2017年08月15日

『話せばわかる』世界へ

僕は暴力が嫌いです。

そしてこのブログを読まれている方は、
僕らが旅先で多くの人々に助けられていることから、
しばしば「地球人は基本的に親切だ」
と言っているのを覚えているでしょう。

助けられて成り立つ旅。
これはまぎれもない事実ですし、
僕が人間性善説に立っている理由に他なりません。

しかし、現実には大きな矛盾があります。

これまた皆さんがお気付きのように、
僕らの旅のセキュリティは、100パーセント人間性悪説に立っているのですよ。

たとえば、
空港や駅などで笑顔を浮かべて近付いてくる人を、
僕は完全に悪党だと見なしていますし、
荷物から目を放すことは絶対にしません。

公衆環境で話しかけてきた相手の言うことは一応聞きますけど、
何か仕掛けてきているという前提に立っているので、
物理的にも心理的にも距離を置いています。

また鍵が壊れていたり、
容易に侵入できる構造の部屋に泊ることはしませんし、
場合によっては、反射するショーウィンドウなどを利用して、
追跡者の有無もチェックしています。

これは今までの旅を通じて学んだ数々のイタイ教訓から、
自ずと身に付いた、いや、付いてしまった習慣なのです。

確かに地球人はやさしく親切です。
しかし残念なことに、バカッタレはけしてゼロではありません。
そして不運にもそうした連中に遭遇してしまった場合の代償は、
時に取り返しがつかないものになることがあります。

加えてもうひとつ。

正直申し上げますと、
僕は軍隊が好きではありません。
さらに本音を言ってしまうと、警察も嫌いです。
なぜなら共通点として彼らは武装しているから。

武器。

それは使われた相手を傷つけるもの以上でも以下でもないでしょう。

では僕は純白のローブをまとった平和主義者なのか?

そうです。

と言ってしまったら、そりゃ呑気なご都合主義者だ、
との誹りを免れないでしょう。
なぜなら、旅先で自分のことは自分で守っているように見えても、
実はここでも多くの人々に助けられているのですから。

そう、僕たちが暗黙のうちに依存し、助けてもらっている相手。
法の支配を守り、治安を維持している人々。
僕らの旅のセキュリティも、
僕が嫌いな軍隊や警察の存在を前提としてこそ成り立つものなんですよ。

今日は8月15日。

昨今では自衛隊の法的な位置づけについて、
多くの方々が議論を始めています。

しかし、僕にはどうもよく呑み込めないものがあるのですよ。
いずれの議論も自衛隊という『手段の是非』がフォーカスされ、
なぜか手段の前提となる『目的の原因』についての意見がぼやけているから。

『話せばわかる』を対案として挙げているハラショーな意見もありますが、
少なくとも僕たちが不幸にも旅先で出会ったバカッタレたちは、
『話せばわかる』相手ではありませんでした。
もちろん彼らがそうなった境遇は考慮すべきですけど、
当事者として対峙している瞬間にそんなことを慮る余裕はありませんし、
なによりマジでキンタマが縮みますよ。

『対話による解決』。
これは正しい。究極的にね。

しかし、まず考えなくてはならない現実的な問題は、
『話せばわかる』ようになるまでの険しい道のりを、
僕たちはどうやって歩いて行くのか?
なのだと思っています。
しかも、のんびりやっている暇はない。

だから、永田町のセンセーたちに答えを考えて頂くのではなく、
僕たち個々人が、自分で自分の意見を持つこと。
それが『話せばわかる』世界への最短距離なのではないか?

僕はそう信じているのですよ。

えーじ
posted by ととら at 12:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年08月13日

ちょっとおせっかい

今から9年前に作ったととら亭の事業計画書には、
さまざまな理念が書いてありました。
その中の一つが、

『お客さまの幸せの量は、
 入店時より退店時の方が多くなければならない』


この逆はおカネと時間をととら亭に投資したお客さまにとって、
最悪の結果でしょう。
そして僕たちにとっては、ビジネス的な『終わり』を意味します。
そのお客さまは2度と来てくれませんし、
野方は一見さんばかりの観光地ではありませんから。

ところが、7年余りもこの仕事をやっていると、
この『崇高な』理念が、
必ずしも僕たちだけの努力で、
実現するとは限らない現実に気付いたのです。

たとえばある日のディナーで・・・

「いらっしゃいませ」

ご来店されたのは20歳代後半のカップル。
お二人の表情から少し緊張感が読み取れましたから、
初めていらっしゃったのだと思います。
こういうオヤジがホールにいる店は馴染みがないのかもしれません。

「こちらのテーブルにどうぞ。今夜は蒸しますね」

しかしこうして笑顔で話しかければ、
すっと緊張が解けるもの・・・

なのですが、二人の表情にはまだどこか、
楽しい食事をする前に相応しくない『何か』が感じられます。

ん? ケンカでもしたのかな?

テーブルの心理学によれば、
精神的に感応しているカップルは同じ姿勢を取るといいます。
特に二人が前傾姿勢の場合は、いわゆる『ラブラブ』状態。
ところがこの二人、料理を待つ間、楽しく語らい合うでもなく、
彼女はスマホに目を落とし、彼はぼんやり手持ちぶたさ。

おいおい、せっかくのデートなのになんてこった・・・

料理をサーブした時には彼女に笑顔が戻りましたが、
それも一瞬の花火のよう。
またすぐに沈黙が降り、あわや二人の恋は風前の灯火に・・・

そうはさせねぇ。

この状況を分析すると、へそを曲げているのは彼女の方。
であれば、恋のリカバリーオペレーションはプランAで行くべきです。

「食後にデザートはいかがですか?」

そう、これです!
名付けて Always sweets makes her smile. 作戦。

僕は4種類用意してあったデザートを、
彼の方を向いて2種類、
それから話すペースを若干落とし、
彼女の方を向いて残りの2種類を説明しました。
すると、

「僕はマルヴァプディング」
「え〜、それにするの? じゃあ・・・」

しばらく考え込んだ彼女は、

「私はアンズのソルベをお願いします」

Yes! それでいい!
キャラクターの違うデザートを2種類オーダーしたな。
ターゲットはレールに乗ったぜ!

僕は最初に彼女のアンズのソルベを、
次に彼女の視線を横切るようにゆっくりと、
彼のマルヴァプディングをサーブしました。

そしてプランAのキー。
アンズのソルベには2本のスプーンを、
マルヴァプディングには2本のデザートフォークをそれぞれ置いたのです。

完璧だ。

僕がパントリーに戻るとすぐ後ろから声が・・・

「ちょっとぁ! あたしにもそれちょうだいよぅ!」
「やだよ、これ、オレが頼んだんだから」
「いいじゃない、けちっ!」

彼が取られまいとするマルヴァプディングに、
彼女は素早くデザートフォークを突き刺し、
大きく切り取ったと思ったら一口パクリ!

「あ〜! とったな!」
「お〜いし〜!」
「それじゃそっちもくれよ!」
「やだ! あげない!」

席に着いた時とは様子が一変しています。

ふ、それでいい。

ととら亭は旅の食堂。
しかし、時にはこんなオペレーションもあるのでございます。

えーじ
posted by ととら at 15:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年08月11日

シアワセは早い者勝ち

南アフリカ料理特集が始まってはや1カ月。

にもかかわらず、何か忘れていませんか?

と気付いた方は、
去年のクリスマスにご来店されたお客さまでしょう。

確かあの時、
黒板メニューで、とあるスペシャルデザートをやっていたのですよ。
その名もマルヴァプディング(Malva pudding)!
プレリリースがあまりにも好評だったので、
本番でも登場と相成りました。

お約束の『えーじうんちく』から参りますと、
これは17世紀から19世紀にかけて、
オランダの植民地だったインドネシアやマラッカから、
南アフリカに連れて来られた、
ケーブマレーと呼ばれる人々が考案したとされる魅惑的なスウィーツ。

プディングといいつつも、レシピはさにあらず。

小麦粉と卵、アプリコットジャムと白ワインビネガーを混ぜて、
ふんわり焼き上げたスポンジ。
それが香ばしい匂いを漂わせつつ冷めやらぬうちに、
生クリームとバターで作った濃厚なソースを、
じわぁ〜っと染み込ませて作ります。

za_mkmalvapdding.jpg
(ソースを染み込ませているところ)

これだけでも十分ヤバイしろものなのに、
サーブする時はもう一度温めて、
熱々のマルヴァプディングに自家製アイスクリームと、
アングレースソースまで添えるという、
まことにゴージャス、デリシャス、デンジャラスな逸品!

za_malvapdding.jpg

僕も8か月ぶりに端っこを試食しましたが、
この幸福感は食後3日経っても持続中。
多分、1週間は持つでしょう。

マルヴァプディングは本日リリース。
作るのに手間が多いため生産が間に合わず、
売り切れてしまうことがあるかもしれません。

もし売り切れになってしまったら・・・ゴメンなさい。

えーじ
posted by ととら at 13:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年08月09日

フツーじゃない・・・でしょ?

時刻は10時43分。

コン、コン!

