2017年04月23日

ロックという伝統芸能


ポールのライブに行きたしカネはなし・・・

で、その代わりと言ってはなんですが、
僕がゲットしたチケットは、アンダーソン・ラビン・ウェイクマン!

え? 誰それ?

ってなるかもしれませんね。特に若い世代には。
それではおじさんがちょいと説明しましょう。

1960年代後半、
プログレッシブロックなる音楽のスタイルがイギリスに現れました。
Progressiveとは『進歩的な』『斬新的な』の意。
当時ポピュラーな存在になりつつあったロックに、
演劇やクラシック、ジャズなどの要素を加え、
それまでにないサウンドと様式を確立したのです。

音楽的な特徴は、演奏時間の長い曲が多く、
転調や複雑な変拍子を多用し、詩は抽象的かつ哲学的で、
自宅に彼女を呼んで聴くにはムード台無し間違いなしなもの。
(だから今回は僕一人でお楽しみ)

有名どころではキングクリムゾン、ピンクフロイド、ジェネシス、
EL&Pの他、演奏能力ではずば抜けていたイエスがいました。

そのイエスの中心的メンバーだったのが、
ジョン・アンダーソン(Vo)、リック・ウェイクマン(Key)、
そして新風を吹き込んだトレヴァー・ラビン(Vo,G)。
彼らがリズムセクションのサポートと共に来日していたのです。

プレイリストは
1971年リリースのThe Yes Albumに収録されたI've Seen All Good Peopleから、
1991年のUNIONに含まれるLift me upまで。
残念ながら新曲はありませんでした。

個人的にはいい出来のステージだったと思います。
イエスのライブを観るのはこれで4回目ですが、
驚異的なハイトーンボーカルのジョンは往年の伸びこそないものの、
齢72歳とは思えぬ歌唱力。
還暦を迎えたトレヴァーもヴォーカル、ギター共に衰えを感じさせません。
リックの装飾音たっぷりなピロピロキーボードプレイだって健在です。

会場を埋めていたのは予想通り、オヤジが9割。
いやはやミュージシャンと共にファンも歳を取りました。
女性が1割ほどいたのは驚きでしたが、
(ロバート・フリップファンの女性なんて聞いたこともないし)
ポップな Owner of a lonely heart や、
Love will find a way のヒットがありましたからね。

さて、往年のプログレサウンドにどっぷり浸りながら、
僕はちょっと複雑な心境になっていたのですよ。

実はこのライブに先立つこと4カ月。
昨年の12月に『本家』のイエスが、
同じオーチャードホールでプレイしていたのです。

メンバーは、
スティーブ・ハウ(G)、アラン・ホワイト(Dr)、ジェフリー・ダウンズ(K)、
そしてビリー・シャーウッド(B)とジョン・デビィソン(Vo)。

中心メンバーとは別に本家が活動しているというと、
奇妙な印象を持たれるかもしれませんが、
何と言ってもメンバーチェンジを繰り返しつつ、
47年間も続いているバンドですから、
全関係者をひっかき集めれば、2〜3バンドは作れるくらいなのです。

僕が残念に思ったのは、
最近の老舗バンドの風潮と申しますか、
加齢による歌唱力の衰えからヴォーカリストが脱退し、(もしくはクビにし)
その穴をYouTubeで探したコピーバンドの若手そっくりさんで埋めること。

中にはオリジナルヴォーカリストの歌い方を真似るだけではなく、
ファッションやアクションまでコピーするとあっては、
正直、ちょっと不気味な感じがします。

これをかつてプログレッシブロックにカテゴライズされたバンドにやられると、
何が Progressive なのか全然分からなくなりはしませんか?
これではそのうち前メンバーを襲名するようになってしまうのでは・・・
二代目クリス・スクワイア、三代目ジョン・アンダーソンってな具合にね。

と溜息を洩らしつつも白状すると、僕も納得しているのですよ。
ロックに限らず、どんなに斬新な始まり方をした音楽でも、
様式化されれば、継続する限り、やがては伝統になって行きます。
ジャズだってそうでしょう?
もうマイルスが生きていた時のような衝撃はない。
ジャンルは全然違いますが、
能の世界だって世阿弥が世に出た当時、
彼がやっていたのはアバンギャルドだった。
でも今はそれだって伝統芸能です。

なんか、サプライズがなくなってしまったなぁ・・・

で、渋谷からの帰り道に僕が考えていたのは、
かくいう僕がやっていることは、
いや、僕の生き方は、
プログレッシブなのか?、それとも様式化した懐メロなのか?

ん〜・・・
オヤジにはちと厳しい質問です。

えーじ
posted by ととら at 09:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年04月20日

ポールのライブに行きたいが・・・

旅の食堂をやっています。

などと言うと、
いろいろな所へ出かけて行き、
さぞ変化に富んだ日々を送っているのだろう・・・

と考える方もいらっしゃるかと思いますが、
実は旅 → 仕事 → 旅 → 仕事 → 旅・・・
この繰り返しも7年以上続くと少々単調になって来ます。
特に自宅と店舗が中野区の野方5丁目にあるものですから、
普段は半径400メートルの生活圏内から出ることがない。

いかん。
たまには東京にいても気分転換が必要だ!

そこで久し振りにコンサートに行こう、と思ったのですが、
我が家の場合、チケットを買う前に、
越えなければならないハードルが二つあります。

ひとつは僕らの定休日。
一般的にみても火曜日は集客が良くないので、
当然、同じお客さま商売のライブはあまりやっていません。

もうひとつのビッグな問題は、ワイフのともこさん。
僕は音楽の守備範囲が広く、
機会があれば何でものこのこ出かけて行く方ですが、
彼女はポップでノリのいい音楽でないと寝てしまうのですよ。

以前、ソニー・ロリンズのライブに連れて行ったのですけどね、
前から10列目ぐらいの正面と言う、実にいい席だったにも拘らず、
3曲目くらいでともこはオチてしまいまして。
起きたのはアンコールのセント・トーマス。
ステージから彼女の安らかな寝顔がよく見えたことでしょう。
(ゴメンよソニー)

そのかわり、エリック・クラプトンやビリー・ジョエルはOKでした。
そこで、ぴあから届くメールを毎回チェックしていると・・・

あった! これだ!
ポール・マッカートニーならともこも楽しめる!

