2026年01月26日

第27回取材旅行 その42

昨日の早朝、僕らはポンティシェリに到着しました。
ここはユーラシア大陸の横断ルートで最も南の街。
気候はまたしてもがらりと変わり、
霧雨が降っていることもあってかなりの湿度です。

arrivalpuducherry_in.jpg

バンガロールからの移動は夜行3段寝台に乗って約10時間。
21時に出発してほぼ寝ていましたから、
アムリトサル、ムンバイ間の44時間に比べればあっという間でした。

3asleeper_in.jpg
Puducherry Express 16573号 Third AC(3A)内の車内
寝るときは背もたれの手前を90度持ち上げ、
垂れ下がっているハーネスで吊って固定します。
上下のスペースは狭く、女性でも上半身を起こせませんが、
寝心地はいいです。

短いながらも「6人部屋」はおもしろかったですよ。
週末ということもあって客室はほぼ満席。
いろいろな人から興味深い話が聞けました。
僕の隣に座っていたのは30歳代前半の子供連れ。

「お住まいはどちらですか?」
「バンガロールです。実家はアグラーですが」
「ということはお仕事でバンガロールに?」
「ええ」
「なるほど、ではIT系でしょう?」
「はい、ワイフもそうです。あなたはどちらから?」
「日本から」
「やっぱり!すごい国ですよね、技術が進んでいて」

外から見た日本のイメージ、特に若い人が持っているのは、

日本=技術が進んでいる=経済発展=マンガとアニメがすばらしい

インドに限らず、最近はこういう印象を語られる方がとても多いです。
そこに水を差すわけではありませんが、

「ありがとう、そう言ってもらえるとうれしいですよ。
 でも実際はいろいろ問題もあってね」
「問題? たとえば?」
「経済はけっこう厳しいですね。
 確かに日本で働くとインドに比べたら大金が手に入ります。
 しかし、東京だと小さなアパートでさえ、
 安くても月に500から650USドルくらいの家賃がざらなんですよ」
 (彼らにわかりやすくドル換算で話しています)
「ええ!? そんなに!」
「だから所得が高くたって生活コストも高いから、差し引きたいして残らない」

実はこの誤解、日本人が欧米人に抱いている幻想とも共通している気がします。
インバウンドで来る旅行者だけに目を向けていると、
「ヨーロッパやアメリカは景気がいいな!」と思われるかもしれませんが、
実際、一昨年から横断的に市井の状況を見た限りでは、
傷んだ住宅、年若い物乞い、清掃が行き届かない街並み、
老朽化が進んだ公共の交通機関・・・
広がる経済格差と弱者を容赦なく追い詰めるインフレは、
日本に限った話ではないのですよ。
イギリスやフランスをはじめとする西欧で痛感したのは、
いいものが相応の値段になっているのではなく、
質と量を不問にし、値段だけが不相応に上がるという現象。
たとえばダブリンで、
タオルもない2段ベッドの小さな部屋が1泊3万7千円もしたように。
これは好景気ではなく、インフレってのでしょう?

「日本がすべてにおいて優れているというわけではありません。
 だから僕らはお互い学び合えるものを持っている」
「日本がインドから学ぶ?」
「そう、僕らの国は敗戦後に経済を立て直し、
 心地よい部屋にモノをあふれさせた生活を手に入れました。
 でもね、その結果は、期待していた幸福とイコールではなかったんですよ」

ちょうどこんな話をしていたとき、隣のコンパートメントの少女が顔を出し、

「あ、あの、写真、撮ってもいいですか?」

はにかみながら、たどたどしい英語で話してきました。

「あ、この子ね、さっき私の名前を聞きに来たんだよ」
「へぇ、そうなんだ。どうしたいか聞いてごらん」
「私たちの写真が撮りたいの?」
「あ、みんなの写真です」
「いいよ、じゃ、みんなで撮ろう!」

と頷いたとたん、現れたのは3人姉妹とお母さん。
狭いベンチシートに4人がむぎゅっと寄り添って、お母さんがパチリ。

withgirls02_in.jpg

ここで僕は先の話をしていた若夫婦のご主人を振り返り、

That's why we are here.

もしかしたら、いや、たぶん、
彼に僕が言わんとしたことは伝わらなかったでしょう。

不都合な逆説ですが、
経済的に発展し、モノが豊かになるにつれ、人は孤独になって行く。
日本のみならず、韓国、中国にも共通する傾向です。
そしてこれが少子化に繋がっていることに気付いても、
その原因を経済と結びつけて考えてしまう皮肉。
かつてエチオピアで日本の「引きこもり」について話したとき、
彼らにはどうたとえても、この言葉の意味が通じませんでした。

なぜ、その人は外に出てこないんだ?
悩みがあるなら、外に出て友だちに相談すれば、すぐ解決するじゃないか。

この「当たり前」が、そうではなくなった僕らの社会。

日本に比べたら、インドは徹底的にモノがありません。
住宅環境も劣悪なところが多い。
年収は中央値で日本の推計約400万円に対し、約32万円と12倍もの差がある。

では、インドの人々の幸せは、僕らの1/12しかないのか?

インドに限らず、発展途上国と呼ばれる国々で子供たちに接していると、
豊かさとは何なのか?
この素朴な問いがいつも頭に浮かびます。

まぁ、情けないことに、ここまで旅を続けていても、
僕はまだその答えを見つけていないんですけどね。

to be continued...

えーじ

indianocean01_in.jpg
今回の旅で最初に見た海はエーゲ海。ついにインド洋に到着しました。
posted by ととら at 00:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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