「はぁ〜い!」

郵便屋さん、宅急便屋さん、肉屋さん、米屋さん・・・
午前中のこの時間は、ととら亭の納品ラッシュ。
次々とビジネスパートナーの皆さんが現れ、
荷物を置いて行きます。

「今日はとびっきり暑いね! 大丈夫?」
「いやぁ〜、きついっすよ! がんばります!」

額に浮いた玉の汗をハンドタオルで拭い、
足早に次の届け先へ向かう彼ら。
本当に頭が下がります。

この時期はととら亭のキッチンも地獄の釜そのものですが、
彼らもまたその業火に焼かれるブラザーなんですよ。

外に出れば日差しを遮るもののない場所で働く、
工事現場の人々もいます。

気温は既に35度を超えました。
厳しい一日になりそうです。

いろんな研究をするのは大切だと思うんですけどね、
地球の温暖化は自然の成り行きであって、
僕たちがしでかしていることは関係ありません、と唱える方は、
一度、冷房がキンキンに効いた研究室から出て、
配送や工事の人と一緒に一日過ごすと、
あっさりその主張を翻すんじゃないかな?

フツーじゃないですよ、これ。

え?
もちろん、ととら亭のキッチンでもいいですけどね。
暑さだけじゃなく、湿度もすごいですよ〜。

えーじ
posted by ととら at 12:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年08月06日

作れても作れない料理 最終回

居酒屋、レストラン、回転寿司にラーメン屋・・・
飲食店と一口に言っても、その業態は実に様々なものがあります。
そしてその楽しみ方も店により、人により千差万別。
皆さんもその時の気分やニーズによって、
いろいろなお気に入りの店を使い分けているでしょう?

しかしこの使い分けは、考えてみると思いのほか複雑です。
たとえば注文の仕方ひとつをとっても、
「取りあえずビールと枝豆下さい!」で始まる気軽な居酒屋と、
食前酒を傾けながらじっくりメニューを読み込み、
「彼女は舌ヒラメのムニエルのコースを。
 私は前菜にホタテのムース、メインはカモのロースト。
 ワインは・・・」
と続けるレストランでは大分違います。
これを逆にすると実にチグハグなことが起こるのは説明不要でしょう。

あらためて考えてみると、
それぞれの業態に応じてそこには暗黙のルールがあり、
外食を利用する僕たちは無意識にそれを共有しているのです。

しかしそれはあくまで『暗黙』のものですから、
双方の『誤解』はゼロにはできません。

僕たちも飲食業界では一応プロの端くれですので、
ある程度のかけ違いは臨機応変に対応しています。
とはいえ、やはりギャップがあまりに大きいと、
例によって「すみません・・・」にならざるを得ないのが実情です。

たとえば、ととら亭がファーストフード店と思われた場合、
(年に2〜3回は今でもあります)
僕が気付いた時点で、
「温かいお料理は15分前後お時間がかかりますが、
 よろしいでしょうか?」
と店内の混雑状況に応じた待ち時間を説明します。

1年に1回くらいは食事の途中で「急いでください!」
と言われることもありますが、
こればかりはどうにもなりません。
なぜなら、ととら亭に限らず、
余力を残して料理を作っている飲食店はまずないからです。

つまり常にトップスピードで作っているため、
もっと早くと言われてもこれ以上急ぎようがないのです。
(生焼けでいいなら別ですけど・・・)

最後の手段は、他のお客さまのオーダーを全て中断し、
急いでいるお客さまを優先することですが、
これは僕たちのポリシーとしてやりませんし、
今後もやることはないでしょう。

もうひとつ厳しいのが居酒屋と思われた場合です。
確かにお酒もかなり揃えてはいるものの、
フードは根本的に違います。
業界外の方にはピンと来ないかもしれませんが、
居酒屋や寿司屋とレストランでは、
出し物の違いからオーダー後の製造工程が全く異なるため、
自ずと注文の仕方も違うのです。

たとえばもし寿司屋で席に着くなり、
「ビールに、イカとアジとしめ鯖とホタテとヒラメとタイとハマチ、
 えんがわとマグロの中トロ、最後に梅シソ巻きをお願いします」
なんて一気に注文したら板さんが怒りだすのはほぼ確実でしょう。

反対にととら亭のような、
一人もしくは少人数でやっているキッチンの場合、
居酒屋式の『取りあえずオーダー』に対応するのは難しいものがあります。
なぜなら、製造工程の多い料理を可能な限り美味しく提供するために、
オーダーを頂いた後の手順は調理器具の使用順序も含め、
かなり複雑になっているからです。

通常でも予約なしでお客さまがご来店され、
アラカルトのオーダーをされる場合、
新しいお客さまのご注文が入る度に、彼女は調理工程の段取りを組み直し、
常に全体の料理が最短時間で出るようにしています。
単純に入った順番で作っているのではないのですよ。

ですからこの調整が、
「取りあえずサラダとムール貝のカレークリーム煮」
次いで「ポタージュとムニエル」
ほどなくして「スペアリブとケバブライス」
という具合に追加オーダーが繰り返されると、
調整に取られる時間が増え、そのお客さまだけではなく、
店内にいらっしゃるお客さま全体のオーダーに影響が出かねません。
これがととら亭のメニューブックで、
『デザート以外のご注文は、なるべく最初にまとめてお願いします』
と一文を載せた理由なのです。

そして一番真似できないのが大規模レストラン。
週末にはよく4名以上のグループのお客さまがご来店されますが、
いつも僕は料理を取り分けで召し上がることをお勧めしています。

40歳未満の方にとってファミレスがレストランの原体験となっている昨今、
大勢で訪れてそれぞれが好きなものを注文しても、
ババンと全てがほぼ同時に出てくるのが当たり前になっていると思います。
ところがそれはキッチンスタッフが複数いて、
かつセントラルキッチンで調理された素材の、
最終調理まで詰めいるからこそできる技で、
手作りにこだわった料理人が一人でやっているようなキッチンでは、
逆立ちしても真似の出来ない芸当なのです。

時にはホテルに併設されたレストランのように、
レベルの高い手の込んだ料理を複数同時に提供しているケースもありますが、
あれもまたキッチンは完全に分業制となっており、
冷菜担当、ストーブ前、デザート担当など、
それぞれのエキスパートが連携して同時提供を可能にしているのです。

しかしながら、「どうしてもそれぞれが頼んだものを一緒に食べたい!」
と当店でなってしまった場合、
完全に同時は無理ですが、ひとつだけ方法があります。
それは頂いたご注文をすべて最終調理段階ぎりぎりまで進め、
一挙に仕上げるという究極の裏技。
僕がこれをお勧めしないのは、かなり長い時間、
このお客さまのテーブルにはひとつも料理が出なくなるからです。
状況にもよりますが、たぶん40分から1時間は、
飲み物だけでお待ち頂くことになるだろうと思います。

飲食店には選りすぐりの材料があり、プロの料理人がいる。
にもかかわらず、作れても作れないケースがある。

4回に渡ってご紹介しました、普通は言わない飲食店の裏事情。
例に挙げたのはととら亭のような小規模レストランですが、
皆さまが身近な飲食店をご利用される一助になれば幸いです。

えーじ
posted by ととら at 18:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年08月02日

作れても作れない料理 その3

「よく旅先で食べただけの料理を再現できますね!」

旅のメニューを召し上がっているお客さまから、
しばしばこんなお言葉を頂戴することがあります。

僕たちが現地で触れた感動を可能な限り正確に再現するのは、
確かに骨の折れる仕事です。
しかし、それ以上に難しいのが、
安定した品質でスピーディーに料理を提供するラインを作ること。
極論かもしれませんが、
これこそが家庭と飲食店の違いと言い切れるかもしれません。

計算された仕込みと周到に行われた準備。
客席からはまったく見えない地味な部分ですが、
これなくしてととら亭の料理がテーブルに並ぶことはないのです。
そしてこの段取りが、
ランチとディナーをきっぱり分けている理由でもあります。
そう・・・

「ランチタイムに旅の特集メニューを食べられませんか?」

こうしたご要望をよく頂くのですが、
これまた僕らの回答は「すみません・・・」。

ランチはお客さまの滞在時間が短いので、
ディナー以上に提供スピードが求められます。
まさか昼休みに来られたお客さまを、
料理が出るまで30分も待たせるわけにはいかないでしょう?
ですから調理手順も速度に合わせて最適化しているため、
作れる料理は自ずと限定されてしまうのです。

そしてその準備を夜12時過ぎまで店にいた人間が、
朝8時前に店に入って始めるので、(ブラックだなぁ・・・)
素材こそ冷蔵庫にあっても、
突然「ディナーメニューを作ってくれませんか?」と言われて、
「かしこまりました〜!」とはなりようがないのです。

もし、いつでも今のグレードの料理をすべて提供できるようにするとしたら、
僕らの労働時間は既にレッドゾーンを振り切っているので、
「雇わず雇われず」のととらポリシーを破って、
助っ人を呼ぶしかないでしょう。

そうなると人件費が価格に転嫁され、
メニューに載っている値段は、
いわゆる『野方価格』ではなくなってしまいます。
ま、『銀座価格』とまではならないでしょうけどね。

この辺、
いろいろとバランスを取るのが難しいところなんですよ。

to be continued...