で、公演日は・・・おお、4月25日の火曜日じゃん!
よぉ〜し、ブッキングするか。
折角だからS席にしよう。
料金は・・・S席の・・・料金・・・ん?

ふぅわぁちぃむわぁんえぇ〜んっ!
って、ひとり8万円てこと?

じ、じゃ他の席わ?

一番安いB席で4万円、A席が6万円、んでSS席は10万円となっ!
なんじゃこりゃっ!

そ、そうか、
会場がオータニか帝国ホテルで、
ドンペリ飲み放題のディナーショーなんだな。

いや・・・違う・・・武道館じゃん。
立食パーティー?
でもないのね。フツーのライブ?

ぴあのシステムがバグってる?
僕のPC?
いや、OSを再起動しても変わらない。

マジですか?

む・・・無理だぜ、ポール。
いかにお客の年齢層が高いからと言っても、
日本のオヤジにこの料金は荷が重すぎる。
中でも我が家の予算では、
B席ですらアジアの海外取材旅行費用とほぼ同額。
(しょぼいね・・・)

結構長いポールのファンとしては、
何とか行きたかったんですけどね。

あれは1980年。
高校生の頃、Wings Over Americaを擦り切れるまで聴き、
(バンド小僧だった僕がギターからベースに転向したきっかけはこれでした。
 リッケンバッカー4001は買えなかったけど・・・)
学校に内緒でバイトしてウイングスの東京公演のチケットを買ったものの、
ポールが成田空港でパクられて涙したのを思い出します。
あの幻の日本公演のパンフレットは、
今でも家宝として実家にしまっているくらい。

ともあれ、これでは仕方がない。
で、代わりにゲットしたチケットは・・・

to be continued...

えーじ
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2017年04月18日

本の旅

人が旅をすれば、『食』もそれについて行く。

その一文字が含むのは単なる一皿の料理だけではなく、
食材、調理技術、調理器具から言葉まで、
まさしく文化そのものが運ばれて行くのです。

またそれは、けして一方方向ではなく、
互いの文化が共鳴し合い、
時には時間を超えて影響を及ぼすこともあります。

SNSや電子メールに頼らなくても、
すでに僕たちは繋がっている。
ただ、それに気が付いていないだけ。

先日ととら亭で行われた、
TabiEatsファンの集いで出会ったオランダ人のローザとベン。
彼らが帰国の前日にひょっこり現れました。

「やぁ、また来てくれたんだね、ありがとう!」
「ちょっと忘れものをしてしまったんでね」
「忘れもの?」
「君が書いた本さ」

そう、ベンは最初に来たとき、
僕の本にとても興味を持っていたのです。
もちろん彼は日本語が読めませんけど、
日本を旅した思い出の一つになったのかもしれません。

それから暫くして彼から届いたメールに、
アムステルダムにある彼の家の飾り戸棚を写した、
一枚の写真が添付されていました。

bennesbook.jpg

多分、僕が書いた本で、最も遠くまで旅をしたのはこれでしょう。

そうそう、忘れていました。
人が旅をすれば、一緒について行くものがもうひとつあります。

それは心。

えーじ
posted by ととら at 12:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年04月15日

日本が大好き

今から12年前。
僕たちは東京都文京区の小石川3丁目に住んでいました。
そこは何とも交通の便がいいところで、
地下鉄丸ノ内線、南北線、大江戸線、三田線それぞれの駅まで徒歩5分圏内。
10分も歩けばJR水道橋駅まで行けるという驚くべき好立地だったのです。
そして僕が通勤に使っていた丸ノ内線の駅と言えば後楽園。
そう、東京ドームにも自宅から散歩がてら行ける距離だったのですよ。

そして住んでいたのは新築の高層マンション・・・

であるわけがなく、
戦前から残ると言われた賃料9万円/1カ月也の一軒家。
全ての戸を閉めてもすこぶる風通しが良く、
都心にありながら、
様々な野生生物が生息する素晴らしい環境でありました。

それはさて置き、後楽園です。
引っ越したばかりの僕らは、

「小石川かぁ。
 区役所、保健所、図書館・・・
 歩いて行ける範囲に何でも揃っているじゃないか」
「そうねぇ、商店街も活気があって買い物に困らないわ」
「何といっても東京ドームまで歩いて5分と来ている」
「夏はぶらっとナイターね!」
「そりゃいいな!」

ところがそれから5年が経ち、小石川を旅立つ日が近付いても、
僕たちは結局、東京ドームの野球観戦には行かずじまいだったのですよ。

皆さんにもこんなご経験はありませんか?

近くだからいつでも行ける、
そう思っていたら、
何ごともこんなものなのかもしれません。
ですから、
住んでいる人より時間が限られている旅行者の方がその土地に詳しい、
そんな逆転現象も起こり得るのでしょう。

昨年の12月、香港で料理研修を受けたのが、
地下鉄港島線の柴湾駅にほど近い HOME's COOKING
ここでお世話になった講師のジョイスがご家族と一緒に来日しました。

彼女は来日歴20回に迫るハイパー親日家。
当然訪れたのはゴールデンコースの東京と京都だけではなく、
北海道から沖縄までカバーする、ちょっとした日本通です。
そして行ったからには、へとへとになるまで歩き回るという、
僕らの料理取材も顔負けの探求心。

一昨日はそんな彼女がととら亭を訪れてくれました。
思い出話を聞いていると、
オートバイで全都道府県を走破した僕も行っていない、
マニアックな場所を知っていてびっくり。

日本人の僕がこうして外国人の彼女に、
日本の見どころを教わるのも面白いものです。

ジョイス曰く、
I love Japan veeeeery much!! (私はニホンがだ〜い好き!)

joycesfamily.jpg

Thank you for choosing Japan among many countries.
As for us, it is very honored.
Have a nice trip!!

