2019年11月29日

第7回研修旅行 その4

ヴぃ〜ぃ〜ぃ〜ぃ〜!
ヴぃ〜ぃ〜ぃ〜ぃ〜!

な、なんだ?

ヴぃ〜ぃ〜ぃ〜ぃ〜!

え? 火災警報?

「な、なにこれ? どうしたの?」

ぐっすり眠っていた僕らは未明の警報音でたたき起こされました。

「火災警報だ。起きて、貴重品をまとめて」
「うん!」
「僕は外の様子を見てくる」

手早く服を着て靴を履き、
ドアにそっと手の甲を当てると・・・

大丈夫だ。熱くない。
ってことは廊下は燃えてないな。

次はゆっくりドアを開け・・・

煙はないし焦げた臭いもしない・・・
ここは6階だったな・・・
なら火災は7階以上か、閉鎖された部屋の中か・・・
とりあえず様子を見ながらフロントまで行ってみよう。

僕はゆっくり階段を降り始めました。

4階・・・3階・・・2階・・・

グラウンドフロアまで来ると、
フロントの裏手にあるレストランでは朝食の準備が進められています。
僕はフロントデスクに近づき、

「火災警報がなりましたが大丈夫ですか?」
「え? 何階ですか?」
「5階です」
「ああ、5階でも鳴ってしまいましたか!
 大丈夫、あれはFalse Alert(誤報)です」
「では危険はありませんね?」
「ええ、すみません。お騒がせしました」

「どうだった?」
「ああ、大丈夫、誤報だってさ」

僕はテラスに出て外から各階の様子を見てみました。

煙も炎もなし・・・か。

対面するマンションのベランダでは、
外を見ながら早起きの老人がのんびり煙草を吸っています。

彼も何かに気付いた様子はない。
どうやら本当に誤報のようだな。

「ところでいま何時?」
「えっと、もうすぐ6時」
「やれやれ、目が覚めちゃったな」

こうして幕を開けたベイルートでの2日目。
僕らは旅行中でしかない、ゆっくりした朝食を楽しみ、
昨日下見しておいた観光庁へ向かいました。
ところが・・・

「はぁ〜、やっぱりな」
「ツーリストインフォメーションは開いてないね」

室内をのぞき込むと什器や資料が散らかっており、
さながら夜逃げしたテナントです。

仕方ない。
ダウンタウンに向かって進みながら旅行代理店を探すか。

ほどなく僕らは警備にあたる警察官や軍人の姿に気づきました。
それも進むにつれて数が増えてきます。

なるほど、反政府デモの中心地はダウンタウンの広場だったな。

しかし警察官や軍人の様子から緊張感は見て取れません。
むしろのんびり談笑しているではないですか。
ならば一番治安の情報に詳しい彼らに訊いてみるか。
僕はニカっと笑顔を浮かべ、

「やぁ、皆さん、こんにちは!
 どなたか英語を話す方はいらっしゃいますか?」

突然現れた東洋人に面食らった3人の警察官は、
フランス語で応えてきました。

「すみません、フランス語は話せないんですよ」

するとひとりが偶然通りかかった女性に話しかけ、

「あら、こんにちは、どうしたのですか?」
「突然すみません。
 僕たちは昨日はじめてレバノンにやってきた外国人です。
 もし分かったら教えていただきたいのですが、
 僕たちが公共の交通機関を使ってビブロスやトリポリ、
 バールベックを訪れることは可能でしょうか?」

彼女がすぐフランス語に通訳すると、
彼らのくだけた話しぶりからして、

「ああ、なんだ、そんなことですか、ぜんぜん大丈夫ですよ」

そう言っているのが分かりました。
続けて彼女は、

「もし行くのであれば、まずコラのバスターミナルまで行って、
 目的地に行くバスを探して下さい。
 これは私の意見ですけど、初めてであれば、
 まずビブロスをお勧めしますよ。
 それから念のためにニュースは必ず目を通しておいてください」

気さくなお巡りさんたちといい、偶然通りかかった親切な女性といい、
なんだか皆さんとてもフレンドリーです。
僕たちはお礼を言って先に進み始めました。
そしてエトワール広場に近づくと急に警察官の姿が増え始め、
広場を中心に、いくつかの道路が封鎖されているのが分かりました。
その中に入れるのは住人か仕事の用がある人だけのようです。

「OK、ここで戻ろう。
 どのみちこの先の旅行代理店は開いていないだろうし、
 必要な情報も得られた」

僕らは内戦の跡が今も残る建物の間を抜け、
庶民の街、サーエフ・サラム通りを西に進んで地中海に出ました。

2千数百年前、
フェニキア人はここからレバノン杉で造った帆船に乗って、
オリエントの文化を西に伝えたのか・・・
そう、あの水平線の向こうは南ヨーロッパと北アフリカなんですよ。

旧約聖書で語られた約束の地。
入れ替わる民族と統治者。
そしてその痕跡が凝縮された料理の数々。

僕たちは海を見下ろすレストランで取材を進めながら、
地層のように重なり合う悠久の時の厚みを肌で感じていました。

明日は天気と状況次第で、
別の街まで行ってみようと思います。

to be continued...

えーじ
posted by ととら at 01:21| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
寝てる間に火災警報機って前にもあったような…
何事もなく良かったです(^^)

…しかしヒマだわ〜。
Posted by みなみ at 2019年11月29日 20:44
治安にはちょっと不安があったけど、
来てみたら今のところ危険な様子はぜんぜんないよ。
出発前に緊張していた分、いまはちょっと安心してます。
それより心配なのは、中東料理のおいしさかな?
毎日はりきって食べ続けてるから、
帰国したら特別ダイエットしなくちゃ!
Posted by ともこ at 2019年11月30日 04:12
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