2017年05月07日

ととらな本 その7

今は午前2時47分。
僕がいるのは東京駅ステーションホテルの209号室です。
市井の喧騒を離れて執筆に専念するため、
4日前からこもっておりました。

野方の自宅やととら亭にいては、
来客があったり電話が鳴ったりと、
なかなか集中して仕事をすることが出来ません。
そこで原稿の締め切りが迫った昨年の9月下旬は、
こうしてひとり、
都心の空白のような部屋でひっそりと仕事をしていたのです。

ああ、静かだなぁ・・・
窓からホームが見えるけど、ここが東京とはとても思えない。
こんなところでPCに向かっていると、
いろいろアイデアが浮かんでくるし、筆も進むじゃないか。

なるほど、
著名な文人たちがこぞってここを訪れていたのも分かる気がします。

さて、それじゃ、
第5章『知られざる美食の国ジョージア』の結びに取り掛かるとしよう。
トビリシからアルメニアのエレバンに向かい、
アララト山が見えてきたところで終わりにするか?
うん、それがいい。

『トビリシを出発して5時間が過ぎたころ、
 もやでかずんでいた前方の空に大きな雲が・・・』

ピリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ

ん?

ピリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ

なんだ?
・・・? 夜行列車が出発するのか?
ああ、何と言っても東京駅だからな。

『もやでかずんでいた前方の空に大きな雲が見えてきました』

ピリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ

ん〜? ずいぶん長い発車ベルだな。
いつまで鳴ってるんだ?

ピリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ

・・・・・

ピリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ

おいおい、いい加減に出発しないかね?

ピリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ
ピリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ

はっ!
なんだ? ここはどこだ?
発車ベルじゃない? 目覚まし時計?

あれ? ここは僕のアパートじゃん?
ああっ! 原稿を書いていたら寝ちゃったんだ!
外が明るい・・何時だ? え? ろ、6時?
原稿は? 第5章は・・・まだ書き始めたばっかり!
うひゃ〜っ! 今日の午前中が締め切りなのに〜!!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そう、村上春樹さんみたいな大先生ではない上に、
専業作家でもない僕が静かなホテルの一室で、
じっくり原稿を書いていられるわけがないのです。

締め切りが重なっていた昨年9月下旬は、
営業中もカウンターの陰でノートPCを立ち上げ、
しゃがみ込んで原稿を書いていました。

パチパチパチパチ・・・
『カザフスタンのかつての首都アルマティから乗った・・・』

「すみませ〜ん、ビールお願いします!」
「え? は、は〜い、かしこまりました!」

えっと、どこまで書いてたっけ?
そうだ。

パチパチパチパチ・・・
『アルマティから乗ったマルシュルートカ(乗合バス)は、トラブルも・・・』

「3番テーブルのドロワット出来たよ! 持ってって!」
「え? 4番?」
「違うわよ! 3番! 間違えないで!」
「はい、はい、お待たせしました〜」

あれ? 何を書いてたっけ?
ウズベキスタンの・・・?
じゃなくてカザフからキルギスへ移動するシーンだった!
うぁ〜、間に合わなひ〜っ!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

とまぁ、涙なくして語れないのが僕の執筆活動。

実は企画の段階でこうなることは、薄々分かっていたのですけどね。
IT稼業でなら、
全体の作業量をSEやプログラマーの1日当たりの作業量で割り、
それを更にメンバーの人数で割ることによって工期の長さを計算しますが、
僕の場合、普段の営業が不安定で一日当たりの作業量が想定できませんから、
執筆にどれくらいの時間があてられるかも分からないのです。

しかし、締め切りは無情にやって来る!

そんな訳で、僕が担当する部分のデッドラインだった昨年9月末は、
先ほどのように営業時間中でもしゃがんでぱちぱちキーボードを打ち、
最後は徹夜で滑り込み・・・

何とか期日は守れましたが、危ないところでした。

ああ、いつかはステーションホテルで静かに原稿を書いてみたい。

to be continued.

えーじ
posted by ととら at 15:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/179671060

この記事へのトラックバック