
(ミニ開発前の柴又駅前)
2019年8月下旬。
高砂駅から新柴又駅を経由して歩いてみた印象では、
当時からあまり変わっていない気がします。
僕らはUターンするように帝釈天方向とは真逆に曲がり、

「ん〜・・・いい感じだね」
「こういう下町の雰囲気って好き」
「北千住に住んでいた頃を思い出すな。
このすぐ先の右側にその物件があるらしい」
印刷した不動産情報を片手に、
古めかしい商店街を50メートルほど進むと・・・

「・・・? ここ?」
「ん〜・・・そうだと思う。
うん、あってる。不動産情報の写真と同じだ」
立地は抜群でした。
柴又駅改札からの距離は、ほんの70メートルほど。
これなら今の野方駅からととら亭までの距離とほぼ同じです。
店舗前は幅4メートルの公道。
ときわ通りと違って自動車が通りますけど交通量はごくわずか。
正面はパチンコ店が取り壊されて、
6階建てのマンションが建設中でした。
駅前を中心にプチ開発が進んでいる様子です。
「どう思う?」
「私は気に入ったよ!
商店街の活気は野方ほどじゃないけど、
雰囲気がととら亭にぴったり!」
「そうだね。駅からのアクセスも申し分ない。
でも中を見てみないと判断はできないな」
その物件の土地はT字型をしており、
縦棒の下先端が道路に面していますが、
奥の部分は隣家と駅に囲まれていて殆ど見えません。
僕らの計画は古民家を購入し、
可能な限り自分たちの手で住宅兼飲食店に改装すること。
ね?
こういうのって、ととら亭らしいと思いません?
そこで僕らは元付の不動産会社にコンタクトし、
内見を申し込んだのです。
時は2019年9月の第1週。
不動産会社の方と物件前で待ち合わせした僕らは、
名刺交換した後、おもむろにアドバイスを、
いや、警告を受けました。
それは・・・
「内部はかなり損傷が進んでいます。
入るのは十分注意してください」
そして店舗のシャッターがきしみながら上がり、中に入ると・・・

内部の様子から化粧品店は10年以上前に閉店しているようです。
ともあれ、ここで見る限り、それほどひどい損傷は受けていません。
しかし担当者さんはここでさらに重々しく付け加えました。
「ここから先は本当に危険なんです。
いつ屋根が崩落するか分かりません。
内部に入るのであれば自己責任でお願いします」
ま、マジですか? 怖いことを言うね。
そこで壁の向こうをのぞき込んでみると・・・

うげ、ヤバイじゃん・・・
「ともこ、確かにちょっと危ない感じだ。
天井だけじゃなく床も抜けてる。
ここからは僕ひとりの方がいいな」
「わかった。気を付けてね!」
「写真を撮ってくるから後で見せるよ」
危険地帯に入ると天井以上に床が問題でした。
そこかしこが陥没していますし、
床や畳が残っているところでも体重をかけるとグラグラです。
やれやれ、地雷原か。慎重に行こう。
僕は片足ずつゆっくり加重し、
足元の強度を確認しながら奥に進み始めました。
そして目に入ったのは・・・

こ、こりゃひどい。想像以上だ。
建物の1/3の屋根が崩落してる。
これじゃオープンエアのレストランになっちまう。

あいやぁ〜、おまけにこっちは露天風呂かい?
できるだけ細かく調べようとしましたが、
水たまりで繁殖した蚊がむらがり始めました。
こりゃたまらん!
僕は手早く写真を撮り、店舗部分に戻りました。
「大丈夫?」
「ともこ」
「どうだった?」
「プランBだ」
to be continued...
えーじ