2017年09月20日

ととらな本 その9

9月も中旬を過ぎました。
秋風を感じて思い出すのは、去年の今ごろのこと。
僕は著書『世界まるごとキョーザの旅』の原稿締め切りに追われ、
ランチとディナーの合間だけではなく、
時にはととら亭の営業時間中もカウンターの裏側にしゃがみ込んで、
パソコンのキーボードを叩いていたのです。

執筆が難航したのはアイデアが浮かばなかったから・・・

ではありません。

僕たちの旅を主体とした第1章から第11章までは、
自分の経験を書いていたので結構すらすら進んでいました。
ところが問題はその後。
締めくくりに向けてギョーザの時代考証が必要となり、
知識が曖昧な部分を確認するためにいろいろ文献を当っていたのですが、
そこで思わぬ壁にぶつかってしまったのです。

ん?
この情報は断定形で書かれているけど、
著者が直接経験できない過去のことなのに、
そこまで胸を張ってモノが言える根拠は何なんだ?

ふと気になってよく読んでみれば、
僕が手にした文献の幾つかは出典が併記されていません。
特に誰もが気軽に発言できるインターネット上の情報は、
体裁が百科事典風でも事実かフィクションかすら微妙な記事が多い上に、
別の記事をそのままコピペしているだけの『なんちゃってオリジナル』も、
大手を振って跋扈しているではないですか。

それでも何とか裏を取ろうと出典のある情報を辿ってみたら、
出典そのものの出典がなかった!
なんてオチもありました。

時間がないのに困ったなぁ・・・

実証主義が僕らのポリシー。
テレビや雑誌、インターネットで料理は分かりませんから、
お客さまに紹介するためには必ず現地まで行き、
自分自身で食べてみます。

しかしこの手法が使えるのは、いま存在している対象だけ。
この料理はかつてどうだったのだ?
というような疑問のように相手が遠い過去になってしまうと、
誰もが例外なく、遺物という変質した物証を除き、
こうして本や画像などの情報だけが唯一の手掛かりにならざるをえません。
そして情報とは解読されて唯一の答えに行き着くものではなく、
個々人によって恣意的に解釈される玉虫色のものなのです。

ギョーザが何処で、いつ、誰の手によって生み出され、
それから、どのように広がっていったのか?

その答えはまだ僕の経験のはるか彼方ですが、
本という形にするからには、方向性くらい示しておきたい。

そう思いつつも、この『過去の壁』で行き詰った僕は、
可能な限り経験した『事実』と間接的に得た『情報』を混同しないよう、
はっきり書き分けることで、この壁を迂回するしかありませんでした。

え?
要するに最後はモノ言いの歯切れが悪くなっただけだろう?

う・・・アタリです。
正直、タイムマシンが欲しくなりました。

えーじ
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2017年09月17日

小さないかめしと大きな思い出

何かの拍子に思わぬ記憶が蘇る。
こんな経験は誰にでもあると思います。

僕らの場合、そのトリガーになるのは音楽と香り、
そして味でしょうか。

先日のランチが終わって間もなく・・・

「こんちは」

キッチンの裏戸に現れたのは近所のおじいさん。
ともことはずっと前から仲良しです。

「あ、こんにちは!」
「これ、さっき京王デパートに行ってきたんだ」
「え? 何かくれるんですか?」

ともこはおじいさんが差し出した袋を受け取り、
中を見ると、

「あ〜! いかめしだ!」
「北海道の物産展をやってたんだよ。そこでみつけてね」
「いただいていいんですか?」
「一個ずつ入ってるからケンカするんじゃないよ」
「いつもすみません!」

見てみればそれは北海道は森町の名物、
阿部商店のいかめしじゃないですか。
早速、その日の賄いで食べてみると・・・

「おいし〜!」
「うん、それだけじゃなくて北海道を旅していた頃を思い出したよ」
「そうね!」

北海道。
この北の大地は、ともこが青春時代を過ごした場所なのです。
そして僕にとっても、
日本をオートバイで周った旅のバックボーンともいえる特別なところ。

「あ〜、懐かしい味がする」
「最後に食べたのは何年前だっけ?」
「僕はね・・・ん〜・・・たぶん25年くらい前だと思う」
「じゃ、私たちが出会う前じゃない」

あの頃の僕は20歳代後半。
真っ黒に日焼けしたロン毛のライダーで、
お金が溜まると仕事を辞めては国内をぶらぶらしていたのです。
中でも北海道は幾度となく訪れた場所。
そして森町といえば、朝、函館を出発して国道5号線を長万部へ向かい、
大沼を越えてほどなく右折したところにある小さな町。
海沿いにあるJR函館本線の森駅の売店で、
阿部商店のいかめしをよく買ったものです。
(阿部商店は駅からもうちょっと西に行ったところにあります)

タンクバックにいかめしを入れ、再び5号線に戻って小樽を目指し、
昼頃、道路脇の売店で揚げいもと牛乳のランチ。
なんとも脈略のないメニューでしたけど、美味しかったなぁ・・・

おじいさんにもらったいかめしを噛みしめていたら、
北の大地を走った思い出が次々と蘇って来ました。
青い空、緑の地平線、群青色の海、そして心やさしい人々。
あの出会いの旅を一言でいうなら、
僕は迷わず『青春』という言葉を選ぶでしょう。

他の人にはなんの意味も価値もありませんが、
僕にとってはかけがえのない宝物の日々。
あの日々があるからこそ、今の僕がある。
そう躊躇なく言える、そんな旅だったのです。

「ねぇ! ちょっとぉ! あたしの話聞いてる?」
「え? あ、ああ、聞いてるよ」
「うそ! ぜんぜん上の空なんだもん」
「いや、なんかね、懐かしいことを思い出しちゃってさ」
「北海道?」
「うん」
「お互い別々だったけど、いい時代だったわね」

おじいさんがくれた、小さないかめし。
その中にはご飯の他に、
大きな、大きな思い出がいっぱい詰まっていたような気がしました。

えーじ
posted by ととら at 14:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年09月15日

遅れた宿題 もう一丁!

先週、初めて行った研修旅行のお話をアップしましたが、
続いて2回目、2014年12月のソウル研修も仕上がりました!

前回と同じく、ととら亭ウェブサイトの『いろいろ』ページを、
ずずっと下へスクロールすると、
『研修旅行  〜 調理を学ぶ旅の記録 〜』が出てきます。
そこの『第2回 (2014年12月) 韓国』をアップしました。

旅の食堂ととら亭ウェブサイト

前回の反省から、今度は講習中もなるべく写真を撮り、
全体の雰囲気が分かり易くなったと思います。

お楽しみを!

