2017年06月17日

第14回取材旅行 その4

昨日から気温が上がり、
カラッと晴れて東京の五月晴れのような天気です。

今日は午前中から、
クズニェーチヌイ市場とセンナヤ市場を梯子して、
食材の調査をみっちりやって来ました。
ロシア料理はとても美味しいと思いますが、
なるほど豊かな食材を見ていると納得できますね。
生きのいい魚はサーモンや鱈だけではなく、
川や湖沼に棲む淡水魚も多く見かけます。
もともとはこちらの方が主流だったそうです。

肉はポークが圧倒的に多く、次いでチキン、ずっと減ってビーフ。
ラムはなくはないのですが、僕たちは見つけられませんでした。
ウサギも食べられています。

乳製品は様々なチーズやミルクの他に、
トボロークと呼ばれるロシア版カッテージチーズや、
スメタナというサワークリームが広い売り場面積を占めていました。
どちらも日本で馴染みのある製品とは微妙に違い、
ロシア料理には欠かせない食材になっています。
これのシミュレーションはハードルが高そうですね。

市場では気のいいおかみさんたちから、
にんにくの芽やキュウリなど色々な種類のピクルスと、
味と香りの濃いハチミツを試食させて頂きました。
ん〜・・・どれも買って帰れないのが残念!
とっても美味しいんですよ、これが。

サンクトペテルブルグで食べた限りですが、
ロシア料理にスパイシーなものは殆どないと思います。
あったとしたら、ジョージア(グルジア)か、
アゼルバイジャン、ウズベキスタンあたりの料理が、
メニューに混ざっているのでしょう。

ですから香り付けの主役はハーブ。
それもディルが一般的で、
コリアンダーのようにインパクトの強いものはなし。
辛いものもありません。
それでいて輪郭がぼやけているのでもない。
いずれもじわっと美味しいですね。

センナヤ市場は規模も大きく、売っているものからして庶民の台所ですが、
10メートルほど入って驚いたのが、人種の多様性。
率直に言って、ヨーロッパというより中央アジアのような感じ。
訊いてみれば、
ドライフルーツやハチミツを売っていたのはアルメニア人、
スパイスはウズベキスタン人。
「やぁ〜、去年サマルカンドとタシュケントにお邪魔しましたよ!」
なんて盛り上がっていたら、
僕らの脇をキルギスの民族帽をかぶったおじさんが、
ひょ〜いと通り過ぎて行ったではないですか!
外に出ればスタンドでピロジョーグ(ピロシキの単数形)に交じって、
ヌンやサムサだって売ってます。
ん〜・・・ロシアの民族的多様性がここほど感じられる場所はなかったな。

そして他ならぬ白系ロシア人の印象はというと、
「元祖社会主義だからなぁ・・・」と思いきや、これが結構フレンドリー!
前情報に反して英語だって意外と通じます。
特に30歳以下の世代だと、逆に英語で喋ろうとするケースもしばしば。
確かに怒っているかのような『社会主義フェイス』の人もまだまだご健在。
しかし、ラブリーな笑顔がこれほど見れるとは、
正直、想像していませんでした。
それに一見不機嫌そうに見えても、こっちが笑顔で接していると、
相手も親切に対応してくれます。
なんか僕らのロシアに対するイメージは、
大分バイアスがかかっていたようですね。
ま、それもそのはず、とどのつまりみんな地球人ですから。

そんなこんなで治安も危険な臭いは感じていません。
スリや置き引きは多そうですけど、
それでもヨーロッパの他の地域に比べて飛び抜けているとは思えない。
アフリカや中南米と違って、フツーに気を付けていれば大丈夫。

とはいえ、いつもながらの悩ましいサプライズがありました。
それは例のレギストラーツィア(滞在登録)。

これまでもウズベキスタンやカザフスタンだけではなく、
旧ユーゴスラヴィアのマケドニアでも付いて回りましたけど、
結局のところ、この制度が運用されているのかどうか、
誰も分かっていなさそうな気がするんですよ。

