本作は基本的にフィクションですが、
一部に残念ながら事実が含まれております。
----------------------------------------------------------------
a long time ago in a galaxy far far away...
ここは木星の近く。
アステロイドベルトに向かって航行する恒星間小型宇宙船のコクピットで。
「ねぇ、M78星雲での取材はどう思う?」
「ウルトラの星での?」
「そう」
「ん〜・・・話題性はともかくさ、
あのカロリーメイトみたいな料理じゃうけないよ。
怪獣と戦う力はつくかもしれないけどさ」
「だよね〜」
「それよりタドゥイーンの居酒屋で食べた、ほら、あれ」
「サラマンダーの串焼き?」
「あれならスパイシーでいいんじゃない?
まさしく燃えるような辛口タイプで」
「素材は地球で手に入ったっけ?」
「たしかチャバザハットが密輸してたと思うけど」
「あいつか〜、ちょいと割高だけど、まぁ採算は取れるだろ」
その時、コンパネでグリーンのインディケーターが点灯しました。
「おっと、アステロイドベルトを抜けたな。次のジャンプポイントは?」
「あと・・・0.02ミリパーセク先」
「よし、地球までのファイナルジャンプだ」
「タキオンブースターはチャージレベル98パーセントだよ」
「OK、それじゃお客さま、シートベルトの着用を」
僕はフライホイールをハイパードライブに接続し、
スロットルレバーを倒し始めました。
その時、
Beep! Beep! Beep! Beep! Beep!
「お、おいおい何のアラートだ?」
「ちょっと待って! たいへん! タキオンブースターでエラーコードF8」
「F8? なんだっけ?」
「いまマニュアルを調べてる・・・えっとね・・・
メインパイプでのエネルギーリークだって」
「はぁ? エネルギーリークってヤバイじゃん。
バイパスへ切り替えを!」
「ん〜・・・だめ、切り替わらないよ!」
「このポンコツ! しょうがねぇな。
恒星間通信のチャネルを開いて地球のメーカーに連絡を」
「えーじ、通信費支払ってるの?」
「いや、2年分が滞納だけどポパフェットのアカウントをハックしてある。
それに切り替えて」
「あのひと怒るよ〜、高いんだから。でもこの際仕方ないか・・・
繋がったよ!」
「あ〜、もしもし。こちらスターシップととら」
「これはえーじ様、お久しぶりでございます」
「やぁ、ジェネラルマネージャー。挨拶は抜きにしてさ、いま困ってるんだよ。
メインパイプでエネルギーリークが発生してるんだけど、
バイパスに切り替わないんだ」
「それはお気の毒さまでございます」
「その通り! で、応急修理方法を教えてくれないか?」
「残念ながら、それは出来かねます」
「え? なんで?」
「スターシップととらの保守サービスは5年前に切れております」
「そこをなんとか!」
「しかもその前の2年分は保守料金が滞納のままです」
「よく覚えてるな・・・地球に戻ったら1年分利息を付けて払うからさ!」
「なによりスターシップととらは建造以来12年を経過しており、
製造パーツに関する情報がもうございません」
「じゃ、この宇宙空間でどうしろってんだい?
一番近いファミマだって4.5パーセクも離れてるんだぜ」
「幸運をお祈り申し上げます」
「ちょ、ちょっと待って!
ノーマルエンジン航法じゃ地球まで9年近くかかっちまう。
せめて近くのリペアシップに連絡をと・・・
あれ? もしもし? もしもし!」
「えーじ、通信が切れちゃったよ」
「あの野郎〜!」
「どうするの?」
僕はシートベルトを解除してエンジンルームに入って行きました。
コンパネは赤や黄色のランプが点滅し、ビープ音が鳴り響いています。
「む〜・・・」
「どれもかなり老朽化が進んでいたからね」
「こうなったら最後の手段で行くか」
「え? どうするの?」
Bang!
僕はおもむろにメインパネルへパンチを食らわせました。
「ちょっと! そんなことしたら壊れちゃうじゃない!」
「これは逆説的解決法だ。正常なものにパンチを入れたら壊れるけど、
壊れたものにパンチを入れれば正常に戻る」
「それって論理的には正しそうだけど物理的には悪化するだけだよ!」
「い〜や、僕の経験則はそう言ってない」
Stomp!!
そこで今度はケリを一発。
すると急にアラートが止まり、
インジケーターがすべてグリーンに戻ったじゃないですか。
「ね?」
「信じられない」
「さぁ、いつまた機嫌が悪くなるか分からないぞ。
今のうちにハイパージャンプしちまおう!」
僕らは急いでコクピットに戻り、シートベルトを締めました。
「そんじゃ行くぜ。フライホイール接続」
船内に甲高いノイズが響きはじめ、不規則な振動が体に伝わってきました。
「タキオンブースターのチャージレベル100」
「よし、対ショックモード。3、2,1!」
大きな衝撃とともに船はジャンプポイントへ突入し、
数秒のうちに僕らは眼下へ地球を見下ろす宙域まで戻ってきたのです。
「やった〜!」
「ふ〜、やれやれ」
「ここまで帰ってくれば安心だね」
「さぁ、着陸態勢に入ろう。成田宙港の座標をインプットしてと・・・
よし。スタビライザーオープン」
「スタビライザーオープン完了」
「反重力ブレーキ作動」
「反重力ブレーキ出力15パーセント」
「OK、それじゃスペースジャイロの下降角7.4で進入開始。
さぁ〜て、東京に帰ったら1カ月ぶりに熱いシャワーが浴びられるぜ」
ところが、ここでまた、
Beep! Beep! Beep! Beep! Beep!
「な? 今度はなんだ?」
to be continued...
えーじ
2021年11月25日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/189159292
この記事へのトラックバック
http://blog.sakura.ne.jp/tb/189159292
この記事へのトラックバック