えーじ
posted by ととら at 10:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年09月13日

ゲージュツの秋

昨日の定休日はまたまたお出かけ。
今回は bunkamura musium で開催中の、
『ベルギー 奇想の系譜』に行って来ました。
僕は自他ともに認めるアートマニアですが、
とりわけ絵画には目がありません。
しかしながら好みは美術の教科書で習った、
文科省お墨付きの巨匠の作品ではなく、
明らかに傍流というか、
逆に学校では『道徳的に』避けられている類のもの。

そりゃまぁ当然の話で、
何と言っても、そうした画家や潮流のことを知ったのも、
若かりし頃に読んだ渋澤龍彦氏や種村季弘氏の著書からですしね。

とういうわけでシュールレアリスム一派のアーティストを起点に、
ダダに戻り、ウィーンの分離派やベルギー象徴派に飛び、
はてやフランドルのみょうちくりんな幻想画に遡る、
偏愛的な趣味が出来上がったわけです。

ならば当然今回の目玉は、かのアンドレ・ブルトン法皇にして、
「完璧な幻視者」と言わしめた、
幻想画の大家、ヒエロニムス・ボスでしょう。

作品のコンセプトそのものは信仰にもとづいた真面目なものですが、
その絵を構成するディティールが変なのですよ。
特に得体のしれないクリーチャーや怪物たちが取る仕草は、
描かれた時代背景を鑑みると尋常ではありません。
19世紀の詩人、ロートレアモン伯爵が謳った、
『解剖台の上のミシンと傘の偶発的な出会い』が凡庸に思えるほど、
器物と生物が融合したり、
解剖学的なコンテクストが組み替えられた怪物たちは、
昨今のSF映画に登場してもおかしくない新奇さを持っているのです。
その影響範囲はことのほか広く、
メキシコで活躍した女流シュールレアリストのレメディオス・バロや、
夭折の人形作家、天野可淡の作品からも、ボスの影響は垣間見られます。

展示を見いて驚いたのは、こうした当時の思わぬヒット作を、
オヤジの方のピーテル・ブリューゲルが版画でパクっていること。
これまたパトロンのリクエストだったのかもしれませんが、
彼もボスのクリーチャーたちをほぼ完全コピーして、
7つの大罪の連作を描いている。

こういうのを見ていると、
今でこそ彼らの作品はゲージュツ品として美術館に隔離されていますが、
元来は食うため売るための商品なんですよね。
だからヒット作が出ると、
類似したものが雨後の筍のようにニョキニョキ現れて来る。
ビジネスは今も昔も変わらないってことです。

134点の展示はまずまずのボリューム感でした。
構成もよく練られており、
ベルギー象徴派からは、お約束のフェリシアン・ロップスや、
フェルナン・クノップフのダークなエログロ系だけではなく、
とことん暗いレオン・スピリアールトもあったし、
シュールレアリスムからは、
ポール・デルヴォーとルネ・マグリッドが彩を添えていました。

マグリットの『大家族』は、
宇都宮美術館が所蔵しているので度々見る機会がありますけど、
ポーラ美術館から貸し出された『前兆』はこれが初めてでした。
へぇ〜、こんな作品があったんですね。
この絵は『アルンハイムの領地』を洞窟の中から見た構図になっているのです。
マグリッドはリンゴや雲、葉っぱなど気に入ったモチーフを、
組み合わせを変えて何度も使いまわしながら仕事をする人でしたが、
『アルンハイムの領地』の山並みまで転用していたとは知らなかったな。
実はこの絵のレプリカが実家の僕の部屋に掛けてあるんですよ。

美術館を出て次に入ったのは向かいにある美術書の専門店、
ナディッフ モダンさん。
リブロポートが閉鎖されてリブロが『健全な』書店になってしまった今では、
こういうマニアックな店は本当に貴重です。
痒い所に手が届くと申しますか、
今度読もうかな、と思っていたジョージアの国民的飲んだくれ画家、
ニコ・ピロスマニの本が幾つか並んでいました。
実はギオルギ・シェンゲラヤ監督が撮った、
ピロスマニの自伝映画のDVDを少し前に手に入れたんですよ。
今度ゆっくり観ようと思っています。

さて、せっかく渋谷まで来たんだからと思い、
小雨が降る中、レコファンさんとディスクユニオンさんで仕入れもしよう!
と勇んでみたものの神保町や新宿、吉祥寺とは異なり、
売り物は若年層のお客さんをターゲットにしているようなものが多く、
残念ながらオジサン好みの収穫はありませんでした。

店を出てJR渋谷駅に向かって歩いていると、なるほどさもありなん。
僕の年齢だとこの街では少々浮きますね。
やっぱり下町の方が落ち着くな。
と妙に納得しつつ家路についた僕でした。

えーじ
posted by ととら at 09:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年09月10日

僕の小宇宙 その3 神保町2

僕の辞書にない言葉。
それは『出世』と『定年』。
こんな話を本にも書きましたが、実はもうひとつない単語があります。

それは『退屈』。

昔から趣味が服を着て歩いているような人間ですから、
時間さえあれば、やりたいことが今でも沢山あります。

そんな僕にとって神保町は、
音楽以外にも重要なニーズに応えてくれる小宇宙的な街なのです。
では中古CDショップの他に行くところといえば・・・

それは山屋。

この街にはICI石井スポーツさんやサカイヤさんをはじめ、
登山に軸足を置いたスポーツ店が点在しています。
20歳代の頃から登山ライダーだった僕は、
度々ここを訪れては装備を調達していたのです。
キャンプツーリングとトレッキングのギアは殆ど重複していますからね。

思えばアウトドア用品はここ30年で大きく変わりました。
たとえば皆さんが日常的に着ているフリース。
あれは当時パタゴニア社のシンチラベストくらいしか輸入されておらず、
価格もすこぶる高価だったので、
「へぇ〜、ウールに代わるそんな素材があるのか」
程度の認識しかなかったのですよ。

しかし新しい物好きな僕は、
ちょっと値段を下がってリリースされたノースフェイス社製を気張ってゲット。
しかも上下です。当時はなんとボトムもあったんですよ。
当然強度が足りませんから、
お尻や膝はナイロンの黒い生地で補強されていました。
これを着て山に行った時には注目されましたね。
「その毛布みたいな服はなんだい?」ってな具合に。
ところがやっぱり無理があったんでしょう。
5回も使わないうちにボトムのフリース部分がへたったり、
破れたりして程なく使い物にならなくなりました。
どうりであれ以来、再版されないわけですね。

そしてこれまた今では誰もが知っているグレゴリー社のバックパック。
当時はキスリングタイプがまだ主流でしたから、
すらっと縦に長いナイロンタイプはクライマーの間でも、
あまり使われていなかったのです。
これにも僕は飛びつきました。
カッコウから入る。これです。
しかも背負ってみると明らかにキスリングタイプよりバランスが良く、
2気室タイプは底のものもすぐに取り出せるので、
便利なことこの上ない。
以来、メーカーはミレー、カリマー、ノースフェイスなどに変えつつ、
30リットルのデイパックから100リットル超の遠征用まで、
行き先に応じて使い分けています。

当時は冬山もソロで登っていましたから、
各ギアの重さは重要なファクターでした。
ですからコッヘルやガスコンロ、はてや魔法瓶まで、
まだまだ高価だったチタン製を早くから取り入れていたのです。
どうしても手が出なかったのは、同じくチタン製のアイゼン。
あれはさすがにちと高過ぎた!
それでもとにかく荷物を減らし、必要なギアを軽量化することは、
膝上の新雪をひとりでラッセルしながら進まねばならない僕にとって、
至上命題だったのです。
ほんと、フルパワーで15メートルほど雪の斜面を登ったと思ったら、
滑ってズルズル元の場所まで落ちてしまったときなど、
放送禁止用語連発で毒づいていましたよ。

軽量化と言えば、
テントはICI石井スポーツさんのゴアライト1〜2人用を愛用していました。
これは本当に優れモノで、驚くべき軽さもさることながら、
ゴアテックスならではの通気性には驚いたものです。
たとえばテントで一夜明かすと大切なシュラフの下側がぐっしょり濡れた!
なんてことがよくあるのですが、
これは自分の体から出た水蒸気がテント裏側の表面で結露し、
じわじわ垂れて来るのが原因。
ところがゴアテックスだと、
テントを締め切っていても水蒸気は外に排出されるので、
1週間の縦走中でさえシュラフはさらっと乾いたままです。

旅に出る前に神保町で幾つかの装備を新調する。
僕にとってはこの時点でもう新しい旅が始まっていました。
この街の山屋もまた、一つの旅の入り口なんですね。

今日の東京地方は素晴らしい秋晴れ。
ああ、トレッキングに行きたい!

