2025年11月24日

第27回取材旅行 その21

Բարև ձեզ! (バレフ・デゼス(こんにちは!)
僕らは今、この長旅12番目の渡航国、
アルメニアのギュムリに滞在しています。

gyumlibusterminal_am.jpg
到着! マルシュルートカがひしめくギュムリのバスステーション

気がかりだったアルメニア入国は、シナリオ通りの対応であっさりパス。

passportstamp_am.jpg
右の緑色のスタンプがアゼルバイジャン 左がアルメニア

僕らが抜けたのはサダフロ ー バグラタシェン国境

georgianborder_ge.jpg
ジョージア側

まずジョージア側は「はいはい、また来てね〜」という感じで、
さらっと抜けました。
で、アルメニア側では荷物を全部持ってイミグレのブースへ。

armenianborder_am.jpg
アルメニア側

待ち構えていたのは眉間にしわを寄せた、40歳くらいの女性インスペクター。
ともこを先に行かせると案の定、何やら質問が始まりました。
そこへ僕がニカっと笑顔を浮かべながら割って入り、

「バレフ・デゼス! 
 僕のワイフはあまり英語を話さないので、代わりに答えましょう」

インスペクターはちらっと僕を見て質問を再開しました。

「アゼルバイジャンへの渡航目的は?」
「ああ、観光ですよ」
「滞在期間は?」
「そうっすね、1週間くらい」
「アルメニアへの渡航目的は?」
「同じく観光です。僕らはツーリストですから!」

インスペクターはまだ硬い表情を崩しません。
対照的に僕らはニコニコ。わぁ〜、楽しいなぁ〜!って感じ。

「アルメニアでの宿泊先は?」
「ギュムリのセシルホテルです」
「予約書を見せて」

僕はスマホでbooking.comのアプリを開き、

「はい。あ、日本語表示でわかんないっすよね?
 でも、ほら、ここ、Sesil Hotelってあるでしょ?」
「では携帯電話の番号をここへ書いて」
「はいはい」

この辺でインスペクターの表情がだんだん緩み始め、
ともこのパスポートにスタンプをがしゃん。
続いて終始ごきげんな僕の番。
最後は彼女もつられたのか、妙な笑みを浮かべ、

「Welcome」
「シュノールハカルチュン!(どうもありがとう)」

実はこれ、すべて想定どおりでした。
ともこが先に行ったのは、僕が先に抜けてしまうとフォローができないため。
そしてニカニカした表情と軽いノリは、
「僕たちは無害でのんきなノンポリ観光客」というキャラの演出。
そこで作戦は、

1.インスペクターがともこパスポートのアゼルバイジャンスタンプに気付く
2.質問を受けたともこがわからないふりをして振り返る
3.そこで僕が割って入り質問に答える
4.あとは相手の表情に反応せず、終始能天気に振舞う

インスペクターの質問内容も事前に調べておいたとおりでした。

アルメニアとアゼルバイジャンは因縁のハイパー宿敵関係。
先だってアメリカの仲介で「和平協定」を結びましたが、
あれが経済的なご褒美とロシアとの距離を取るためのジェスチャーであることくらい、
国際政治学者でなくてもわかります。現実は何ら変わっていないのですよ。
隣のブースではアゼルバイジャンスタンプがなかった外国人でさえ、
「アゼルバイジャンへの渡航歴はありますか?」と聞かれていましたし。

なんてやりとりはあったものの、
表情を読むとインスペクターも仕事でヒールを演じているだけの気もします。
本当はいい人なのに、無理に怖い顔をしているようなね。
実際、アルメニアの人たちはとてもフレンドリーなんですよ。

トビリシを出発した15人乗りのポンコツバンに乗っていたのは、
僕ぐらいの年齢のドライバーと6人の乗客だけ。
発車して間もなく停まったので何だろうと思ったら、
ドライバーと2人のお客さんが道脇の店に入り、パンを買って戻りました。
そして通路を挟んで反対側に座っていた男性がともこにそれを差し出し、
「おいしいよ、ひとつどうぞ!」
見ればロシアから伝わったピロシキの大型変種、カルカンダクじゃないですか。
まだ揚げたてで温かい。こちらもそんな心遣いに心が温かくなりました。

次に停まったのはフルーツ売りの露店が並ぶところ。
ここでは僕ら以外の全員が車を降り、買い物を始めたのですよ。
(あとでカキをもらっちゃいました)

streetshopping_ge.jpg
アルメニア人はフルーツが大好き 
何人家族ですか? と聞きたくなるくらいの量を買っていました

さらにこの先ではスーパーにも立ち寄って皆さん買い出し中。
これ、一応「国際バス」なんですけど、買い物ツアーみたいな感じ。
降りるときはみんなで買い出しした荷物を出すのを手伝います。
長閑ですな〜。

