2017年06月18日

第14回取材旅行 その5

昨日の19時30分、
僕たちは予定通りエストニアの首都タリンに到着しました。

サンクトペテルブルグのバスターミナルを定刻の13時15分に発車したバスは、
進路を南南西へ。
2000ルーブル(約4000円)/1人のLUX Expressはその名の通り結構リッチ。
シートはゆったりしており、車内にはトイレの他、
コーヒーや紅茶の無料ディスペンサーまでありました。
ドライバーは社会主義フェイスだけど安全運転です。

30分ほどで市街地を抜けると高速道路に入り、
景色が森林と農地に変わりました。
それから車窓を流れる景色を楽しむこと2時間15分。
ドライバーがロシア語で何かをアナウンスしてきました。
乗客がパスポートを取り出し始めたところからすると、
どうやら国境の街イヴァンゴロドに着いたようです。

ここで4名の乗客が降りて行きました。
この街に住むロシア人なのでしょうか。
彼らと入れ違いに乗って来たのは女性の国境警察官。
彼女は手早く、
乗客がパスポートを所持しているかどうかだけ確認して出て行きました。
車内の雰囲気は和やかなものです。
間もなくそろそろとバスが進み、
よくある高速道路のトールゲートのような建物の下で停車。
ゲートの上には税関申告の有無によって、緑と赤の表示があります。
歩道側に大型トラックが列をなして停まっていましたが、
他のレーンは空いていました。

僕らは手荷物を持ってバスを降り、促されるまま建物の中へ。
さて、何ごともなければと祈りつつ進むと、
税関がありましたが、オフィサーはいないし、
X線検査装置は電源すら入ってないじゃないですか。
当然みんなそこを素通りして、
二つあるイミグレーションのブースへ並びました。
ここも空いています。

パスポートの個人情報があるページに出国カードを挟んで渡すと、
女性のインスペクターは、僕の顔をじっと見つめ、写真と見比べています。
僕はメガネを外してニッと笑って見せましたがウケなかったな。
質問は一切なし。
で、ガチャンとスタンプが押されたらおしまいです。
その先の待合室には先に終わった乗客とともこが待っていました。

「あっさり出ちゃったね」
「ああ、なんか拍子抜けしたな」

乗客全員の出国が終わるまで、この部屋のドアは開きません。
待っている間に皆さんトイレタイム。
間もなくドライバーが外からドアを開けてくれました。

ロシア側の国境を出る直前で、
さっきとは別の女性の国境警察官が乗車して来て、
今度はパスポートの出国スタンプの有無だけを確認。
これでさらばロシア! です。

結局レギストラーツィアは出番なし。
税関のチェックもあの通り。
僕らのような個人旅行は不可能と言われているロシアですが、
結果的に他のヨーロッパの国々同様できてしまいました。

『地球の歩き方』などのガイドブックのみならず、
オフィシャルな情報である在日ロシア大使館と、
外務省のウェブサイトを読んだ方はご存じの通り、
ロシアビザの発給要件は観光目的といえども厳しく、
宿泊先や移動手段のバウチャー(インビテーション)がないと、
そもそも相手にしてもらえません。
ところが『ロシアビザセンター』さんのような専門業者を通すと、
パスポートと写真1枚、そしてビザ代を含む手数料を払えば、
さらっと発給されるのです。

僕も最初は「ホントかな?」と疑心暗鬼でしたが、
この業者さん、他の旅人仲間に訊いてもしっかりした実績があり、
実際、パスポートを送付した以降は、
受け取りからビザ申請、ピックアップ、発送まで、
細かくメールで連絡をくれる丁寧さ。

その後は僕らのいつもの流れと同じ、
航空券の予約を確定し、ネットで手頃な宿を予約したら出発。
当然、滞在中の行動は自由です。

実はこうしてロシアを旅した旅人は僕たちだけではありません。
ネットで検索すれば、時に武勇伝を開陳するブログなどが、
ゴロゴロヒットするでしょう。

では、皆さんもどうぞ!
と僕が言うかというと、答えはニェット。

確かに僕たちがこうして旅をしたのは事実です。
しかし、ビザの発給要件や、外国人の管理は各国政府の管轄であり、
たとえ嘘は書いていないにしても、
個人のブログなどを確度の高い情報として受け取るべきではありません。
あくまで参考程度に留めておくのが、
場数を踏んだ旅人の分別というものでしょう。
個人の経験を「オレはやった! あんたも大丈夫だ!」、
とばかりに拡大解釈するのは大変危険なのです。