えーじ
posted by ととら at 17:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年09月07日

僕の小宇宙 その3 神保町1

一昨日の定休日は久し振りに神保町へ行って来ました。
目的は『仕入れ』。
と申しましても食材ではなく、
買ったのは営業中に流している音楽CDです。

JR御茶ノ水駅から靖国通りに南下し、すずらん通りを西に通り抜け、
白山通りを北上して水道橋駅へ抜けるコースには、
中古のCDショップが沢山あります。
しかもその殆どが、いわゆるジャンク系の店ではなく、
しっかりした内容の商品を豊富に扱う一種の専門店ともいえるもの。
中でもジャズに特化したDisc Unionさんは、
必ず足を運ぶ場所のひとつです。
幅広いジャンルを網羅しつつ、
思わぬ掘り出し物が多いジャニスさんも外せません。

僕が中古ショップを巡る理由は価格もさることながら、
新品を扱う店にはない幅広い品揃えにあります。
神保町の中古CDショップは販売のみならず、
買取にも非常に力を入れているので、
amasonさんでさえ見つからないレアな作品ともしばしば出会えるのです。

僕の仕入れ方は殆どがジャケ買い。
それもなるべく聴いたことのないアーティストの作品を手に取ります。
国も多岐にわたり、ジャズでいえばアメリカのメインストリームよりむしろ、
ヨーロッパを始め、南米やアフリカなどのサードワールド系が多いですね。
そして構成はスモールコンボ。
ととら亭で回すには大編成だと少々やかましい。
ですからホーンものも基本はワンホーンです。

こうした情報を得るにはジャケットをくまなく見る必要がありますから、
かなりの時間、僕はCDの棚の前に陣取っています。
そして4〜5軒はショップをハシゴしますので、
なんやかんや半日前後は神保町界隈をうろちょろしていますでしょうか。

これがほんと、実に楽しい。
物理的にはほんの数メートルの世界ですが、
僕には国境を越えた広がりと時間を貫通した奥行きが感じられるのです。
いうなれば音楽を扉にした、
小さな旅の気分に浸っているようなものでしょうか。

ん? なんだこれ?
へぇ〜、こんなアーティストがいるんだ。知らなかった!
おや、この作品はどうだ? なかなかユニークじゃないか。

こんな具合に足を棒にしつつ、気が付けば時刻は夕方。

さて、今回はヴォーカルもので収穫がありました。
普段相場の高い Connie Evingson や Alexis Cole、はてや Jacintha まで、
狙っていた作品が手頃な価格でゴロゴロあるじゃありませんか。
ジャケ買いは Erin MacDougald の自主製作版 The Auburn Collection。
これは当りでした。
Hanna Elmquist の Grund も北欧独特の透明感がいい感じ。
インストでは Cherles Lloyd爺が ECM から出したバラード集 The water is wide。
いぶし銀のプレイもさることながら、
ピアノがなんと Brad Mehldau なんですよ。
連弾かと聴き紛うプレイを一人でこなす技巧派の彼が、
これほどまでに情感豊かな演奏をするとは、正直驚きました。
閉店間際に流すには最適な一枚です。

予想外のハズレは Alexis Cole の A Kiss in the Dark。
あ、いや、プレイは素晴らしいんですよ。
問題はミックス。
場末のカラオケのようにリバーブ(残響)のかかったサックスが、
右から大きく全体を覆い、
肝心のヴォーカルはセンターの奥に小さく引きこもっているじゃないですか!
なんじゃこりゃ? と思ったら、これバイノーラル録音の作品だったのです。

昨今、自宅のステレオより出先のスマホで音楽を聴く人が増えたからか、
イヤフォンでもスピーカーで聴いているようなサウンドで再生できるよう、
楽器からの直接音の他、外耳や内耳の反射や回折音を加えた、
特殊な録音方法が取り入れられることがあります。
なるほどってんでイヤフォンで聴いてみると・・・
やっぱりなんか変だ。ぜんぜん自然じゃない。
という訳で残念ながらボツ。

こうしてゲットした作品を自宅に帰ってライナーノーツを読みながら聴くのは、
読書や映画鑑賞とはまた一味違った面白さがあります。
特に知らなかった名品との出会いは格別ですね。
欲を言えば、かつて時間があった頃のように、
1枚のCDを通してじっくり聴いてみたいものです。

えーじ
posted by ととら at 17:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年09月05日

遅れた宿題

週末までには何とか『旅のお話』をアップしなくちゃ!
と前回結びましたが、先週末はあまり忙しくなかったので、
かなり前倒しして仕上げられました。

ととら亭ウェブサイトの『いろいろ』ページをずずっと下へスクロールすると、
『研修旅行  〜 調理を学ぶ旅の記録 〜』が出てきます。
そこの『第1回 (2013年11月) タイ』をアップしました。

旅の食堂ととら亭ウェブサイト

初めての研修旅行で僕も包丁を握っていたことから、
あまり研修中の写真がなくて恐縮ですが、雰囲気は伝わると思います。

お楽しみを!

えーじ
posted by ととら at 00:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年09月03日

寄り道、脇道、迷い道

ウェブサイトの更新をする度に気になっていること、
いや、見て見ぬふりをしていることがあります。
それは『いろいろ』ページにある『旅のお話』。

ととら亭を始めてかれこれ取材旅行は14回。
研修旅行は4回行っているにもかかわらず、
ご紹介できているのは、なんと第5回目のチュニジア取材旅行まで。
研修に至っては、ひとつもアップできていません。

あちゃ〜・・・
ブログでダイジェスト版をアップしてはいるものの、
この遅れはちとまずい・・・

という気持ちに押されて、この夏は地道にやっています。
手を付けているのが、初めて行った2013年11月の研修旅行。
訪れたのは13年振りのバンコクでした。
しばらく埋もれていた写真データを見ていると、
あれこれいろんなことを思い出します。

ああ、スワンナブーム国際空港は初めてだったな、
バンコクに地下鉄が通っていて驚いたよ、
やっぱり現地で食べた屋台のタイ飯は格別だ、
という具合に次々と・・・

そうそう、思い出すと言えば、
こうして写真を見たり、旅行の話をしている時に限らず、
ぜんぜん関係ない掃除中や通勤で歩いている際に、
旅で見た光景が心に浮かんでくることがあります。

不思議なのは、それがエッフェル塔や自由の女神、
はたまたローマのコロッセオのような絵になるランドマークではなく、
何のとりえもない、ありふれた光景だということ。

たとえばパラグアイの地方都市、エンカルナシオンのバスターミナルとか、
ネパールのカトマンドゥにあるタメル地区の横丁で入ったカフェ、
はたまたチュニジアのメディアの迷路などなど・・・

数多ある思い出の中から何故そのワンシーンが選ばれたのか、
自分の頭のことながら、まったく理由が分かりません。

時にはその光景が何処だか分からず、
「ねぇ、山間の村で石畳の道があって、
 崩れた遺跡に行ったのは、どこだったっけ?」と、
 ともこに訊いてみることもあります。

そしてそこからまた連鎖反応的に、
脈略なくシャッフルされた思い出が次々と浮かび上がって・・・

ふんふん、あの村はペルーのオリャンタイタンボだったか。
ペルーと言えばクスコのピザは、
ローマのトラステヴィレ地区のピッツアリアに匹敵していたな。
あれはぜひもう一度食べたいものだよ・・・
うん。
うまいと言えば、珍しいポークのシャワルマも絶品だった。
あれはどこだっけ? ・・・ああ、アルメニアのエレバンだ!
あそこで買ったジャズのCDは掘り出し物だったよ。
でもジャズのライブならコペンハーゲンさ。
偶然やっていたステイシー・ケントのショーは最高だった。
ステージのすぐ近くで聴けたんだからな。
だけどデンマークまでは遠かったよ、ほんと。
なんてったって安い航空券を選んだから北欧に行くのに、
経由地が南国のタイときたもんだ。
あの時もうちょっと時間があったらバンコクでストップオーバーして、
屋台のタイ飯が食べれたのに、残念だったよ。
うん。久し振りのバンコクだったのにな。
バンコク・・・?

