2019年03月19日

ととらな買い物 エジプト編その2

いつまでも思い出に残るのは、
ぱっと目に入って衝動買いしたものより、
てま暇かけて手に入れた自分だけの何か・・・

ですよね?

その点では今回、
僕らはとあるミッションを持ってカイロに行きました。
それは・・・

パピルスに
ヒエログリフ(象形文字)で『ととら亭』と書いてもらうこと!

エジプトのヒエログリフは漢字と同じく表意文字なので、
『ととら』などという古代エジプトには存在しなかった概念は、
表現できないと思っていたのですが、
ちょろっと調べてみると、
ひらがなやカタカナのように、
音だけを表す機能も持っているそうじゃないですか。
それなら同じく表音文字であるラテン文字表記の『TOTORATEI』を、
ヒエログリフでも表現できるはず・・・と考えたわけです。

しかし、土産物屋が密集するハン・ハリーリに行っても、
『ヒエログリフ書き承ります』なんて看板はどこにも見当たりません。

さて、どうしたもんだろ?

こういう場合は道に迷った時と同じように Ask and Go が一番。

そこでまずエジプトポンドの残りが乏しくなった僕らは、
土産物屋さんに入って両替屋の場所を訊くことにしました。

「アッサラーム アライクム(こんにちは)」

アラビア語圏ではこの挨拶から始めると、
(特に右手を左胸に当てて言うと)
扱われ方ががらっと変わります。

「ワ アライクム サラーム(先の挨拶の返し言葉)」

おや? という顔をして初老の男性が応えてくれました。

「この辺に両替屋はありませんか?」
「両替屋ねぇ・・・あいにくこの辺にはないな。
 ATMならその角にあるよ」
「あそこの機械では僕のキャッシュカードが使えないのですよ」
「なるほど。いくら両替したいんだい?」
「100米ドルです」
「なんだ、そのくらいならわしが両替してあげるよ。
 レートは・・・1700でいいかな?」

ん〜・・・まぁ、端数を切ってそんなものかな。

「OK。お願い出来ますか?」

彼は自分の財布を取り出し、中身を数えると、

「おっと・・・少し足りないな。ここでちょっと待っておいで」

そう言って隣の店に入っていきました。
そして間もなく、

「100、200・・・1700、よし」
「シュクラン!(ありがとう)」
「アフワン(どういたしまして)」

親切な人だな。それじゃ序に・・・

「もうひとつお聞きしてよろしいでしょうか?」
「もちろん」
「実はパピルスにヒエログリフを書いてくれる店を探しているのですよ」
「ヒエログリフを?
 ふむ・・・そうだな、それなら心あたりがある。
 案内しよう」

そういうとご主人は素早く腰を上げ、
店の奥にいた青年に店番を任せて表通りに出ました。
彼が連れて行ってくれたのは、
僕らではたちまち迷ってしまいそうな路地裏にある画商です。

「ここならヒエログリフを書いてくれるだろう」
「わざわざ案内までして頂いてすみません」

そう言って幾許かのお礼を渡そうとすると、
彼はその隙を与えず、
優し気な微笑みを残して踵を返してしまいました。

日本ではムスリム(イスラム教徒)というと、
すべからくテロリストのようなイメージを
持たれてしまった感がありますけど、
実際は彼のように、異教徒でも困っている人がいれば、
見返りを求めずに助けようとする人が沢山います。
これ、実はコーランに書かれた教えでもあるのですよ。

さて、今回は値段交渉だけではなく、
細かいやり取りもあるので僕の出番。
なるほど先のご主人が言っていた通り、
こちらの要望を話すと心得たとばかりに、
その言葉をラテン文字で書いてくれと言われました。

そして次はサイズです。
手近にあった既存の絵を元に40センチ四方のパピルスを選び、
値段交渉のはじまりはじまり〜。

先攻は画商のお兄さん。
初球は・・・直球で50ドル?

ほぉ〜、さすがカイロの観光地とあって、
すました顔でいい値段を言って来るじゃないか。
とまれ紹介してくれたご主人の顔もあるので、
中央値からやや先方寄りを狙ってみますか。

そこで僕もしれっと10ドルから始め、
お互いポーカーフェイスでじわじわと歩み寄り、
30ドルでディール。

さぁ、それじゃ書いてもらおうかな・・・と思ったら、
店員のお兄さんは、
切り取ったパピルスと『TOTORATEI』と書いた紙を持って、
外へ行ってしまいました。

店の中は僕たちしかいません。

こういうの、日本ではあり得ませんが、
神さまという最高の警備員がいるイスラム教の世界では、
よくあることなのです。
(コーランで禁じられた盗みを働くと、
 背後にいる不可視の守護天使に記録され、
 最後の審判の日に御裁きにあいます)

そうして店番(?)をしながら待つこと30分。
おいおい、どこへい行っちまったんだ?
と思って外を見ると、
店員のお兄さんが小走りに帰って来ました。
そして店内に入るなり広げたパピルスを見てみれば・・・

ほぉ!

遠路はるばる来て、
さらに待ったかいのある『作品』に僕は大満足。
代金を払って握手をしたらミッション終了です。

ところが・・・

「ん? どうしたの?」
「がっかりしちゃった・・・」
「何が?」
「ヒエログリフ・・・なんだかちんまいんだもん」
「ちんまいって、TOTORATEIをヒエログリフで書いたらああなるんだよ」
「なんかもっとさ、デコレーションとかしてくれると思ったの」
「ああ、サマルカンドで書いてもらったアラビア語版みたいに?」
「そう!」

eg_hieroglyph02.jpg
(ともこが思い浮かべていたもの。
これはアラビア語でTOTORATEIと書いてあります。
ちなみに右から左に向かって読むのですよ)

「あれは話が別だよ。
 だってさ、文字列をカルトゥーシュで囲んだりしたら、
 意味がととら『王』になっちまう」

と言っても納得していない顔してるということは、
完成形がイメージ出来てないんだな。

そこで帰国後に新宿の世界堂さんで額装して頂き・・・

「ともこ〜、ヒエログリフが完成したよ!」
「え〜っ! 見せて、見せて!」
「じゃあ〜ん!」

eg_hieroglyph01.jpg

「わぁ〜すごい! ステキ! 見違えるようになったね」
「装飾されたアラビア語もいいけど、
 シンプルなヒエログリフだってお洒落だろう?」

と、いうわけで、
一時もの言いのついたミッションではありましたが、
終わり良ければすべて良し。

店内で見上げる度にこのストーリーを思い出す、
ととら亭らしいお買い物となったのでございます。

えーじ
posted by ととら at 00:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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