ですから、僕の話を聞いて「じゃ行ってみよう!」と思うのは自由ですが、
もしかしたら今日は、
国境でムチャクチャ厳しい審査が行われているかもしれず、
インスペクターから、パスポートとビザだけではなく、
「バウチャーも見せて下さい」
と言われた旅人が往生して可能性もあるのです。

しかし、それをリアルタイムで知る術はない。
本当のこともいち民間人には分からない。

これが現実なんですよ。
入出国の条件に世界共通のレギュレーションはなく、
民間人がアクセスできないレベルで突然変わり、
僕たち旅人は言われるがまま、それに従うしかありません。
サウジを始めとする一部のアラブ諸国が突然カタールと断交し、
カタール航空の利用者が各国の空港で足止めされたのは、
耳目に新しいことでしょう?
だから出発前に僕は渡航先の政治状況までちくちく調べているのですよ。
国境でのトラブルは深刻なことになり兼ねませんからね。

さて、川を渡るとエストニアの街、ナルバ(Narva)の国境です。
いよいよEU圏に入ります。
今度は車内に預けたバックパックも持ってイミグレーションへ。
X線検査をやるのかしらん?
と思ったらいきなり入国審査です。
ここでもブースはふたつだけ。
自動車で入国する人を審査するブースは結構あるので、
バスはそれほど集中しないのでしょうか。

僕たちの前の人々はパスポートを出したのち、
指紋のスキャンもされています。

ん〜?
2月にセルビアからハンガリーに入国した時は、
こんなことしなかったぞ。
EUレギュレーションが変更されたのかしらん?

と思いきや、僕たちはなし。
すぐスタンプを押されて、ようこそエストニアへ!

さっきの能書きを補足するとですね、
入出国のテクニックが難しい理由のひとつがこれなんですよ。
ひとつの国でもレギュレーションはひとつではありません。
極端に言うと、国境が開かれている国の数だけあるのです。
なぜなら外交とは相互主義が基本。
EU対ロシアとEU対日本はおのずと違います。
ですから日本政府がEU国民に対して指紋登録を義務付けたら、
EU側も同じ対応をしてくる可能性があるのです。

もし皆さんに色々な国の友人がいたら訊いてみるといいでしょう。
同じ日本に入国するにしても、
インド人と韓国人、アメリカ人はビザの要不要から、
それぞれの条件がみな違います。
僕たちの国もまた、相手に応じて様々な『顔』を持っているのです。
時にそれが、強面のロシアも真っ青の内容であることは、
あまり知られていませんけどね。

ロシア、エストニア間の国境を越える所要時間は約1時間。
ナルバでも5〜6人の乗客が降り、反対に乗って来た人も。
バスは再び進路を西へ取りました。
車窓には森と農地、小さな街が交互に現れては過ぎて行きます。
ふと気が付くと右側に群青色のフィンランド湾の海が見えていました。
美しいですね。
エストニアの国土は高低差が少なく(最大で標高318メートル)、
その7割は森林と言われていますが、なるほど本の言う通りだと頷けます。

リッチなバスは車内で無料のWi-Fiまで使えました。
そこで宿へ大よその到着時間をウェブサイトから連絡。
タリンに着いたのは、
サンクトペテルブルグを出発して6時間15分後の19時半でした。
バスターミナルでは20日に乗るラトビアのリーガ行きバスチケットをゲット。
次は路線バスで旧市街の入り口まで移動です。
ここでは普通に英語が通じました。
シンガポリアン並みの早口には閉口しましたけどね。

ヴィル門から見た旧市街は、さながら中世の街そのもの。
ちょっとスロバキアのブラチスラヴァを思い出しました。
今日はここを歩いて回りつつ、料理の取材を始めたいと思います。

じゃ、行って来まぁ〜す!

えーじ
posted by ととら at 15:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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