えーじ
posted by ととら at 21:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年07月30日

作れても作れない料理 その2

持ち家にお住まいの方はピンと来ないかもしれませんが、
日本、特に東京は、世界でも有数の高家賃都市。
さらにそれが23区内のテナントで駅から近いとあれば、
「どうやったらこれを払ってビジネスになるのかしらん?」
と首を傾げる物件は珍しくありません。

そうした過酷な経営環境に飛び込んだ個人事業主の店舗は、
その業種業態を問わず、
自ずと極限的にシェイプアップした店舗設計をせざるを得ません。
飲食店では、さながら飛行機のコクピット並みの密集したキッチンで、
仕事をしている所がざらにあります。

ととら亭とて例外ではありません。
良心的な大家さんのお蔭で家賃は相場の範囲内とはいえ、
やはりスペースには限りがありますから、
キッチンの機器も「これがあったら便利だろうな」ではなく、
「これがなくっちゃ仕事にならない!」レベルでチョイスされ、
みっちりレイアウトされているのです。
そこで「作れても作れない料理」の2番目の理由は・・・

スペースの問題

年末になると必ずオファーを頂くクリスマスケーキとおせち料理。
しかしこれにお応えできない理由の筆頭がこれなのです。

ととら亭には冷凍冷蔵機器が7台あります。
ともこの担当範囲ではメインの4ドア縦型冷凍冷蔵庫。
それからコールドテーブルと冷凍ストッカーにネタケースが2台。
僕が使っているのはショーケース型ドリンク用冷蔵庫とワインセラー。

え? 余裕だね?

ではないんですよ。
冷蔵能力が冷蔵庫より劣るネタケースには、
食品を入れっぱなしにできませんし、
飲料専用系は臭いがうつる問題で食材を一緒に保存できません。

そんな訳で、ともこが使っているその他の機材は、
使用率が常に80パーセントを超えているのですよ。
場合によっては90パーセントを超え、
気を付けて出し入れしないと恐ろしい雪崩が発生する危険すらあります。
(実際、何度か起こりました)

そんな状況で、ただでさえかさばるホールケーキや、
大量のおせち料理をどこに保存すればいいのでしょう?

これは前回お話したピンポイントの特別料理も同様で、
たとえば世界のギョーザを全種類作るなら通常の材料とは別に、
それ専用の素材と、
加熱前のギョーザを保存するスペースが必要になります。
通常でも80〜90パーセントの使用率なのに、
こりゃもう質量保存の法則を超越した、
4次元ハイパー冷蔵庫でも発明されない限り、
僕らには手も足も出ません。

ほんと、収納は深刻な問題です。
実は今の業務内容ですら、ととら亭のスペースでは収まり切れず、
書類の他、ワインなどは徒歩5分ほどのところにある、
アパートまで運んでいます。
そのアパートも同様に狭いですから困ったものですね。

to be continued...

えーじ
posted by ととら at 17:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年07月28日

作れても作れない料理 その1

「ポーランド料理をもう一度やってもらえませんか?」

「これまでやった世界のギョーザを全種類作ってもらえませんか?」

こうしたご要望を頂くことがしばしばあります。
食べ損ねてしまった特集や、
シリーズ化したものをまとめて楽しみたいというのは、
しごくご尤もなリクエストでしょう。

しかしながら、僕たちの回答は、

「すみません。それはできないのですよ」

とまぁ、代替案も提示できないビジネスセンスに欠けたもの。

実はこの理由、やる気がないからではなく、
純粋に調理工程上のものなのです。

『作れるか、作れないか』というのであれば、
実際にやっていたメニューですから、もちろん作れないわけはありません。
にも拘わらず「すみません・・・」になってしまった理由は・・・

その1 レシピ上の問題

飲食店ではその規模に応じて最適化された仕込みのロットがあります。
たとえばととら亭では、ものにもよりますけど、
大体20人前くらいの単位で仕込みをやっています。
これを4人前で作るにはどうしたらいいか?

材料を1/5にスケールダウンして作ればいい?
いや、それでは20人前で作る場合と味や食感が変わってしまいます。

ご家庭での分かり易い例はカレーでしょう。
一般的には4〜6人前で作るレシピが多いと思いますが、
あれを1人前とは言わないまでも、2人前で作ってみたことはありますか?

いかがでしょう? 6人前で作ったものと同じ味になりました?
そう、味に深みがなかったはずです。
こういうのは煮物に多く見られる特徴で、
おでんや肉じゃがなども、
ある程度の量で作った方が少ないものより美味しいのは、
皆さまもご存じの通りです。

しかし、飲食店はプロ。
プロならではのテクニックで小ロットでも美味しく作れるのではないか?

はい。できます。

しかし現実的でないのは、
レシピのチューニングが発生してしまうからなのですよ。
これはかなり手間がかかります。

几帳面なともこ料理長の場合、
「前に食べて美味しいって言ってくれたものと同じにしなくちゃ!」
と確実になります。(そういう人なんですよ)
すると彼女は試作からやり直しますので、
一晩のためだけにこれをやったのでは、
この時点でビジネス的にも労力的にもペイしなくなってしまうのです。

ととら亭は僕たちが現地で食べた料理をアレンジせず、
可能な限り正確に再現して皆さまと経験をシェアするのが仕事。

料理を再現する。

このポリシーは、現地と、ととら亭のみならず、
ととら亭での『前回と今回、そして次回』にも適用されているのですよ。

to be continued...

えーじ
posted by ととら at 09:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年07月26日

A4一枚の真実

2002年の夏。

僕たちがダブル失業中、
今後の生き方を考えるためにやったのは、
A4の白紙に、
『僕たちは何をしている時がハッピーなのか?』を書き出すこと。

この結果は実に衝撃的でした。

なぜって、
じっくり絞って書き出した二人分の幸せが、
たったA4の白紙1枚に収まってしまったから。
しかも裏側は使っていません。

もうひとつ驚いたのは、
生れてそれまで費やした多大な時間と努力とおカネの対象が、
その幸せとは、あまり関係がなかったことです。

これを認めるのは、歳を取っていればいるほど難しい。
投資したものがあまりにも大き過ぎますからね。
しかし逆説的に、この認めがたい真実は、
歳を取ってみないと分からないことでもあります。
ね、ご同輩?

でも僕らの場合、問題を解くカギはシンプルでした。

それまで必死にしがみついてきたものごとを手放す勇気。
人生の新しい旅を始めるために必要なのは、
キャリアや銀行預金の残高ではなく、
とどのつまり、それひとつだったんですよ。

次の街に行くには、今いる街を出なければならない。
当たり前と言えば、当たり前のことでした。

えーじ
posted by ととら at 11:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年07月24日

やっぱり僕らの夏

南アフリカ料理特集が始まって10日が経ちました。
裏方としては仕込みと提供の流れが落ち着き、
お客さまにもご好評を頂き、ホっとしています。

やっぱりこの暑い時期はアフリカ系、中東系の料理がウケますね。
初めてトライしたのは2011年夏のモロッコ料理特集でしたけど、
その間、いただいたご注文のほとんどは旅のメニューばかりだったので、
ととら亭はモロッコ料理の専門店化していました。

今回はその時のゲンをかつぎ、
アンコールにモロッカンサラダを持ってきましたから、
オーダーの集中度は最高潮!
グランドメニューは見向きもされません。

ともあれ、
こうして沢山のお客さまに楽しんで頂いていると、
海の彼方や地の果てまで料理を探しに行った甲斐があったなぁ・・・
としみじみ思います。
南アフリカも遠かったですからね。
その前にカタールのドーハで下見をしたり、
エチオピアのアジスアベバで取材もしていたので、
(これは去年の今ごろご紹介しました →エチオピア料理特集)
ことさらケープタウンは遠く感じました。

さて、ここで僕たちは10月にある次の旅のメニュー変えまで、
大き目のタスクがない業閑期に入ります。
まぁ、こんな暑い時期ですからのんびりやるのもいいじゃないですか。
読みたかった本も溜まっているし・・・

と毎年思っているのものの去年はともこが入院したり、
本の原稿の締め切りに追われたりと、
結局いつものタスクつるべ打ち状態と変わらない日々を送っていました。

そんな訳で、今年は夏休みこそ取れなくても、
ゆったり日時計のスピードで、この暑さも楽しみたいと思います。
それでは皆さま、

Have a nice vacation!!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ん?

という締めくくりの筈だったのですが、
昔の人は言いました。

歴史は繰り返す・・・んですよね。

先日、ひとつ大き目のタスクが入りまして。
8月中旬くらいまでのんびりモードはお預けかな?
その詳細は・・・解禁されたらお話したいと思います。

と、いうわけで、
Have a nice vacation WORK!!

えーじ
posted by ととら at 12:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年07月22日

コックコートにかける思い

毎日「暑いねぇ〜」が口癖のようになっています。
言っても何も変わらないのは分かっていても、つい・・・
朝から汗びっしょりになり、
ランチが終われば、まずは顔を水でジャブジャブ洗い、
Tシャツを着替えます。

えーじは3年前から、
夏の間はシャツから黒のポロシャツに衣替えすることにしました。
涼しくてずいぶん楽になったみたいです。
私もアイロンがけから逃げられるのでラッキー!

