2019年01月25日

第17回取材旅行 その3

今はトルコ時間14時2分。
僕たちはカイセリ中央の西7キロメートルほどの場所にある、
オトガル(バスターミナル)のカフェにいます。

ここに着いたのは12時ちょっと過ぎ。
アダナ行きのバスは結構混んでおり、最短で乗れる直行便は15時発でした。
「出発まで約2時間半・・・どうしようか?」
と困らないのがバス大国のいいところ。
ここが先にお話したカイセリ空港みたいな場所だったら、
この寒い中、居所にすら困ったでしょうが、
オトガルはメキシコのバスターミナル級の大きさがあり、
中にはレストランやカフェ、キオスクも充実しているのです。

市内で昼食を済ませていた僕らはチャイだけで2時間ねばり、
(一応、いいかい?と断りましたよ)
その間に取材ノートのまとめやブログ書き。
こうした時間の使い方はいかにも旅という感じがして好きですね。

ここからアダナまではミニバスで3時間。
夕方18時にはアダナのオトガルに着く予定です。
そこからはタクシーで宿まで移動。
何事もなければ19時にはチェックインできるかな?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

おはようございます。
今は日付が変わって1月25日(金)の8時18分。
アダナの宿で朝食を済ませ、部屋に帰ってきたところです。

え? 無事に着いたようだなって?

ま、無事と言えば無事なんですけどね。
またまた『想定内』レベルのサプライズのお話は、
時間を昨日の15時に巻き戻して始めましょう。

僕らを乗せた20人乗りのミニバスは、ほぼ満席の乗客を乗せて定刻に出発。
雪山に囲まれた標高1300メートル級の雪原を南へひた走り、
あと30分でアダナに着く、という17時半ごろ、異変が起こりました。

現在位置を確認するために、
GPSと連動しているマップアプリを立ち上げた僕は、
バスが交差点を『左折』した時に「あれ?」と思ったのです。

地中海の海岸線の手前まできたらアダナは少し東にある。
それなのにバスは西に向かって走っているではないですか。

「ともこ、何かおかしい。このバスはアダナと逆方向に進んでる」
「え? アダナ行きでしょ?」
「そのはずなんだけどさっきの交差点から180度逆に走り始めたんだ」

僕は隣の席の若い男性にダメもとの英語で話しかけてみました。

「すみません。このバスはアダナに行きますよね?」
「え? ああ、行きますよ。先にMersinに行ってから次がアダナです」

なんだって?
あ〜、あの野郎、一杯食わせやがったな!

「どうしたの?」
「チケットを買ったバス会社のやつにかつがれたみたいだ。
 このバスは直行便じゃない」
「うそ〜! アダナ直行だから3時間で着くって言ってたじゃん?」
「ああ、どうやら中南米で学んだバスターミナルの原則を忘れてたよ」

そう第3世界のバスターミナルの原則とは、
『うかつに相手を信用しない』

ターミナル内には大小入り乱れてのバス会社がひしめき合い、
各社が一人でも顧客を乗せようと必死に声を上げています。
そうした状況だと、ある程度のウソも許される・・・
こうした風潮なんですよね。
しかも出発してしまえば乗客にはクレームの入れようがない。
つまり乗せたもの勝ちなんです。

カーナビの計算では40キロメートル先のMersinまで行って引き返すと、
アダナ到着は今から1時間後です。

やれやれ、ひっかかったこっちの負けだ。
とりあえず座っていればそのうち着くからドライブを楽しむとするか。
僕は背筋を伸ばしてシートに座り直し、
MP3プレーヤーで音楽を聴き始めました。

やがてMersinから折り返し、ようやく正しい方角に戻ったと思いきや、
僕が異変に気付いた交差点でバスはまたしてもおかしな方向に・・・

「おいおい、勘弁してくれよ!」
「今度はどうしたの?」
「さっき右折しただろう?
 ってことは東じゃなくて今度は北に向かってるんだよ」
「え? よくわかんない」
「つまりだ、僕らはもと来たカイセリに向かってるのさ!」
「え〜っ!」

僕が運転席に行って問い質そうとしたとき、バスは急に減速しました。
そして中央分離帯の入れ目で左折のウインカーを出し、
Uターンしたのです。

なんだ? 何をしてるんだ?

バスがアダナまでの最短コースに戻ったことが分かりました。

む〜・・・わけが分からん。とりあえず良しとするか。
この分だと、オトガルに着くのは予定より1時間半遅れだな。
ま、今夜はチェックインして夕飯を食べるだけだからどうにかなるだろう。

と、ようやく安心していた僕らが、
アダナまであと25キロというところに差し掛かったところで、
バスは高速道路の路肩に突然止まってしまったのです。

え? と思う間もなく、
ドライバーがバスを降りて後方に走って行ってしまいました。
そこに回転灯を回したパトカーが走ってきて、
バスの前に止まったではないですか!

ちっ!