えーじ
posted by ととら at 09:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年04月12日

賢い僕らの愚かな選択

飛行機が飛び立つ前に流れるセイフティービデオ。
その中で機内の気圧が下がると、
自動的に酸素マスクが落ちて来るシーンがあります。
続くアナウンスは、
「お子様をご同伴のお客さまは、まずご自分が酸素マスクを装着し、
 次にお子様に装着して下さい」というもの。

これは言わずもがな、
自分が気を失っては子供を助けることが出来ないので、
まず自分の安全を確保し、
次に子供の対応をするよう促しているのですね。

自分が第一。

このあまりにも当たり前の優先順位は、
ボランティアやセラピストなど、
他者のために何かをしようとする様々な職業にも、
あてはまることだと僕は考えています。

往々にして、
自分の心の中が怒りや悩みで火がぼうぼうなのに、
他人の心の火を消せるわけがありませんからね。
他人の為に何かをしたいなら、
まず自分をしっかりさせなくちゃ。
(と僕も暖簾を出す前にささやかながら自問自答しています)

ところが昨今、世界各地で叫ばれている保護主義。
グローバリズムのカウンターとして台頭してきたこの『我が国第一』主義は、
ちょっとニュアンスが異なる気がします。

それはさながら、
『わが国だけが第一』と言っているように聞こえはしませんか?

確かに自国の国益を守ることは大切です。
しかし、ここまでグローバリゼーションが進んだ段階で、
偏狭な民族主義の旗を振っても、国益は増えるどころか、
様々な分野でマイナスになるのではないでしょうか?

各国が他国を顧みず、
ただ自国の国益のみを追求すれば(局所的な最適化)、
素晴らしい世界が実現する(全体の最適化)。
のかなぁ?

この集合的欲望をエネルギー源とする、
市場の『見えざる手』に運命を委ねることで実現するのは、
いったいどんな世界なのか?

この星で最も賢いと自負する僕らは、
自らひねくり出した経済学でいう『合成の誤謬』の、
典型的な例になろうとしている気がしてなりません。

儲かればいい。
自分たちだけ。

政治やマクロ経済の門外漢である僕がはっきり言えることがあるとしたら、
そうして稼いだおカネで食べた料理は、
たとえ、ととら亭で出したものであっても、けして美味しくはない。
ということかな。

えーじ
posted by ととら at 14:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年04月09日

ととらな本 その5

「取りあえず書いてみましょう!」

と言われてみたものの、どうしたもんだろ?

章立てが決まったとはいえ、
具体的なストーリーはまだ漠然としたままです。

文体はブログと同じでOK・・・だったな。
でもいいのかしらん?
出版社の東海教育研究所さんは大学系。
本自体はアカデミックなものではないにしても、
1人称と疑似3人称が入り乱れる僕のいつもの語り口では、
ちょっと軽薄過ぎるのでは?
ともあれ慣れた文体の方がやり易いのも事実。
じゃ、それで行くか。
で、次はボリュームだ。

本全体が260ページ前後と言うのは指定されているものの、
各章への割り振りはまだ何も決まっていません。
しかも本編は更に地域ごとに分割することになりましたが、
その文字数も未定なのです。

大まかに言って、各国それぞれのギョーザを説明するだけなら、
かなり簡潔にまとめることが出来ます。
たとえば、ととら亭のメニューのキャプションがいい例でしょう。
しかし、料理の写真と最小限のキャプションで描けるのは、
平坦なオブジェとしての料理だけ。
本のコンセプトからいって、
ギョーザを文化の文脈で捉えなければ意味がありません。
では、該当する旅の記憶を全て表現すればいいかと言うと、
それでは紙数を無視した冗長なものになってしまうでしょう。

村尾編集長は何を求めているのか?

ん〜、分からん。
こうした場合はいきなりカウンターではなく、
ジャブを打って相手の出方を見る方が良さそうだ。

そこで書き始めたのが、本編の第一話となる、
『ギョーザをめぐる旅の始まり 〜トルコのマントゥ〜』です。

さて、どんなエピソードを入れようか?

最初の打ち合わせで僕が出した意見の一つに、
この本をいわゆる無謀な旅のお手本のようにはしたくない、
とういうのがありました。

そう、お店でも時々目を輝かして訊かれるのが、
「危険なことはありましたか?」というご質問。

それはありますよ。幾らでも。

しかし僕らはチープスリルを求めて旅をしているのではありませんし、
そもそも危険は大嫌いです。
無事に帰国したからこそ笑って話せることでも、
直面している時には顔が引きつりますからね。
(場合によってはマジでビビりますよ)

そんな運に救われただけの武勇伝を開陳するより、
旅の中で人と接したエピソードを盛り込みたい。
料理とはとどのつまり、
それを作った人(文化)を抜きにして語れないものなのですから。

そこで思い当たる幾つかのエピソードを入れた、
バージョン1をフリーで書いてみました。
これは文字数で2687文字。400字詰めの原稿用紙で6枚強です。

ふんふん、こんな感じかな?

次に必要最低限までエピソードをそぎ落とし、
文章の繋ぎを修正したバージョン2に取り掛かりました。
雰囲気はととら亭のメニューキャプションに近い感じ。
文字数は1107文字となり、バージョン1の半分以下。

ここで両バージョンを村尾編集長に送ってみると、

「バージョン1の方が臨場感があっていいですね!」

OK、それじゃこの雰囲気で行きますか。

僕が次に取り掛かったのは第2話の、
『本場のおいしさとの出会い 中国のジャオズ』です。

えーじ

to be continued.
posted by ととら at 16:30| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記

2017年04月07日

ととらな本 その4

僕が本を書いたのはこれが初めてですから、
他のケースは全く分かりませんが、
この仕事はどことなく、
IT稼業時代のシステム開発と似ている気がしていました。

ITシステムを作る際に要となるのは基本設計。
と言っても、いきなり高度な最新技術が登場するシーンではなく、
大枠で処理の流れをフローチャートに落とすところから始まります。

今回、これに相当する部分が章立て。
『ギョーザを巡る世界の旅』というテーマをどう細分化し、
時系列的に並べるのか?
執筆を始める前に村尾編集長と僕が頭を捻ったのはここでした。

そこで最初にぶつかったハードルが、
無名の二人の旅人と、
得体のしれない『旅の食堂ととら亭』をどう説明するか? です。
唐突に旅の話が始まっても何が何だか分からないでしょう?

