2023年02月08日

第19回取材旅行 その8 最終回

「そんなことまで調べるんですか?」

取材や料理の説明が宗教の話にまで及ぶと、
多くの方が意外に思うようですね。

しかし、食文化は多かれ少なかれ宗教と結びついており、
その関係を無視して個々の料理を理解することは、まずできません。

今回、僕たちが訪れたバリ島はその典型的な例のひとつ。
インドネシアはムスリム人口が世界最大の国として知られていますが、
それはクリスチャンや中華系を除くと、
基本的にお酒とブタ肉料理がNGであることを意味します。

ところがバリ島のマジョリティーはヒンドゥー教徒。
そこでインドネシアであるにもかかわらず、
例外的にお酒が飲めてブタ肉料理がポピュラーなのですよ。
(しかもおいしい!)
また、その反面、他の地域で食べられているウシ肉料理は、
少数のムスリムやクリスチャンの地域を除いて見かけません。

この視点からひも解いて行くと、先日お話したパダン料理とは別の意味で、
バリ料理のユニークさが楽しめるのではないかと思います。
それでは蘊蓄はここまでにして、具体的な料理を見て行きましょうか。

バリ島のワルン(ローカル食堂)に入って何を食べていいか分からないときは、
まずこれを注文してみましょう。

ubud_nasichample.JPG
ナシチャンプル

これは料理名が字義通りの説明になっていて、
ナシ(ご飯)+チャンプル(ごたまぜ)、
つまりいろいろなおかず添えのご飯のこと。
内容に決まりはなく、季節折々の料理や、
そのワルンの得意料理が何種類かご飯に添えられています。
ちょっとずつ味見してみたいときには打って付けのメニュー。
ちなみにお気付きと思いますが、
マレー(インドネシア)語の「チャンプル」は、
音、意味ともに沖縄のそれと同じで、
語源は前者ではないないかとの説が有力のようです。

ubud_sotoayam.JPG
ソトアヤム

これも和訳すると捻りのない名前で、
ソト(スープ)+アヤム(トリ)でチキンスープとなります。
しかし、その味わいは複雑かつディープ。
具だくさんでもあるので、これとご飯で一食にしてしまう人も。

ubud_nasigoren.JPG
ナシゴレン

全国的な定番料理で読者の方もご存知ではないでしょうか?
ナシ(ご飯)+ゴレン(炒める)ということで、インドネシア風チャーハンです。
味付けがインドネシア定番調味料のケチャップアシン(塩味醤油)か、
ケチャップマニス(甘口醤油)なので、本家の炒飯とは一味違います。
そういう意味ではクラッシュピーナッツと干しエビを添えないから、
タイ料理のカオパッツとも違うな。
またメキシコのサルサに似たソースのサンバルを添えると、
味が引き締まってさらにパンチが効いて来ます。
目玉焼きを乗せ、エビせんを添えるのがお約束。

ubud_miegoren.JPG
ミーゴレン

ナシゴレンと並んでポピュラーな料理。
ミー(麺)+ゴレン(炒める)ということで、インドネシア風焼きそばです。
味付けがナシゴレンと同じなので、日本のソース焼きそばとはまるで違います。
これもたいていエビせんが付いて来ます。

ubud_ayamgoren.JPG
アヤムゴレン

ここまで来ると名前からどんな料理かお分かりになるでしょう。
そう、アヤム(トリ)+ゴレン(炒める)でチキンソテー?
いや、惜しいですね。
ゴレンには揚げるの意もあり、フライドチキンのことです。
見かけはまさしく鶏のから揚げですが、日本のそれとはちと違い、
まずターメリックやレモングラスを入れたお湯でトリ肉を下茹でし、
それに衣を付けて揚げています。
調味料に直漬けする日本のそれより薄味で、竜田揚げに近いかな?
しかし、これもサンバルを添えるとまさしくインドネシアの味に。
ご飯もビールも進みます。

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サテリリ

バリ風チキン焼きつくね。
実はガドガドと並んで2016年にととら亭で紹介したことがある料理です。
日本のつくねとは大きく異なり、
カッファーライムの爽やかな香りが食欲をそそる一品。
ココナッツフレークが使われているところもインドネシアっぽいですね。
これはシーフードバージョンもあります。

ubud_kariayam.JPG
カリアヤム

もう説明は要らないでしょう。
さらっとしていてコクのあるココナッツ風味のインドネシア風チキンカレー。
タイのゲーンカリーとはナンプラーとパクチーの香りがない点で別物です。
この差は料理全体にも当てはまり、
タイ料理との似て異なるコントラストを醸し出しています。
では、バリ料理の香りの中心は何かというと、
カッファーライム(タイ名はバイマックル)ですね。
これがパクチーに変わって香りの中心となっています。

ubud_mahimahi.JPG
白身魚のサンバルマター添え

サンバルは家庭の数だけあるともいわれていますが、
大きく分けるとメジャーな幾つかにまとめられます。
生の野菜やハーブを使った非加熱のサンバルムラーはバリ島の定番で、
白身魚からチキンまで焼いた料理との相性は抜群。
また、この料理はしばしばココナッツミルクを使って炒めた、
青菜がお供になっており、この3つを一緒に食べると、とてもおいしいです。
ちなみに現地ではマヒマヒという魚がよく使われていました。
これはポリネシア一帯でシイラを指す言葉だそうな。

ubud_babigrin.JPG
バビグリン

ここでバリ島ならではの真打登場。
バビ(ブタ)+グリン(回転させる)の字義通り、豚の回転丸焼きです。
(画面中央の四角いのがパリパリのブタの皮)
食べ方は、肉をそぎ切りにして、野菜の和え物やサンバルを添えるのですが、
一見豪快でいて、混ぜると極めて繊細な味わいになります。
この微妙なバランスがバリ料理の神髄なのではないか、
と僕は頬張りながら考えていました。

ubud_desert.JPG
デザート

バリ島にはもち米とココナッツ、
パームシュガーを使ったさまざまなデザートがありますが、
ぜひトライして頂きたいのがココナッツのアイスクリームと、
フレッシュフルーツジュース。
取り立ててインドネシア限定ではないものの、
現地ではポピュラーで、レストランでもたいていメニューにあります。
フレッシュフルーツジュースのお勧めコンビネーションは、
マンゴーとライム。
ねっとりした甘さと爽やかな酸味が絶妙のバランスですよ。

ubud_beer.jpg
インドネシアのお酒

ビールといえばコクのあるラガーのビンタンビール。
それをもうちょい軽くしたバリハイビールも暑い昼下がりにぴったりです。
またバリ島で作られているHATTEN WINEもお勧め。
きりっと冷えたドライなロゼは、スパイシーなバリ料理と相性抜群です。
気のせいか、行くたびに美味しくなっているような。

とまぁ、ざっと取材した一部をご紹介しましたが、
いかがです? どれもおいしそうでしょ?
そう、実際おいしいんですよ。
タイ料理やベトナム料理と素材は共通している部分があっても、
食べれば大きく異なるインドネシア料理。

そこで不思議なのが、
なぜ東京でインドネシア料理店が減ってしまったんだろう?
以前、新橋と銀座にあったインドネシア・ラヤさんには、
ずいぶん通ったものでしたが、
気が付けば両店とも閉店してしまっていました。

ま、だからこそ、ととら亭で紹介する意義があるのかもしれません。
まだいつどれをやるか決めていませんが、お楽しみに!

End

えーじ
posted by ととら at 19:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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