私は仕込みの間はTシャツです。
営業が始まる直前、
よしっ!と気合を入れてコックコートを着るのですが、
これがものすごく暑い!
それなら夏の間だけでもTシャツでやればいいのにと思うでしょう。
私だってその方が楽なのは分かっているのですが、
この暑さを我慢してでもコックコートを着続ける理由があります。

今から17年前。
箱根のオーベルジュでフランス料理の修業を始めた頃、
30歳直前の何の調理経験もない私を雇ってくれたシェフ。
まずは半年間、ホールでサービスをやって、
それでも気が変わらなければ調理場に入れてくれる、
という約束のもとスタートしました。

毎日、いつ料理を覚えられるのか、
不安になりながらサービスの仕事を頑張っていました。

半年たったある日、シェフが突然、
「明日から調理場に入れ」と言ってくれたのです。

当日、生まれて初めてコックコートを着て、
タブリエ(前掛け)の締め方も分からず、
先輩(といっても年下の料理人)に教えてもらい記念撮影。
あの日のうれしさと、これからだという気持ちが、
毎日コックコートを着る度に思い出されます。
あの日の気持ちを忘れず、真面目に頑張るためにも、
どんなに暑くても、私はコックコートを着続けているのです。

ともこ
posted by ととら at 15:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年07月16日

リッチな旅へ

3連休の中日。
皆さんはどこにいるのでしょう?

お客さまと旅の話をしていると、
人それぞれ色々な旅があるものだなぁ、と思います。
ある意味、それはミニ人生ともいえるもので、
よく聞いてみれば二つと同じものはありません。

僕もライダー時代から振り返ると、
実に様々な旅をしてきました。
そのどれもが思い出深いものですが、
今でもふと思い出すことが多いのはリッチだった旅です。

え? ウソを言うな?

ああ、確かにライダー時代はキャンプが殆どでしたし、
50歳を過ぎても本の著者紹介欄には、
「いつかはリッチな旅がしたいと常に夢見ているが、
 いまだ実現していない」と書かれていますけど、
ちょっとそれとはニュアンスが違うのですよ。

たとえば今朝、朝食を食べていて頭に浮かんだのは、
1998年6月下旬、オートバイで沖縄と南西諸島を周った旅。
東京の晴海ふ頭からフェリーに揺られて48時間。
明日のことはおろか、今日やることもその場で決める、
そんな気ままな45日間の旅でした。

腕時計はしていたものの、殆ど見なかったんじゃないかな?
目が覚めたら起きて、お腹が空いたら食べて、眠くなったら寝る。
日時計のスピードで流れる時間。
石垣島の米原ビーチから見た海に沈む夕焼け。
旅人たちと夜な夜な浜辺で見上げた満天の星空。
パソコンも携帯電話もなし。

海外では、ニュージーランドをトレッキングしながら回った旅、
ベトナムからカンボジアへアンコールワットを目指して抜けた旅、
インドからバングラデッシュ、ネパールを巡った南西アジアの旅、
そして中南米9カ国を彷徨った旅・・・

そのいずれもが予算はジリ貧でしたけど、
時間はたっぷりありました。
(仕事を辞めて行っちゃったので・・・)
そう、僕にとって豊かさの第一基準はこれなんですよ。

ま、いつかは足を伸ばして飛行機に乗りたいなぁ、
との切ない思いはありますけど、
家に帰って何年か経っても思い出す旅。
そうした意味でリッチな旅がしたいものです。

えーじ
posted by ととら at 16:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年07月13日

料理長の憂鬱

ととら亭を始めて8回目の夏。
旅のメニュー変えをやりつつ、「今度で何回目かしらん?」
と数えてみれば、
第1回の『世界の市場料理特集』以来、なんと30回目!
再現した料理数も34ヵ国94種。

よくもまぁこれだけやったというか、
皆さまもお付き合いしてくださったと申しますか、
正直、ほぇ〜・・という感じです。
同業者であれば説明は要りませんが、
フツーやりませんね、こんなこと。

というのも料理業界の慣習として、
一般的には修業したジャンルの料理を独立後もやるものです。
和食なら和食。イタリアンならイタリアン。
中華料理を修業した料理人が突然ドイツ料理レストランを開業する、
なんてのは、聞いたことがありません。

理由は言わずもがな、
素材は共通していても、調理方法が別だからです。
そりゃそうでしょう、先の例でいうなら、
北京鍋を振っていたコックさんに、
突然ザワーブラーテン(ドイツ風ビーフシチュー)を作って下さい、
と言っても、なんのことやら? ですからね。

しかし、不幸にも、ととら亭ではこれが『通常業務』なのです。

一人で料理を担当するともこが修業したのはフランス料理とドイツ料理。
にも関わらず、
中南米はメキシコ、キューバ、ペルー、エクアドル、ブラジル・・・
アジアは韓国、インドネシア、シンガポール、ウズベキスタン、キルギス、
アゼルバイジャン、ジョージア、アルメニア・・・
中東はトルコにヨルダン、ヨーロッパはハンガリー、ポーランド、
スロバキア、チェコ、ポルトガル、ルーマニア、ブルガリア・・・
はてやアフリカはモロッコ、チュニジア、エチオピア・・・

これらお互いに素材のみならず、
調理方法に関連性のない料理を約3カ月ごとに切り替えて出す。
こりゃたまらんですよ、実際。
だから労働時間がひとり400時間/月という、
ブラックレストランになっちゃったんですね。

で、その無理難題を押し付けているのが僕・・・

と思っているお客さまが少なくないようですけど、
違いますよ。

確かに取材先の候補を探し出すのは僕ですが、
そもそもととら亭のコンセプトは二人で考えたものですからね。

ともあれ、ここまで大変になるとは、正直考えていませんでした。
そこで料理を再現する上での僕の役割は、最初のレシピの解読。
これはゴルフに例えるなら、最初の一打。
ドライバーでガーンとグリーンに乗せるところです。

で、オンしたのを見届けたら選手交代。
ともこが自分なりのプレイでホールに近付けて行きます。
僕は彼女がバンカーにはまらない限り、後は基本的にお任せ。

ところがともこに言わせると、
ここからのパターでホールに沈めることこそが難しいそうで。
(もうちょっと僕の仕事を評価して欲しいものですが・・・)
そういえば今回もホールのすぐ手前で、行ったり来たりしていましたね。

それじゃちょっと訊いてみましょうか。

________________________________

ともこです。

今回いちばん苦戦したのは『ペリペリチキン』。
南アフリカのケープタウンで食べて、
一口でふたりともすごく気に入ったお料理です。

えーじの訳してくれたレシピの通り、まず1回目の試作。
美味しいけど何か違います。(えーじのレシピは大雑把なんですよ!)

ここから現地で食べたのと限りなく同じものを作る為の作業がはじまります。
レシピを考える時は、科学の実験をしている気分。
イメージした味に近づけるため、1グラム単位で変えて結果を比べて行きます。

この料理のチキンをマリネするペーストに入っている材料は14種類もあるんですよ。
味がイメージ通りでない時は、
どれを足してどれを引くか、一つずつ試してみるしかないのです。
今回は酸味と辛みのバランスがなかなかうまく行かなかったり、
玉ねぎの生臭さが消えなくて、えーじに八つ当たりしそうになりました。
(気配を察して逃げちゃいましたけど)
それでもサンプルで買ってきたびん詰のソースと味を比べながら、
調整して行ったのです。

やっと味が決まってもチキンのマリネ時間、焼き方、
焼く時間、オーダーが入ってからの提供の仕方など、
まだまだ完成するまでには越えなくてはならないハードルがいくつもあります。
定休日は誰もいないととら亭でひとり黙々と試作を続けるしかないのです。
何度やってもうまく行かない時は焦ってきて逃げ出したくなることもあります。
でも旅の景色と旅先で出会った人たちの顔を思い出して、
何があっても仕上げて紹介しなくちゃ!
とまたガンバる気が起きるのです。

________________________________

再びえーじです。

そんなこんなで始まった南アフリカ料理特集
昨日の初日は3種類すべての料理にご注文を頂き、
くだんのペリペリチキンも上々の評判でした。

ま、ともこも言う通り、
再現に向けた紆余曲折はなかなか骨が折れたようですけど、
お客さまの笑顔と「美味しい!」の一言で、
すべてはOKになっちゃうんですよね。

とどのつまり僕たちの最高の報酬とは、それなのかもしれません。
posted by ととら at 16:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年07月12日

南アフリカ料理特集が始まります!

