2018年10月31日

お母さんの旅立ち

とある静かな月曜の晩。
最初にのれんをくぐって来たのは、僕より少し年下と思われる女性。
彼女がオーダーしたのは、
リトアニアのギョーザのコルディナイとビールでした。

粋だねぇ。

こんな夜のBGMはちょっとシックなヨーロピアンジャズ。
Dorota Miskiewiczのヴォーカルがよく似合います。
回している作品はAle。

「あの、どこか近くの国でおすすめのところはありますか?」

彼女が不意に話しかけてきました。

「ひとりで行くのですけど、海外旅行は初心者なんですよ」
「何日くらいのご予定ですか?」
「2泊3日くらい・・・かな?」
「それじゃ台北やソウル、香港あたりはいかがですか?
 どこも治安がいいし、親日なので安心して旅行できますよ」

彼女はちょっと考えています。

「飛行機やホテルはどうやって予約したらいいでしょう?」
「旅行会社でツアーを申し込むのが一番簡単です。
 もしお買い物に興味がないのであれば、
 スケルトンタイプのツアーを選べば免税店めぐりに行かなくても済みますし」
「スケルトン?」
「ああ、航空券とホテルの予約しかない必要最低限のツアーのことです。
 空港からの移動も自分でやらなければなりませんが、
 さっき挙げた都市は交通の便がいいので心配はないでしょう」

彼女の表情がだんだん生き生きしてきました。

「実は子供が大学に入って手が離れたので、
 ちょっと旅行をして来ようと思ったのです」

なるほどね。

専業主婦も社会の役割の一つ。
区切りがついたところで新しいことにチャレンジするなんて、
素晴らしいじゃないですか。

なにより「素敵だな」と思ったのは、
彼女の過去についての姿勢でした。

区切り目の後ろ側はもう終わったこと。
それは主婦も学生も会社員も同じ。
その潔い割り切り方は、
初心者というよりむしろ手練れの旅人のものです。

となれば台北、ソウル、香港。
何処へ行こうと心配はないでしょう。

なぜなら彼女の旅は、すでに始まっているのですから。

えーじ
posted by ととら at 17:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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