2022年10月02日

The end of TReP

ととら亭移転計画。
TReP(Totoratei Replace Project)

構想7年、制作3年に及んだ僕らの壮大なプロジェクト、
いや冒険の旅は、マスタースケジュール上、
柴又での営業再開をもって終了しました。

しかし、気持ちの上での、本当の終わりは昨夜、
柴又のととら亭を実際に創った方々とのパーティ。

具体的な、このお店の誕生は、2019年の8月に遡ります。
あれは僕がネットで不動産売買情報を検索していたとき。
ふと、駅から徒歩1分、近隣商業地域の物件が目に留まったのです。
しかも値段が破格!(僕らが買えたくらいですからね)

その場所が柴又でした。

実際に検討しはじめた晩の興奮は今でも忘れられません。
土地の形状から簡単な平面図を描き出し、
いろいろ試しているうちに空が白み始めていましたからね。

その時に描いたデザインが、
基本的に現在の自宅と、ととら亭のベースになっているのです。

しかし、それはあくまで、
PCのスクリーン上に映された画像でしかありません。
それを現実の形にするだけではなく、
さまざまな角度から改良を加え、
いま、皆さんを迎える完成形にするには、
多くの専門家の努力と協力が不可欠でした。

だから感覚的には、
僕らがおカネを払って家を建てた、店を作った、というより、
建ててもらった、創ってもらった、という感じなのですよ。

野方のととら亭が引き渡しのとき、
12年近く使った店とは思えなくらいきれいだといわれたのも、
同じように、
いろいろな人に創ってもらった、だから大切にしなくては、
という気持ちがあったからに他なりません。

そうした、いわば恩人の方々へのお礼をもって、
このプロジェクトは本当の終わりを迎えることができる。

trepparty.jpg

どうもありがとうございました。
皆さんが作ってくれたこの店を、
これからずっと大切にして行きます。

ともこ & えーじ
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2022年09月29日

チェコ・スロバキア料理特集が始まります!

いやはや、この仕事を始めて12年余。
旅のメニュー替えは何度めになるか、もう覚えていませんが、
デビュー当時から変わらないのは、
締め切り仕事が午前さまになること。

思えばこれは会社員時代を通して同じかもしれません。
まぁ、当時はトラシューが主な仕事でしたから、
自分の判断で火事場を離れるわけにはいかなかったんですけどね。

ととら亭を始めてからは予算の都合が原因で、
DIY率が急上昇。
実際、確定申告からメニュー作りに、
ウェブサイトの運営までやっている同業者は会ったことがありません。

ともこはともこで手作りマニアですから、
これまたこの2日間、キッチンに籠って黙々と仕込み三昧。

こういうのも似たもの夫婦っていうのかしらん?

移転を機に積年の課題である「働き方改革」を進めるつもりが、
なんだか逆行しているような・・・

いや、これも移転と引っ越しの雑務が片付けば、
ゆっくり本を読める日々がやってくる・・・
と信じよう。

そんなわけで気合の結晶、柴又での旅の特集第2回目は、

チェコ・スロバキア料理特集

秋の夜長にふさわしいメニューで、
皆さまのご来店をお待ちしております。

おやすみなさい。

えーじ

P.S.
げげ、まだ英文のメニューを印刷してなかった!

とほほ・・・
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2022年09月28日

野方のOB

昨夜は先日ご紹介した芝居を観に、
4カ月ぶりの野方へ。

なんか母校を訪れたOBのような気分でした。

僕が細部までデザインし、
11年余に渡って旅を続けたお店は、いま焼き鳥屋さんに。

それはまるで自分の教室の自分の席に、
知らない人が座っているのを見るような、
不思議な感覚でしたね。

開演まで少し間があったので、
10年間住んだアパートに行ってみたら、
ここはまだ誰も入居していませんでした。

いずれも自分の過去であるにもかかわらず、
僕はもう、そこへ入る鍵を持っていないのです。

時は流れ続ける。
それも前に向かって。

奇しくも芝居は不思議の国のアリスを底本にしたもの。

若手の熱演を観ていて、
僕もまた、
時の迷路にさ迷い込んだような気がしてきたではないですか。

ここには別の僕がいて、別のととら亭があって、
そしてまったく別の過去があったような・・・

いや、そもそも本物も偽物もない、
可能性の重なり合いをどこから眺めるのか?
人生というのは、ただそれだけの違いのような・・・

客電が灯り、夜の街に出てもなお、
現実感が心もとなかったのは、
舞台の上に、ハイティーンの、
楽器をプレイする自分を見ていたからかもしれません。

ああ、彼は現実に存在し、
そしてまだ、あの頃のまま生きている。
僕の中で。

なるほどね。
それではもう一度、青臭いプレイを始めましょうか。

えーじ
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2022年09月26日

さぁて、そろそろ・・・ 後編

来年の話をすると鬼が笑うそうですが、
再来年の場合はどうするんだろ?

