)
ですからキャップライトは忘れずに!
高級ホテルが自家発電機を持っていることを売りにしている地域の場合、
停電は覚悟しておいてください。

14.冷暖房は期待できない
暖房もエアコンもないか、あってもポンコツで心地良さは期待できません。
どうしても必要なときは、事前に動作を確認しましょう。
しかし、その時はOKでも、停電したらただの箱ですけどね。
あまりの暑さでエアコン付きの部屋に泊まったのに、
「はぁ〜、涼しい〜」とくつろいだ矢先、停電して部屋はサウナルームに!
なんてことがインドでありました。
気の毒に思った女将さんが団扇で哀れな僕をあおいでくれましたけどね。

15.家電品はインテリア
たまにテレビや冷蔵庫、ドライヤー、電気スタンド、
電気ポッドなどが備え付けてありますけど、
まずまともには動きませんから、単なるオブジェと思って下さい。

16.臭い
タバコ臭かったり、かび臭かったり、小便臭かったこともありました。
で、「どうにかしてくれ!」と言ったら、
香水スプレーのようなものを撒かれて、余計に臭くなったことも。

17.かゆい!
ベッドやソファーに転がったとたん、
ん? なんかちくちくするぞ・・・痒い〜っ!
なんてのはサハラより南のアフリカや南西アジアでお約束。
ダニのほか、ノミやシラミ、
南京虫なんかが同宿してることがありますので、
いそうだ、と思ったら、
ベッドの上にポンチョなどビニール製のものを広げて寝ましょう。
パラグアイでなぜか室内に蚊が充満していたこともありましたが、
(パーティーでもやっていたのか?)
このときは殺虫剤をドバーっと撒いて食事に行き、
帰ってから100匹以上の屍を片付けたことがありました。(合掌)

18.自然が豊か
虫のほかにもいろいろ部屋に入ってくる(もともといる)ことがあります。
僕はインドでネズミとベッドをシェアしていたことがありました。
僕が部屋に戻るとベッドの下からミッキーがとことこ出て行き、
たぶん、僕が出かけるとほどなく戻っていたのでしょう。
彼(彼女?)とは毎日、顔を合わせていましたから。
タイでバンガローに泊まったら、
30センチくらいの黒い太ったトカゲが先客だったことも。
あれはちょっとグロだったので、丁重にお帰り頂きました。

19.宿泊客にも要注意
夜になると隣から「うふん」な声が・・・
と思ったら連れ込み宿だった!
てのは安宿街で定番ですが、変に煙たかったり、
目がうつろな人を共用部で見かけたらすぐ宿を変えましょう。
そこはたぶんジャンキー宿です。
いつ警察が踏み込んでくるか分かりませんよ。

20.現金しか使えない
電子マネーはおろか、クレジットカードも使えないのが普通です。
釣銭もまともにないので、細かい現地紙幣を用意しておきましょう。

ざっと思いつくまま書き出してみましたけど、
このすべてが当てはまる、というわけではありません。
(たぶん・・・)
(不幸にも全部そろったケースがあるかもしれませんが・・・)
安宿というのは、基本的にこのいくつかが該当する宿なのです。
安ければ安いほど該当数が増えると思っていただければ、
まぁ、当たらずとも遠からず。

しかし、そういうものだと思って泊まれば、
うげ〜っ!となる前に、ある程度先手を打つことはできるのですよ。
おカネではなく、知恵と適応力(それと根性!)で旅をするのがバックパッカー。
そしてそのいずれも本やネットからではなく、
自らの経験から学ぶしかありません。
それではよい滞在を!

to be continued...

えーじ
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2023年08月09日

僕らが泊まる安宿とは? 前編

ん? この女性は何をしてるんだろう?

ジョージタウンでの最終日の朝、
僕らが朝食に出ようとしたところ、
宿の入り口の前で20歳代前半のアジア系の女性が、
雨宿りをしていました。

「やぁ、おはよう」
「おはようございます」

こう挨拶をして僕らは出かけてしまったのですが、
今度はランチに行こうと出た時も、
まだ彼女がいるじゃないですか。
しかも同い年くらいのカップルまで増えている。

どうしたのかな?

「あの、ここに泊まっているのですか?」
「そうですよ」
「ホテルのスタッフはいますでしょうか?」
「まだ来てないですね」
「えっ!ここにいないんですか!」
「安宿だからね、
 昼から夕方くらいしか来てないみたいだよ」
「どうしよう・・・」

彼女たちは顔を見合わせています。

「君たち予約してあるの?」
「はい」
「宿の人に電話した?」
「それが出ないんですよ」

はてさて、どうしたものか?