旅のメニュー変えをする時、
最近は連休して無理のないよう作業しているのですが、
今回は諸般の都合により、1日でやらねばならなくなりました。

そうなると「待っていました!」とばかりに起こるのがトラブル。
今回はワインセラーが壊れたのです。

この時期は赤ワインでも普段より冷やしてサーブしているのに、
ボトルを手に持ってみると「ん? ・・・室温と変わらなくない?」
で、フィルターを掃除しても、電源をリセットしてもダメ。
やっぱりこの過酷な環境でペルチェ式は厳しいか。

そして急遽手配しましたコンプレッサー式の新型。
これがメニュー変え作業ピークの今日納品だったのですよ。
しかも支払処理まで重なって、
久し振りにトップギアで終日仕事してました。

ああ、わが哀しき「定休」日よ。

しかし、悪いことばかりではありません。
8年酷使したEPSONのA3プリンターが、
前回のメニュー変え作業で遂に天に召され、
やって来たのが同じくEPSONのSC−PX7V2。
こいつがノントラブルで頼もしい助っ人となりました。

更に自宅のデスクトップPCはスペックを大分上げているので、
ウェブサイトの更新作業をしながら、
A3プリンタとA4プリンタで2種の印刷物を同時プリント。

10年前では考えられないハイパーマルチタスクで、
日中の遅れを取り戻したのでした。

とはいえ・・・やっぱり日付が変わってもう2時か。
それではおやすみなさい。

えーじ

力作です!
南アフリカ料理特集
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2017年07月09日

お勧めをふたつ

まだ7月上旬にもかかわらず東京地方は今日も真夏日。
しかもそれが当分続くそうな。
梅雨を蹴散らして、はや夏本番ですね。

となれば、話は言わずもがな夏休み!
ととら亭でも、お客さまからいろいろな旅の計画を聞いています。

ポーランド、オーストラリア、台湾なんて海外から、
沖縄、四国、北海道など国内も魅力的な話題が盛りだくさん。
楽しみですね〜。

そこで今日はふたつご提案を。

お若い方たちは、
出かける前に、Google Earth などでしっかり行き先のチェックを。

え? そんなの当たり前?
美味しいレストランや、素敵なお店も、
Trip Adviser とか 食べログ でみんな調べてる?

さすがはデジタルエイジ。
その辺は時代遅れのSEが出る幕ではありませんね。

でも僕のポイントはその先にあります。
旅先ではぜひ、自由に行動してみてはいかがでしょう?

せっかく初めての街に来たのであれば、
事前に得た情報を再確認するだけではつまりません。
匿名の他者の行動を追体験するのでもない、
自分だけのコンパス(価値観)に従って方向を決めるのです。

食事をするのなら、
うまいかマズイかをどなたさまかの星の数で決めて頂くのではなく、
自分の感覚で判断するのです。

旅は情報の中にはありません。
そのリアリティは個人的な経験の中だけに存在します。
そして決めて頂くお客さまとしてではなく、
決める主人公として未知の世界に踏み出せば、
先に調べた情報の積み重ねが、
実はただの0と1の羅列でしかないとお分かり頂けるのではないか、
とオジサンは思うのですよ。

それからご同輩への提案は、
旅先で半日の空白を!

これです。これに尽きる。
できたら丸一日白紙のままにして過ごしてはいかがでしょう?
ただでさえ常日頃は公私ともにスケジュールびっしりなのだから、
旅先でまでそれを繰り返すのはもったいない。

脱刺激中毒。

え? 沖縄のビーチまで来て、
なんで一日中、退屈していなきゃいけないのか?

それがいいんですよ。
オリオンビールを飲みながら、波の音を聞いていましょうよ。
山ならハンモックに揺られて蝉の歌に耳を傾けるのもいいじゃないですか。

月100時間以上の残業をものともせずにこなしていた(こなしている)方や、
ゴーストバイブレーションに怯えて、日がな一日スマホを握りしめている方なら、
僕の提案の趣旨がお分かり頂けるかと思います。
SNSのメッセージなんか、放っておけばいいじゃないですか。
どうせ大した意味はないんだから。
それより電気ジャンクはいっさい持たず、自分だけの時間を楽しむのです。

はい? かく云う僕はどうするんだ?

残念ながら夏休みは取れないんですけど、
その代り8月中に半日は、空白の時間を作る予定です。

そう、思いっきり『退屈』を楽しもうと思っているのですよ!

えーじ
posted by ととら at 17:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年07月06日

分かっちゃいるけど...

「パン屋のお兄さんたち、大丈夫かな?」

丁度1年前、僕たちが訪れたウズベキスタンのタシュケント。
そこにあるチョルシーバザールのパン屋さんで、
ともこはナン作りの飛び入り修業をさせてもらいました。

2基の大きなパン焼き釜がある工房は、
ドライサウナも顔負けの温度。
そこで彼らは1日中働いているのでした。

僕たちがそんな旅のエピソードを思い出したきっかけは、
とあるニュースのヘッドライン。

5月以降、北半球の一部では異常な高温が続き、
パキスタンやイランの南西部では54度前後まで上昇したそうです。
心配になって世界天気予報を見てみれば、
今日のタシュケントは最高気温が48度!
7日の土曜日には50度に乗ると予想されているではないですか。

そういえばウズベキスタンの後で廻ったキルギスのビシュケクで、
こんな話を聞きた記憶があります。

「暑いでしょう?
 以前ならこの時期は花が見ごろのいい季節なんですけどね、
 ここ数年は夏がすごく暑く、反対に冬は寒さが厳しく、
 春と秋が短くなってしまったんですよ」

これと同じような話を、僕たちは日本でしていませんでしたっけ?

『異常』気象なんて言葉が『日常』化した昨今、
その範囲は字義通り、世界規模になってきている気がします。

極端な夏の高温と冬の低温。
想定を超えた干ばつと水害。
そして計り知れないエネルギーを持ったスーパー台風。

歴史上、経験したことのない状況に入りつつある僕らは、
こうして過激化した気象に翻弄されつつも、
未だに足並みをそろえて対策を実行することができずにいます。

ん?
ものの本によれば、僕らはこの星における『万物の霊長』であり、
その姿も創造主を模していた・・・はずですよね?

木を切ること、そしてそれを燃やすこと、
これが度を超えるとどういうことになるか、
気象学者や考古学者を連れて来なくても、
僕たちはみな、ご先祖様たちから学ぶ機会が十分にありました。
しかし・・・

分かっちゃいるけど、やめられない。

そういうエンディングは・・・

泣くに泣けない気がしませんか?

えーじ
posted by ととら at 23:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年06月30日

2017年の下期に向けて


昨日は少し厚着をしてジョギングに行き、
強制的に体を気候適応させました。

北ヨーロッパと日本の東京。
この季節だとまだ気温の差はそれほどでもありませんが、
湿度は大分違いますね。
成田で降機してすぐに感じましたが、
空気がしっとりしているのですよ。
飛び交う日本語以上に帰国を実感する瞬間です。

さて、昨日の朝から始めたお店の再起動も完了し、
今日のディナーから営業再開。

世界のギョーザ特集も7月10日(月)で終わり、
12日(水)からは南アフリカ料理特集が始まります。
これは試作と写真撮りが終わり、
僕は次の定休日からぼちぼちキャプション書きを始める予定。
楽しみにしていて下さいね。

これが終わると、僕たちの仕事もひと段落です。
2017年の下期はどんな旅が僕らを待っているのか。
ほんと、旅の終わりは、次の旅の始まりなんですね。

えーじ
posted by ととら at 17:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年06月29日

第14回取材旅行 その13 最終回

じゃ〜〜〜〜・・・ブシュ!
ガタン・・・ゴゴゴゴゴ・・・・

はっ!
なんだ? どうした? ここはどこだ?
あ? ああ、洗濯機の音か。

やれやれ、
けさ目が覚めた時は自分が何処にいるのか、一瞬わかりませんでした。
ここは東京の野方。帰ってきたのですね。

一部の読者の方には物足りなかったかもしれませんが、
今回の旅は珍しく平穏無事に終わりました。

当初は『いろいろあるだろうなぁ・・・』と身構えていたロシアですら、
蓋を開ければ他のヨーロッパの国々と同様、普通に旅ができましたからね。

それでも情報で組み立てた事前のイメージと、
実際に行った経験のギャップがあるのはいつものこと。
これまでずっとロシアはヨーロッパの一部と思っていたのですけど、
サンクトペテルブルグを歩いた限り、
多くの面で西欧とは異なる印象を受けました。

言うなればアジアでもない。
東欧やバルカンとも違う、異質の文化圏。
白系ロシア人のルックスや、
キリスト教の一つであるロシア正教のイメージから、
イギリス、フランスやイタリアなどと同列に考えていましたが、
日本と同じく、150年前後まえに西欧から多くの文化を取り込んで、
今の姿になったため、
ちょっとめくれば見えてくるのは違う顔だったのです。

そう、ロシアは違う。
こういう認識は西欧諸国の人々からしてみれば、
周知のことのようですね。
僕が「次はロシアに行くのですよ」、
と言った時の、欧米人のお客さまの微妙な反応が思い出されます。

そして変化の速さも並々ならぬものがありました。
それはゼネラルインフォメーションに数字で表されているものではなく、
街角で散見されるものです。

流れる音楽は殆どが欧米のもの。
若者たちのファッションもまたしかり。
賑わうマクドナルドにケンタッキー・フライド・チキン。
ストリートミュージシャンの楽器はバラライカではなく、
フェンダーが作るようなエレキギターですし、
曲もロシア民謡ではなく80〜90年代のアメリカントップ40。
英語を話す人も思いの外、沢山いました。

そう、少なくとも民主化以降の世代が向けいる顔の方向は、
マルクス、エンゲルスやレーニン、スターリンではなく、
明らかに欧米、特にアメリカのファッションと物質主義なのです。
それらはこれまでに旅した中央アジアや東欧、
バルカンでも顕著に見られた傾向でした。

思えば物資が著しく欠乏した時代の反動がこうなるのは、
僕たちの国を戦後から振り返れば容易に想像がつくことでしょう。

だから僕もまた微妙な気持ちになってしまったのです。
核家族で所有するマイホームとマイカーに3種の神器、
次にはミニチュア化された家電が個人レベルですべからく行き渡り、
情報化が一段落したパラダイスがどんなものか。
皆さんも知っているでしょう?

