2017年09月13日

ゲージュツの秋

昨日の定休日はまたまたお出かけ。
今回は bunkamura musium で開催中の、
『ベルギー 奇想の系譜』に行って来ました。
僕は自他ともに認めるアートマニアですが、
とりわけ絵画には目がありません。
しかしながら好みは美術の教科書で習った、
文科省お墨付きの巨匠の作品ではなく、
明らかに傍流というか、
逆に学校では『道徳的に』避けられている類のもの。

そりゃまぁ当然の話で、
何と言っても、そうした画家や潮流のことを知ったのも、
若かりし頃に読んだ渋澤龍彦氏や種村季弘氏の著書からですしね。

とういうわけでシュールレアリスム一派のアーティストを起点に、
ダダに戻り、ウィーンの分離派やベルギー象徴派に飛び、
はてやフランドルのみょうちくりんな幻想画に遡る、
偏愛的な趣味が出来上がったわけです。

ならば当然今回の目玉は、かのアンドレ・ブルトン法皇にして、
「完璧な幻視者」と言わしめた、
幻想画の大家、ヒエロニムス・ボスでしょう。

作品のコンセプトそのものは信仰にもとづいた真面目なものですが、
その絵を構成するディティールが変なのですよ。
特に得体のしれないクリーチャーや怪物たちが取る仕草は、
描かれた時代背景を鑑みると尋常ではありません。
19世紀の詩人、ロートレアモン伯爵が謳った、
『解剖台の上のミシンと傘の偶発的な出会い』が凡庸に思えるほど、
器物と生物が融合したり、
解剖学的なコンテクストが組み替えられた怪物たちは、
昨今のSF映画に登場してもおかしくない新奇さを持っているのです。
その影響範囲はことのほか広く、
メキシコで活躍した女流シュールレアリストのレメディオス・バロや、
夭折の人形作家、天野可淡の作品からも、ボスの影響は垣間見られます。

展示を見いて驚いたのは、こうした当時の思わぬヒット作を、
オヤジの方のピーテル・ブリューゲルが版画でパクっていること。
これまたパトロンのリクエストだったのかもしれませんが、
彼もボスのクリーチャーたちをほぼ完全コピーして、
7つの大罪の連作を描いている。

こういうのを見ていると、
今でこそ彼らの作品はゲージュツ品として美術館に隔離されていますが、
元来は食うため売るための商品なんですよね。
だからヒット作が出ると、
類似したものが雨後の筍のようにニョキニョキ現れて来る。
ビジネスは今も昔も変わらないってことです。

134点の展示はまずまずのボリューム感でした。
構成もよく練られており、
ベルギー象徴派からは、お約束のフェリシアン・ロップスや、
フェルナン・クノップフのダークなエログロ系だけではなく、
とことん暗いレオン・スピリアールトもあったし、
シュールレアリスムからは、
ポール・デルヴォーとルネ・マグリッドが彩を添えていました。

マグリットの『大家族』は、
宇都宮美術館が所蔵しているので度々見る機会がありますけど、
ポーラ美術館から貸し出された『前兆』はこれが初めてでした。
へぇ〜、こんな作品があったんですね。
この絵は『アルンハイムの領地』を洞窟の中から見た構図になっているのです。
マグリッドはリンゴや雲、葉っぱなど気に入ったモチーフを、
組み合わせを変えて何度も使いまわしながら仕事をする人でしたが、
『アルンハイムの領地』の山並みまで転用していたとは知らなかったな。
実はこの絵のレプリカが実家の僕の部屋に掛けてあるんですよ。

美術館を出て次に入ったのは向かいにある美術書の専門店、
ナディッフ モダンさん。
リブロポートが閉鎖されてリブロが『健全な』書店になってしまった今では、
こういうマニアックな店は本当に貴重です。
痒い所に手が届くと申しますか、
今度読もうかな、と思っていたジョージアの国民的飲んだくれ画家、
ニコ・ピロスマニの本が幾つか並んでいました。
実はギオルギ・シェンゲラヤ監督が撮った、
ピロスマニの自伝映画のDVDを少し前に手に入れたんですよ。
今度ゆっくり観ようと思っています。

さて、せっかく渋谷まで来たんだからと思い、
小雨が降る中、レコファンさんとディスクユニオンさんで仕入れもしよう!
と勇んでみたものの神保町や新宿、吉祥寺とは異なり、
売り物は若年層のお客さんをターゲットにしているようなものが多く、
残念ながらオジサン好みの収穫はありませんでした。

店を出てJR渋谷駅に向かって歩いていると、なるほどさもありなん。
僕の年齢だとこの街では少々浮きますね。
やっぱり下町の方が落ち着くな。
と妙に納得しつつ家路についた僕でした。

えーじ
posted by ととら at 09:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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