安宿のよくあるパターンで、
宿泊客は2種類のキーを持っています。
ひとつは宿泊している部屋のもの。
もうひとつがホテルの入り口のもの。

3人とも朝から雨の降る外で待ちぼうけ。
大分お疲れのご様子だ。
取りあえず共用部のロビーに入れてあげたいけど、
僕にその権限はないしな。
ん〜・・・

と考えている間に、
フロント前でカフェをやってるお兄さんがやってきました。
そこで事情を説明し、ようやく若い旅人たちは荷物を預けることに。
しかし、ホテルのスタッフはいないので、
チェックインは出来ません。

ま、大きい荷物からは解放されたから、
食事にでも行けるだろう。

そして僕らがチェックアウトする14時。
(フライトの関係で2時間延長していたのです。通常は12時が一般的)
めでたく彼女たちはチェックインとなったのでありました。

「いまチェックアウトですか?」
「ああ、フライトが夕方なんでね。君たちはどこから?」
「シンガポールです」
「へぇ、僕らは何度かお邪魔してるよ。
 料理がおいしくていいところじゃないか」
「私たち、二人で外国を旅するのは、これが初めてなんです」

ん〜・・・初々しいねぇ。

なんて思っていたら、
彼女はスマホで予約サイトを確認しつつ、心配そうな顔つき。

「あ、あの、このホテルはどうでしたか?」
「良かったよ。僕らの感覚ではね」
「それってどういう意味ですか?」
「部屋によって条件が違うからさ。
 通りに面した部屋はかなりノイジーだけど、
 奥の部屋なら大丈夫」
「きれいですか? 掃除はきちんとしていました?」
「ああ、それも感覚次第だよ。
 リッツカールトンに比べたら汚いだろうけど、
 安宿にしちゃ悪くない」
「そ、そうなんですか・・・」

安心させようと思って話したのが、
どうやら裏目に出てしまったようです。

「アドバイスできるとしたら・・・そうだね、
 温かいシャワーを浴びるなら20時までだよ」
「なぜです?」
「それ以降の時間になるとみんながシャワーを使いだすので、
 お湯の出はちょろちょろになっちゃう。給湯システムがプアーなのさ」
「分かりました。ありがとうございます」

この後、彼氏とも話をしましたが、
どうやら二人とも、
まだ一般的なホテルと安宿の違いが分かっていなかったようです。
チェックインが終わった彼氏はかなり固い表情でした。

「大丈夫、心配ないよ。
 確かにゴージャスなホテルじゃないけど、
 基本的なところは案外ちゃんとしてる。
 よい滞在を!」

怪訝な様子からするとこのホテルは、
彼女たちが期待していたものではなかったようですが、
これはこれでいい経験になったんじゃないかな?
安宿って、いわゆる一般的なホテルとはちょっと違いますからね。

to be continued...

えーじ
posted by ととら at 12:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2023年08月07日

ととらな記念日がまたひとつ

柴又移転一周年記念期間が終わりました。

3月3日の独立記念日に続いて、
もうひとつの忘れがたい日となった7月20日。

それを皆さんにも一緒にお祝いして頂けて、
本当に嬉しかったです。

来年もパスティラをお楽しみ頂けるよう、
今日からまた頑張らねば。

えーじ
posted by ととら at 00:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2023年08月03日

自分の旅のために その22

長く乗ったバイクや自動車が故障しがちになるように、
齢を重ねれば人の体も壊れがちになるものです。
とりわけ僕のように乱暴な扱いを繰り返した場合は、
整形外科のロイヤルカスタマーになるのも当然のこと。

ととら亭を始めてからの10数年に限っても、
入院に至った腰部椎間板ヘルニアや半月板損傷以外に、
日常的な打撲から捻挫、関節炎やら腱鞘炎など、
何も故障のない時期はありません。

それでも先日、3年越しになった左ひざの治療が終わりました。
いやはや半月板損傷の術後治療中に、
大腿骨下部の軟骨まで壊れてしまうとは!
おかげでコロナ禍の真っ只中、
3回も同じ手術台に上がる破目となったのです。

しかし、この大故障、1年半前には完治していたのですよ。
実は2回目の手術前に、
経済的ご配慮からか治験のオファーを頂きまして。
3回目の手術は治療ではなく、
術後確認と再生した組織の採取が目的だったのです。

内容から守秘義務があり、詳しいお話ができませんでしたけど、
以来、定期的に通院し、採血からレントゲン、MRIなど、
各種のメディカルデータを提供しておりました。

通っていたのは東京女子医科大学付属病院。

昨今、医療事故や経営問題から、
何かとメディアで取り上げられておりますが、
少なくとも僕が縁を持った整形外科の伊藤先生率いるチームや、
病棟の方々は、真摯でとてもいい仕事をされていたと思います。

何より、ここまで壊した膝が完治しましたからね。
今では故障前と同じく、完全に曲げることから、
走ったりジャンプしたりも問題なし。

僕もこれを機に考えを改め、
トレーニングメニューを見直すことにしました。
リアルタイムで「巨人の星」を見ていた世代にありがちな、
スポ根スタイルを捨て、
年齢を考慮し、スピードよりフォームを重視したのです。

これも仕事だけではなく、旅を続けて行くためですからね。
バックパッカーというのは、体が資本なのでございます。

えーじ
posted by ととら at 09:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記