あれ・・・何やってたんだっけ?

ん? そうだ!
タイの研修旅行の写真ページを作ってるんだった!

という具合にコースアウトしちゃうもんですから、
なかなか先に進みません。
仕事まで旅と同じくドリフトしてちゃ、しょうがないですね。

なんとか次の週末までにアップしなくては。
がんばります。

えーじ
posted by ととら at 15:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年08月31日

夏の終わりと終わらない旅

今日で8月も終わり。
東京は霧雨が降る涼しい秋の入り口です。
来月もまだ暑い日があるとは思いますが、
気分的にはもう夏ではありませんね。

ととら亭でも今日からポタージュを温製に変え、
おしぼりを温めて出しています。
そうそう暖簾も、
ととらレッドが基調のスリーシーズン用に変えなくては。

皆さんにとって、この夏はどんなことがありましたか?
今でこそ僕らは仕事に明け暮れていますけど、
20歳代のころは、夏といえば冒険の季節でした。

といっても植村直己さんやトール・ヘイエルダール氏のように、
前人未到の冒険に挑戦するのではなく、
それは自分にとって未知の世界へ足を踏み入れることです。

その意味でなら冒険は誰にでも出来ることですし、
実際、意識するかしないかは別として、誰もがやっているのですよ。
たとえば、それが隣町であったとしても、
行ったことがないのであれば、それも一つの冒険ですからね。

僕たちは例外なく、生まれて間もなくは、
幻想と想像の世界に住んでいます。
そして少しずつ、
長い年月をかけながら体験を通し、
自分を取り巻く世界という現実を知るのです。
それは言い換えると人生そのものが冒険の旅だと言えるでしょう。

いろいろなことを知った大人であっても、
この旅が終わったわけではありません。
世界は僕たちの想像を超えた広がりを持っていますからね。

衛星写真やインターネットの情報で切り取られたものは、
部分と全体の文脈でいえば、
砂丘の砂粒程度のものでしかありませんし、
そもそも情報は幾ら積み重ねても現実に還元できません。
それは体験するしかないのです。

先日、酷暑の昼下がり、
平和の森公園でジョギングしていた時に、
空を見上げて大きく息を吸ったら、
ライダーの頃、
この時期に夏を追いかけて走った南への旅を思い出しました。

ああ、この風の匂いは、
焼けた国道で感じたものと同じじゃないか。

乾いた4ストロークエンジンのエグゾーストとヘルメットに当る風の音。
眩しい太陽と吹き付ける熱気。
どこまでも青い空を背に湧き上がる積乱雲。

あの陽炎が揺れる道の彼方に何があるんだろう?
もう1時間走ってみようか。
もう1時間。
そしてもう1時間。

旅を続けて知ったことのひとつは、
青春のころに走り始めた道には終わりがないということでした。

そう、今でも僕は、
あの日差しに焼けた冒険の道を走っているのですよ。

えーじ
posted by ととら at 16:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年08月26日

『お休み』の裏側で

今月から金曜日のランチをお休みさせて頂くことにしました。

ウェブサイトの【おしらせページ】にも書きました通り、
理由は「仕込みが間に合わないため」。
と言うと、
ともこだけの都合のように聞こえてしまうかもしれませんが、
実は僕の方もかねてから仕事が溜まる一方で、
時間の調整は積年の懸案事項だったのですよ。

そんな訳で今は13時45分。
普段ならランチタイムですが、暖簾を下げた店の中で、
二人ともそれぞれ地味に仕事をしています。

ともこはさっき届いたムール貝の山と格闘中。
南アフリカ料理特集の前菜で、
『ムール貝のカレークリーム煮』がありますよね?
あれの素材の下処理です。

具体的に何をしているのかというと、
貝の表面の汚れ落とし。
これは単純に砂や海藻を取り除くだけではなく、
親亀子亀式にこびりついた他の貝を、
ゴリゴリ金タワシで剥がす難作業。
これが男性のコックさんでも音を上げたくなる重労働なのですよ。
そしてキレイになったら下茹でです。

僕の方は明日から変わるアンコールメニューの刷り物作りと、
ウェブサイトの更新を黙々とやっています。
今回はアンコールではなく、
新しい旅の料理を追加で紹介するプラス1なので、
キャプション書きや写真撮影など、追加のタスクが盛りだくさん。

さて、ウェブページが形になりましたから、
来月の営業スケジュールも合わせてアップしましょうか。

→ おしらせ

ほんと、こうしていると時の流れの速さにため息が出ます。
9月3日でととら亭を始めて7年半になるんですよ。
再現した世界各国の料理も96種類。
今年中には100の大台に乗せられるかな?
頑張りたいと思います。

えーじ
posted by ととら at 02:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年08月23日

数字じゃなくて

ある日のディナーで。

「ねぇ、えーじさん、
 会社員をやってたころにどんなストレスがありました?」

カウンターからそう訊いてきたのは、40歳台前半の管理職の女性。
いつも元気溌剌とした彼女が今夜はちょっとブルーな様子です。

「スーツを着ていた頃のストレス? そうだねぇ・・・」

僕はこと自分自身に関してならかなり楽観的なので、
あんまりイライラしないたちなんですが、
やっぱり組織で働くとなると話が変わります。

「ぱっと思い浮かぶのはふたつかなぁ・・・」

ストレスのひとつ目は『評論家』。
これは会議の席上では基本的に沈黙し、
その後、誰かのやった仕事について、
あれこれ批評を展開する人たちです。

「ではどうしたらいいとお考えですか?」
と質問すると、
「それを考えるのはそちらの仕事じゃないですか」
と返すのが得意技。
たいてい職務権限表と組織図で白黒はっきり理論武装していますから、
グレーゾーンでこぼれ球を拾わにゃならん僕たちには始末におえません。
けしてユニフォームを着てグラウンドに降りることはせず、
安全な観客席からヤジだけを飛ばしてきます。
とにかく批判の矛先が向くテーゼはけして出して来ない。

僕のいた部隊はユーザーさんと直結しているケースが多く、
絶望的に限られたリソースで、
どうにか結果をひねくり出さねばならないというミッションの性格上、
しばしば超法規的動きをしていましたから、
彼らの格好のターゲットにされていました。
ま、社外でドンパチ戦って帰ったら社内で後ろからパン!
と撃たれるのはストレス以前の話でしたけどね。

もうひとつは個人的にもっとも衝撃的だったもの。

それは『変化を嫌う人々の多さ』です。

たとえば、
『業務上の事件が起こり、関係者がどひゃ〜っ!となる』
で、
→『火事場に投入されて何とかする』
→『焼け跡で原因を調べる』
→『再発防止策を立案する』

ここまではいいんです。
しかし・・・

→『再発防止策を実行』しようとすると・・・

このしらけた現場の温度差はなんだろう?

