スイスを発った僕らはアルプスを南に下ってイタリアのミラノへ。
それからさらに南下して、いま地中海沿岸の街、
ジェノバに滞在しています。

美術館や大聖堂と見紛う荘厳なミラノ駅

晩夏の日差しがまぶしいジェノバのフェッラーリ広場
この数日間で感じたのは、気候の変化以上に大きい食文化の違い。
ヨーロッパ中部ではアルプス山脈を境に、
北側がライ麦とバター、根菜とビールを中心にしていましたが、
南側はそれらが小麦とオリーブオイル、葉野菜、
そしてワインに変わりましたからね。
とりわけ油がオリーブオイルに変わったせいか、料理が軽く感じられます。
見た目にも野菜の種類が増えて華やかになりました。
たとえば取材対象のミラノ風カツレツ(Cotoletta alla Milanese)。
遡ればとんかつの元祖と考えられ、オーストリア方面に伝播した、
シュニッツエルとの関連も興味深いものがありますが、
シンプルなオリジナルバージョンの他に、
ミラノではこんなお洒落なものまでありました。

その名も「Cotoletta Primavera(春)」
イタリアは取材対象が多いのため、老朽化の進んだ胃袋には厳しいです。
ととら亭で紹介する料理探しと、
ともこが修行したレシピのチェック以外にやっているのが「示準料理の比較」。
これは広い範囲で食べられている料理を横並びで比較し、
その関連性を調べてみようというものですが、
たとえばイタリアであればピッツァがそれに当てはまります。
ミラノのそれは薄い生地が特徴で、
なるほど焼き立てのパリパリさくさく感は、
パンピザタイプにはないものでしょう。
ほんと、具が乗っていなくても、これだけでおいしく食べられるくらい。

また、忘れちゃいけないギョーザの取材。
イタリアでは各都市でラビオリを調べています。

ミラノ
ハタのすり身のラビオリ
添えられたエビと火のとおし方のコントラストが絶妙。

ジェノバ
クルミのソースを添えたリコッタチーズとほうれん草のラビオリの一種
現地ではパンソッティ(Pansotti alla noci)といいます。
いやはや、いずれもおいしいのなんのって!
あ、仕事だった。
イタリアでもレストランでは英語がある程度通じますから、
陽気なホールの人に素材について話を聞いたりしています。
そこで興味深いのは南ヨーロッパ料理のシンプルさ。
おいしい料理というと、あれこれ混ぜて、手が込んでいて・・・
というイメージが一般的かもしれませんが、
今更ながらにイタリア料理を食べていて感心したのは、
素材の活かし方と火のとおし方。
たとえばジェノバ名物、
瑞々しいバジルが香るトロフィエ・アル・ピストゥ(Trofie alla pesto)。

アルデンテに茹で上げたパスタは熱々ですが、
生のソースはバジルの色と香りを殺さないよう素早く和えられており、
ほどよく温められた皿で、食べごろの温度を保ったままサーブされます。

とんかつの元祖か?
コトレッタ・アラ・ミラネーゼ(Cotoletta alla Milanese)
なおざりにされがちのガロニでさえ、主役と同等の扱いを受け、
熱々のカリカリでサーブされるポテト。
同業者ながら、ここまで気を配った仕事を目の当たりにすると、
やるじゃねぇか、とリスペクトせざるをえません。
しかし、ほどなくしてその理由はキッチンだけではなく、
ホールにもあることが分かりました。
料理人のモチベーションを支えるもの、
それはお客さんたちの料理と向き合うパッション。
じっくりメニューを読み、ときにはシェフに質問をぶつけ、
全体の流れを考えてオーダーする。
そしてひとたび料理が並べば、リラックスしつつも真剣に味わっている。
スマホを片手に「ながら食べ」している人など一人もいません。
こうした関係が豊かな食文化を育んで行くのですね。
さて、時計は間もなく20時。
僕らも予約しておいたレストランに出かけましょうか。
to be continued...
えーじ
相変わらずというか、君らしく生きているというか、元気そうで何より。
しかも僕らと同じ、ヨーロッパにいるとな。
こりゃ、驚いた。
で、本日10月7日現在、僕らはフランスのニースに滞在しています。
明日はここからモナコの日帰り。(ハイパー物価高で泊まれません)
それから9日にトゥーロンへ移動し、10日にマルセイユ日帰り。
そして11日はトゥーロンから夜行フェリーでサルデーニャ島に渡る予定。
君がいる場所と方向とは逆だからランデブーは難しいかな?
何とかなりそうだったら連絡ください。
無理はしないようにね。
ではのちほど!