2018年09月01日

甘いぜ日本! 後編

酸っぱくてショッパイが当たり前の梅干しが、
いつしか甘味料漬けになった日本。

驚きました。

でもそれには「やっぱり・・・」
というため息交じりの納得感も混ざっていたのですよ。
それというのも・・・

第16回取材旅行で訪れたノルウェー。
オスロで僕たちは中国人のアレックスと、
ベトナム系ノルウェー人のダニエルに会いました。

日本の大学に留学経験のある二人に僕が訊いた質問の一つが、

『日本に来て食文化で一番驚いたことはなに?』

すると彼らの反応は迅速でした。
異口同音に飛び出してきたのは、

「食べ物が甘い!」

だったのです。

アレックスからはお国柄、ギョーザ探求の参考になる、
素材や調理方法の違いなどを期待していた僕は、
思わずそのまま固まってしまいました。

日本の食べ物が甘い・・・って?

二人と別れてホテルまでの帰り道、
僕たちは彼らの答えを反芻しながら話していました。

なるほどな、
日本で生まれてずっと日本人をやってると、
これには気付かなかったよ。
確かに日本の料理は甘い。
正確に言えば、日本食とカテゴライズされている料理には、
かなりの割合で砂糖が使われている。

そうかな?

といま訝っているあなたに具体的な例を挙げてみましょう。

外国人が来日して必ずと言っていい確率で口にする日本食。
それは、寿司、すき焼き、天ぷらだと思いますが、
これらにはすべからく何らかの形で砂糖が使われていますよね?

加えてバックパッカーなら日本のファーストフード、
ドンブリ系を食べると思いますが、
牛丼、天丼、かつ丼、親子丼、
これらもすべて砂糖で味を付けています。

大体にして砂糖を使わない煮物は、
こと関東に限って言えば珍しいのではないでしょうか?

飲みに行くなら焼き鳥屋。
外国人にとって主流は塩よりタレでしょう?
日本の代表的な世界料理であるテリヤキも、
砂糖なくしては作れません。

僕が「やっぱり・・・」と思った背景には、
アラブ圏での経験もありました。
アラブのスィーツの強力な甘さには僕も辟易していましたが、
実はアラブ料理はスイーツを除くと基本的に砂糖を使わないのです。

以前読んだ本に、
アラブ系の留学生が日本で食事の料理が甘いのに困った、
と書いてあったのも記憶にあります。

さらにこの『甘さ好み』の傾向は和食を超えて、
洋食の範囲にも当てはまるのです。

そう、『伝統的な』洋食となった、
ナポリタン、オムライス、ハンバーグ、とんかつはいわずもがな、
カレーライスですら、すべからく『甘味』が橋渡しとなって、
日本に帰化したのではないでしょうか?

そしてその橋渡し役とは具体的に、
甘い調味料であるトマトケチャップと、とんかつソースなのではないか?

さらに洋食の王道ともいえる陰の主役のデミグラスソース。
これがまたけっこう砂糖を入れるレシピなのです。

この傾向はさらに拡大され、コロッケ、ポテトサラダ、はてやギョーザにまで、
本来のレシピには含まれていない砂糖が加えられているケースが散見されます。

ここでオスロの一件に戻りましょう。

アレックスの出身国である中国、
ダニエルの生れはノルウェーですが、
両親の出身地であるベトナムの食文化の影響も受けているでしょう。
ならば国民一人当たりの砂糖の消費量を国別で比較してみると、
(以下すべて1人/1年)

ノルウェー 34.9キログラム
ベトナム  18.4キログラム
日本    16.6キログラム
中国    11.4キログラム

この数字は単純に消費された量なので、
『どのように』なのかは分かりません。
(出典もいくつかの情報を合成したので確度は少々微妙です)

しかしノルウェーとベトナムの数字をもとに、
ダニエルの日本食から受けた印象を鑑みると、
各国で砂糖の摂り方には大きな違いがあるのではないか?
という仮説が導き出せます。

これはアラブ圏にも該当し、
砂糖の消費量は日本の3倍前後もありながら、
「日本の食事は甘くて!」と嘆くからには、
厳密な砂糖使用のルールが垣間見えてくるとは思いませんか?

僕は以前に著書でパン食文化圏と米食文化圏は、
炭水化物の摂取方法において、
それぞれ油の文化と塩の文化が対応していると書きました。
これは旅をしなければ分からないレベルの話ではなく、
パンに塩を付けて食べないし(含まれてはいますよ)、
ご飯に油をかけたら気持ち悪くて食べられないでしょう?
(バターをご飯に乗せて食べるという猛者もいますが、
 無塩バターではありませんよね?)

それと同様に、僕たち人間の食文化では、
社会のコードとも言うべき次元で、
『甘味に対する暗黙の了解』があるのではないか?

なるほど日本食は一般的にいって甘い。
だから食後に甘みのダメ押しとなるデザートが発達しなかった。
それは翻ると食事に砂糖をあまり使わない西洋が、
ヘビースイートのデザートで一挙に砂糖の消費量を押し上げているという、
印象と消費量の矛盾を説明しています。

甘いぜ日本!

これは僕たちとって透明化した日本食の、
世界における特異性の証言なのかもしれません。

でも僕は、
酸っぱくて、ほどよくショッパイ梅干しが好きですけどね。

えーじ
posted by ととら at 15:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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