僕たちと違うのは、
それを彼らが倍速以上のスピードで経験していることです。
故に格差の開き方も凄まじい。
ロシアのジニ係数は日本を2.1ポイント上回っているのです。
ほんの25年前まで、あそこは一応格差のない社会だったのですからね。

そしておカネの使い方を知らない人々が富を得た時にする愚行は、
バブル時代の僕たちの姿を鏡に映しているようで恥ずかしい。
肌の色や言葉が違っても、人間は所詮、人間なんだな。
そう思わずにはいられないものがあります。

僕は個人的に、ロシア人たちが今、
どう、かつての社会主義を総括しているのか、そこに興味があります。
そして彼らが思い描く、未来の幸福とはどんなものなのか?

残念ながら、僕たちの大きな幸福のモデルだったアメリカは、
いまやあの通り。
いや、僕たちが気付かない間に、その代役を務めさせられつつある日本ですら、
胸を張って「世界の皆さん、僕たちのようになりましょう!」なんて、
とても言えないでしょう?

リーダーを、ヒーローを失いつつある世界。

すいません。ちょっと重い話になってしまいました。
ロシアを出国してエストニアのタリンへ向かうバスの中で、
僕はつらつらとこんなことを考えていたのですよ。

バルト3国も同じソビエト連邦を構成した国々だという視点で捉えると、
これまた興味深いものがありました。
首都を周った限りでは、
そこに社会主義のレガシーを見出すのは稀です。
これは中央アジアやコーカサスと大きく違うことで、
バルト3国がNIS(New Independent States)諸国に、
含まれていないのも頷けます。

リトアニア人のエヴェリナと話した時に、この理由を質問したのですが、
彼女はこう即答してきました。

「NIS諸国とバルトの国々が違うのは、
 国家が近代化するプロセスをロシアに依存しなかったことよ」

なるほどこれは、事前に調べた情報とも符合しています。
エストニア、ラトビア、リトアニアはソビエト連邦に併合される前から、
その渦中においてさえ、連邦内で最も経済的に栄えており、
ある意味で先進的な地域だったのです。
彼らにとって社会主義化するメリットは、殆どなかったでしょう。
ここも工業化から識字率の向上まで、
ソビエト連邦時代に大きく伸びた中央アジアの国々との差があります。

しかしながら、若者が向けている顔の方向は同じ。
エヴェリナ曰く、

「みんな、モノと素早く出る結果に憧れているの。
 これはちょっと困った傾向よ」

なるほど。
こういうのもどこかで聞いた話じゃありませんか?

今回取材した範囲ではリトアニアのツェペリナイを除いて、
他の地域にはない固有の料理というものに出会えませんでした。
呼び方は多少違っても、
ものとしてはほぼ同じ料理がシェアされているのです。

食文化は永い時間をかけて影響し、影響され、
近代国家のフレームや民族すら超えて重層的に重なり合っている。
そしてそれは食に限らず、社会的な問題も例外ではない。

そうなんですよ。
良くも悪くも僕たちは、多くのものごとをシェアしている。
ただそれに気付いていないだけ。

そんなことを考えながら、
成田空港のバゲッジクレームで行き交う肌の色の違う人々を見ていた僕は、
こう呟やかずにはいられませんでした。

Have a nice trip, Brother.

えーじ

ee_atfinlandbay.jpg

We would like to thanks to

Nozomi and Mayumi Haga @ Hand Crafts & Antiques RUNGTA
Maiko Hashiguchi @ Orient Star Trading Ltd.
Mr, Yanai
and Everina
posted by ととら at 22:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年06月28日

第14回取材旅行 その12

今は日本時間16時32分。
自宅のアパートでこれを書いています。
いやぁ〜、無事に帰ってまいりました!

昨日の朝はビリニュスの空港でチェックインからフライトまで、
何かと待たされたものの、
モスクワでのトランジットタイムが6時間もありましたから、
往路とは大分事情が違います。
僕らは慌てず、それぞれの待ち時間を楽しんでいました。

こうした様々な国籍の人が行き交う場所では、
マンウォッチングしているだけで退屈はしません。
なんてシェレメチェボ空港のトランジットルートをのんびり歩いていたら、
パスポートチェックの手前で後ろから騒がしい足音が近付いて来ます。
振り返えれば息を切らせた20代前半の白人女性が二人。
僕を見るなり「ロシアン?」、
「違いますよ」と英語で応えると、
どうやら共通言語がなさそうな雰囲気です。

しかし、ここはトランジットで悪名きシェレメチェボ空港。
そして逼迫した彼女たちの表情を見れば、状況は自ずと分かります。
さっと彼女のボーディングパスの搭乗時間を確認したら、
13時30分。で、僕の腕時計が指しているのも同じ時間!
で、「お先にどうぞ!」
彼女たちはイミグレーションのブースに突撃し、
ボーディングパスにスタンプを押してもらうと、
「スパシ〜バ〜っ!(ありがと〜!)」との声を残して走って行きました。
ま、いいダッシュしていたから、何とか間に合ったんじゃないかな?

それから僕らは帰国便が出るターミナルDでのんびりしつつ、
取材のノートをまとめたり、
ブログの写真の仕込みをやったりしていました。
そう、最後のリトアニア編です。
これでようやくレポートが追い付きましたね。
では!

lt_busstation01.jpg

ラトビアのリガを出発したミニバスは、
2時間15分でリトアニアの地方都市シャウレイへ。
バスターミナルは商業施設に隣接しており、
ちょっとした買い物や食事にも便利。

lt_hotel01.jpg

そこから10分ほど歩いたところにあるホテル。
まだお昼前でしたが、チェックインさせてくれました。

lt_hotel02.jpg

ホテルは地方都市によくあるタイプ。
部屋は清潔で、質素でも居心地は良かったです。
ちなみに今回の旅ではここが最も低予算でした。
日本円にしてツインで約4,900円。

lt_crosshill.jpg

シャウレイで訪れた十字架の丘。
ご覧の通り無数の十字架で埋め尽くされていますが、
墓地ではありません。
ちょっと特殊なクリスチャンの信仰の場です。
僕らがここを訪れた本当の目的は、
首都と地方の料理の比較だったんですけどね。

lt_station01.jpg

翌朝は鉄道でビリニュスへ。
ここはシャウレイ駅です。
昨日お世話になった切符売り場のおばちゃんは、
あまり英語が話せませんでしたが、とても親切な人でした。
僕に気付くと声をかけてきて、
列車が20分遅れていることを教えてくれたのです。
遅延を告知するインフォメーションボードの表示は、
リトアニア語だけでしたから助かりました。

lt_station02.jpg

さすがは首都のビリニュス駅。
キオスクや食堂も充実しており、それなりの規模です。
と言っても、西武新宿線田無駅より小さいけど。

lt_station03.jpg

着いた頃にはあいにくの雨。それも結構雨脚が強い。
それじゃホテルまではタクシーで行こう。
と思って乗ってみると、
ドライバーはメーターを動かさずに走りだそうとしました。

「あ、ちょっと待って、メーターを動かして下さい」

列車の中で話をしていた、
リトアニア人のエヴェリナからも言われていたのですが、
ここでは外国人をカモろうとするドライバーが多いとか。
するとドライバーは、

「10ユーロでいいよ」

おいおい、ホテルまで2キロちょっとの距離だぜ。
それを約1,200円とは、いい根性してるな。

「駅のインフォメーションで相場を訊いたら4ユーロでしたよ」
「それじゃ8ユーロでいいよ」
「メーターで行きましょうよ」
「ダメだ、降りてくれ」

というわけで交渉決裂。
さて、どうしたものかと空を見上げれば雨が小降りになってきています。
なら全然安いトロリーバスで行きましょう。
初めての街ではどの停留所で降りるべきか分かり難いのですが、
Google MAPで現在位置を確認していればどうにかなるでしょう。
で、ひとり1ユーロでホテルまでアクセス完了。

lt_hotel03.jpg

これがビリニュスで泊ったバックパッカーズです。
え? 写真が間違ってる?
いや、このパルテノン神殿みたいなのでいいんですよ。
実は僕らもこれには首を傾げてしまいました。
見かけだけじゃなく、1階はカジノなんですよ。
それっぽいエントランスを入ると、
安ホテルのフロントというよりカジノのレセプションじゃないですか。

