2024年10月07日

第24回取材旅行 その24

Buon giorno!

スイスを発った僕らはアルプスを南に下ってイタリアのミラノへ。
それからさらに南下して、いま地中海沿岸の街、
ジェノバに滞在しています。

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美術館や大聖堂と見紛う荘厳なミラノ駅

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晩夏の日差しがまぶしいジェノバのフェッラーリ広場

この数日間で感じたのは、気候の変化以上に大きい食文化の違い。
ヨーロッパ中部ではアルプス山脈を境に、
北側がライ麦とバター、根菜とビールを中心にしていましたが、
南側はそれらが小麦とオリーブオイル、葉野菜、
そしてワインに変わりましたからね。

とりわけ油がオリーブオイルに変わったせいか、料理が軽く感じられます。
見た目にも野菜の種類が増えて華やかになりました。
たとえば取材対象のミラノ風カツレツ(Cotoletta alla Milanese)。
遡ればとんかつの元祖と考えられ、オーストリア方面に伝播した、
シュニッツエルとの関連も興味深いものがありますが、
シンプルなオリジナルバージョンの他に、
ミラノではこんなお洒落なものまでありました。

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その名も「Cotoletta Primavera(春)」

イタリアは取材対象が多いのため、老朽化の進んだ胃袋には厳しいです。
ととら亭で紹介する料理探しと、
ともこが修行したレシピのチェック以外にやっているのが「示準料理の比較」。
これは広い範囲で食べられている料理を横並びで比較し、
その関連性を調べてみようというものですが、
たとえばイタリアであればピッツァがそれに当てはまります。
ミラノのそれは薄い生地が特徴で、
なるほど焼き立てのパリパリさくさく感は、
パンピザタイプにはないものでしょう。
ほんと、具が乗っていなくても、これだけでおいしく食べられるくらい。

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また、忘れちゃいけないギョーザの取材。
イタリアでは各都市でラビオリを調べています。

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ミラノ
ハタのすり身のラビオリ
添えられたエビと火のとおし方のコントラストが絶妙。

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ジェノバ 
クルミのソースを添えたリコッタチーズとほうれん草のラビオリの一種
現地ではパンソッティ(Pansotti alla noci)といいます。

いやはや、いずれもおいしいのなんのって!
あ、仕事だった。
イタリアでもレストランでは英語がある程度通じますから、
陽気なホールの人に素材について話を聞いたりしています。

そこで興味深いのは南ヨーロッパ料理のシンプルさ。
おいしい料理というと、あれこれ混ぜて、手が込んでいて・・・
というイメージが一般的かもしれませんが、
今更ながらにイタリア料理を食べていて感心したのは、
素材の活かし方と火のとおし方。

たとえばジェノバ名物、
瑞々しいバジルが香るトロフィエ・アル・ピストゥ(Trofie alla pesto)。

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アルデンテに茹で上げたパスタは熱々ですが、
生のソースはバジルの色と香りを殺さないよう素早く和えられており、
ほどよく温められた皿で、食べごろの温度を保ったままサーブされます。

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とんかつの元祖か?
コトレッタ・アラ・ミラネーゼ(Cotoletta alla Milanese)

なおざりにされがちのガロニでさえ、主役と同等の扱いを受け、
熱々のカリカリでサーブされるポテト。
同業者ながら、ここまで気を配った仕事を目の当たりにすると、
やるじゃねぇか、とリスペクトせざるをえません。

しかし、ほどなくしてその理由はキッチンだけではなく、
ホールにもあることが分かりました。
料理人のモチベーションを支えるもの、
それはお客さんたちの料理と向き合うパッション。
じっくりメニューを読み、ときにはシェフに質問をぶつけ、
全体の流れを考えてオーダーする。
そしてひとたび料理が並べば、リラックスしつつも真剣に味わっている。
スマホを片手に「ながら食べ」している人など一人もいません。
こうした関係が豊かな食文化を育んで行くのですね。

さて、時計は間もなく20時。
僕らも予約しておいたレストランに出かけましょうか。

to be continued...

えーじ
posted by ととら at 04:34| Comment(4) | TrackBack(0) | 日記