勿論、ととら亭にご来店頂いたことのあるお客さまであれば、
この部分は概ねスキップしても差し支えありません。
しかし、これから書く本は、
東京都の中野区だけで販売するものではなく、
僕たちとの出会いが、
北海道や沖縄の書店であることも想定しなくてはならないのです。

これは少々デリケートな問題でした。
全体を限られた紙数に納めなくてはいけませんし、
本編はあくまでギョーザを巡る旅ですから、
前提の説明は可能な限り簡潔にまとめる必要があります。

そこで、登場人物と、旅の食堂の概略を冒頭に置き、
読者に「なるほど、こういう人が、こんなことをやっているんだな」
と知って頂いてから本編がスタート。
細かいところは旅の話を進めて行く中で都度説明する。
こういう構成で始めることにしたのです。

本編は各国にあるギョーザのエピソードを横糸に、
それを僕たちの旅が経糸で編み上げて行く流れをイメージしました。
そして最後に旅のメニューの再現プロセスを入れれば、
一応、起承転結の体裁は整います。

二つ目のハードルは、
ギョーザをテーマにした本と実際のととら亭が乖離しないようにすること。
旅の食堂と言う玉虫色のコンセプトは、
常連のお客さまでさえなかなか分かり難いのに、
これを少ない字数で齟齬なく表現しておかないと、
世界のギョーザの専門店だと思われてしまうかもしれません。
場合によっては、いつでも本の中で紹介されているギョーザが食べられる!
そう期待されて遠路はるばるご来店される方も考えられます。

しかしながら、旅の料理は3カ月前後で切り替える為、
今やっている『世界のギョーザ特集』は6月の中旬で終了ですし、
カザフスタンのチュチュバラ、ドイツのマウルタッシェン、
トルコのマントゥも今月下旬には別のギョーザに切り替えてしまいます。

せっかくご来店されたお客さまが、
「なぁ〜んだ、ギョーザを食べに来たのにないのか・・・」
とがっかりされることは、何としても避けたい。

う〜ん・・・どうしたもんだろ?
基本設計は概ね形になったけど、
詳細設計も慎重に進めないと思わぬ落とし穴がありそうだ・・・

そう悩んでいる僕に村尾編集長から下った最初のオーダーは、

「取りあえず書いてみましょう!」

と言われてもなぁ・・・

to be continued.

えーじ
posted by ととら at 14:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年04月05日

第14回取材旅行の準備 その2

僕たちの旅は個人旅行。
その本来のスタイルは、
航空券と初日の宿だけ手配して出発するというもの。
「それは自由気ままでいいですね!」と思われるかもしれませんが、
実は渡航先の選択だけでも、かなり慎重に決めているのですよ。

そのあらましは、
ウェブサイトの『取材地の決め方』にも書きましたけど、
今回も数カ月前から情報を収集し、
石橋をビシバシ叩いて各種ブッキングに励んでいたのです。

ルートは空路でモスクワを経由してサンクトペテルブルグに入り、
そこからは陸路でエストニアのタリン、ラトビアのリガ、
そしてリトアニアのビリニュスを目指すというのもの。

以前は安全だったヨーロッパも難民の問題だけではなく、
テロの直接的なターゲットとなり、
なかなか安心して行けるところが少なくなりましたが、
ほぼ北の外れのバルト三国なら大丈夫でしょう・・・

と高をくくっていたところへ起こったのが、
4月3日のサンクトペテルブルグでのテロ。
むわぁ〜、よりによってロシアで!

こうした場合、大きな懸念材料になるのは、
チュニジアのようなテロによる治安の悪化ではなく、
メンツを潰されたロシア当局の反応。

2発目のテロはあまり心配していません。
おそらく今はサンクトペテルブルグやモスクワだけではなく、
ロシア中のセキュリティレベルが上げられているので、
それをかいくぐって再攻撃を仕かけられる猛者は、
そうそういないでしょう。

僕が心配なのは別のこと。

旧社会主義国の役人さんの中には、
『人を待たせる、並ばせる』ことに関して、
並々ならぬ才能をお持ちの方や、
申請書や証明証、
許可証などが飯より好きな書類マニアが沢山いらっしゃいます。
以前、取材旅行中のブログで何度かお話しましたが、
アゼルバイジャン、キューバ、
ウズベキスタンでのトホホな事件を思い出すではないですか。
しかも今度はその総本山のロシア。
入出国のことを考えたら、ちょっとブルーな気分に・・・。

ま、ここはにっこり笑い、
忍耐力テストを受けてみるしか・・・ないかな?

えーじ
posted by ととら at 23:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年04月03日

一歩先の世界へ

今日は年度初めですね。
学生、社会人を問わず、
沢山の人が新しい環境でスタートを切ったことでしょう。

変化と言えば、わが家は二人とも転職の多い人生なので、
(長い旅に出る度に仕事を辞めてしまいましたから・・・)
春に限らず、
これまで生活ががらっと変わることは珍しくありませんでした。

慣れない場所で初めての仕事をするのは、
なかなか骨が折れるものです。
業界が変わると同じ日本で日本人と仕事をしていても、
最初は外国にいるようなものですからね。

でも、その違いは、
狭い自分の世界と価値観を広げてくれることもあります。

若かりし頃の僕は自分自身に行き詰まった時、
転職以外でも、やったことのない世界に飛び込んだことがありました。
まぁ、ちょっとしたショック療法みたいなものだったのですけどね。

そのひとつがロッククライミング。
発想の転換を促す短文に、
小松左京氏の「地図を逆さまに眺めてごらん」というのがありましたけど、
過激な僕は『肉体的に』これを実践した訳です。
たとえばですね、ロッククライミングには懸垂降下というのがあります。
これはザイルを頼りに垂直の崖で体を90度倒し、
壁面を軽く蹴りながら降りて行く技術なのですが、
『崖に立って』見る光景は、日常の世界を打ち砕くショックがありました。
だって右利きの僕の場合、右を見るとはるかな谷底、左は空なんですから。

そして墜落。
登攀中に手掛かりを失い、筋力も萎えてしまったら、
ザイルを確保しているパートナーに向かって、
「落ちるぞ〜っ!」と叫んで、ひゅ〜・・・

と言ってもせいぜい5メートルくらいなものですが、
シングルザイルだとバシッと止まらず、
ヨーヨーのようにびよぉ〜ん、びよぉ〜ん、となります。
そのままオーバーハングの下に振り子よろしく飛び込んで、
壁面にどしんっ!と叩きつけられ、あいたたた・・・
結構スリルがありますよ。