と、要らぬ心配はさておき、
僕らは具体的な取材計画を立て始めています。

まずは食文化への好奇心を主軸に、
国際情勢や感染症情報などを鑑みながら、
おおむね2〜3年先まで候補地の洗い出し。

そして具体的な渡航地とルートを決めた後は、
必要な情報の掘り下げです。
気ままなバックパッカーのようでいて、
結構まじめに仕事をしているんですよ。

と申しますのもイスラエルやコソボを始め、
アゼルバイジャンとアルメニアなど、
敵対関係にある国々を周るときには、
(戦闘中は近寄りませんよ)
「敵の友は自分の敵」の原則がありますから、
要らぬトラブルに巻き込まれないよう、
いろいろ細かい配慮が求められます。

また、宗教や風習も同様で、
日本の常識が現地の非常識になることも珍しくないので、
これまた事前の心構えが欠かせません。

そして何より、
料理を単独で理解することはできないのですよ。
コンテクストとなる歴史や宗教、自然環境などを絡めないと、
「はぁ〜、おいしかった!」で終わってしまうのです。
これでは旅の食堂の仕事ができません。

そんなわけで、
僕らの旅は出国前のかなり早い時期から始まっています。
とりわけ長期の旅ともなると、
読み込む資料や事前調査も、それなりの量になりますからね。

さて、前編でお話しましたインドネシア、マレーシアや、
オーストラリアなどの取材計画。
皆さま既にお気付きのとおり、
エリアが東南アジアとオセアニアに集中しています。

そのココロは?

ユーラシア大陸を横断するEGTを再来年に控えているから!
この範囲に入らず、
しかし事前に得ておきたい情報を仕入れるエリアを、
前年にプロットしたわけです。

このように現段階での僕らの作業は、
世界地図上で行うパズルのようなものなのかもしれません。
知りたいこと、それを調べる地域、訪れるべき時期、
そしてその組み合わせ。
これらをさまざまな角度で検討しながら、
プランAとそのルートを決めて行くのです。

ま、ふたを開けてみたら、結局プランB、
いやプランCになっていた!
なんてのがお約束のオチなんですけどね。

えーじ
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2022年09月23日

さぁて、そろそろ・・・ 前編

柴又で再スタートして2カ月が経ちました。

小さな課題は山ほどあれど、大問題がおおむね片付いたところで、
僕らは地図を眺めています。

そう、そろそろ本来の自分たちに戻ろうかと思いましてね。
ちょっと早いのですが、来期の事業計画を練り始めているのですよ。
つまり旅人に戻ろうってわけ。

コロナ前の最後の取材が2019年11月-12月に行ったUAEとレバノン。
それから3年近く(結果的にそれ以上!)籠の鳥だったので、
まずは1月下旬にウォームアップから始めましょうか。

で、本格的な料理取材は6月と9月を予定してみました。

行き先?

それはまだ企画段階なのですけどね。
今後、渡航予定地の政変やコロナウイルスが病原性を高めるなど、
不測の事態が起こらなければ、
1月下旬はバリ島のウブドでバケーションかな?
とにかく勘を取り戻さなくては。

これ、実は次の旅の伏線でもあり、
6月は以前から検討していたスマトラ島のパダン料理や、
マレー半島に散在するスパイシーな麺料理、ラクサを調べに、
オリジンといわれるペナン島を訪れてみるつもりなのですよ。

このルートはまず英語が通じないので、
サバイバルレベルのインドネシア語の取得が必須。
マレーシアはそのまま通じるんじゃないかな?
インドネシア語はマレー語がベースですから。
ま、その辺もウブドを機会にぼちぼち齧っておこうと思っています。

次なる9月のプランAはオーストラリア。

北部のダーウィンから入ってレンタカーを借り、
南下しながらエアーズロックを経由して友人のいるアデレードへ。
そこからメルボルンを目指し、船で最終目的地のタスマニアへ渡る。

実のところ、オーストラリアは積年の課題だったのですよ。
ととら亭の足跡をご覧頂けば明らかなように、
いろいろ出かけたアジア・オセアニア圏で、
ここだけ足跡がありません。

それに気付くオージーのお客さまもいて、
「なんでうちだけ来てないんだ?」と睨まれたこともしばしば。
ほんとはニュージーランドに行ったとき、
おカネと時間を使い果たして泣く泣く諦めたのが真相なのですけどね。
今回はそのリベンジでもあるわけです。

とまぁ、地図を見ながらざっくり計画を練り始めてはおりますが、
これらのプランAも全体的に次なる旅の伏線だったりします。

そう、その次の旅というのが・・・

to be continued...

えーじ
posted by ととら at 14:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2022年09月20日

思い出の雑誌の紙面に

中野区の野方から葛飾区の柴又へ。
 
「ずいぶん離れたところに移転しましたね」

としばしば言われておりますが、
城東はあながち知らない地域ではないのですよ。

と申しますのも、ととら亭で独立する前は、
北千住の、それも荒川の堤防のすぐ脇に、
5年ほど住んでいましたからね。

そのきっかけは一冊の雑誌。

ともこが長患いで入院していたとき、
持って行った物の中に月刊誌「散歩の達人」がありました。
退院して元気になったら、
好きな街歩きにまた出かけようと思いましてね。
そしてその号の特集が偶然、北千住だったのです。

後日、これを参考に訪れた僕らは北千住に一目ぼれ。
「今度はここに住もう!」ということになり、
数カ月後には地元の不動産屋さんを周る素早さ。

そんな思い出のある雑誌ですが、
実は先日、版元の交通新聞社さんから電話を頂きまして、
話を聞けば、「散歩の達人」の取材オファー!