あ〜、思えば僕も青かった!

先般発生したA事案の原因はBでした。
そこで原因Bを取り除く対策のCを立案しました。
C案を実行することにより現場の業務環境は改善されます。

ハラショーでしょ?
こんな単純なロジックで、ことが前に進むと楽観していたのです。

ところが、
現状業務に何らかの変化が起こると分かった時に示されたネガティブな反応は、
僕の想像を超えたものでした。
そしてようやく学習したのです。
多くの人々にとって現状が良くなるか悪くなるかという『結果』は、
あまり大きな問題ではない。
避けたいのは変化そのものなのだ! という事実を。

「とにかくさ、100点満点は狙わず、
 オフィシャルには言えなないけど、
 妥当な落としどころを目指して落着させる、
 って個人的政治的戦略が必要だったんだろうね」
「はぁ〜・・・ですよね〜・・・」

大変だなぁ・・・

彼女と話していて、
業種が違っても中間管理職の悩みはあんまり変わらないんだな、
と思いました。

で、今はどうだって?

幸いそうしたストレッサ―がととら亭にはありませんから、
月400労働時間超/1人のブラック環境にもかかわらず、
僕は7年半もやりがいを持って働いています。

思えば昨今世間を騒がせている労働環境にかかわる諸々の問題は、
とどのつまり労働時間や賃金という雇用条件が示す数字より、
むしろ個々人のメンタリティーに起因しているのではないか?

そしてその集合体が、
社風、校風などと呼ばれる、もわんとした独特な心理空間を作り、
それに染まれるか否かで個人のモチベーションが決まる。

じゃないのかな?

うん。
数字ではないんですよ。

えーじ
posted by ととら at 15:02| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記

2017年08月19日

奇妙な採用面接

僕が会社員のころ、
不幸にも僕に採用面接を担当された方たちがいました。

システム管理の部署でしたので、
自ずとその方面の質問をするのですが、
よくある「資格は何をお持ちですか?」とか、
「以前の業務経験はどのようなものですか?」ではなく、
「WindowsOSサーバーでブルースクリーンになり、
 STOP:の後に16進数のコードが表示された場合、
 あなたはどうしますか?」
とか、
「オフィスで使用しているあなたのPCのアンチウイルスシステムが、
 ネットワークワームを検知した場合、あなたはどうしますか?」
など、実戦でしか学べない質問をすることで、
即戦力となる経験値を確かめていたのです。

しかしそれ以上に候補者の方々が面食らったのは、

「この職場では1日に100メートル走が4、5本ありますけど、
 大丈夫ですか?」

という質問でしょう。

え? 何それ?

まぁ、これはオンサイトユーザーサポート業務での話ですけど、
緊急時には同じビル内(といってもかなり広い)の現場まで、
急いで駆けつけねばならなかったのです。
しかもそうした事案が頻発していました。

一般的にIT稼業と言えば、
涼しくてきれいな印象を持っている方が少なくなかったのですが、
実はネットワークチームなんかに回されると、
スーツを着ててもヘルメットを被って、
天井裏や床下に潜り込むなんて日常茶飯事。
ですから将来有望な若者たちが「こんなはずしゃなかった!」
とならないよう、つつみ隠さず現実的な質問をしていたのです。

そんな話を思い出したのも先日入った一本の電話から。
ともこが出てみると、

「あるバイとわ、ボシュウしていマスか?」

と、聞こえてきたのはたどたどしい日本語。
深刻な人手不足が世界的に有名な日本の飲食業界ですから、
あわよくば仕事を! と思った外国人の方でしょう。

しかしながら僕たちには『雇わず雇われず』という、
ととらルールがありますし、
残念なことに、そもそも従業員を雇う経済的余裕がありません。
そこでお返事は「ごめんなさいね」になってしまったのですが、
もし、面接するとしたら、今度はどんな質問をすべきでしょう?

たとえば『株式会社ととら亭』で正社員を募集したなら、
僕らとほぼ同じ仕事をすることになります。
となると・・・

調理師免許の有無?

いや、そんなことよりも・・・

【勤務地の条件】
 本社内における就労場所の温度差は、
 気温マイナス2度から36度の幅があります。
 また出張先ではマイナス20度から44度となり、
 殆どのケースで冷暖房の設備はありません。
 標高はマイナス400メートル(死海)から5500メートル
 (ウユニ塩湖からチリのサンペドロ・デ・アタカマへ抜ける山岳地帯)
 が就労範囲です。

【求められる身体的スキル】
 ・飛行機のエコノミーシート、空港のベンチ、テント内など、
  どんな場所でも眠ることができますか?
 ・時差ボケしない体質ですか?
 ・夏バテしない体質ですか?
 ・20キロ以上のバックパックと5キロ以上のサブザックを背負って、
  山道を終日歩けますか?
 ・なんでも食べられますか?
 ・2週間以上繰り返し、空腹ではない状態でも満腹以上まで食べられますか?

【求められる知的スキル】
 ・言葉の通じない環境でひとり、宿を探し食事をすることが出来ますか?
 ・スマホやPCがなくても情報収集ができますか?
 ・火災や事故、暴動に巻き込まれた時に冷静に対処できますか?
 ・軍隊や警察官にカツアゲされている時にジョークを一つ以上言えますか?
 ・身ぐるみはがされた場合でも必要最低限のものを現地調達できますか?
 ・行動に支障が出るレベルで体調不良となった場合に、
  ひとりで対処できますか?

とまぁ、こんなことを質問しなくてはいけないと思います。
しかし最初に、

トイレも紙も水もない状況で大小問わず用をたせますか?

と訊くだけで、たいてい面接は終了するでしょうね。

あ、いちばん現実的な質問は、やっぱりこれかな?

あなたの年収は当社の代表取り締まられ役と同等になりますが、
それでもよろしいでしょうか?


えーじ
posted by ととら at 16:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年08月15日

『話せばわかる』世界へ

僕は暴力が嫌いです。

そしてこのブログを読まれている方は、
僕らが旅先で多くの人々に助けられていることから、
しばしば「地球人は基本的に親切だ」
と言っているのを覚えているでしょう。

助けられて成り立つ旅。
これはまぎれもない事実ですし、
僕が人間性善説に立っている理由に他なりません。

しかし、現実には大きな矛盾があります。

これまた皆さんがお気付きのように、
僕らの旅のセキュリティは、100パーセント人間性悪説に立っているのですよ。

たとえば、
空港や駅などで笑顔を浮かべて近付いてくる人を、
僕は完全に悪党だと見なしていますし、
荷物から目を放すことは絶対にしません。

公衆環境で話しかけてきた相手の言うことは一応聞きますけど、
何か仕掛けてきているという前提に立っているので、
物理的にも心理的にも距離を置いています。

また鍵が壊れていたり、
容易に侵入できる構造の部屋に泊ることはしませんし、
場合によっては、反射するショーウィンドウなどを利用して、
追跡者の有無もチェックしています。

これは今までの旅を通じて学んだ数々のイタイ教訓から、
自ずと身に付いた、いや、付いてしまった習慣なのです。

確かに地球人はやさしく親切です。
しかし残念なことに、バカッタレはけしてゼロではありません。
そして不運にもそうした連中に遭遇してしまった場合の代償は、
時に取り返しがつかないものになることがあります。

加えてもうひとつ。

正直申し上げますと、
僕は軍隊が好きではありません。
さらに本音を言ってしまうと、警察も嫌いです。
なぜなら共通点として彼らは武装しているから。

武器。

それは使われた相手を傷つけるもの以上でも以下でもないでしょう。

では僕は純白のローブをまとった平和主義者なのか?