もうひとつがスキューバダイビング。
スピードはオートバイで、高さはロッククライミングとなれば、
単純ながら深さはこれです。

水中の魅力と言えば、一般的には魚などの水生生物ですが、
僕には重さから解放された3次元の世界が衝撃的でした。
端的に言うと、上下逆もありなのです。

とんぼ返りしながら見る揺らめく太陽。
180度回転して見る『頭上の地面』に立つバディ。
これはそれまでの人生ではあり得ない光景でした。

こうした荒療治で自分を縛っていた既成概念を少しずつ破り、
精神的な袋小路から脱出してはみたものの、
残念ながら素人療法には思わぬ副作用があったのです。

それはバーチャル不感症。

そう、あんなことをやっていたら、
スクリーンの向こうの魔法にはかからなくなっちゃったんですよ。
とにかくリアルじゃなきゃダメ。
こいつはいろんな意味で高くつきます。

困ったもんだ。

えーじ
posted by ととら at 18:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年03月30日

第14回取材旅行の準備 その1

バルカン半島の取材旅行から戻って間もなく1カ月。
その片付けもまだ残るなか、僕たちは次の準備を始めています。

今回の行き先はロシアとバルト3国。
積年の懸案事項だったロシアのビザが取得できることになり、
併せて航空券のブッキングが終わったところです。

個人旅行で取るには何かとハードルの高いロシアのビザ。
その『裏技』はいずれお話するとして、
僕らは早速渡航先の下調べに取り掛かりました。

まずは資料集めです。
外務省のウェブサイトを参照する他に、
毎回読み込むのが、
明石書店の『エリア・スタディーズ』シリーズ。
当該国の概略が広い範囲で取り上げられているため、
取材前にアウトラインを掴むには最適の一冊です。

しかしながら取り扱っている範囲が広いので、
食文化について割かれた記述は多くありません。
その不足を補うのが、
農山漁村文化協会の『世界の食文化』シリーズ。
各地域によって著者は様々ですが、
監修はかの石毛直道氏とあらば内容はお墨付き。
食にまつわる石毛氏の著作にはこのシリーズに限らず、
毎回とても助けられています。

それからガイドブックなら、
言わずと知れた『地球の歩き方』でしょう。
時折ある誤情報から『地球の迷い方』と揶揄されたり、
紋切り型旅行のマニュアルと目されることもありますが、
欧米バックパッカー御用達のロンリープラネットと比べても、
遜色のない、優れたガイドブックだと僕は思っています。
確かに地図の精度は微妙なことがありますけど、
要は使い方なのですよ。
場数を踏んだ旅人であれば、
情報と経験の違いは頭に叩き込まれているはず。
有名ガイドブックであろうが、ネットの情報であろうが、
所詮、伝聞は伝聞。
現実との差異はあって当たり前ですからね。

実のところ、情報のレベルで一番確度が高いのは、
現地に行ったことのある旅人の話です。
今回は昨年バルト三国を回った友人、
羽賀さんからいろいろアドバイスを頂きました。
彼もまた手練れのバックパッカー。
その才を活かして今は東京の経堂で、
自ら現地で仕入れた珍しい品を扱う、
ユニークなアンティークショップを営んでいます。

ルンタ

さて、こうして下調べを始めたところから、
日本に居ながらにして僕たちの旅は始まっています。
これが実に楽しいんですよね。
ロシア、エストニア、ラトビア、それからリトアニア。
頭の中に行ったことのない国のイメージが次々と浮かび上がってきます。

そして旅の醍醐味とは、事前にこうして思い浮かべたイメージを、
実際に訪れた時の現実が、必ずひっくり返してくれること。

そう、確かに下調べをする際の情報は大切ですが、
情報は幾ら積み重ねても、けして現実にはなりません。
あいまみえて、初めて世界はその神秘の扉を開く。
畢竟、旅に出る意味とは、
そんなところにあるのだと僕は考えています。

温かくなってきました。
バーチャルな世界では感じられなくなってしまった皆さま。
そろそろ旅の支度を始めませんか?

えーじ
posted by ととら at 17:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年03月28日

人々を結び付けるもの

先日ご紹介したYouTubeのチャンネル、TabiEats
ユーチューバーのシンイチさんとサトシさんが、
日本の市井の食文化を世界に向けて発信するユニークな番組です。

最近では世界中のファンから、
ご当地自慢のスウィーツやお酒などが続々と届き、
それを紹介する文化交流の場にもなってきました。
コメントを読んでいると、
色々な国の方が「へぇ〜、そんな食べ物があるんだ!」とか、
「あ、僕の国にもそっくりなものがあるよ!」など、
活発に意見を交換しているのが分かります。

昨夜はそんな彼らを訪ね、
日本旅行中のファンがととら亭に集まりました。
オランダ、フィリピン、オーストラリア、アメリカと国籍も様々。

政治や宗教など、限られた専門的な話ではなく、
年齢や性別にかかわらず、
誰もが手の届く身近な食べ物を共通言語にして語らう人々を見ていると、
サーブする僕たちもハッピーな気持ちになって来ます。

コトバも、肌の色も、宗教も違う。
でも、僕たちは同じテーブルにつき、笑顔で向かい合うことが出来る。
そう、もっとも広く人を結び付けるのは、食と人なんですよね。

お帰りの際、握手した皆さんの手は、
みな同じように温かく、力強いものでした。

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Good luck our brothers and sisters.
Have a nice trip!


えーじ

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2017年03月26日

ととらな本 その3

「単行本を出しませんか?」

そんなオファーを「かもめの本棚編集部」こと、
東海教育研究所さんから頂いたのが去年の6月27日。

実はその前年、ウェブ記事の取材を頂いた時に、
立ち話でそんな話が出ていたのですが、
それが現実のものになるとは、正直、考えていませんでした。

本の出版は僕も初めて。
最初の打ち合わせから新入生の心づもりで席に着き、
本の内容を考えるというより、
異業種の仕事の流れを理解するところから始めたのです。

概略を聞いて僕がイメージしたのは映画製作でした。
確かに『世界まるごとギョーザの旅』という本の著者は僕ですが、
ひとりで作ったのかと言うと、そんなことはありません。

この作品の製作総指揮と監督、編集を務められたのは、
「かもめの本棚編集部」編集長の村尾由紀さん。
本の奥付にお名前こそありませんが、
映画でならクレジットの一番最初に出るべき方です。
原稿を何度も読み返し続け、今ある形にまとめ上げた彼女は、
今やととら亭の第3のメンバーと言ってもいいほど、
深い理解者となられています。

美術は稲葉奏子さんと大口ユキエさん。
文章が主体の作品とはいえ、
料理を取り扱う本の性質上、ビジュアル面は疎かに出来ません。
そこで一般的な料理本とは一味違い、
旅行書の体裁とも異なるユニークなデザインに仕上げられた手腕はご覧の通り。
僕らもデザインの第1稿を見ただけで即決してしまったセンスの持ち主です。