いやぁ〜、何かこの長い旅の縁のようなものを感じましたね。

sanponotatsujin.jpg

散歩の達人 2022年10月号
大特集LOVE鉄道! 首都圏版
9月21日(水)発売

ととら亭は「京成金町線に吹き込む新しい風」のひとつとして、
載せていただきました。

散歩だけではなく、
鉄道やキャンプに興味のある方は書店にGO!

えーじ
posted by ととら at 00:19| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記

2022年09月18日

アナクロのアナログなアプローチ

2カ月前、
ともこのガラケーが壊れてショップに行ったときのこと。

え? 今どきガラケー?
ってことはLINEもやってない?

いやいや、ここで突っ込まないでください。
お話はこれからなんですから。

で、ケータイショップに行ったのですけどね。
修理を依頼する前に確認されたのが契約内容。

「契約者はご主人ですね?」
「はい」
「それではこのまま手続きを進めさせて頂きます。え?」

ここで顧客情報を表示するディスプレイに、
店員さんは前のめりになり、

「ところでご主人のスマホも大丈夫ですか?」
「・・・?」
「いや、だいぶ古い機種をお使いですので」
「あ、ああ、これですか?」

と僕が取り出したのはiPhone 6s Plus!

「かれこれ・・・7年くらい使っているかな?」
「バッテリーはもちます?」
「普通に使えてますよ。故障したことはありません。
 不便なのは防水じゃないことくらいですね。
 ま、それも必要に応じて防水ケースに入れてますから」
「これを機にiPhone14に変更されてはいかがでしょう?」
「・・・? なぜです?」
「まもなくアップルのサポートが終了するんですよ」
「え? そうなんですか?」

スマホと生命維持装置が同義語の方には想像もつかないと思いますが、
ゲームもSNSもやらない僕には、これで十分なんですよ。
携帯電話といっても置き電話で悪名高いし。
だからサポートが続くのであれば、今後もずっとこれでいい。

しかし、アップルさんのビジネス上、
そうともいっていられない事情は理解できます。

ならば先に聞いてみようかな?

「というわけでさ、ともこもそろそろスマホにする?」
「なんで?」
「LINEとかfacebookなんかが使えるようになるよ」
「あたし、そういうのいらないもん」

だよね。

旅と食、そして人。
アナクロな僕らのアナログなアプローチ。
ととら亭とはそうした仕組みで動いているのでございます。

えーじ
posted by ととら at 16:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2022年09月15日

Lost and Found

あなたは誰ですか?

そう問われたら、どう答えます?

さしずめ僕なら、「久保えーじです」と答えましょうか。

しかし、相手がまた「あなたは誰ですか?」と聞いてきたら?

次は「柴又で飲食店をやっています」・・・かな?

ところがその相手はまだやめません。
続けて「あなたは誰ですか?」と聞いてくる。

それならこっちも住所や年齢、はてや国籍から血液型まで、
IDに書いてあるようなことを次々と答えて行くでしょう。

そして延々と続くしつこい質問に疲れたころ、
相手は急に質問を変えます。

「あなたは柴又で飲食店をやっているetc,etc,etc
 ・・・の久保えーじなんですね?」

それはここまで僕が答えた内容をひとまとめにしたもの。

にもかかわらず、
確認された僕は「はい」と即答できません。

なぜか?

それは自分の答えたことに違和感を感じているから。

確かに相手がいっているのは僕が答えたものだけれど、
それをひとまとめにしたものが自分自身であるとは思えない。

いや、思いたくない?

では、僕はいったい誰なのか?

この瞬間、
僕らはこのしつこい質問者が自分自身であることを知るのです。

この葛藤は誰しもハイティーンのころに経験するものでしょう。
そしてこのとき、
夢と呼ばれる人生のコンパスを手にしたのではありませんか?

あなたもほら、ちょっと探してみて下さい。
少々さび付いているかもしれませんが、
ポケットの中には、あなたにしか使えない、
あなた自身のコンパスが入っているでしょう?

大人になって、就職して、自分なりの家庭を持って、
しつこく「あなたは誰ですか?」と問われなくなると、
やがて多くの人が、あんなに大切にしていた、
このコンパスの存在を忘れてしまいます。

しかしときおり、この夢というやつを、
大人になっても、就職しても、自分なりの家庭を持っても、
持ち続けている人たちがいるんですよね。

nogatawonderland.jpg

もし、あなたのコンパスが見当たらなくなっていたら、
こんなところに行ってみてはいかがでしょう?