そうです。

と言ってしまったら、そりゃ呑気なご都合主義者だ、
との誹りを免れないでしょう。
なぜなら、旅先で自分のことは自分で守っているように見えても、
実はここでも多くの人々に助けられているのですから。

そう、僕たちが暗黙のうちに依存し、助けてもらっている相手。
法の支配を守り、治安を維持している人々。
僕らの旅のセキュリティも、
僕が嫌いな軍隊や警察の存在を前提としてこそ成り立つものなんですよ。

今日は8月15日。

昨今では自衛隊の法的な位置づけについて、
多くの方々が議論を始めています。

しかし、僕にはどうもよく呑み込めないものがあるのですよ。
いずれの議論も自衛隊という『手段の是非』がフォーカスされ、
なぜか手段の前提となる『目的の原因』についての意見がぼやけているから。

『話せばわかる』を対案として挙げているハラショーな意見もありますが、
少なくとも僕たちが不幸にも旅先で出会ったバカッタレたちは、
『話せばわかる』相手ではありませんでした。
もちろん彼らがそうなった境遇は考慮すべきですけど、
当事者として対峙している瞬間にそんなことを慮る余裕はありませんし、
なによりマジでキンタマが縮みますよ。

『対話による解決』。
これは正しい。究極的にね。

しかし、まず考えなくてはならない現実的な問題は、
『話せばわかる』ようになるまでの険しい道のりを、
僕たちはどうやって歩いて行くのか?
なのだと思っています。
しかも、のんびりやっている暇はない。

だから、永田町のセンセーたちに答えを考えて頂くのではなく、
僕たち個々人が、自分で自分の意見を持つこと。
それが『話せばわかる』世界への最短距離なのではないか?

僕はそう信じているのですよ。

えーじ
posted by ととら at 12:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年08月13日

ちょっとおせっかい

今から9年前に作ったととら亭の事業計画書には、
さまざまな理念が書いてありました。
その中の一つが、

『お客さまの幸せの量は、
 入店時より退店時の方が多くなければならない』


この逆はおカネと時間をととら亭に投資したお客さまにとって、
最悪の結果でしょう。
そして僕たちにとっては、ビジネス的な『終わり』を意味します。
そのお客さまは2度と来てくれませんし、
野方は一見さんばかりの観光地ではありませんから。

ところが、7年余りもこの仕事をやっていると、
この『崇高な』理念が、
必ずしも僕たちだけの努力で、
実現するとは限らない現実に気付いたのです。

たとえばある日のディナーで・・・

「いらっしゃいませ」

ご来店されたのは20歳代後半のカップル。
お二人の表情から少し緊張感が読み取れましたから、
初めていらっしゃったのだと思います。
こういうオヤジがホールにいる店は馴染みがないのかもしれません。

「こちらのテーブルにどうぞ。今夜は蒸しますね」

しかしこうして笑顔で話しかければ、
すっと緊張が解けるもの・・・

なのですが、二人の表情にはまだどこか、
楽しい食事をする前に相応しくない『何か』が感じられます。

ん? ケンカでもしたのかな?

テーブルの心理学によれば、
精神的に感応しているカップルは同じ姿勢を取るといいます。
特に二人が前傾姿勢の場合は、いわゆる『ラブラブ』状態。
ところがこの二人、料理を待つ間、楽しく語らい合うでもなく、
彼女はスマホに目を落とし、彼はぼんやり手持ちぶたさ。

おいおい、せっかくのデートなのになんてこった・・・

料理をサーブした時には彼女に笑顔が戻りましたが、
それも一瞬の花火のよう。
またすぐに沈黙が降り、あわや二人の恋は風前の灯火に・・・

そうはさせねぇ。

この状況を分析すると、へそを曲げているのは彼女の方。
であれば、恋のリカバリーオペレーションはプランAで行くべきです。

「食後にデザートはいかがですか?」

そう、これです!
名付けて Always sweets makes her smile. 作戦。

僕は4種類用意してあったデザートを、
彼の方を向いて2種類、
それから話すペースを若干落とし、
彼女の方を向いて残りの2種類を説明しました。
すると、

「僕はマルヴァプディング」
「え〜、それにするの? じゃあ・・・」

しばらく考え込んだ彼女は、

「私はアンズのソルベをお願いします」

Yes! それでいい!
キャラクターの違うデザートを2種類オーダーしたな。
ターゲットはレールに乗ったぜ!

僕は最初に彼女のアンズのソルベを、
次に彼女の視線を横切るようにゆっくりと、
彼のマルヴァプディングをサーブしました。

そしてプランAのキー。
アンズのソルベには2本のスプーンを、
マルヴァプディングには2本のデザートフォークをそれぞれ置いたのです。

完璧だ。

僕がパントリーに戻るとすぐ後ろから声が・・・

「ちょっとぁ! あたしにもそれちょうだいよぅ!」
「やだよ、これ、オレが頼んだんだから」
「いいじゃない、けちっ!」

彼が取られまいとするマルヴァプディングに、
彼女は素早くデザートフォークを突き刺し、
大きく切り取ったと思ったら一口パクリ!

「あ〜! とったな!」
「お〜いし〜!」
「それじゃそっちもくれよ!」
「やだ! あげない!」

席に着いた時とは様子が一変しています。

ふ、それでいい。

ととら亭は旅の食堂。
しかし、時にはこんなオペレーションもあるのでございます。

えーじ
posted by ととら at 15:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年08月11日

シアワセは早い者勝ち

南アフリカ料理特集が始まってはや1カ月。

にもかかわらず、何か忘れていませんか?

と気付いた方は、
去年のクリスマスにご来店されたお客さまでしょう。

確かあの時、
黒板メニューで、とあるスペシャルデザートをやっていたのですよ。
その名もマルヴァプディング(Malva pudding)!
プレリリースがあまりにも好評だったので、
本番でも登場と相成りました。

お約束の『えーじうんちく』から参りますと、
これは17世紀から19世紀にかけて、
オランダの植民地だったインドネシアやマラッカから、
南アフリカに連れて来られた、
ケーブマレーと呼ばれる人々が考案したとされる魅惑的なスウィーツ。

プディングといいつつも、レシピはさにあらず。

小麦粉と卵、アプリコットジャムと白ワインビネガーを混ぜて、
ふんわり焼き上げたスポンジ。
それが香ばしい匂いを漂わせつつ冷めやらぬうちに、
生クリームとバターで作った濃厚なソースを、
じわぁ〜っと染み込ませて作ります。

za_mkmalvapdding.jpg
(ソースを染み込ませているところ)

これだけでも十分ヤバイしろものなのに、
サーブする時はもう一度温めて、
熱々のマルヴァプディングに自家製アイスクリームと、
アングレースソースまで添えるという、
まことにゴージャス、デリシャス、デンジャラスな逸品!

za_malvapdding.jpg

僕も8か月ぶりに端っこを試食しましたが、
この幸福感は食後3日経っても持続中。
多分、1週間は持つでしょう。

マルヴァプディングは本日リリース。
作るのに手間が多いため生産が間に合わず、
売り切れてしまうことがあるかもしれません。

もし売り切れになってしまったら・・・ゴメンなさい。

えーじ
posted by ととら at 13:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年08月09日

フツーじゃない・・・でしょ?

