2021年07月14日

新しい世代の飛翔

仕事を世襲する職業では先代が高名だった場合、
何かと比較される後継ぎの苦労がよくしられています。

また親の七光りとばかりに、
個人的な努力の成果をやっかまれることもあるでしょう。

しかし、この俗例は、
昨年亡くなったエドワード・ヴァン・ヘイレンの息子、
ウルフギャング・ヴァン・ヘイレンには当てはまらないようです。

父が存命だったころからバンドのベーシストとして、
マイケル・アンソニーの穴を埋めるという大役を果たし、
単なる親ばか採用との評価を一蹴する実力を披露していました。

その彼が先日リリースしたアルバム『Mammoth WVH』を聴いた僕は、
エディーが彼を息子としてではなく、
プロのミュージシャンとして採用したことを確信したのです。

なんとウルフギャングは、
すべての楽器演奏のみならずヴォーカルも取り、
この衝撃のデビュー作をたった一人で作り上げたのでした。
そしてそれは、父のバンドの音楽とは、
まったくと言っていいほど方向性の異なるものだったのです。

音楽業界でマルチプレーヤーはそれほど稀な存在ではありません。
さまざまな楽器を器用にこなす人はたくさんいます。
(ポール・マッカートニーやボストンのトム・ショルツなど)
しかし、その多くが専門のプレーヤーには少々及ばないのも事実です。

ところがウルフギャングのプレイは、
そのいずれもが高度なレベルに達していたのでした。
いや、確かにギターの腕前は父に遠く及んでいません。
ドラムスも叔父のアレックスにはかなわないでしょう。
しかし僕が驚いたのは、彼のヴォーカルです。

マイケル・アンソニーのハイトーンコーラスパートをこなしていた時から、
きれいな声をしているな、と思っていたのですが、
『Mammoth WVH』を聴いた後では、
彼の実力を過小評価したものと認めざるを得ません。
驚くべきことに、
彼はヴォーカリストとしても十分通用するレベルだったのです。
それはまさしく、父をはるかに超えた才能でした。

今後の活躍を期待しつつ心配なのは、
マルチプレーヤー故の才能の枯渇です。
こうした一種の天才は、
作品に対する自分のイメージを明確に持っているのことが時に禍し、
他者の意見に耳を傾けない傾向があります。

これはバンドからソロに転向したミュージシャンが、
なかなかバンド時代を超えられない例としてよく知られているでしょう。
スティング(元ポリス)やエリック・クラプトン(元クリーム)、
ピーター・ガブリエル(元ジェネシス)などは例外的な存在なのです。

ともあれ、彼がここからどんな旅を続けて行くのか。
エディーも天国で楽しみにしているでしょう。

僕もまたウルフィーがもたらすであろう新鮮な驚きを、
静かに待ちたいと思います。

えーじ
posted by ととら at 14:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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