2018年08月04日

入院日記パート2 その1

ご心配おかけしております。

1日の深夜からいろいろありましたが、
今日の13時ころ、僕はなんとか自宅に帰って参りました。

それから僕の不在中にご来店頂きました皆さま、
ご不便をおかけして申し訳ございません。
ととら亭はそもそも2人で運営する設計になっておりますので、
ともこ一人では提供スピードが落ちるだけではなく、
ご入店いただける人数にも席数以上の制限が発生してしまうのです。

僕は明日のディナーから復帰する予定ですが、
来週の水曜日まで、
ご入店は事前にご予約のお客さまに限らせて頂きますことを、
ご了承くださいませ。

それでは時計を8月1日23時50分ごろに巻き戻して、
空白の2日間のお話を始めましょう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「お疲れさまで〜す!」

僕が外で什器を片付けていた時、
そう声をかけて来たのはカフェリーゾの江夏シェフ。

「ああ、お疲れさん! 今日も暑かったね」
「うちは茹で麺器がありますからすごい熱気なんですよ」
「まだ先は長いからさ、
 こんな時期は食事と睡眠をしっかりとって乗り切ろうぜ」
「そうですね、毎日サウナに入っているつもりで頑張りますよ」

遠ざかる彼の背中を見送りながら、
僕は屈みこんで次の踏み板を持ち上げようとしました。
その瞬間・・・・

びぎっ!

うっ・・・ヤ・・・ヤバイ・・・
そっと降ろし・・・て・・・

僕は薄氷を踏むような足取りで店内に戻りました。

「と・・・ともこ・・・外の片付け替わってくれる?」
「どうしたの!?」
「ちとヤバイ・・・」
「え? 腰? すぐ座って!」
「大丈夫・・・もろにやってはいないよ。
 でも安全装置が完全に外れてる。すぐ薬を飲まなくちゃ」

椅子に深く腰掛けると痛みは感じません。

「ふぅ・・・どうやら爆発はしなかったみたいだな」
「ほんと? ご飯食べられる?」
「ああ、問題ないよ」

こうして夜の賄いを食べている時はなんともありませんでした。
しかし最後の片付けをするためにパントリーへ戻りかけると・・・

びぎっ!
はうぅっ!

こ、こいつはヤバいぜ!

僕はシンクとカウンターに腕をかけて体を持ち上げ、
腰にかかる負荷を減らしました。
しかし痛みは和らぐどころか強さを増してきます。

ちっ・・・か・完全に爆発したな!
どうする?

きゃあ! 大丈夫?」

両腕を突っ張ったまま、
ずるずると膝を折りつつある僕にともこが気付きました。

「ちょっと・・・待って・・・」

うぅ・・少し痛みが引いて来たぞ。
でもこの狭い場所で倒れたら、ストレッチャーに乗ることも出来ない。
そうなったら6年前の悪夢の再来だ。
なんとかしなくちゃ・・・

「ともこ・・・椅子を持って来て・・・僕の後ろに置いてくれる?」
「座れる?」
「わ・・・分からない。でもさっきはその姿勢だと楽だった」

よし・・・呼吸を合わせて・・・

「椅子の位置をもうちょい下げて・・・そうそう・・・
 3、2、1、行くよ!」

僕は腰に加重しないようシンクの縁とカウンターにかけた腕で体を引き上げ、

「いまだ! 椅子を下に入れて!」

びぎっ!

くあぁぁ・・・キクぜこの痛みは!

椎間板ヘルニアの激痛。
経験者以外の方にこれを伝えるのは難しいと思いますが、
ターミネーターに背骨を鷲掴みにされ、
100ボルトの電流を流されたと言えば近いでしょうか?
痛みが来ている最中は身動きどころか息も出来ません。

「ふぅ・・・取りあえず座れたな・・・
 さっきより楽だよ。
 次はこの狭い場所からカウンターまで移動しよう」
「できるの?」
「ああ、やってみる。その前に一番手前のベンチシートを開けて、
 奥からトレッキングポールを持って来てくれるかい?」

そう、こんな時のために、
杖にする折りたたみ式のトレッキングポールを
店と自宅の両方に備えておいたのです。
(使いたくなかったけど・・・)
ともこがポールを連結して長さを調整してくれました。

