2017年06月20日

第14回取材旅行 その6

エストニアの首都、タリンに到着して最初に感じた素朴な印象は、
社会主義臭さのなさ。

旧市街の外にはまだソビエト連邦時代に建てられた、
積み木のようなキューブ状の建物が大分残っていますが、
人々の表情からは、
明らかに1992年以前に青年期を過ごした世代からですら、
あの独特な雰囲気を感じません。
街には柔らかいスマイルが溢れています。

旧市街はエストニアきっての観光地でもあるだけに、
終日、観光客が溢れ、とても賑やか。
それでもアジアと欧州の違いか、
音には敏感なので、大声で騒ぐ人は観光客を除けば、
酔っぱらいとパーティ帰りの若者を除いて殆ど見かけません。
ゴミを捨てる人が少ない上に、掃除が行き届いているのできれいですし、
治安の良さは東京と変わらないくらい。
その証拠に警察官の姿を殆ど見かけないのですよ。
そしてダメ押しのメルヘンチックな街並みが加わると、
これはもう『新婚さん、いらっしゃ〜い!』な国じゃないですか。
どおりで僕らのようなバックパッカーをあまり見かけない訳です。

それでも仕事は続けています。
問題は例によって料理の量。
ロシアは思いのほか少なかったので、
僕はまだ胃薬に手を出していないのですが、
ここではいよいよハードルが上がってきました。

とにかく空腹ではない状態から再びフォアグラのガチョウよろしく、
パンパンになるまで詰め込むのはしんどい。
どうにかならんもんかしらん?
と出発前、ない知恵を絞っていた時に、タリンの宿の施設を見ていた僕は、
「これだっ!」と心の中で叫びました。

「ともこ、今度の取材の装備なんだけどさ、
 いつもの内容に加えて、ジョギングウェアとシューズ、
 それから水着も持って行こう!」
「え? なんで?」
「タリンの宿にはジムとスパがあって、宿泊者は無料なんだって!」

そう、僕は考えたのです。
お腹に詰め込んだものは消化するしかない。
しかし、そのための時間がない。
ならば消化速度を上げれば、この問題は解決するじゃないか。

そこでジムなわけです。

普段のスケジュールでは休憩時間に当てている16時から18時に、
ひと汗流せば夕飯を入れるスペースも十分できるに違いない。

うん、名案だ。

そうして僕らはウェアを着替え、
最新のトレーニングマシンが犇めくジムへと向かいました。

「ねぇ、これどうやるの?」

僕は20代の頃、しばしばジムに通っていましたが、
ともこはこれが初めてです。

「そうだな、いきなり筋トレやると体が壊れるから、
 ランニングマシーンで軽く汗を流すといい。
 やり方は教えてあげるよ」
「えーじは?」
「僕もちょっとそれに付き合うよ。で、軽く筋トレをやって来る」

彼女のマシーンをセットして、歩くスピードから始めた後、
僕はちょろっと汗を流しただけで、マシントレーニングに移りました。

それにしても・・・
このシュワルツェネッガーやスタローンみたいな連中はなんだ?
何を食べたらこんな図体になるんだろう?

周りで黙々とトレーニングに励むマッチョガイたち。
ジムには至るところに鏡があるので、
客観的に自分と彼らを見比べてみれば、
これはもうダビデとゴリアテじゃないですか!

と、言いたいところですが、
中学校1年生と大人の体格の差と言った方がいいでしょう。
メガネを外してトレーニングしていたので、
「あ、僕と同じくらいの人だ!」
と思ったら女性でした。

そこへ・・・

「え〜じ〜!」
「ありゃ、もう終わったの?」
「うん、あれつまんない。
 ハムスターみたいに同じところでクルクル走ってるだけなんだもん」
「まぁ、そういうもんなんだよ。
 じゃ、ちょっと筋トレやってみる?」
「うん」
「初めてだから軽いのをちょっとだけね」

そうしてバーチカルヘッドプレスマシンの負荷を一番軽くセットし、
無理のないよう、彼女がゆっくり始めたところへ・・・

「おいおい、そのポジションじゃあダメだよ。
 もっとしっかり背中を付けて、足を開いて」

近くで100キロ超のベンチプレスをエイエイやっていたシュワちゃんが、
ともこのところにやって来ました。

「え? なぁに? こうやるの?」

彼女は日本語で応えましたが、
何となく彼が言っていることは分かったようです。

「そう、もっと肘を上げて。もっと、もっと。
 で、ショートストロークで素早くやるんだ」

僕はペックフライマシーンから離れて彼女のところに戻りました。

「OK! やってごらん!
 Quick! Short! Quick! Short! Quick! Short! Quick! Short!」」

ん〜? こんなやり方でよかったっけ?

「Oh no no no! そんなゆっくりじゃダメだ!
 短いストロークで素早くやって、筋肉に血流を送り込むんだ!
 それがボディビルってもんだ!」

ちょ〜っと待ったぁっ!

「えーじ! このおじさん何て言ってるの?」
「あ、あの〜、ミスター、
 ご教授ありがとうございます! 大変勉強になりました。
 そろそろ僕たちはお暇しますので」
「お? あんたが亭主か? 彼女は私の言ったことが分かってるのか?」
「そ、そりゃあもちろん!
 今度は教えて頂いたやり方でしっかりトレーニングしますよ!
 さぁ、ともこ! 行こうか!」

僕たちはほうほうの体で部屋に戻り・・・

「なんかスゴイおじさんだったね」
「ふぅ・・・やれやれ・・・」
「何て言っていたの?」
「ともこを筋肉ムキムキにするって言っていたのさ」
「なにそれ〜っ!」

ともあれ、確かに腹は空きました。
この作戦は成功です。

翌日の彼女の筋肉痛を除いて・・・ね。

明日はラトビアのリガに移動します。
彼女が回復することを祈りましょう。

えーじ
posted by ととら at 06:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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