会場を後にしたとき、ふとどこに置き忘れたのか、
思い出すかもしれませんよ。

えーじ

野方ワンダーランド
作:気田睦 演出:大美穂
場所:野方区民ホール 
   東京都中野区野方5-3-1 西武新宿線野方駅南口徒歩5分
2022年9月27日(火) 19:00
      28日(水) 13:00 17:00
料金:前売り・当日 3,000円(全席自由)
posted by ととら at 15:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2022年09月12日

新しい観光名所

柴又は帝釈天を始め、
寅さんミュージアムや山本邸、矢切の渡しもある観光地。
往時の面影を残す長閑な柴又駅も人気があり、
週末はそこかしこで写真を撮っている方がいらっしゃいます。

しかしながら予想外だったのが・・・

あ、お客さんだ。

僕がアプローチ越しに外を見ると、
お店の正面で中をうかがっている方がいます。

入ってくるかな?

そう思った矢先、
その人はスマホを取り出してファサードに向け、パチリ。
さらにメニュースタンドに向け、パチリ。
そして入り口に向かって歩き始めました。

「ともこ、1名さまご来店だよ」

と声をかけつつもう一度見れば、
今度はコンクリートの通路の中ほどで入り口をパチリ。

へぇ、ととら亭のデザインにここまで興味を持ってくれるとは。
作った甲斐があるってもんだ。

間もなくその人はアプローチに入ろうとしています。
僕はおしぼりを出す準備を始めました。
しかしいつまでたっても聞こえないのが内ドアの開く音。

ん? どうしたんだ?

そこでもう一度目線を戻すと、
なんと暖簾をバックにセルフィーとな!

「えーじ、お客さんは?」
「いま外ドアのところで写真を撮って・・・あれ?」
「1名さまじゃないの?」
「あれ〜?」
「どうしたのよ!」
「いなくなっちゃったんだ」
「へ?」
「今しがた暖簾をバックにセルフィー撮ってたんだけど、
 急にいなくなっちゃった」
「見間違いじゃないの?」
「まさか! すぐそこまでほんとに来てたんだよ。
 パチパチ写真を撮りながら」
「じゃ、帰っちゃったの? 入らずに?」
「む〜・・・どうやらそうらしい」

というわけで、
ととら亭も、はや柴又の観光名所となったようでございます。

えーじ
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2022年09月09日

悲しき定量評価 後編

僕がなぜ、
今さら人間の定量評価に疑問を投げかけているのか?

それはこの価値観を取り込んだ結果、
悩んでいる人がとても多いからなのですよ。
ととら亭で話をしていても、
とりわけ30歳から40歳前後にかけて、
それぞれのランキングの狭間で、
揺れ動いている方が少なくありません。

共通しているのは、このランキングレースが、
遠い雲の上の存在をライバル視したものではなく、
身近な人と自分を比較するところから始まること。

職業、職位、年収から住環境、家族構成、
はてや何らかのスキルにファッション、容姿など、
対象はさまざまです。

で、自分はAさんより上だけど、Bさんより下だと自己評価する。
となるといったい何位?

そしてこれを拡大解釈し、単純に極論化したものが、
いわゆる「勝ち組・負け組」というグルーピングです。

僕はこうした話を聞くたびに、素朴な疑問を持つのですよ。

前編でもお話しましたけど、
ひとりの人間というのはとても複雑なものです。
それが先に挙げた一尺度だけで、
私は何点、あの人は何点という具合に、
定量評価できるものでしょうか?

一例をあげると、
学歴や仕事のスキルと人格というのは、
ほとんど関係ないんじゃないかしらん?
もしそうした一般的な認識が正しいのであれば、
それこそ霞が関や永田町は聖人君子で溢れ返っているはずでしょ?

その意味と残酷さを承知の上でランキングに飛び込むのであれば、
それはそれで生き方の問題です。
しかし、この本質を事前に理解するのは少々難しい。

故に、オリンピックなどで年端もいかない若者が、
このレースにしのぎを削っているのを見ると胸が痛むのです。
いや、結果は関係ありません。
なぜなら敗北は言わずもがな、
たとえ勝ったにせよ、スキルを維持するプレッシャーは、
精神的な訓練を受けていない若者にとって耐えがたいものでしょうし、
若さは当然限界がありますから、
遅かれ早かれ「落ち目」と呼ばれる敗北は避けられません。

社会には競争的な要素がある。
需要と供給が比例しない限り、この現実は否定できません。
そしてそれがイコールになる日は永遠に来ないでしょう。

しかし、競争がすべてではないし、
競争の勝利が必ずしも幸福を約束しているわけでもない。
これもまた事実なんですよ。(でしょ?)

話をミクロに戻しましょう。
僕は個人事業主として、12年以上に渡ってととら亭を運営しています。
その結果、精神的にはかつて携わったどの職業のときより楽になりました。
(肉体的にはややハードになっちまいましたが・・・)

なぜか?