また広報の美術を担当されたのは、きりたに かほりさん。
ウェブの広告や書店用のポップなど、
限られた枠の中で作品のテイストを残しつつ、
伝えるべき内容を表現したイラストは、
本の素晴らしい代弁者となってくれました。

そんなメンバーに囲まれた僕の役割は、出演と脚本、そして撮影。
勿論ともこも出演者のひとりですし、
料理部分の監修からアシスタントディレクターとして、
様々なパートで仕事をしていたのです。

こうしてさながらインディーズ映画のように、
マルチタレントで作り上げたのが、
『世界まるごとギョーザの旅』なのですよ。

先日、その他にもこの仕事に携わったメンバーが集まって、
お祝いの打ち上げがありました。

いい仕事ができたなぁ・・・

いま、こう言えるチャンスと幸運に恵まれたことを、
僕は心から感謝しています。

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どうもありがとうございました!

えーじ
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2017年03月24日

旅の思いの変奏曲

「人は人に救われる」
「救われた人に感謝を伝える」

これなくして僕たちの旅は成り立ちませんが、
同じ思いを抱き、別のフィールドで作品を作っている人もいます。

放送作家、大島昌勝氏はそのひとり。
彼が永らく温めていたイメージが形になり、
明日、オンエアされることになりました。

3月25日(土)テレビ東京 11:30〜13:24
「芸能界ちょっとイイ話SP 私を救ってくれた人」

料理や本に限らず、
もの作りには、必ずその背景に作り手の『思い』があります。

もちろん仕事であるからには、『思い』だけではなく、
商売故のケレン味が加えられたり、
一部がデフォルメされたりすることもありますが、
それはけして消えることなく、
基底通音のように、作品の底を流れているものです。

この番組は、ととら亭とはまた違った、
『旅の思い』の変奏曲なのかもしれませんね。
見るのがとても楽しみです。
しかし放送時間中、僕たちにはお仕事が・・・

というわけでミスティー!
録画をお願いします!

えーじ
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2017年03月21日

おもしろい...? 店

「おもしろいお店ですね! また来ま〜す!」

先日、初めてご来店された女性のお客さまから、
こんなお言葉を頂戴しました。

聞いた瞬間はその場の流れで素直に喜んだものの、
間もなく、はたと考えてしまいまして。

おもしろい・・・おもしろい?

何か変だ。

一般的に飲食店を評価する場合の表現は、
『美味しい店』、『うまい店』、
軸をズラしても、『安い店』などになるはず。
料理を売る場所なのだから、
それを形容する言葉が使われてしかるべきじゃないですか?

確かにととら亭は同業者がまずやらない類の店。
(ハイリスク(過労働)、ローリターン(低収入)ですからね)
そうした意味でユニークだとは思いますけど、
事業計画を作っていた時に遡っても「おもしろい店にしよう!」
と考えたことは一度もありませんでした。

思えばエジソンが遺言記録装置として考案したレコードが、
音楽の媒体となって普及してしまったように、
様々なものごとは、作り手の意図をはなれ、
いつしか一人歩きを始めることがあるものです。

ととら亭も生まれて7年が経ち、
だんだんそんな風になってきたのかしらん?

先日発売になったととら亭の本『世界まるごとギョーザの旅』も、
企画当初に文体を検討した際、
コミカルでも、どこかしっとり感動するシーンのある、
たとえばトム・ハンクスやリチャード・ドレイファス、
ロビン・ウイリアムスの主演する作品がイメージにあったのですが、
出来上がってみると、スティーブ・マーチン、
いや、ジャック・ブラックやジム・キャリー演ずる、
ドタバタ悪乗りコメディー色が濃くなってしまったような気がしています。

むわぁ〜、なんか僕らはヤバイ方向に進んでいるのでは?
軌道修正せねばっ!

えーじ
posted by ととら at 13:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年03月18日

見解のさらなる相違

「ともこ〜!」
「なぁに?」
「君の記事の最終回がアップされてるよ」
「どれどれ見せて!」

“旅のメニュー”ができるまで

「お〜、お〜、いいじゃない!」
「って速いね、ちゃんと読んだのかい?」
「まずは写真よ! うんうん、こうでなくっちゃ!
 ん〜・・・でもなぁ、これもいいけど、
 私はプロフィールの写真が一番いいな。
 あれをアップにしてくれたらもっと良かったのに」
「え? どれ? あ〜、これか。
 でもさ、ルーを抱いている写真だろう?」
「かわいいじゃない?」
「・・・?
 かもしれないけど、写真とタイトルの関連が分からないよ」
「いいのよそれは! 写真うつりの方が大切じゃん」
「僕は記事の方が重要だと思うけどね。
 ライターの山下さんが今回もうまくまとめてくれているじゃないか。
 それにレイアウトもすっきりしていていい」
「どうせだったらお店の看板より、全部私の別の写真をパ〜っと並べて・・・」
「ちょっと、僕の話を聞いてるのかい?
 ともこの写真ばかりだったら、
 それこそ何の記事だか分からなくなっちゃうよ」
「えーじ分かってないね!
 イメージが大切なのよ! イメージ!」

だ、そうで。

えーじ
posted by ととら at 17:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年03月13日

Only time knows

3月も中旬に入りました。
梅が散り、沈丁花の香りが漂い始めると、
そこかしこで「今日は卒業式でした」という声を聞きます。
出会いと別れの季節ですね。

ちょっとニュアンスは変わりますけど、これは僕たち大人も同じ。
3月と言えば大方の組織で人事異動の時期じゃないですか。
ハラハラドキドキの数週間。辞令をもらって一喜一憂。

今でこそ僕はそうした枠の外に出てしまいましたが、
振り返れば春は卒業と入学、就職と異動など、
人生における大きな変化がいろいろありました、

しかし、生活を根底から変えるほどの転機と言えば、
成人後に思い当たるのはふたつ。

ひとつはソロの旅ライダーから、デュオのバックパッカーへ転身したこと。
まぁ、ワイフとの出会いが直接的な『原因』のひとつなのですが、
仕事は二の次で旅を中心に人生を回していた僕にとって、
このスタイルの変更はビッグイベントであり、
ある種のパラダイムシフトでもあったのです。
これはもう、行き先が国内から海外へ移り、
移動手段がオートバイから飛行機や鉄道、
バスなどに変わったこと以上の変化だったと言えるでしょう。

