僕が住んでいるアパートからととら亭までの距離は、
おおむね440メートル。
普通に歩いて6〜7分くらいです。
感覚的にも『すぐ近く』なのですが、
これはあくまで元気なときのこと。
たとえば松葉杖を使って歩いた場合、
その体感距離は3倍程度まで伸びましたし、
腰の安全装置が外れて、いつ爆発するか分からなくなったときは、
普段の『すぐ近く』が涯しなく感じられたのを覚えています。
移転を公表して以来、
ご年配のお客さまと話していて、
僕はしばしばこれらの体験を思い出していました。
若い方の中には、
「ああ、場所が柴又に変わっただけじゃないですか。
オープンしたらすぐ行きますよ」
と気軽に言っていただけたこともあります。
しかし、脚に不調のある方にとって3回乗り換えの70分コースは、
挑戦すべきハードルではないでしょう。
「あななたちがいなくなっちゃうと寂しいよ」
そう言われると返す言葉がありません。
そんな僕の気持ちを察したのか、
お婆ちゃんは微笑みながら、こう続けました。
「でも、出会えて本当に良かった」
確かに旅立ちの距離は遠いものになります。
それでも僕たちの心の距離は変わらない。
「僕も出会えて良かったですよ。お元気で」
ゆっくりと遠ざかる姿を見送りながら、
僕は一抹の寂しさが、
大きな感謝に置き換わっていることを嬉しく思いました。
えーじ
2021年12月09日
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