「あの〜・・・ここはバックパッカーズなんですか?」

僕がおずおずとカウンターにいた女性に訊くと、

「はい、そうですよ」

へぇ〜、こいつは驚いた。
これの逆はよくあることなんですけどね。
かなり年季の入った安宿が『グランドパレス』って看板だったり、
なんちゃってゲストハウスが、
『マリオット』や『リッツ』なんてのも珍しくありません。
入り口に鼻高々と星が書いてあることもありますが、
冗談程度に受けとめておいた方が笑えるんですよ。

lt_hotel04.jpg

部屋に入れば、ほぇ〜って感じ。
これはバックパッカーズじゃないでしょ?
よほど自己卑下しがちなオーナーさんなのかな?
それともお茶目な外国人に、
英語で高級ホテルのことをバックパッカーズって言うんだよ、
と、かつがれたのかしらん?
ともあれ手頃なお値段で居心地抜群でした。
旧市街に近い立地もいいですしね。

lt-cityview.jpg

バルト3国の旧市街では最も規模が大きいと言われるビリニュス。
確かにちょいと歩きでのありそうな広さです。

lt_watchtower.jpg

一番目立つランドマークは、小高い丘の上に立つゲディミナス城。
ここから町全体が一望できます。

lt_church.jpg

古い建築物もたくさん残っていました。
聖アンナ教会は、
15世紀末に建てられたちょっと異色のゴシック様式建築。
1812年にロシアへ侵攻したナポレオンがここへ入場した際、
この美麗な建物がいたく気に入ったそうで。
へぇ〜、と眺めていて、
205年前に彼はどの辺に立ってこの教会を見ていたのかな?
と想像してみました。
ヨーロッパの国々を訪れていて面白いのは、
僕らにとって歴史上の人と、
時間を超えてその場を共有できることなんですよね。

lt_people.jpg

僕たちが主に取材を進めたピリエス通り。
いつも沢山の人々で賑わっています。

lt_street01.jpg

lt_street02.jpg

しかし、例によって徘徊するのはこうした裏道。
うまいレストランも大抵こんなところにあるものです。
雨上がりの石畳が美しい。

lt_forest.jpg

首都に流れる河とは思えない清流のビリニャ川。
とにかくバルト3国は緑がいっぱい。
心休まる空間がそこかしこにあります。

lt-lockedbridge.jpg

ムードがあるからか、橋の欄干は『愛の重さ』でこのとおり。
最近これは世界的に流行っているみたいですね。
2月に訪れたブダペストでも見かけました。
一番古い記憶は2007年に行ったフィレンツェかな?

lt_wedding.jpg

週末だった所為か、そこかしこでウェディングを見かけました。
お幸せに!

lt_street03.jpg

日本でいうなら銀座に相当するゲディミノ通り。
お洒落なショップやカフェが軒を並べ、
ここが四半世紀前まで社会主義の国だったとはとても思えません。

lt_restaurant02.jpg

レストランも料理だけではなく、
デザインセンスのいい所が多かったですね。
僕らは入店する時、必ず入り口の禁止事項のサインを確認するのですが、
昨今、マナーの悪いお客が増えたのか、
写真撮影禁止の店も同じく増えてきた気がします。
へたすると断りもなく動画を撮っているからなぁ。
ありゃ、やり過ぎだ。
でもとある落ち着いたレストランでは、
メニューブックにユーモアを交えて書いてあり、
僕は思わず吹き出してしまいました。
タバコやカメラにバツが付いていた隣で、
『KARATE』にもバツが付いていたんですよ。
このセンスがリトアニア流なのかな?

lt_borsh.jpg

ボルシチと黒パンは旧ソビエト連邦圏の西寄りでは、
どこもしっかり根付いているようです。
しかしその味わいは微妙に違います。
とくにリトアニアのパンの旨さは格別でした。
深い香りともっちりした食感が独特なのですよ。

lt_hearingsaladjpg.jpg

ニシンのマリネとビーツのサラダも定番です。

lt_potmeat.jpg

リトアニア版の肉じゃがとも言えるトロスキニュス。
ニンジンと豆、ピクルスも入ってリッチな味わい。
マヨネーズソースを添えるのがご当地流かな?
ところ変われば品変わる・・・ですね。

lt_kordinai.jpg

そしてもちろんギョーザもあります。
でも名前はペリメニではなく、コルディナイ。
ものも微妙に違っていまして、
大きさはペリメニよりやや大きく、
中身の具にしっかり味が付いています。
そしてスメタナを添えるのですが、
ゆで汁が少々入り、ネギを散らすとロシアを始め、
他のバルトの国とも異なる味わいに。
ん〜・・・
もしかしたらペリメニの系列ではないのかもしれませんね。

lt_pancakejpg.jpg

ポテトのパンケーキは今回の渡航国全体にあるものですが、
リトアニアのものが一番大型だと思います。
食べ方もそれぞれで、スモークサーモンや、
ニシンのマリネを添えていたり、
ここのようにスメタナや、
マッシュルームのソースを添えるところも。
焦げ目が香ばしくて美味しい。

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しかし、このツェペリナイだけは、
リトアニアでしか見かけませんでした。
ツェッペリン飛行船の形からその名が取られたこの料理。
してどんなシロモノかと申しますと、
北海道のイモ餅とそっくりの生地で挽肉を包み、茹で上げているのです。
スタンダードなレシピは、
茹でてスメタナとベーコンのクルトンを添えて食べるのですが、
形、中身ともに様々なバリエーションがあり、
この写真のように茹でてから焼いたバージョンもあります。
僕らはこっちの方が好みでした。
味は奇をてらったものではなく、くにっとした食感が独特ですね。

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街の規模にしてはそれほど大きくなかったハレス市場。
もしかしたらMAXIMAやRIMIなど、
スーパーマーケットチェーン店に押されて、
昔ながらの店は減りつつあるのかもしれませんね。
ここでも外周には市場の素材を使った、
美味しそうな食堂が並んでいました。

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今回もお腹に余裕があれば入ってみたいのがコンディトライ。
しかし常に腹12分目の僕らには、なかなか難しい。
そこで毎日平均2万歩くらい歩いて、なんとかクリアしました。
リトアニア名物はスポンジではなく、メレンゲを使ったパヴロヴァ。
キリッとしたエスプレッソがよく合います。

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さ〜て、それでは日本に向けて帰路につきましょう。
ホテルからタクシーでほんの10分の距離にあるビリニュス空港。
国民数が東京都の約1/4しかない小国ですから、
その規模もまた推して知るべし。
僕が知っている所で比べるなら旭川空港くらいかな?
ちなみにチェックインカウンターはひとつの航空会社につき、
たったの二つ!
しかもひとつはビジネス用だから、
100人以上のエコノミー客をひとつのブースで、
ひとりの地上職員が担当しているじゃないですか。
カウンターがオープンする10分前に行った僕たちですら、
ちょうど1時間待っていました。
更に驚いたのは、セキュリティチェックを終えて入った先に、
男性用のトイレがたったひとつしかなかったこと!
女性がトイレ前でずらっと並んでいる光景は見慣れたものですけど、
この逆は僕も初めて。
すいすい入って行く女性たちが物珍しそうに見ていました。
まぁ、これは工事中で今月末には複数が使える状態になると、
張り紙がしてありましたけどね。
(緊急の人には譲って下さい! との注意書きも忘れずにありました)
とにかくこの空港ではよく並びました。

そんなこんなで最後の国、リトアニアの取材も予定通り終わり、
僕たちは機上の人となったのです。
日本までのフライトタイムは約9時間。
思いの外、モスクワって近いんですよ。

えーじ

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posted by ととら at 21:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年06月27日

第14回取材旅行 その11

ともこです。

今日は旅先から出す最後のブログなので、
トリは私も参加することになりました。
そこで何をお話するかちょっと迷いましたけど、
二人の旅先での役割分担がいいかな、と思いました。

えーじが旅の準備段階からガンバってることは、
ブログを読まれている皆さんも知っていらっしゃると思います。
(その辺を本人がよくアピールしているので!)

何が起こるのか分からないのが旅です。
それに備えて下調べや準備は、できる限りのことをするのが大切です。
私から見ても日々の忙しい仕事の合間に、
本当に一生懸命(仕事以上に楽しそうに)細かいことまで調べていて、
大変だなぁ・・・と思います。

私は・・・というと、
目の前の仕込みや旅の料理の試作に追われて、
ガイドブックに目を通して、調べたい料理のリストを作るだけで精一杯。
毎回えーじに頼り切っての出発となってしまいます。

旅に出てからも、移動、ホテルのチェックイン、
空港での手続きなどはすべておまかせ。
じゃあ、私は何をしているのかしら?
と心配になりましたけど、書き出してみたら、意外と沢山ありました!

