2019年09月19日

選択のコスト

突然ですが、質問です。

もっともコスパの優れた飲食店とは、
どんな店でしょう?

そう、
「この値段でこんな料理が楽しめちゃうなんて!?」
という、ある意味、理想的な店とは?

え? お得なクーポン連発の店?

違います。
そういうところにパフォーマンス(質)は期待できないでしょう?

物価の安い国で高級レストランに行く?

それじゃ旅費が上乗せされちゃいますよ。
条件は『国内で』です。

思い浮かばない?

正解は・・・

完全予約制で『おまかせ』料理の店!

なぜか?

食材のロスがないだけではなく、
労働力の究極的な最適化がはかれるからなのですよ。

この双方、いずれもおカネに換算すると、
バカにならない数字になります。
つまり、仕入れと人件費ですからね。
このロスを織り込まないのであれば、
「そのぶん儲けちゃおう!」でない限り、
価格はだいぶ安くできます。

そこで次の質問です。

ではなぜ、この『理想の飲食店』が見当たらないのか?

これはお分かりになるでしょう?
皆さんマターのことですから。

え? 分からない?
こりゃちょっと意外ですね。

この仕事をしていて今更ながらに気付いたのですけど、
飲食店に求められているのは、味と値段以上に、
「好きな時に、選んだものが食べたい」という、
利便性と選択肢なのではないかしらん?

この前者の要望は食事のタイミングや、
行動の予定などから十分理解できるのですが、
よくよく考えてみると、
選択というのは奇妙な話のような気がしないでもありません。

なぜなら、お腹に入るのは1品であるにもかかわらず、
『食べないその他』が必要なのですからね。

一般的に、お客さまはメニューの数が多ければ多いほど、
「わぁ〜!」っとなります。
反対に、たとえば、ランチでご来店され、2種類しか料理がないと、
(ととら亭のことです)
「なぁ〜んだ・・・これしかない」ってなっちゃう。

だから飲食店は長い時間営業し、
専門店を除けば、多くのメニューを揃えているのですよ。

ところがこれには、目に見えないコストが含まれています。

さっきの例で続けると、
たとえば5種類用意して3種類しか売れなかった場合、
残った2種類はロスとして、よくて賄い、最悪は廃棄されてしまいます。
つまり店にとっては損失ですね。

え? それはその店が被っているんだから関係ない?
いやいや、そうとも限らないのですよ。

もし、その店の経営が続いているのであれば、
それは収支のバランスがとれているということですよね?
(業績の良し悪しは別として)

ではどうやって、その損失を埋めているのか?

ロスの発生は突発的なものではなく、構造的な問題ですから、
常に起こることが前提となります。
そこで、そもそもの価格にロスの補填分が転嫁されているのですよ。

とりわけ素材の共通性が低く、
メニュー数が多ければ多いほどロスの確率が上がります。

冷凍食品を多用すれば、ある程度のリスクはヘッジできますけど、
それとてゼロでない限り、
名目を変えて価格に含まれるのは避けられません。

そう、高価な食材以上に、実は高くついているかもしれないのが、
「好きな時に、選んだものが食べたい」という、
利便性と選択肢のコストなのですね。

同業者にはこの意見に異議を唱える方もあると思いますが、
飲食店の売り上げが基本的にお客さまの財布だけに依存し、
ロスがビジネスの構造上、避けられない現実であることを鑑みると、
意図の有無は別として、
結果的に損失は価格の中で調整されていることになる。

選択とは常に選択されない何かを伴い、
そのコストは按分率に差こそあれ、
直接的、間接的に、すべてのプレーヤーで負担するしかありません。
思った以上に贅沢なことなのですよ。

あ、だから先進国ほど、さまざまな分野で選択肢があるのか。

えーじ
posted by ととら at 22:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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