「これくらいでいい?」
「いいね、ありがと。それじゃ腰を浮かしてバックで下がるから、
 椅子もそれに合わせて引いてくれる? 痛みが来たらすぐ座るからね」
「うん!」
「それじゃいくよ。3,2,1!」

僕が体重をポールに移して腰を上げ、彼女が椅子を引いたら一歩ずつ下がる。
この調子でゆっくりカウンターまで戻れました。

「む〜・・・ヤバイな。6年前に初めてやった時は身動きできなかったけど、
 今回はそれに次ぐ強い痛みだ」
「どうする?」
「ロキソニンをダブルで飲んで様子を見よう。
 もう遅いからともこはアパートに帰って休むんだ」
「え? イヤだよ! あたしも一緒にいる」
「この暑さで疲れている上に寝不足はまずい。
 二人とも倒れちゃったら万事休すじゃないか」
「でもひとりで大丈夫?」
「ああ、さっきの調子でベンチシートまで移動して横になるよ。
 それで動けそうになったら僕もアパートに帰る」

ベンチシートに座った僕はともこを見送り、
そろそろと体を倒しました。

ふぅ〜・・・なんてこった。
今回は爆発の予兆が分からなかった。
数日前から少し背骨の関節が緩んでいるような感じがあったけど、
あれがそうだったとは・・・
まぁ、薬も飲んだことだし、あとは寝て様子を見るしかない・・・か。
と・・・その前にトイレに行っておこう。

僕はゆっくり体を起こそうとしました。
ところが・・・

びぎっ!
はうっ・・・!

な、なんだこりゃ・・・
じゃ体を横にして片肘をついて起き・・・

びぎっ!
はうっ・・・!

だ、ダメだ・・・起きれないじゃん!
ピ〜ンチ!
仕方ない・・・

僕はテーブルの上に置いたスマホを手探りで探し始めました。

どこだ? この辺に置いたはずだぞ・・・
あ、あった! え?・・手が届かない?
よ・・・よっと! こっちこい! よし! 掴んだぞ!

「もしもし、ともこ?」
「どうしたの? 大丈夫?」
「いや、さっきより悪化して来た。
 ベンチシートに寝たら起きれなくなっちゃったんだ」
「え〜っ!」
「で、悪いけど戻って来てくれるかい?」
「うん!」
「ついでに僕の健康保険証も持って来て。
 もしかしたらこのまま病院行きになるかもしれない」

どうする?
どうしたらいい?

考えがまとまる前にともこが戻って来ました。

「ひどい様子ね」
「ああ、こうなったら救急車を呼ぶしかない・・・か」
「電話しようか?」
「ちょっと待って。いま考えてる・・・」

疲れと暑さ、そして痛みで思考が空転しています。

「ねぇ、こんな夜中に運ばれてもお医者さんはいないから、
 前回みたいに処置してもらえるのは結局あしたの朝だよ」
「その通り。だったらここで様子を見て朝判断した方がいいか・・・」
「そう思うわ」
「じゃ少し眠ろう」

こうして気が付けば朝7時半。

「どう?」
「起きれるかやってみる・・・」

びぎっ!
はうっ・・・!

「だ・・・ダメだ。降参」
「救急車呼ぼうよ!」
「それしかないな。でもその前に搬出ルートを作らなくちゃ。
 電話したら10分以内に救急隊がやって来るからね。
 まず外の什器を全部出して、次にテーブルと椅子を逆端に寄せる。
 そうすればベンチシートにストレッチャーを横付けできるよ。
 前回みたいに悲鳴を上げ乍ら担ぎ出されるのはゴメンだからな」

ともこは手際よく作業を始めました。

「できたよ!」
「次は僕のバックパックにスマホと充電器、
 それとさっき持って来てもらった保険証とサンダルを入れておいて。
 入院になったら後で他のものを持って来てもらうから」

よ〜し・・・第2フェーズに入りますか。

「準備OK、それじゃ119番して!」
「うん!
 もしもし? 救急です! こちらは中野区野方5丁目・・・」

to be continued

えーじ
posted by ととら at 17:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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