もうひとつは独立。
ととら亭を立ち上げたことで生活は全く別ものになりました。
端的には給料日がなくなりましたからね。
日銭商売ですから毎日が給料日と言えば聞こえはいいかもしれませんが、
ヒマな日には貰えるのが『基本給』の1/20程度しかない場合もあります。

銀行さんとの付き合い方も真逆です。
会社員の時は窓口にしろATMにしろ、
基本的におカネをおろす場所でしょう?
それが今はこっちから持って行くだけ。
たまに自分が右から左へ、左から右へ、
ただおカネを運ぶだけが仕事なのかしらん?
と思えることもあります。

日常の移動も逆ですよ。
電車はウィークデーではなく、
オフの日に時々乗るものになりましたからね。
そして天を仰いだのは、
当たり前だった週休二日が今では遠い彼方の話になったこと。
現実は年休二日になっちゃった。
有給休暇ももちろんゼロ。
これぞ典型的なブラックレストランなのですが、
プチブルは労基局のサポート外。

ありゃ〜、それじゃあ、堅気に戻ったら?

とは思っていそうで、実は一度も後悔したことはありません。
僕の場合、パンドラの箱の底に残ったものは、
『希望』ではなく『自由』でしたけど。

こいつには、
それだけの投資をする価値があるんですよ、うん。

ともあれ、次の大転機はいつ、どんな風に起こり、
僕はどうなって行くのか?

それは時だけが知っているのでしょうね。

えーじ
posted by ととら at 14:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年03月09日

第13回取材旅行 その13 最終回

本の発売や独立7周年記念などでドタバタしているうちに、
取材旅行から帰って早9日間が経ちました。

振り返って見ると、あの旅で一番考えさせられたのは、
国や民族のオリジナリティと純粋性だった気がします。

ととら亭では各国の料理を紹介するという都合上、
便宜的に、
「ポーランド料理」とか「エチオピア料理」という表現の仕方をしますが、
いずれも他から全く影響を受けず、
完全に独立した文化と言うものを僕は知りません。

バルカン半島の料理で例えるなら、先に一度お話したムサカ。
僕は子どもの頃、横浜のギリシャ料理レストランで食べて以来、
ずっとギリシャ料理だとばかり思っていました。
ところが起源はアラブにあるらしく、ブルガリアやルーマニアにも、
微妙にローカライズされて根付いています。

オスマン帝国の影響からケバブやキョフテ、ドルマも広く存在し、
ポークやアルコールが使えないというハラールの縛りが外れて、
独自のバージョンが溶け込んでいたり、
イタリアから伝わったパスタもすっかり土着化しているではないですか。

僕はそうした食文化の広大な織物を目の当たりにして、
まるで音楽のクラシックやジャズのようだな、と独り言ちてしまいました。
スタンダードがプレイヤーに解釈され、異なる楽器で奏でられた結果、
様々なバリエーションが生み出されて行く。

ではそのスタンダードに相当する『オリジナル』とは何で、
どこにあり、どのように広がって行ったのか?

これこそが、
『答え』とは『次なる謎』の謂いであるという、
僕たちの旅に付きものの逆説的なオチなのです。

さて、それでは新しい旅の準備を始める前に、
バルカン半島の旅で最後に訪れたハンガリーの取材を、
ビジュアルに振り返ってみましょう。

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szegedstreet.jpg

ハンガリーの南部、ティサ川の西岸に中心を持つ街、セゲド。

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ご覧の誓約教会くらいしかランドマークになるものはありませんが、
普段着姿のハンガリーと申しますか、
のんびりプライベートな時間を過ごすには打ってつけの場所だと思います。
僕たちはこうした地味な街が大好きなのですよ。

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川岸を歩いていて偶然見つけた料理中のグヤーシュ。
元々はこうした野外料理だったそうです。
あ〜、美味しそうだな、と近付いて行ったら、
今にも食べてしまいそうに見えたのか、
ボートハウスのおじいさんが出てきて、
「すまんな旅の人よ、これは売り物ではないのじゃ」
(マジャール語で多分こう言ったのだと思います)

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僕たちが投宿したこの旅で一番の高級ホテル(1泊約5,000円也)の朝食。
取材のためにお腹をすかしておかなくてはならない僕たちにとって、
この誘惑はマジでヤバかった!
しかしながらセゲドはハンガリーで最初にサラミが作られた街。
老舗のPICK社のそれを食べずに去るなんて・・・
しかも畜肉製品は日本に持ち帰れないし・・・
という訳で、お腹いっぱい食べてしまいました。
うう・・・胃薬ぷり〜ず・・・

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ブダペストまでは鉄道で移動。
マケドニアとセルビアの鉄道はかなり草臥れていましたが、
ハンガリーは健在です。
着いたのはブダペスト西駅。
ここは確か、
映画『ミッションインポッシブル ゴーストプロトコル』で、
冒頭シーンのロケが行われたところだったな。

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ドナウ川を挟み左が王宮のあるブダ側、右が商業的な中心のペスト側です。
ドナウ川は17カ国を貫く国際河川ですから、
ボートでウィーンやブラチスラバにも行けます。
いつかそんなゆったりした旅もしてみたいですね。

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取材の中心になったのはここ、一番の繁華街になっているヴァーツィ通り。
しかし、いかにもツーリスト相手のレストランではイマイチなので、
実際に入ったのは中央市場の脇道や、デアーク広場周辺の店です。

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僕たちが投宿したのはヴァーツィ通りの脇道にあるこんなホテル。
利便性が良い割に静かでスタッフもフレンドリー。
夜はゆっくり休めました。

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12年振りのブダペストは殆ど変わっていなかったですね。
僕らは王宮裏に広がる旧市街の風景がお気に入り。
ぶらぶら歩いているだけで時間を忘れますよ。

