2018年09月14日

第16回取材旅行 その17

仕事より私生活に軸足を置いた生き方。
収入格差の少ない社会。
大量消費に依存せず結果を出す経済。

そして少子高齢化は不可逆的な歴史の流れとして、
国民の不安を全世代の範囲で包括的にフォローした北欧諸国。

これだけでも他国が追い付くには、
10年かそこいらじゃ難しいハードルだと思いますが、
こと僕らの日本と比較した場合、
最も大きな違いがあると僕が感じたのは、
多様性についてのスタンスでした。

北欧の人種と言えば、
長身痩躯の金髪碧眼というのがステレオタイプのイメージですが、
そうした人ばかりと思いきや、
実際に首都に着いて驚いたのが移民の多さ。
彼、彼女たちは昨今ニュースで報じられる中東系、アフリカ系だけではなく、
古くはベトナム難民やロマの姿まで珍しくありませんでした。
また北部では先住民族のサーミ人が、
ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、ロシアにまたがって住んでいます。

こうした場合、マイノリティは文化的にマジョリティに吸収され、
民族としてのアイデンティティを強制的に薄められてゆくケースがありますが、
(内戦の主たる原因のひとつですね)
憲法で少数民族が独自の文化を保持する権利が保証されているフィンランドでは、
1992年に制定され、2004年に改訂されたサーミ語法のように、
少数民族の言語が公用語として使われている地域すらあります。

このレベルを日本に置き換えてみると、
たとえば沖縄県では琉球語が、
北海道の平取町二風谷ではアイヌ語が公用語として用いられるようになりますね。
まぁ、そのハードルの高さは、
日本単一民族説の支持者の多さからしてご想像にお任せしますが・・・

ここでまたちょっと興味深い数字を見てみましょう。

国連の関連機関である、
国際連合持続可能開発ソリューションネットワーク(UNSDSN)が発表している
『World Happiness Report』によると、
データのある世界158カ国中の幸福度ランキングは、

2位 アイスランド   7.561
3位 デンマーク    7.527
4位 ノルウェー    7.522
6位 フィンランド   7.406
8位 スウェーデン   7.364
・・・・・・・・・・・・・・・
46位 日本       5.987

こんな評価がなされているのですね。

そこでこの数字の指標である、1人あたりのGDP、健康寿命、社会的支援、
気前よさ、腐敗認識度、生き方の自由度から、
最後の『生き方の自由』を切り出してみると、同じくUNSDSNのデータによれば、

1位 ノルウェー    0.952
2位 スウェーデン   0.942
7位 デンマーク    0.932
8位 フィンランド   0.925
15位 アイスランド   0.913
・・・・・・・・・・・・・・・
54位 日本       0.787

という順位になっていました。
日本はこの点で8つも順位を落としています。

ん? 意義あり?
日本を北朝鮮やサウジアラビアと一緒にするな?
政治は圧政ではないし言論の自由も保証されているじゃないか?

そのとおり。
でも思想はともかく、生き方というと、どうでしょうね?

寿命が世界トップクラスで経済も上位であるにもかかわらず、
なぜか内外ともに『生き難い』という声が聞かれる僕たちの日本。
僕はその中心にあるのが、
『王道主義』と『普通主義』なのではないかと考えています。

これ、僕の造語なんですけどね。
『王道主義』とは、いうなれば『あるべき人生の絶対値』です。
分かり易く言うと、
一流大学を卒業し、一流企業に就職し、結婚して、子供が出来て、
昇進して、家を買い、そして子供を自らが歩んだこの『王道』に乗せるべく、
一流大学に入れてゴール!

全部クリアするとあなたの人生は100点満点!

どれかが欠ける、
たとえば大学が2流、企業が3流、結婚しない、子供が出来ない、
こうしたことがあると、どんどん減点されてしまいます。

先日、40歳代前半の女性と話をしていた時のこと。
彼女は大学と企業のハードルは見事にクリアしましたが、
自身の選択で結婚はせず、従って子供もいません。

ところが彼女曰く、ここ数年は『結婚していない、子供がいない』ことについて、
私生活のみならず、職場の風当たりは想像を超えるものになってきたそうです。
さながら自分になにか致命的欠陥があるかのように感じることがある、
と言っていました。

え? 君はどうなんだ?

そうですね、僕は『王道主義』基準で自己評価すると、
25点くらいじゃないかしらん?

うわぁ、これじゃ僕の人生は赤点だ! 生まれてすみません!

なんて、太宰さんじゃないんだからいいませんよ。

僕は不幸にも、
いや幸いにしてハックルベリー・フィンのように生まれ育ったので、
のっけからこのゲームボードに乗らない、
アウト オブ スタンダードとして大人になりました。

ですから先の彼女を誰がどう言おうと、彼女がどう自己評価しようと、
僕は彼女を魅力にあふれた素敵な人だと思っています。
反対に誰かが王道まっしぐらの100点満点だからといって、
スゴイなぁ、カッコイイ人だなぁ、とは思わない。
はっきり言って、そんな基準はどうでもいい。

『王道主義』ってのは悲しいゲームなんですよ。
負けたら減点を背負った人生を歩まなければならないし、
勝ってもどこかで人を見下すゴーマン人間になりかねない。
こうしたプレーヤーがこの小さな島国に溢れかえれば、
そりゃ生き難くもなりますよ。

3流企業で働こうが、結婚しなかろうが、子供がいなかろうが、
いいじゃないですか?
生き方ってのは、そもそも多様なものなんだから。
王道なんてない。あなたが幸せであればそれでいい。
そもそも人生に勝ったも負けたもないんだから。

卑近な例で恐縮ですが、
僕は王道主義基準で自己評価25点ですけど、とても幸せですよ。
誰かを羨ましいとは思っていませんし。なりたい人のモデルもない。
いまの自分と自分の生き方が好き。
僕の人生、これでいい。

話をもとに戻しましょう。

繰り返しになりますが、
僕が北欧諸国を旅して感じた日本との最も大きな違いは、
生き方の多様性についてのスタンスでした。

人間の在りようがもともと多様であるにもかかわらず、
日本では文化的にエントリーされている生き方が、
あまりに画一的で少ない。

誤解のなきよう付け加えておきますと、
僕は王道主義そのものが悪いとは言っているのではありません。
信仰と同じく、それを信じることもまた個人の自由です。
ただ『王道主義しかない』と多くの人が思い込んでしまえば、
当然の結果として社会は多くの人々にとって生き難いものにならざるを得ない。
しかし、これは北欧諸国に倣わずとも変えられるんですよ。
なぜなら『考え方』とは物理法則に裏付けられた実体ではなく、
僕たち個々の頭の中にしかない、恣意的な想念なのだから。

あれ? 今回で最終回にしようと思っていたのですが、
だいぶ長くなってしまいました。

悲しいを通り越してけっこう怖い『普通主義』については、
こんどこそ最終回の次回にお話しましょう。

to be continued...

えーじ
posted by ととら at 13:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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