日本の外務省は、パスポートを盗まれた際の面倒な処理に業を煮やし、
つい先月までは『外国人はパスポートを常時携帯しなければならない』、
というロシア側の法律に対し、
『コピーを持ち歩き、警察官とトラブルになったら大使館に連絡を!』
という裏技的指示をオフィシャルに出していましたけど、
先日のサンクトペテルブルグで起きたテロとサッカーのW杯の影響を鑑み、
『パスポート、ビザ、出国カード、滞在登録証』
の4点セットを携帯するようにと字義通りに前の指示を撤回しています。

で、僕が出発前に散り散りの情報からまとめた理解は以下の通り。

1.滞在登録手続きが出来るのはホテル側だけである。
2.ホテルは外国人が宿泊した場合に、
  それが1日だけであっても当局へ到着通知を行う義務がある。
3.旅行者がホテル以外の同じ場所に8労働日以上泊る場合、
  宿泊施設側が移民局で滞在登録をしなければならない。

ん〜・・・?
これだけ並べると分かったようでよく分からない。
例えばホテル以外に泊り、8労働日以内に移動し続けた場合、
滞在登録はまったく行わなくていいように解釈できるでしょ?
しかし領事館の指示には有無を言わさず、滞在登録証と明記されてあります。

で、僕の場合はどうなったのか?

ホテルにチェックインした時、滞在登録どころか、
パスポートの提示すら求められませんでした。
お金を払って、部屋の鍵とWI-FIのパスワードをもらったらおしまい。
この時点で筋書きがまったく変わっています。

そこで翌日、英語を話せるスタッフが来るのを待って、

「レギストラーツィアをお願いしますよ」
「レギストラーツィア?」
「ええ、昨夜はパスポートも出していません」
「レギストラーツィアねぇ・・・何日泊るんでしたっけ?」
「5日間です」
「じゃ、要りませんよ」
「8労働日以内だから?」
「そう」

ここは個人宅じゃなくてホテルでしょ?

「いや、ある情報によると、
 外国人はレギストラーツィアがないとまずいそうです」

彼は怪訝な顔をして僕を見つめています。

「誰がそんなことを言ったのですか?」
「日本の外務省ですよ。
 街中でロシアの警察官に職務質問された時、
 レギストラーツィアを持っていないとトラブルになるそうです」
「・・・? 私はここで2年以上働いていますけど、
 ロシアの警察官があなたたちのような旅行者を職務質問したなんて話は、
 一回も聞いたことがありません。
 ここのお客さんたちにしてもそうです。
 レギストラーツィアが必要だなんてことを言った人は、
 あなただけですよ」

彼の表情や話しぶりから嘘をついているようには思えません。
しかし、今の僕には誰が本当のことを言っているのか、
知る術がないのです。
そこでリスクヘッジとして、

「あなたの言っていることは本当でしょう。
 しかし、僕はロシア警察ともめたくないのです。
 レギストラーツィアを発行してくれませんか?」

「ふぅ・・・分かりました。
 でもひとり300ルーブル(約600円)かかりますよ」
「ええ、いいでしょう」
「ではパスポートとビザを見せて下さい」

彼にパスポートを渡すと、
スマホで個人情報とビザのページの写真を撮りだしました。

「どれくらいで出来ます?」
「ん〜、30〜40分下さい」

そうして待つこと30分。
フロントのお兄さんは二人分のレギストラーツィアを部屋まで届けてくれました。
これで日本の外務省が指定したブツは全部揃ったことになります。
はたして誰が本当のことを知っているのか?
きっとそんな人はいない・・・のでしょうね。

そんなこんなで明日はいよいよ移動です。
今日の夕方、バスターミナルで、
エストニアの首都タリン行きのチケットを買って来ました。
出発は13時15分。
何ごともなければ明日の18時前後にはタリンに着いているでしょう。

Say good-bye to Russia。

料理の取材は予定通り終わったけれど、
もうちょっと居たかったな。

えーじ
posted by ととら at 05:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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