1.食事に行くレストランの候補を探すこと
2.毎日の洗濯(こまめにやった方が楽だから)
3.レストランでのオーダー
  (昔はできなかったけど、今はだいぶ慣れてきました)
4.市場やスーパーでの買い物
  (値切りも上手になりました)
5.ととら亭で飾る旅の特集の国旗を安く手に入れること
6.毎回食べた料理をノートに絵で描いて記録すること
  (盛り付けの資料として写真より役に立つのです)
7.万歩計で1日にどれくらい歩いたか記録すること
  (体重が気になるので!)
8.バックパックのパッキングの荷物配分を考えること
9.えーじが手配や交渉している時の荷物の見張り
10.市場での食材調べ(値段も細かくチェックしています)
11. ホテルにチェックインした後の洗面所周りのセッティング
12.現地通貨の管理。
  (ドルやユーロであれば問題ないのですが、
  エチオピアのブルのように次に行くのがいつかになるか、
  分からないような国のお金はなるべく残さないように調整しています。
  これは結構難しいんですよ)

これくらいやっているんだから、まぁいいですよね?
こんな風に協力しながら、いつも旅を続けています。

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えーじです。

僕からは3番目の渡航国、
ラトビアのビジュアルレポートをお届けしましょう。

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エストニアとラトビアの国境を越えたバスの車窓から見える風景は、
相変わらず森、農地、小さな街の繰り返し。
長閑で美しい景色が流れて行きます。

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そして民家が増え、その民家が小さなビルに変わり始めると、
まもなく街の中心部。
ダウガヴァ川の雄大な流れが右手に見え始めたら、
バスターミナルはすぐそこです。

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真ん中がこの街で投宿するホテル。
バスターミナルからここまでは歩いてほんの10分。
ヨーロッパらしい、重厚な建物や、
僕たちのいで立ちが浮くゴージャスなラウンジに気圧されて、
「値段を間違えたかな?」と心配になりましたが、
(ドイツ人の友だちは箱根で、
 一泊6千円だと間違えて6万円の旅館に泊まってしまいました!)
価格は朝食まで付いて意外とリーズナブル。

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部屋もこのとおり中世のお屋敷風。
僕たちが住んでいるアパートの倍以上の広さじゃないですか。
ま、たまにはこんな所もありですね。

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このホテルはビュッフェ式の朝食。
取材を控えてお腹を空かしておかねばならない僕たちですが、
こんなご馳走をちらつかされて後に引けるわけがありません。
見て下さい、この美味しそうなチーズやサラミを。
キノコのピクルスもいけます。
あ〜、しっかり食べてしまいました。
それじゃ、出かける前にプッシュアップとスクワットを10セットだ!

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タリンに続き、リガも美しい街です。
ご覧の通り、中世に遡る過去と現代が違和感なく共存しているのですよ。

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ね? こういうところですから、
エストニアだけではなく、
バルト3国を『新婚さん御用達』と僕が言った理由が分かるでしょ?

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脇道をぶらついているだけでも楽しいですよ。
治安がいいので裏通りに入っても危険な気配はないし。
深夜の一人歩きは何処の国でもNGですけどね。

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お洒落なレストランやショップが沢山あります。
オープンテラスの席で優雅な食事が楽しめます。

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週末ともなれば、そこかしこにストリートミュージシャンの姿も。
彼らの演奏レベルは実に高かった!
こうしたライブを梯子しているだけでも時間が経つのを忘れてしまいます。

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よく見ていると、こんな愉快な連中も。
リガはブレーメンと姉妹都市なのです。
さて、それでは仕事を始めましょうか?

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となれば、まず足を運ぶべきはここ、大きな中央市場です。
かまぼこ型の独特な建物が連結されていますが、
これは元々飛行船の格納庫だったそうな。

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中は活気が溢れています。
特にシーフードは種類、鮮度ともい素晴らしい。
獲れたての魚介類だけではなく燻製製品がこれまた美味しそう!
空腹で行きましたからたまらんです。

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売り手と買い手の真剣勝負。
アジア的に声量とジェスチャーで値切るのではなく、
じっくり根気よく、理詰めで攻めているようですね。
勉強になるなぁ。

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もうダメだ、お腹空いた!
で入ったのは連結部にあったシーフードの食堂。
字義通り、市場直送の料理が売り物です。
まずはスモークサーモンとサバの燻製から始めましょう。
如何です? この脂のノリ具合!
これとビールかキリッと冷えた白ワインだけでも天国が見えますよ。

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しかしまだ序の口。
メインは本日の鮮魚3品のおまかせグリル。
何が出て来るかワクワクしながら待っていたら、
期待を上回る連中が並んだじゃないですか。
意表を突かれたのは手前の丸い切り身。
これウナギのグリルなんですよ。
セージバターとガーリック添え。
美味すぎますね!

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この市場にはまだお目当てがあったので、翌日も来ました。
それは旅人仲間の羽賀さんが教えてくれたペリメニ屋。

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場内にはこうした軽食堂が沢山あります。
確かにここのペリメニはモチモチの皮と中身のバランスが良く、
とても美味しかったですね。
スタッフの会話を聞いていると、何となくロシア語のような。

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そこで話しかけてみたら、やっぱりそうでした。
リガに来る前、サンクトペテルブルグに寄ったんですよ、
と言ったら、おかみさんもハラショー!
僕らは「オーチン フクースナ!(とても美味しい!)」

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場外にも沢山の店があり、
そこではウズベキスタン料理のレストランも。
プロフ、ラグマン、マンティなど、
懐かしい料理が貼り出されていました。
ソビエト連邦時代の縁でしょうか。
そういえば中央アジアを旅していたのはちょうど去年の今頃でしたね。

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さてディナーはホテルのあるブロックの反対側のレストランALAへ。
ここも羽賀さんに教えて頂いたのですけど、
やっぱり旅人の直情報はハズレません。

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ALAはライブもやっているローカルレストラン。
100席以上はある大きな店なのですが、
僕らが行った日は2人分の空席を探すのも一苦労。
旅行者だけではなく、
ローカルもじゃんじゃんやって来るハイパー人気店です。

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なるほど雰囲気、スタッフ、料理ともに素晴らしいところでしたが、
ムードが良い故に料理の写真を撮るとご覧の通り。
これでも目立たないよう、
小型のペンライトで光を当てていたのですけどね。
なにが写っているかといえばチキンのローラーデン。
取材の資料としてはあまり役に立たないか・・・
ともあれもう一度行こうということになり、
翌日は予約を入れました。

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リガもまた様々な楽しみ方が出来る街です。
建築に興味がある方はぜひアルベルタ通り周辺を訪れるべきでしょう。
アールヌーボー様式の建築が肩寄せ合っています。
もちろん博物館ではなく、現役のアパートやオフィスとして。
ちなみにこの呼称、直訳すると『新しい芸術』となりますが、
今となってはレトロなテイストとなってしまいました。
こういうのはいつぞやお話した、
プログレッシブ(進歩的な)ロックが懐メロ化したのと同様、
諸行無常を感じさせますね。

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そしてリガでも行って参りましたパイプオルガンのミニコンサート!
今度お邪魔したのはリガ大聖堂。
パイプオルガンはドローバーの操作によって倍音加算式で、
様々な音色を作ることが出来ますが、
響き方は共鳴器としての機能を持つ教会によって異なり、
どこもふたつとない音色を持っています。
ここのオルガンは結構エッジの効いた硬い音が出ますね。
特に低域は唸るような凄みがあります。
また音量もかなり大きなものでした。
そういえば10メートル級のパイプも使われていましたね。
また聴きたいなぁ・・・

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丁度夏至の御祝だった所為か、街にはストリートミュージシャンの他、
大道芸人もたくさん見かけました。
これはシャボン玉使い。飛び入りの女の子も上手でしたよ。

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一息入れるには持って来いの素敵なコンディトライも沢山ありました。
何とかお腹の隙間を作った僕たちのチョイスは、
プラハでも食べたことがあるハニーケーキ(左)。
キャラメルクリームとスポンジが層になり、
蜂蜜の濃厚な甘みが加えられた魅惑的スィーツ。
これ、マジでほっぺが落ちますよ。
え? カロリー?
そんなことを考えていちゃ料理の取材なんて出来ません。

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バルト3国はロシアと多くの料理を共有しており、
この夏の風物詩、ビーツと発酵乳のケフィールなどで作った、
シャルティ バルシチェイもそう。
知らないとドキッとする色ですがビーツから出た自然なものです。
独特な酸味とコク、そして仄かな甘みが相まってとても美味しいです。

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ラトビアでお肉と言えばポークなだけあって、
ブタ肉料理は沢山あります。
このハーブ風味のチーズ焼きなんてのもポピュラーな一品。
ボリューム満点!
他の料理も食べていたので僕らの胃腸には少々難敵でした。

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こうしてぎゅっと密度の濃い4日間を過ごした僕らは、
来た時と同じバスターミナルから、
今度はミニバスでリトアニアのシャウレイへ。
所要時間は約2時間15分。
最後の目的地はもうすぐそこです。
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はぁ〜、明日は朝から空港に移動です。
さっきウェブチェックインも済ませました。
往路と同じアエロフロートさんで一度モスクワに飛び、
6時間ほどのトランジットタイムの後、
19時発のSU260便で成田に向かいます。
何ごともなければ、
日本時間28日の午前10時半ごろには、
飛行機を降りているでしょう。

毎度のキメ台詞になってしまいましたけど、
旅の空間に流れる時間の速いことといったら!
あっという間に最終日だ、と溜息をつきつつも、
振り返ると、サンクトペテルブルグやタリンなど、
ほんの1週間前のことが、ずいぶん昔に感じられる。

思えばこういう時間感覚こそ、人生そのものなのかもしれませんね。
特にオヤジになると殊更そんな風に思えます。
ま、旅の終わりは次の旅の始まり。
リトアニアの写真は帰国してから『その12』でお見せしますね。

それでは次は梅雨空の東京でお会いしましょう!
posted by ととら at 05:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記