さて、アルメニア第2の都市といわれるギュムリですが、
観光客はまったく見かけず、ローカル色がめっちゃ濃いです。

gyumlisunset_am.jpg
教会の鐘の音が響く、夕暮れのヴァルダナンツ広場

そのせいかバスターミナルで「どこへ行くんだい?」
と声をかけてくるマルシュルートカのドライバーたちもシャイですね。
ホテルを目指しつつ、最初のミッションは軍資金の調達。
これはヴァルダナンツ広場近くのATMから現地通貨のドラムを引き出しました。
暴利なコミッションはなし。(こうでなくっちゃね)
そして中心から近く地の利のいいホテルはこんな感じ。

gyumurihotel_am.jpg

ここのコスパがすごい。

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郷土料理満載の朝食 食べきれませんでした

こんな手作り朝食がついて、広くて居心地のいいダブルの部屋が、
ふたりで14,025ドラム(約5,800円)!
家族経営で皆さんとてもフレンドリーです。

そしてさっそく始めた仕事も大ヒットでした。
実はこれもリベンジで、2014年の取材ではまったく見つからなかった、
アルメニアギョーザのマンティがあったのですよ!

armenianmanti03_am.jpg
調理済みの具材を小麦粉の皮で包み、キャセロールに入れてオーブンで焼いたもの
ヨーグルトソース、もしくはトマトソースを添えて頂きます
ギョーザの概念が変わる一品

armenianmanti01_am.jpg
形もユニーク 小さいので1人前を作るだけでも大変ですね

どうです? ギョーザっぽくないでしょう?
アルメニアン・マンティは僕らの取材歴でも飛び抜けた異端児で、
加熱方法が茹で、蒸し、揚げ、焼きのいずれでもなく、
ベークド(オーブン焼き)なのですよ。だから食感がカリッとしてる。
さらにギョーザの定義を揺るがす上部開放型。
この口を開けたタイプはこれまでもモンゴルのボーズ以外、見たことがありません。
しかし、名前からして中国餃子の饅頭の名を引いていることはあきらかでしょう。

これ、料理の進化論の中ではけっこう大きなインパクトがあって、
僕らもギョーザを含む包餡料理を、

「無発酵の小麦粉の生地を用い、
 何らかの具材を2重以内に包んで密閉し、加熱調理したもの」

と定義していますが、その前提となったのが中華料理の分類。
餃子と焼売、春巻き、包子を区別できる条件として考えたものでした。
たとえば春巻きは無発酵の生地でも2重以上に生地を巻きますし、
包子は発酵生地を使うので、簡単に餃子と分けられます。
極めて紛らわしい焼売も、「密閉し」で除外できますよね?

ところが厄介なのが「例外」の存在です。
モンゴルのボーズは蒸し型で、上部が開いたままなのですよ。
名前からして餃子の子孫である可能性が高いにもかかわらず。
(餃子は饅頭→包子→餃子と変名しているのです)
では特例として入れてしまえばいいかというと、
それなら焼売は餃子だね? っと突っ込まれてしまう。
ん〜・・・
と悩んでいたところに追い打ちをかけてきたのがアルメニアン・マンティです。
しかもこれはバリエーションがあって、スープバージョンもあるじゃないですか。

armenianmanti02_am.jpg
ヨーグルトスープに入ったマンティ これが実にうまい!

ここでもアルメニアン・マンティは特殊で「煮て」いません。
オーブン焼きしたものがポイっと入っているだけ。
だから食感はカリカリのまま。

前回のヒンカリのところでも触れましたけど、
料理って法則や定理がないだけではなく、なんとかまとめようとすると、
たいていこうした例外が飛び出してくる。
家政学や栄養学、発酵学はあっても、
料理学や調理学が成立しない理由がここにあるような気がします。
「学」は何らかの形で正誤の判定がつく構造が前提ですが、
(じゃないとテストが作れないでしょ?)
近付けば近付くほど、捉えどころがなくなってしまうのですね。

とエクスキューズしながらも、
ギュムリではフードファイトに近い状況で取材を続けています。
興味深い郷土料理がたくさんあるのですよ。
これからちょっと外を歩き、何とか腹を空かせてディナーに行ってきます。
がんばらねば!

to be continued...

えーじ

atrestaurant01_am.jpg
アルメニアも量が多い! 牛のように胃袋が4つあればなぁ・・・
posted by ととら at 02:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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