車内にいた乗客舌打ちしています。

はぁ〜、おいおい今度は何がおっぱじまるんだ?

まもなく後方に姿を消したドライバーが戻り、
パトカーに駆け寄って何か話しています。
するとパトカーは回転灯を消して行ってしまいました。
そしてくだんのドライバーは再び後方の闇の中に・・・

バスは異音もなく、エンジンがかかったままです。
止まる寸前にヨーイングなどパンクを知らせる動きもありませんでした。
ということはマシントラブルとは考えにくい。

「ねぇ、お腹が痛くなっちゃったんじゃないの?」

ん〜・・・ともこ説も一理ありそうです。

さすがに他の乗客も何があったんだとばかり、
顔を見合わせて話し始めています。
僕はさっきとは別の男性に話しかけてみました。

「なにが起こっているのか分かりますか?」

この車内では英語が殆ど通じません。
かといって僕のトルコ語はサバイバルレベルです。
幸い、話しかけた彼は片言の英語で答えてくれました。

「あいつは頭がおかしいんだよ!」

・・・って言われてもなぁ。

僕は相手を変えて助手席に座っている男性に話しかけました。

「大丈夫です。このバスはアダナに着きます」

あのね、いつ着くのかが知りたいんですよ。

「いまちょっとプロブレムです。車が来るのを待ってます」

はぁ? 別の車が来るって? なんでそんなものが必要なんだろう?
このバスは走行可能じゃないか。

「ねぇ、どうなってるの?」
「正直、まったくわからない。ただ危険はなさそうだ。
 とりあえず今は次の動きを待つしかないよ」

そして待つこと約20分。
突然、『動き』がありました。
なんとバスのドアが開くなり、見たこともない人たちが乗ってきたのです!
彼らがめいめい席に座るとバスがようやく走り始めました。

「ふ〜・・・わかったよ。
 高速道路と並走している道に、
 いま乗ってきた人たちを乗せた車が来るのを待ってたんだ」

アダナのオトガルに着いたのは20時15分。
予定を2時間以上遅れての到着です。

標高が低くカイセリより南に位置するアダナの夜は、
だいぶ暖かく感じられました。

よし、タクシーを捕まえて宿に急ごう。

さいわい僕に声をかけてきたタクシードライバーは、
ホテルの場所が分かったようで、
最短距離のイカサマなしで行ってくれました。
時間は21時。
トルコの飲食店のほとんどは20時前後で閉まってしまいます。

急ごう!

しかし始めて来た街で明るい方向に進みつつ飲食店を探しても、
開いているところが見当たりません。
こうしたときはあれこれ選ばず、最初に見つけたところに入るのが定石です。
足早に歩く僕たちの右側にまだ明かりの点いている屋台が見えました。

屋台か、まぁいい、あそこにしよう!

「まだ食べられますか?」
「ええもちろん」

ラッキー! 英語が通じる!

「アダナケバブが食べたいんですけど」
「うちのは最高ですよ!
 ここで食べますか? それとも持ち帰りますか?」

どうしようかと考えているときに雨粒が僕の額を打ちました。
はっと見上げればそう遠くない雲井に稲光が。

まずい、傘を宿に置いて来ちゃった。

「あ、持ち帰ります!」
「それじゃその店の中で待っていてください。
 夕方までは中で営業しているのですが夜だけ屋台なのです」

座って待つ僕らに彼は、

「すぐできますよ
 でもお待ちの間に当店自慢のチャイはいかがですか?」
「やぁ、ありがたい。それじゃふたつお願いします」

そして僕たちが美味しいチャイを飲み終わったころ、

「お待たせしました」
「ありがとうございます。お会計してください」
「44トルコリラ(約880円)です」
「あれ、チャイが入ってないんじゃないですか?」
「ああ、あれはサービスですよ」
「それでは申し訳ありません。
 ほんとうに美味しかったからちゃんと払いますよ」
「いやいや、
 こんな時間に外国からのお客さんに来てもらえて私たちも嬉しい。
 その気持ちです」

僕らが店の外に出るとほぼ頭上で雷鳴が轟き、
今にも空に蓄えられた水が滝のように落ちてきそうです。
お店のスタッフさんたちに挨拶した僕たちは、
宿に向かって走り始めました。

「そうだ、あと水を買わなくちゃ!」
「来るときに食料品店があったよね、あそこに寄ろう!」

大粒の雨が道路にシミを描き出しました。
あとホテルまで50メートル。

僕たちがエントランスに駆け込むやいなや、
ものすごい雷雨が街を包みました。

ふ〜・・・間一髪でセーフ。

なんか夕方から大変な4時間でしたけど、
最後はゆっくり、
宿の部屋で香ばしいアダナケバブにありつけた僕たちでした。
この料理のためにここまで来たのですからね。

さぁ、これから旧市街の市場を中心に取材の再開です。
今日は最後まで平穏な一日でありますように。

えーじ
posted by ととら at 16:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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