それは競争という選択肢を取らなかったからです。

僕は他のお店の集客数や売上高に興味がありませんし、
孫正義さんの社会的地位や年収を羨ましいとも思わない。
グルメサイトの星の数に至っては、まったく関心がない。

僕らはととら亭という場で僕ら自身のプレイをし、
旅を続けていられれば、それだけでいい。

そう、シンプルに生きているのでございます。

えーじ
posted by ととら at 13:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2022年09月06日

悲しき定量評価 前編

今回はまず、このフィクションから始めましょう。

とある日、僕のところへ一通の封書が届いたとします。
差出人は「葛飾区景観美化委員会」。

ん? 何だろ?

開けてみると、そこには一枚の紙が・・・

久保えーじ 殿

貴殿宅は葛飾区内における厳密公正な住宅景観審査の結果、
277,010戸中、残念ながら最低ランクのワースト1000戸に含まれました。

【理由】
 1.デザインが悪い
 2.拾得物が飾られ貧相
 3.色調のセンスが悪い

【アドバイス】
 プロのデザイナーに相談し、美観の向上にご協力願います。

なお詳細は当ウェブサイトにて写真入りで公開されております。
ご参考にどうぞ。

What's the hell?

すぐさま僕は封書にあった連絡先に電話をかけ、

「ありゃ何です?
 ずいぶんとまぁ失敬じゃないですか。
 すぐうちの部分を削除してください」
「それはできません」
「なぜです?」
「外観は公開情報のひとつです。
 またこの目的は街を美化するという、
 公共の利益に属するものですので削除には応じられません」

そしてまたとある日に、
今度は「柴又男前協会」なる組織から封書が届き、
開けてみれば・・・

久保えーじ 様

あなたは柴又4丁目在住の男性1500人のうち、
男前ランキングで下位150名に入りました。

【理由】
 1.髪が薄い
 2.O脚である
 3.服のセンスが悪い

【アドバイス】
 ファッション雑誌を研究し、エステに通いましょう。

F&%$k+n S.O.*!

----------------------------------------------------------
さて、これが僕ではなく、
あなたの名前だったとしたら、どう思います?

昨今、巷に溢れる「なんちゃらランキング」。
トップ10程度であればお慰みですが、
最下位まで決め、さらにそれを公表するとなると、
話は別になりません?

ましてやその企画そのものが、
事前に評価される側の了解を取り付けていなかった場合、
これはもう「公共の利益」云々という次元ではないと思います。

ちょいと前に群馬県の山本知事が都道府県魅力度ランキングについて、
調査手法に異議を唱えて一石を投じました。

僕は調査手法や法的処置の是非以前に、
自治体や企業、学校、病院から個人など、
複雑な要素の複合体を強引な数値化のもと、
定量評価すること自体に懐疑的なのですよ。
(そしてその結果の単純な拡大解釈にも)

簡単に言うと、そうした序列化行為に公益が期待できるのか?
社会にもたらす集団的感情は、ポジティブなものではなく、
陳腐な優越感と不公平感に満ちた劣等感しかないのではないか?

こうした企画に法的規制やガイドラインはありません。
しかし、明文化されたルール以前に、
僕らには思い出すべき約束があります。

それは幼稚園の庭で学んだ、
自分がされて嫌なことは相手にもしない、
ということ。

相手をまな板の上に乗せるのであれば、
まず自分が乗って、どんな気分を味わうか?
それを知ってから行動することが、
不和をまき散らさないという公益に繋がるのではないか?

僕はそんな風に考えているのです。

to be continued...
posted by ととら at 14:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2022年09月04日

新鮮な日々

「はい、これ、今週の分ね」

僕らの週初めは野方時代と変わらず水曜日。
(火曜日が定休日ですから)
その日、ともこに手渡しているのが集客予測表です。

これ、たとえば水曜日のランチが何人、
土曜日のディナーは何人という具合に、
何人のお客さまがご来店されるか予測した週間一覧表で、
仕込みの量を決める目安にしているものなんですよ。

その精度たるもの多少は自慢できるものでして、
1週間(ランチ5回、ディナー6回)のうち2〜3回は、
プラスマイナスゼロ!
残りも大半がプラスマイナス1〜2以内に収める優れもの。
(たまに10以上の誤差を出して、ともこに怒られますが・・・)

タネを明かすと、当該回の直近4週間の平均値に、
天候や気温、社会的要因をそれぞれ係数にして掛けるというのが、
そのアルゴリズムです。

ところが場所が変わって、ここは柴又。

まずをもって野方とは商圏特性が違います。
半分観光地ですからね。
そして何より、一般的にオープンして1カ月間は、
いわゆる開店景気期間であり、
これに異常気象や新型コロナの感染ピークも重なり、
40日余りのデータはノイズだらけ。

というわけで、集客予測表は作ったものの、
数字はサイコロを振って出したのと大差ありません。

先週も土曜日は昼夜ともに混んだので、
日曜日も大盛況!
と思いきや、「この静けさはどうしたことだ?」な状態。

さて、今日は帝釈天の庚申の日。
通常であれば、街は参拝客で大変賑わうそうな。

でもルーキーのととら亭はどうなんでしょうね?

ま、取りあえず肩の力を抜いて、
新鮮な気持ちで暖簾を出したいと思います。

初めて訪れた国で、空港から出た時のようにね。

えーじ
posted by ととら at 09:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2022年09月01日

タイムスリップポイント

僕はネット上で、
ととら亭や自分について検索することは、
ほとんどありません。

しかし先日ふと、
柴又の街をストリートビューで見ていてびっくり!