時刻は10時43分。

コン、コン!

「はぁ〜い!」

郵便屋さん、宅急便屋さん、肉屋さん、米屋さん・・・
午前中のこの時間は、ととら亭の納品ラッシュ。
次々とビジネスパートナーの皆さんが現れ、
荷物を置いて行きます。

「今日はとびっきり暑いね! 大丈夫?」
「いやぁ〜、きついっすよ! がんばります!」

額に浮いた玉の汗をハンドタオルで拭い、
足早に次の届け先へ向かう彼ら。
本当に頭が下がります。

この時期はととら亭のキッチンも地獄の釜そのものですが、
彼らもまたその業火に焼かれるブラザーなんですよ。

外に出れば日差しを遮るもののない場所で働く、
工事現場の人々もいます。

気温は既に35度を超えました。
厳しい一日になりそうです。

いろんな研究をするのは大切だと思うんですけどね、
地球の温暖化は自然の成り行きであって、
僕たちがしでかしていることは関係ありません、と唱える方は、
一度、冷房がキンキンに効いた研究室から出て、
配送や工事の人と一緒に一日過ごすと、
あっさりその主張を翻すんじゃないかな?

フツーじゃないですよ、これ。

え?
もちろん、ととら亭のキッチンでもいいですけどね。
暑さだけじゃなく、湿度もすごいですよ〜。

えーじ
posted by ととら at 12:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年08月06日

作れても作れない料理 最終回

居酒屋、レストラン、回転寿司にラーメン屋・・・
飲食店と一口に言っても、その業態は実に様々なものがあります。
そしてその楽しみ方も店により、人により千差万別。
皆さんもその時の気分やニーズによって、
いろいろなお気に入りの店を使い分けているでしょう?

しかしこの使い分けは、考えてみると思いのほか複雑です。
たとえば注文の仕方ひとつをとっても、
「取りあえずビールと枝豆下さい!」で始まる気軽な居酒屋と、
食前酒を傾けながらじっくりメニューを読み込み、
「彼女は舌ヒラメのムニエルのコースを。
 私は前菜にホタテのムース、メインはカモのロースト。
 ワインは・・・」
と続けるレストランでは大分違います。
これを逆にすると実にチグハグなことが起こるのは説明不要でしょう。

あらためて考えてみると、
それぞれの業態に応じてそこには暗黙のルールがあり、
外食を利用する僕たちは無意識にそれを共有しているのです。

しかしそれはあくまで『暗黙』のものですから、
双方の『誤解』はゼロにはできません。

僕たちも飲食業界では一応プロの端くれですので、
ある程度のかけ違いは臨機応変に対応しています。
とはいえ、やはりギャップがあまりに大きいと、
例によって「すみません・・・」にならざるを得ないのが実情です。

たとえば、ととら亭がファーストフード店と思われた場合、
(年に2〜3回は今でもあります)
僕が気付いた時点で、
「温かいお料理は15分前後お時間がかかりますが、
 よろしいでしょうか?」
と店内の混雑状況に応じた待ち時間を説明します。

1年に1回くらいは食事の途中で「急いでください!」
と言われることもありますが、
こればかりはどうにもなりません。
なぜなら、ととら亭に限らず、
余力を残して料理を作っている飲食店はまずないからです。

つまり常にトップスピードで作っているため、
もっと早くと言われてもこれ以上急ぎようがないのです。
(生焼けでいいなら別ですけど・・・)

最後の手段は、他のお客さまのオーダーを全て中断し、
急いでいるお客さまを優先することですが、
これは僕たちのポリシーとしてやりませんし、
今後もやることはないでしょう。

もうひとつ厳しいのが居酒屋と思われた場合です。
確かにお酒もかなり揃えてはいるものの、
フードは根本的に違います。
業界外の方にはピンと来ないかもしれませんが、
居酒屋や寿司屋とレストランでは、
出し物の違いからオーダー後の製造工程が全く異なるため、
自ずと注文の仕方も違うのです。

たとえばもし寿司屋で席に着くなり、
「ビールに、イカとアジとしめ鯖とホタテとヒラメとタイとハマチ、
 えんがわとマグロの中トロ、最後に梅シソ巻きをお願いします」
なんて一気に注文したら板さんが怒りだすのはほぼ確実でしょう。

反対にととら亭のような、
一人もしくは少人数でやっているキッチンの場合、
居酒屋式の『取りあえずオーダー』に対応するのは難しいものがあります。
なぜなら、製造工程の多い料理を可能な限り美味しく提供するために、
オーダーを頂いた後の手順は調理器具の使用順序も含め、
かなり複雑になっているからです。

通常でも予約なしでお客さまがご来店され、
アラカルトのオーダーをされる場合、
新しいお客さまのご注文が入る度に、彼女は調理工程の段取りを組み直し、
常に全体の料理が最短時間で出るようにしています。
単純に入った順番で作っているのではないのですよ。

ですからこの調整が、
「取りあえずサラダとムール貝のカレークリーム煮」
次いで「ポタージュとムニエル」
ほどなくして「スペアリブとケバブライス」
という具合に追加オーダーが繰り返されると、
調整に取られる時間が増え、そのお客さまだけではなく、
店内にいらっしゃるお客さま全体のオーダーに影響が出かねません。
これがととら亭のメニューブックで、
『デザート以外のご注文は、なるべく最初にまとめてお願いします』
と一文を載せた理由なのです。

そして一番真似できないのが大規模レストラン。
週末にはよく4名以上のグループのお客さまがご来店されますが、
いつも僕は料理を取り分けで召し上がることをお勧めしています。

40歳未満の方にとってファミレスがレストランの原体験となっている昨今、
大勢で訪れてそれぞれが好きなものを注文しても、
ババンと全てがほぼ同時に出てくるのが当たり前になっていると思います。
ところがそれはキッチンスタッフが複数いて、
かつセントラルキッチンで調理された素材の、
最終調理まで詰めいるからこそできる技で、
手作りにこだわった料理人が一人でやっているようなキッチンでは、
逆立ちしても真似の出来ない芸当なのです。

時にはホテルに併設されたレストランのように、
レベルの高い手の込んだ料理を複数同時に提供しているケースもありますが、
あれもまたキッチンは完全に分業制となっており、
冷菜担当、ストーブ前、デザート担当など、
それぞれのエキスパートが連携して同時提供を可能にしているのです。

しかしながら、「どうしてもそれぞれが頼んだものを一緒に食べたい!」
と当店でなってしまった場合、
完全に同時は無理ですが、ひとつだけ方法があります。
それは頂いたご注文をすべて最終調理段階ぎりぎりまで進め、
一挙に仕上げるという究極の裏技。
僕がこれをお勧めしないのは、かなり長い時間、
このお客さまのテーブルにはひとつも料理が出なくなるからです。
状況にもよりますが、たぶん40分から1時間は、
飲み物だけでお待ち頂くことになるだろうと思います。

飲食店には選りすぐりの材料があり、プロの料理人がいる。
にもかかわらず、作れても作れないケースがある。

4回に渡ってご紹介しました、普通は言わない飲食店の裏事情。
例に挙げたのはととら亭のような小規模レストランですが、
皆さまが身近な飲食店をご利用される一助になれば幸いです。

えーじ
posted by ととら at 18:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年08月02日