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さて、それでは取材を始めましょうか。
まず訪れたのはここ、中央市場の2階にある軽食堂。
いつも観光客で賑わっています。
場所柄、料金は少々高めですけど、
料理を見ながら注文できるのは便利ですね。
美味しそうなものが沢山ありますから目移りしてしまいます。

restaurant01.jpg

郷土料理を出しているこうした素敵なレストランが沢山あります。
メニューがそれぞれ微妙に違うので、
事前にじっくり検討してから入りました。

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グヤーシュと並ぶ国民食のハラースレ。
鯉やナマズ、淡水スズキなどの魚を使ったスープです。
地域によってレシピの差が大きく、
セゲドではさらっとしていましたが、ブダペストではとろっと濃厚な感じ。
スープの色はトマトではなくパプリカで出しています。

foshstew.jpg

鯉のシチュー。
ハラースレをもっと濃くした感じと言えば当らずとも遠からず。
でも油っぽくはありません。
ガロニ(付け合わせ)は・・・なんとハルシュキ!
本にも書きましたけど、スロバキアの取材で出会った難敵です。
この思わぬ再会には驚きました。
あの時はそのボリュームとこってりさ加減に白旗を揚げましたけど、
今回は量が少なく、生クリームもそれほど使われていなかったのでクリア。
そう言えばスロバキアは隣国ですし、オスマン帝国が北上した際には、
ハンガリー帝国の首都機能が、
ブラチスラバに移されていたこともありましたからね。
両国に共通する料理が沢山あるわけです。

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パプリカーシュ・チルケ。
チキンをパプリカクリームソースで煮込んだものです。
お供はドイツのシュペッツレに似たハンガリアンダンプリング。
チキンとダンプリングのバランスが見ての通りですので、
何となくパスタのような印象を受けました。
コクがあってとても美味しいです。

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ポークグヤーシュ。
グヤーシュと言えばスープを想像しますが、要は『煮込み』のこと。
これはポークをパプリカソースで柔らかく煮込んだ料理です。
しかしながら先のパプリカーシュとは大分風味が違います。
お供はやっぱりダンプリング。

porknackle.jpg

ハンガリーでお肉と言えばポーク。
ポーランドでもそうでしたが、そうした土地でご馳走と言えば、
豪快なすね肉を使った料理。
英語ではポークナックルのシチューとなっていたので、
注文してみたら出て来たのがこれです。
じっくり煮込んでとろとろにした骨付きすね肉に衣を付けてカラッと揚げ、
濃厚な赤ワインソースを添えたもの。
むわぁ〜、ワルシャワで食べたゴロンカそっくりじゃん!
食べきれるかな?
と心配になりましたが、余分な脂が落ちていたので完食成功。
ガロニはキャベツのダンプリングでした。
ハンガリーはダンプリングの種類が沢山あるのですよ。
で、このお味はどこかノスタルジックなものが・・・
そう、キャベツと小麦粉と言えば、お好み焼き!
ブダペストでこの味を思い出すとは驚きました。

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取材の合間に一度だけ入れたコンディトライ(洋菓子店)。
洋菓子の総本山的ウィーンにほど近いだけあってか、
ケーキの美味しさは折り紙付きです。
甘さも控えめ。マジでホッペが落ちますよ。

us.jpg

最後はギリシャ編と同じく、お約束の1枚で。
自宅に帰って12年前の写真と比べてみたのですけどね、
月日の流れを感じました。

え? だからキャップを被っているのかって?
いやいや偶然ですヨ!

See you on the next trip!!

えーじ
posted by ととら at 17:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年03月04日

見解の相違

昨日から、今までありそうでなかった、
ともこの単独インタビュー記事がウェブにアップされております。

“旅のメニュー”ができるまで

原稿は事前に読んでいましたが、
レイアウトされたものを見るのは僕らも初めて。
そこで早速・・・

「ともこ〜!」
「なぁに?」
「ほら、君の記事がアップされているよ」
「えっ! 今日だっけ!? 見せて、見せて!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「あ”〜っ!」
「どう? なかなかいいじゃないか?」
「ひどぉ〜い!」
「え? なにが?」
「この写真、えーじも写ってるじゃん!」
「はぁ?」
「えーじの記事の時は、えーじがひとりでいっぱい写ってたのに〜!」
「そ、そうだったっけ?」
「あたしのアップの写真は?」
「アップと言ったってグラビアページじゃないんだから」
「いいのよそんなの! お話より写真よ写真!」

そういう趣旨の記事ではないと思いますが・・・

ま、人はそれぞれ、いろんな思い入れがあるものでございます。
僕は記事の方が面白いと思うがなぁ・・・

えーじ
posted by ととら at 23:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年03月03日

Seven years in Nogata

「ねぇ、7年前のこの時間、私たちは何をやっていたかしら?」

昨夜、営業が終わって賄いを食べていた時、
ふと、ともこがそう訊いてきました。

ととら亭を開業する前日の深夜・・・か。

2カ月に及ぶ膨大な開業準備作業ですでにボロボロだった僕らは、
最後の気力を振り絞って、
初日のお客さまに配るパウンドケーキの袋詰めをやっていたのです。

そして翌日からは、
まさしくジェットコースターに乗ったような日々が、
数か月間に渡って続いたのでした。

ようやく営業のリズムが作れたのは1年後。
人間らしい生活に戻るには、
それから更にもう1年が過ぎるのを待たねばなりませんでした。

思えば独立は、
かつて経験したことのない人生の変化だったと思います。
生活の全てが変わりましたからね。
だけど正しい決断だったんじゃないかな?
確かにえらくしんどいですけど、
こういうのは僕たちの旅とそっくりですから。

僕たちが求めていたのは、
事業の成功や社会的なステータスではなく、
とどのつまり、『自由』だったんだと思います。

え? 恰好つけ過ぎ?
でも、本当にそうなんですよ。

今日は独立して7年と1日目。

せっかく自由になったんだから、
自由な旅を続けよう。

えーじ

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2017年03月02日

世界のギョーザ特集がはじまります!

お待たせしました〜!
今しがたウェブサイトを更新しました。

→ 世界のギョーザ特集

そして僕の机の上にはメニューやポスターなど、
印刷物10種類の山が・・・

自分でいうのも何ですが、
一昨日の夜帰国したばかりでこれだけやるのはしんどかった!
偉いぞ、えーじ!

しかし、今回は通常のメニュー変えではありません。
独立7周年記念に加え、初出版とのタイアップともなれば、
オジサンもマジで気合が入りますよ。

それじゃ、お疲れさまでした・・・

で、終わりじゃなかった!
今夜から営業再開だったんだ。

すぐお店に戻らないと怒られちまう。

ん〜・・・
代表取り締まられ役の人生とは、こんなものでございます。

えーじ
posted by ととら at 15:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記