柴又親商会商店街とセイムズさん前の道が交差するT字路の、
ちょうど交点にポイントしたときだけ、
風景が少なくとも2年以上前にタイムスリップするのですよ。

timeslip.jpg

ほら、ととら亭の場所は解体前の化粧品店になり、
いまお店の正面にあるマンションの位置には、
その前にあったパチンコ屋さんが、
イリュージョンのように現れたではないですか!

そしてすぐ近くの別のポイントをクリックすると、
ふっと2021年11月ごろの風景になります。

なぜ時期が分かるのかというと、
ととら亭はおろか、
住宅部分の基礎も出来ていない風景が現れたからです。

なんか魔法のようですね。
立つ位置によって時間が変わるなんて。
おもしろいなぁ。

ちなみに野方はどうなっているのか見てみたら、
定休日のととら亭が映っていました。
いつの画像だろう?

timeslip2.jpg

で、パンしてまたびっくり!
玉寿司さんや、さぶちゃんがまだある!!
ってことは4年以上前の画像なんだ。

ネットの世界というのは人間の無意識と同じで、
時間が存在せず、
さまざまな時の場が混在しているんですね。

ん〜・・・なんか複雑な気分になってきました。

えーじ
posted by ととら at 08:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2022年08月30日

住所と名前と電話番号の日々

今月2度目の連休。

7月20日のオープンから1カ月余りが経ち、
ここらで少し体を休めて・・・

と行きたいところですが、
そうはならないのが僕らのお約束。

ほんと、移転だけではなく、転居まで重なると、
それに伴う雑務はときに本業を超えるかも?
とため息の出る時があります。

そう、次から次へとやってくるのがペーパーワーク。
転居についての書類だけでも区役所の転出届に始まり、
転入先での転入届から健康保険証の発行、
印鑑証明の再登録にマイナンバーカードの住所変更、
(相変わらず、ぜんぜんリンクしてない!)
警察署で免許証の住所変更をするのも忘れちゃいけません。
それが終わると郵便局、銀行、クレジットカード会社での手続きなど、
数珠つなぎにやらねばならないことがやってきます。

それに加えて移店でしょ?
これには税務署や保健所に始まり、取引先との再契約など、
さながらゾンビのように、やってもやっても書類仕事がやってくる。

5月初旬に引っ越してから、
今まで何回、住所と名前と電話番号を書き続けたことか。
紙の束を恨めしく眺めながら、
マジでコピペできなかしらん? と思いましたよ。

それから相変わらずぺちぺち押さねばならない、
意味なしの認印。
実印プラス印鑑証明ならいざ知らず、
何の真正性も保証されない形骸化された因習も、
そろそろやめにしてはどうでしょね?
(シャチハタさんには申し訳ありませんが・・・)

と、少々愚痴らせて頂いたところで、
今日もペーパーワークを始めたいと思います。

とほほ。

えーじ
posted by ととら at 11:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2022年08月28日

旅の食堂の小さな旅

思ったとおり・・・と申しますか、
先日の予想どおり、
新しいととら亭のお客さまは好奇心旺盛な方が多いですね。
それもご来店されるのは旅行や外国、
そして食べたことのない料理に興味のある方がほとんど。

まぁ、そうでもなければ、
この入りにくい店の暖簾をくぐるはずもありませんからね。

また、写真のない黒板メニューを恐れもせず、
僕の口車に乗って注文される方が多いのも、
チャレンジャーとしての優れた素質がうかがえます。

なかでも印象に残ったのは、とある中学生の女の子。

見たことも聞いたこともないメニューを前に、
さぞかし戸惑っているんじゃないかな?
と思いきや、まるで図鑑でも見るように目を輝かせていました。

そして料理そのものを目の当たりにしたときの表情は、
まさしく未知の文化とのファーストコンタクト。

いいですね。
こりゃ、旅人の素質十分だ。

そしてかく言う僕も、
逆の立場で初めてのお客さまとの出会いを楽しんでいます。

どこから来た人なのだろう?
どうやってととら亭を知り、なぜ来たんだろう?

ここの印象を聞くのも興味深いものがありますね。
作った本人は主観の塊ですから、
客観的なご意見を聞いていると、反対に新鮮な驚きがあるのですよ。

料理との出会い、人との出会い。

「旅の食堂」とは何かのたとえではなく、
まさしくホントの意味で、「旅の」食堂になったのかもしれません。

えーじ
posted by ととら at 23:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2022年08月25日

「ふうん・・・」という姿勢

長らく旅を続けていて身に付いたことがあります。
それは「ふうん・・・」という姿勢。

旅とは基本的に日常から非日常へ入ることを意味します。
それは言い換えると、
確実が不確実になることであり、
場合によっては常識が非常識になることでもある。

そこで想定しうるさまざまなリスクを減らすために、
事前の情報収集は欠かせません。

しかし、手当たり次第にネットを検索しても、
ただ混乱するか、悪くすると誤った思い込みにはまるだけなのですよ。
そうならないために必要なのはニュースを例にとると、
「事実」と「意見」を混同しないこと。

