2017年08月23日

数字じゃなくて

ある日のディナーで。

「ねぇ、えーじさん、
 会社員をやってたころにどんなストレスがありました?」

カウンターからそう訊いてきたのは、40歳台前半の管理職の女性。
いつも元気溌剌とした彼女が今夜はちょっとブルーな様子です。

「スーツを着ていた頃のストレス? そうだねぇ・・・」

僕はこと自分自身に関してならかなり楽観的なので、
あんまりイライラしないたちなんですが、
やっぱり組織で働くとなると話が変わります。

「ぱっと思い浮かぶのはふたつかなぁ・・・」

ストレスのひとつ目は『評論家』。
これは会議の席上では基本的に沈黙し、
その後、誰かのやった仕事について、
あれこれ批評を展開する人たちです。

「ではどうしたらいいとお考えですか?」
と質問すると、
「それを考えるのはそちらの仕事じゃないですか」
と返すのが得意技。
たいてい職務権限表と組織図で白黒はっきり理論武装していますから、
グレーゾーンでこぼれ球を拾わにゃならん僕たちには始末におえません。
けしてユニフォームを着てグラウンドに降りることはせず、
安全な観客席からヤジだけを飛ばしてきます。
とにかく批判の矛先が向くテーゼはけして出して来ない。

僕のいた部隊はユーザーさんと直結しているケースが多く、
絶望的に限られたリソースで、
どうにか結果をひねくり出さねばならないというミッションの性格上、
しばしば超法規的動きをしていましたから、
彼らの格好のターゲットにされていました。
ま、社外でドンパチ戦って帰ったら社内で後ろからパン!
と撃たれるのはストレス以前の話でしたけどね。

もうひとつは個人的にもっとも衝撃的だったもの。

それは『変化を嫌う人々の多さ』です。

たとえば、
『業務上の事件が起こり、関係者がどひゃ〜っ!となる』
で、
→『火事場に投入されて何とかする』
→『焼け跡で原因を調べる』
→『再発防止策を立案する』

ここまではいいんです。
しかし・・・

→『再発防止策を実行』しようとすると・・・

このしらけた現場の温度差はなんだろう?

あ〜、思えば僕も青かった!

先般発生したA事案の原因はBでした。
そこで原因Bを取り除く対策のCを立案しました。
C案を実行することにより現場の業務環境は改善されます。

ハラショーでしょ?
こんな単純なロジックで、ことが前に進むと楽観していたのです。

ところが、
現状業務に何らかの変化が起こると分かった時に示されたネガティブな反応は、
僕の想像を超えたものでした。
そしてようやく学習したのです。
多くの人々にとって現状が良くなるか悪くなるかという『結果』は、
あまり大きな問題ではない。
避けたいのは変化そのものなのだ! という事実を。

「とにかくさ、100点満点は狙わず、
 オフィシャルには言えなないけど、
 妥当な落としどころを目指して落着させる、
 って個人的政治的戦略が必要だったんだろうね」
「はぁ〜・・・ですよね〜・・・」

大変だなぁ・・・

彼女と話していて、
業種が違っても中間管理職の悩みはあんまり変わらないんだな、
と思いました。

で、今はどうだって?

幸いそうしたストレッサ―がととら亭にはありませんから、
月400労働時間超/1人のブラック環境にもかかわらず、
僕は7年半もやりがいを持って働いています。

思えば昨今世間を騒がせている労働環境にかかわる諸々の問題は、
とどのつまり労働時間や賃金という雇用条件が示す数字より、
むしろ個々人のメンタリティーに起因しているのではないか?

そしてその集合体が、
社風、校風などと呼ばれる、もわんとした独特な心理空間を作り、
それに染まれるか否かで個人のモチベーションが決まる。

じゃないのかな?

うん。
数字ではないんですよ。

えーじ
posted by ととら at 15:02| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
こんにちは。

"評論家が多い"
"変化を好まない"
…ってお話。

弊社のことをおっしゃってるのでは?
もしかして、どこかで見てました?
とビックリです。
こういう会社は、弊社だけだと思ってましたよ。他にもあるのですねぇ。

私は、システムエンジニアの仕事をしています。
私もその昔、直属の上司に真横から?!撃たれたことが何度もあります。

例えば、困っているユーザさんがいて、何らかの処置が必要とします。会議にて"代案"を示すと、"変化を嫌う"ので、その案は皆さんからボコボコに叩かれます。否定の意見は、積極的に出るのです。が、驚くのは、立案を認めた直属の上司までも気づけば敵になっていて、会議の結論は「とりあえず、このまま様子見としましょう」となる…って、オイ!

システムトラブルで、真夜中にベンダーさんと緊急会議をしていて、眠い眼で登場したまでは良いとして、
「前例がないからなー」
「判断しろって言われてもさぁ…」
新サービスなんだから、当たり前だし。この影響で、倒産する会社が出るかも…って事態なのに。
知恵も出せず、足を引っ張るだけなら、さっさと帰れ!
ですよ(爆)

長く続いた社風を変えるのは難しいのに、正義感剥き出し?!で、真正面からぶつかっていったり、鉄砲玉っぽいところもありましたね。いやー、若かった(笑)

中間管理職(課長)になって10年。
こんな私も、長い年月を経て、それなりに落としどころを見付けられるようになりましたが、私の闘いは相変わらず続いています(笑)
Posted by at 2017年08月30日 12:24
戦う課長さま

今の仕事をしていて勉強になることのひとつは、
さまざまな業種の方と話が出来ることです。
業界の違いから「へぇ〜、そうなんですか!」と驚くのは日常茶飯事。
しかし、違いの下から見えてくるのは、
「みんな変わらないんだなぁ・・・」という共通性でした。

奇妙に聞こえるかもしれませんが、
僕の思考語彙には『定年』とか『出世』という言葉がないので、
IT稼業時代は現場の問題を『見たなり』のレベルで捉え、
それを解決することが自分の仕事である、と考えてたのです。
(お笑いください)

そうした『青さ』がどんなことを引き起こしたかは、お察しの通りです。
ただ僕は、いま振り返っても、基本的には自分は正しかったと思っています。

反省すべきは問題を解釈するコンテクストの狭さと現実認識の甘さ、
そしてそれにもとづく戦略の欠如でしょう。
まぁ凡人ですから、100点満点とはいきませんでしたが、
あの時点での僕としては、自己記録なら更新したかな?
くらいに評価していますけど。

組織で仕事をすることを難しくしている大きな要因のひとつは、
関係者の『顔の向け先』が揃いにくいという問題です。
現場と取締役室では同じ会社でも『見えている光景』がまったく違います。
物事の良し悪しを決めるのはコンテクストですから、
自ずと先の違いは良し悪しの違いに結び付いてきます。

ある人はユーザーさんやお客さまを見て、
その隣に座っている人は、親会社から来た役員や株主を見て仕事をしている。
こうした場合、『利益を追求する』という総論は一致しても、
日々手を動かす各論レベルで頷き合うことは、なかなか難しいでしょう。
これは組織が大きく複雑になればなるほど困難の度合いも膨らみます。

こうした状況の中で僕が自分のモチベーションを維持できたのは、
本当の評価基準を査定の対象となる『考課シート』ではなく、
自分の理念に置いていたからです。

そして何より、僕を支えてくれたのは、
突撃した僕の後ろを守ってくれた同僚たちと、
「ありがとう、助かりました」と言ってくれたお客さまたちでした。
そうした人々に出会えただけでも、僕は幸せだと思っています。

ガンバって下さいね、課長!
Posted by えーじ at 2017年08月30日 15:02
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