作れても作れない料理 その3

「よく旅先で食べただけの料理を再現できますね!」

旅のメニューを召し上がっているお客さまから、
しばしばこんなお言葉を頂戴することがあります。

僕たちが現地で触れた感動を可能な限り正確に再現するのは、
確かに骨の折れる仕事です。
しかし、それ以上に難しいのが、
安定した品質でスピーディーに料理を提供するラインを作ること。
極論かもしれませんが、
これこそが家庭と飲食店の違いと言い切れるかもしれません。

計算された仕込みと周到に行われた準備。
客席からはまったく見えない地味な部分ですが、
これなくしてととら亭の料理がテーブルに並ぶことはないのです。
そしてこの段取りが、
ランチとディナーをきっぱり分けている理由でもあります。
そう・・・

「ランチタイムに旅の特集メニューを食べられませんか?」

こうしたご要望をよく頂くのですが、
これまた僕らの回答は「すみません・・・」。

ランチはお客さまの滞在時間が短いので、
ディナー以上に提供スピードが求められます。
まさか昼休みに来られたお客さまを、
料理が出るまで30分も待たせるわけにはいかないでしょう?
ですから調理手順も速度に合わせて最適化しているため、
作れる料理は自ずと限定されてしまうのです。

そしてその準備を夜12時過ぎまで店にいた人間が、
朝8時前に店に入って始めるので、(ブラックだなぁ・・・)
素材こそ冷蔵庫にあっても、
突然「ディナーメニューを作ってくれませんか?」と言われて、
「かしこまりました〜!」とはなりようがないのです。

もし、いつでも今のグレードの料理をすべて提供できるようにするとしたら、
僕らの労働時間は既にレッドゾーンを振り切っているので、
「雇わず雇われず」のととらポリシーを破って、
助っ人を呼ぶしかないでしょう。

そうなると人件費が価格に転嫁され、
メニューに載っている値段は、
いわゆる『野方価格』ではなくなってしまいます。
ま、『銀座価格』とまではならないでしょうけどね。

この辺、
いろいろとバランスを取るのが難しいところなんですよ。

to be continued...

えーじ
posted by ととら at 21:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年07月30日

作れても作れない料理 その2

持ち家にお住まいの方はピンと来ないかもしれませんが、
日本、特に東京は、世界でも有数の高家賃都市。
さらにそれが23区内のテナントで駅から近いとあれば、
「どうやったらこれを払ってビジネスになるのかしらん?」
と首を傾げる物件は珍しくありません。

そうした過酷な経営環境に飛び込んだ個人事業主の店舗は、
その業種業態を問わず、
自ずと極限的にシェイプアップした店舗設計をせざるを得ません。
飲食店では、さながら飛行機のコクピット並みの密集したキッチンで、
仕事をしている所がざらにあります。

ととら亭とて例外ではありません。
良心的な大家さんのお蔭で家賃は相場の範囲内とはいえ、
やはりスペースには限りがありますから、
キッチンの機器も「これがあったら便利だろうな」ではなく、
「これがなくっちゃ仕事にならない!」レベルでチョイスされ、
みっちりレイアウトされているのです。
そこで「作れても作れない料理」の2番目の理由は・・・

スペースの問題

年末になると必ずオファーを頂くクリスマスケーキとおせち料理。
しかしこれにお応えできない理由の筆頭がこれなのです。

ととら亭には冷凍冷蔵機器が7台あります。
ともこの担当範囲ではメインの4ドア縦型冷凍冷蔵庫。
それからコールドテーブルと冷凍ストッカーにネタケースが2台。
僕が使っているのはショーケース型ドリンク用冷蔵庫とワインセラー。

え? 余裕だね?

ではないんですよ。
冷蔵能力が冷蔵庫より劣るネタケースには、
食品を入れっぱなしにできませんし、
飲料専用系は臭いがうつる問題で食材を一緒に保存できません。

そんな訳で、ともこが使っているその他の機材は、
使用率が常に80パーセントを超えているのですよ。
場合によっては90パーセントを超え、
気を付けて出し入れしないと恐ろしい雪崩が発生する危険すらあります。
(実際、何度か起こりました)

そんな状況で、ただでさえかさばるホールケーキや、
大量のおせち料理をどこに保存すればいいのでしょう?

これは前回お話したピンポイントの特別料理も同様で、
たとえば世界のギョーザを全種類作るなら通常の材料とは別に、
それ専用の素材と、
加熱前のギョーザを保存するスペースが必要になります。
通常でも80〜90パーセントの使用率なのに、
こりゃもう質量保存の法則を超越した、
4次元ハイパー冷蔵庫でも発明されない限り、
僕らには手も足も出ません。

ほんと、収納は深刻な問題です。
実は今の業務内容ですら、ととら亭のスペースでは収まり切れず、
書類の他、ワインなどは徒歩5分ほどのところにある、
アパートまで運んでいます。
そのアパートも同様に狭いですから困ったものですね。

to be continued...

えーじ
posted by ととら at 17:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年07月28日

作れても作れない料理 その1

「ポーランド料理をもう一度やってもらえませんか?」

「これまでやった世界のギョーザを全種類作ってもらえませんか?」

こうしたご要望を頂くことがしばしばあります。
食べ損ねてしまった特集や、
シリーズ化したものをまとめて楽しみたいというのは、
しごくご尤もなリクエストでしょう。

しかしながら、僕たちの回答は、

「すみません。それはできないのですよ」

とまぁ、代替案も提示できないビジネスセンスに欠けたもの。

実はこの理由、やる気がないからではなく、
純粋に調理工程上のものなのです。

『作れるか、作れないか』というのであれば、
実際にやっていたメニューですから、もちろん作れないわけはありません。
にも拘わらず「すみません・・・」になってしまった理由は・・・

その1 レシピ上の問題

飲食店ではその規模に応じて最適化された仕込みのロットがあります。
たとえばととら亭では、ものにもよりますけど、
大体20人前くらいの単位で仕込みをやっています。
これを4人前で作るにはどうしたらいいか?

材料を1/5にスケールダウンして作ればいい?
いや、それでは20人前で作る場合と味や食感が変わってしまいます。

ご家庭での分かり易い例はカレーでしょう。
一般的には4〜6人前で作るレシピが多いと思いますが、
あれを1人前とは言わないまでも、2人前で作ってみたことはありますか?

いかがでしょう? 6人前で作ったものと同じ味になりました?
そう、味に深みがなかったはずです。
こういうのは煮物に多く見られる特徴で、
おでんや肉じゃがなども、
ある程度の量で作った方が少ないものより美味しいのは、
皆さまもご存じの通りです。

しかし、飲食店はプロ。
プロならではのテクニックで小ロットでも美味しく作れるのではないか?

はい。できます。

しかし現実的でないのは、
レシピのチューニングが発生してしまうからなのですよ。
これはかなり手間がかかります。

几帳面なともこ料理長の場合、
「前に食べて美味しいって言ってくれたものと同じにしなくちゃ!」
と確実になります。(そういう人なんですよ)
すると彼女は試作からやり直しますので、
一晩のためだけにこれをやったのでは、
この時点でビジネス的にも労力的にもペイしなくなってしまうのです。

ととら亭は僕たちが現地で食べた料理をアレンジせず、
可能な限り正確に再現して皆さまと経験をシェアするのが仕事。

料理を再現する。

このポリシーは、現地と、ととら亭のみならず、
ととら亭での『前回と今回、そして次回』にも適用されているのですよ。

to be continued...

えーじ
posted by ととら at 09:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記