2021年08月21日

トラブルシューターの憂鬱

IT稼業で火事場に投入されたとき、
トラブルシューターとしての評判を危うくする要素とは何か?

冷静でいることです。

では逆に、
頼りになる、信頼されるトラブルシューターの条件とは?

現場でざっと状況を把握したら携帯電話を取り出し、
当該システムのベンダーさんに向かって

「これはいったいどうなっているんですか!
 すぐにサーバーの状態を確認してください!」

とオフィス中に聞こえるくらいの声で怒鳴ること。

これは即効性がありました。
現場の方々の僕を見る目は、

「ああ、頼りになる人が来た!これでもう安心だ」

そしてダメ押しは、
ぶつぶつベンダーさんを罵倒するセリフをつぶやきつつ、

「ほんと、みなさん大変ですね。この状況はまったくひどいですよ」

と同情を示す。

これでラポール形成は完璧です。
そして僕はこれがとてもつらかった。

なぜならこうしたジェスチャーは問題解決にならないばかりか、
反対に状況を悪化させるだけだから。

で、ほどなくこうした三文芝居に嫌気がさして、
ドライに仕事をしはじめたのです。
すると、

「この人、やる気があるのかな?」
「ぼそぼそ電話したきり、ただ待ってるだけじゃないか」

っと、まぁこの通り。
結果的に、これが解決への最短距離だとしても、
スタンドプレイなくして現場の満足もまたなかったのでした。

昨今の行政の新型コロナウイルス対応を見ていると、
あの頃の自分をよく思い出します。

こうした芝居にはヒールが欠かせません。
僕の場合はベンダーさんでしたが、
コロナ騒動ではまずパチンコ店、次が僕ら飲食業者、そのまた次が風俗店、
で、今回は百貨店か・・・

「まったくこの人たちが感染源になっているから!」

このジェスチャーで多くの人々が納得し、
ターゲットに押し付けた難題のハードルが高いほど、

「ああ、行政(報道)はしっかりやっている!」

と、ひとまず安心したりする

でも、その安心が束の間のものであり、
期待どおりの結果に結び付かないことは
この1年8カ月の経験で明らかですよね?

で、ご相談なのですけど、
そろそろこの『とりあえずスケープゴート』はやめにしませんか?

パチンコ店を、飲食店を、風俗店を、そして百貨店を、
すべて潰しても、感染爆発を止めることはできないでしょう。

なぜか?

それはいわずもがな、
パンデミックの要因はそんな単純なことじゃないからです。

今日も百貨店の人数制限オペレーションは、
とてつもない業務負荷を現場に与えているでしょう。
しかもコストがかかって売り上げは下がる。
よしんば結果が出たにせよ、それを検証する手段もない。
言うだけ言って、あとは知らない。

とりあえず・・・とりあえず・・・
またターゲットを変えて、とりあえず・・・

僕がこの風潮にどっぷり漬かって思い出したのは湾岸戦争の報道でした。
バグダッドの夜空に向かい、
曳光弾が花火のように軌跡を描いていた、あの映像です。

あれはイラク軍が敵を撃っていたのではないのですよ。
なぜなら彼らには飛来するトマホークや、
ステルス戦闘機を検知する仕組みがなかったから。
ただ漠然と、「空爆を受けている!だから敵は空にいる!」
この直観から、不安と恐怖に駆られて無駄弾を撃ち続けていただけ。

これ、今の僕らとそっくりだと思いません?

なんかパチンコ店が、飲食店が、風俗店が、そして百貨店が怪しそうだ。
だから何かやらせよう!

こと飲食店の一現場から申し上げますと、
正直、行政から言われてやっていることに、
「ああ、これは重要な意味がある。どんなに手間でもやるべきだ」
と真面目に思っている対策が、どれくらいあると思います?

特に換気を悪くするアクリル板の設置とか、
おカネのやり取りだけトレーでやるとか・・・

そしてこれは業界業種を超え、
多くの人々が思っているのではないでしょうか?
それこそホンネは『やっちまったときのエクスキューズ』。

違います?

僕はここで今さらノーガード戦法で行こうと言っているのではありません。
コロナ禍も1年以上続いていることですし、
この辺で冷静に対策の棚卸しをして、
空に向かって無駄弾を打つようなことは、
いや、撃たせるようなことをするのはやめにしませんか?

デルタ型はこれまでのシナリオを書き換えました。
クールにワーストシナリオに備えたカードを用意し、
限られた人的、物質的リソースを有効に使うときです。

そして少なくとも僕らはトラブルシューターである以上、
トラブルメーカーになることは避けるべきでしょう。

ね、小池さん?

えーじ
posted by ととら at 17:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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