たとえばキーウで、いついつ空爆があった。
これを伝えているのが報道です。
で、この空爆について国際政治学者のA氏がCということを言った。
これはCという発言そのものが事実だったとしても、
情報の種類としては解説であって報道ではない。

一連の新型コロナウイルスの事案でもお馴染みですが、
ニュースサイトのヘッドラインを見ると、
報道より解説が圧倒的に多い。
(その理由は言わずもがなですが)

旅人として重要なのはこの違い見失わないことなんですよ。
意見は個人の考えであって、
事実とか架空とかの評価には当てはまりませんからね。

更に踏み込むと、ドライに事実を伝える報道ですら、
手放しで受け取るわけにはいきません。
なぜなら断片化した事実の組み合わせでも、
フィクションは構築可能だからです。

たとえば韓国や中国で複数回の反日活動があったとします。
そして同時に、同数の親日的な活動もあったとしましょう。
それをあるメディアがどちらか一方だけを取り上げて連日報道し、
僕らがその報道を「素直に」受け取り続けていたら、
中国や韓国についてどんなイメージを持ちます?

こうしたことから僕は、
「誰が報道しているのか?」にも着目するようになりました。
そして「誰が?」によって、
情報確度の評価もさじ加減を変えるようになったのです。
(もしくは情報ソースとしてもう使わない)

最後に重要なのが、経験と情報を混同しないことです。
たとえば政情不安定な国同士の国境を越えるとしましょう。
とうぜん「不安定」ですから、当該国政府のウェブサイトを見ても、
まともな情報は載っていません。
そこで出会った旅人に訊いてみます。
その人が実際にその国境を越えてきたのであれば(経験)、
情報確度はかなり高いです。
しかし、別の旅人の話を又聞きしただけだとしたら(情報)、
その確度は半分以下と言ったところでしょうか?

同じ意味で「事実」と「推測」や「願望」を混同しないことも大切です。
相手は事実としての経験か、それについての情報を伝えているのか?
それとも何かに関する個人的な推測や願望を述べているのか?

そんなわけで、普段でも僕は情報を収集するときに、
(ニュースのヘッドラインを俯瞰するときでも!)
「ふうん・・・」という姿勢を取るようになってしまいました。
たとえ相手がNHKであろうがBBCであろうが変わりません。

お蔭で情報の収集・分析能力は抜群!

には残念ながらなりませんでした。

オチとして白状しますが、
「事実」というのはそこに居合わせて経験しない限り、
なかなか捕まえるのが難しいのですよ。
ですから僕がアクセスできる限界は、
たいてい「このあたりなんだろうな」という点ではなく円の範囲。
それも結構ゆるい。

こういうのも歯切れの悪い大人になってしまった、
大きな理由のひとつなのでございます。

えーじ
posted by ととら at 17:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2022年08月22日

D.I.Y. as usual. その10

前回、まだ工事中だとお話しましたが、
工事と言っても大工仕事だけとは限りません。
オープン前にはこんなこともやっておりました。

まずはこれ。

oyarocks.jpg

TRePのプランAだった「古民家改造レストラン」は、
内見初日にもろくも崩れ去り
ボロボロ過ぎた古民家が解体された跡地から出土したのがこれ。
大谷石です。

これは使える!

別途処分費用がかかるという解体業者さんに、
そのままにしておいて下さい!
と、すかさず伝えた僕でありました。
で、次が、

rocks.jpg

敷石。
野方での街歩きでよそ様の庭を見ながら吟味を重ね、
選び抜いたものです。
しかし見落としたのがお店からの輸送方法。
これ、一袋が10キロもあるんですよ。
ってことは10袋で100キロ、その倍は200キロ!

最低でもそれくらいは必要だよな・・・
と思いつつも、ぐり丸の最大積載量って何キロだったっけ?
で、積んでみたらフロントがだいぶ浮いてしまいました。
対向車の皆さま、すみません。
ハイビームで走っていたわけではないのです。

え? ところで何をしてるんだ?
おっと前置きが抜けていました。

fasadauc03.jpg

素材が揃ったところで始めたのはファサードの外構工事です。
ともこは右側の砂利撒きから。
僕は塀の看板を下から照らすスポットライト用の穴掘り。

fasadauc02.jpg

ステップ2は大谷石を配置して全体のバランスを取ります。
ふむふむ、いい感じですね。
そして・・・

fasadauc01.jpg

どうです? 形になったでしょ?
しかしこれで完成ではありません。
もうひとつ素材を手に入れるために・・・

pickupwoods.jpg

江戸川まで行って流木拾い!
これも形をよく吟味しなければならないのです。
夕闇が迫るなか、僕らは金町まで探しに行ったのでした。
(ともこの後ろは金町浄水場の取水塔)
そして・・・

fasadauc04.jpg

じゃぁ〜ん、できましたぁ〜!
旅の食堂ととら亭、手作りなのは料理だけではなく、
お店の随所もこうしてハンドメイドなのであります。

えーじ

P.S.
予算の都合でね。
posted by ととら at 00:08| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記

