(イヤな予感がする)
とは、スターウォーズでピンチが訪れる前に、
登場人物の誰かがつぶやくセリフですが、
僕らの旅でもこれはお約束。
とりわけ僕の「イヤな予感」はその的中率が有名でして。
グラナダ駅のAVISで予約しておいたレンタカー(FIAT500)を受け取り、
空いていた駐車場内で軽く練習。
そこからコルドバまで180キロメートルを走り、
翌日、トレドに向かったところまでは順調でした。
ところが昨日の14時20分ごろ、ラ・マンチャ地方のペドロムニョスという、
風車の街から15キロメートルほど離れた田舎町で給油した直後、
僕はあの言葉をつぶやいたのです。
「・・・ん? あれ・・・」
「どしたの?」
「イヤな予感がする」
「え?」
「エンジンの回転が上がらないんだ」
「どうして?」
「エンジンがアクセルに反応しない。
マズイな、脇に停めよう」
路肩に自動車を停めた僕はしばらく考えていました。
街はずれにぽつねんとあった、
無人で24時間営業のボロいガソリンスタンド。
SHELLやESSOのようなブランドマークもなく、
客も誰ひとりいなかった。
ポンプは4台。
どれも表示はGasolineだったと記憶してる。
最初に入れようとした1番と2番はどうしたわけかNot allowで使えず、
僕が使ったのは4番。
値段は1、2番よりやや高めだった。
ということはハイオク?
いや、オクタン価の違いでエンジンがここまで回らなくなることはない。
いった何が起こったのか? そうだ、
「さっきのレシートを見せてくれる?」
えっと、ガソリンの種類は・・・
あった、これだ、Gasoleoと書いてある。
これはガソリンを表すスペイン語か?
そこへFiat500を停めた前の家から、
怪訝そうな表情を浮かべたおじいさんが出てきました。
「オラ! すみません、自動車の調子が悪くて調べているところです」
すると彼はスペイン語でゆっくり何か話し始め、
時おり通りの先の方を指さしています。
「申し訳ありませんが、僕はスペイン語を話しません」
「修理工場が近くにあるって言ってるのかな?
わたし、あっちを見に行って来るよ」
ほどなく、ともこが慌てて戻ってくるなり、
「たいへん!」
「どうした?」
「そこの角を曲がったらガソリンスタンドがあったの。
で、ポンプを見るとね」
ここで彼女はポンプの写真を見せてくれました。
「なんてこった!
Gasoleoってのはディーゼル用の軽油じゃないか!
じゃ、ガソリンは・・・Gasolinaだって!?」
ほらね、的中したでしょ?
「長い運転歴でガソリン車に軽油を入れたのは初めてだ」
「どうするの?」
「どうするもこうするも、お手上げだよ。
タンクから燃料を全部抜いて、
レギュラーガソリンに入れ替えるしかない」
「え〜っ!」
「レンタカー会社に電話してみよう」

気温38度の路肩に座り込んで電話中。
ブログには書ききれない、かなり細かい質疑応答があったので、
終わった時にはへろへろ・・・電話での英会話は疲れる。
僕はキーホルダーに書いてあった番号をコールしてみました。
すると日曜日にもかかわらず、すぐ電話がつながり、
「Hello, Can you hear me?」
と話しかければ、流れてきたのはスペイン語の自動音声。
マジか、何をいってるのかさっぱりわからん。
やがてそれが英語に変わり、
要件によって押すプッシュ番号を説明し始めました。
ん〜・・・該当する番号がないな。
いいや、適当に押してみよう。
次に出たのはスペイン語を話す女性。
僕は構わず英語で、
「こんにちは。お借りしたレンタカーでトラブルがあってですね、
助けが必要なのですよ」
「もしもし、
あの、英語を話すものと替わりますので少々お待ちください」
ここで声が男性に変わり、
「こんにちは。どうしましたか?」
「大変申し訳ないのですが、
こちらのミスで、ガソリン車に軽油を入れてしまいまして。
残念ながら自動車はもう走行不能です」
ここで自動車ナンバーと契約番号を伝え、
「分かりました。今どちらにいらっしゃいますか?」
「ラ・マンチャ地方のペドロムニョスで、
ドクター・フェルナンド・マジョルドモ通りと、
カルロス・ガルサラン通りとの交差点付近です」
「特定しました。
それではアシスタントを向かわせます。
その後に手配するタクシーでマドリッドのAVISオフィスまで来てください」
そうして待つこと30分。

「あお丸」と名前まで付けていたのに。病院送りにしてしまいました。
すまん。
アシスタントとはレッカーのことで、僕らは自動車を引き渡し、
再び待つこと40分。
今度は黒いワンボックスが迎えに来て、
マドリッドのアチャール駅まで1時間半のドライブとなりました。
「ねぇ、今日中にトレドまで行けるかなぁ」
「ん〜・・・わからない。今は17時15分。
マドリッドに着くのはおおよそ18時45分だ。
そこで代車が借りられれば19時半に出発したとして、
トレド着は21時ごろ」
「でも、また貸してくれる?」
「そいつもわからないよ。
一応、保険はフルで入っているけど、
同じタイプの自動車があるかは聞いてみないとね」
「じゃ、もしかしたらトレドのホテルをキャンセルしてマドリッド泊まり?」
「その可能性もある。
とりあえずどこまでリカバーできるか、やれるだけやってみよう」
こうして送り届けられた、
アトーチャ駅の端にあるAVISのオフィス兼カープール。
そこでお詫びをしつつ、状況を説明すると、
親切なスタッフさんが、
「同じ車種のFIAT500を用意しておきました」

新しい旅の相棒。
白に赤い屋根のお洒落なイタリア娘なので「ぶち子」と命名。
はぁ〜、いろいろすみません、AVISさん。
大変ご迷惑をおかけしました。
こうして僕らは新しい自動車に乗り換え、トレドに向かったのでした。
to be continued...
えーじ

なんとか自爆ミスのリカバリングに成功。
ラ・マンチャ地方に残る風車まで行けました。
今年4月の日食旅行で、うちもレンタカーで苦い思い出が。。
ダラス郊外のアウトレットに行った帰り、何故かエンジンがかからず。レンタカーに電話して、位置を説明して、何が起きたか連絡、いつなら来れるのか・・・ レンタカー史上で1-2を争う冷や汗体験でした。結果として、エンジンがかかってくれたので自力走行で帰り着いたのだけど、本当にドキドキでした。きっとそちらも大変だったのでしょうね。
お店できっと盛り上がれそうな気がしてきましたw。
良い旅を。
コメントありがとうございます!
いやはや、外国でのレンタカートラブルは面倒ですよね。
何より電話で英会話が疲れますし。
まぁ、僕の場合、自爆ですからひたすら謝るしかありませんでしたが。
ともあれ、これを教訓に、以降、給油ミスはしませんでした。
(わかってはいてもハラハラしましたけど)
それよりヨーロッパでの運転は、不用意にやらない方がいいですね。
オーストラリアの荒野とはまったくの別世界でした。
特に歩行者と馬車を基本に設計された旧市街の迷路は、
無事に抜け出られただけでもラッキー。
とにかくスリルとサスペンスの連続でありました。
イギリス後にレンタカー区間を設けなかったのは、いうまでもありません。
あ〜、電車とバスは楽でございます。