2022年08月20日

まだまだ工事中

柴又で再スタートして1カ月が経ちました。

感覚的には字義通りの「あっという間」であり、
それでいて「1年くらい経ったかな?」の浦島太郎シンドローム中。
ハード、ソフトともに完成度は概ね70パーセントくらいでしょうか。
これ、かつて携わったシステム開発と同じで、
ある程度の丸に収まる状態でリリースし、
後は運用しながらチューニングして行くという手法なんですよ。

と申しますのも、理屈だけで組み立てたものが、
100パーセント現実にフィットするわけではありませんから。

もちろん野方時代の経験から、
業務についてのヴィジョンはしっかり描かれていました。
しかし、市場と店舗というコンテクストが変わると、
それらが融合した状態で生み出されるアウトプットは、
まったく異なったものになり得ます。

そこで設計はガチに固めず、必要十分条件を満たす的を作り、
それに収めることを再起動時の目標としていたのです。

なんていうとすべては折り込み済みだったように聞こえますが、
のしのし出てくる課題の数には正直たじろいでいます。
大工仕事だけでもけっこう残っているので、
当分の間、丸ノコ片手の僕が、定休日の店の前で、
うぃうぃやっていることでしょう。

そんなわけで定休日のほかに、
22日と29日の月曜日もお休みさせていただきます。

えーじ
posted by ととら at 16:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2022年08月17日

Stop the free fall.

「こんなことを聞くと失礼かもしれませんが、
 どうやって生活しているのですか?」

昨年11月末で野方のととら亭を閉店し、
5月に柴又へ引っ越すまでの間、
しばしばこんなご質問を頂戴しておりました。

疑問に思われるのも無理はありません。
なにせ還暦近くにもなって、
バックパッカーから足を洗えない懐事情は周知の事実。
その二人が働かずして暮らしているのですからね。

更に残念ながら、
僕は打ち出の小槌を隠し持っていませんし、
イーロン・マスクさんの遠い親戚でもありません。

ではどうやって生活していたのか?

答えはごく平凡。
移転プロジェクトの予算として、
生活費を事前にデポしていたのです。

とは申しましても、
これまた屋根裏に札束というわけではありません。
単純に、細々と貯金していただけ。

そんなわけで2021年12月1日から、
通帳の数字はフリーフォールを起こし始めました。
しかも全体としては土地の取得、住宅建設、店舗構築と、
超ド級の出費続きで加速度はさながら21世紀のコンコルド!

そしてその数字は高度計そのもので、
みるみる地表(残高ゼロ)が近付いてくるじゃないですか。

いやはや工事が遅れて予定が体をなさなくなったときは、
正直、どうしようかと思いました。

しかし爆発1秒前で起爆装置を解除するのは、
ヒーロー映画のお約束。
僕らもあわや地表に激突!?
というところで逆噴射(リニューアルオープン)に成功したのです。

めでたしめでたし・・・

は、能天気ハリウッド映画だけ。

逆噴射イコール高度(残高)上昇ということにはなりません。
まずは完全にフリーフォールを止めなければならないのです。
これを阻むのがコロナの第7波と酷暑。
何といってもオープンのタイミングで、
双方がピークを迎えましたからね。

実際はまだ逆噴射しつつも、地表が近付いてきています。

ピーンチ!

しかし、ご安心を。

ヒーローには常に必殺技があるものです。
それは僕らの場合、究極的な対ビンボーサバイバル術。
攻めには弱いととら亭ですが、
セコく生き残るテクニックにかけては誰にも引けは取りません。
(だから野方で12年もやってこれたのですよ)

ギリギリきり詰めて落下速度を落とし、
乏しい逆噴射でピンチを脱出。

これがこの夏のシナリオでございます。

えーじ
posted by ととら at 21:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2022年08月14日

思い出の街 新しい店

移転オープンして3週間余り。
柴又のお客さまだけではなく、
野方方面のお客さまにもたくさん来て頂きました。
(Thank you sooooo much!)

そして意外だったのが、
「元」西武新宿線エリアのお客さま。
前触れは工事中の立哨に来た青年です。

openingposter.jpg

ファサードに掲示したオープン告知のポスターを見た彼が、

「へぇ、野方でやっていたのですか?」
「野方を知ってるの?」
「知ってるも何も、僕は新井薬師から来たんですよ!」

それから大工仕事をしていたときに、
話しかけてきたおじいさんは、

「お、野方から来たのか!?」
「ええ」
「わしゃ、大和町に住んでいたんだよ。ずいぶん前だがな」
「大和町? 何丁目ですか?」
「2丁目だ」
「え!? 僕らが住んでいたのは明正寺川を挟んでちょうど反対側、
 大和幼稚園のすぐ近くですよ」
「あそこか!桜がきれいだったな。よう覚えとる!」

それからカウンターに座ったお客さまは、

「野方でやってたんですよね」
「ええ」
「懐かしいな。
 俺、育ちが鷺ノ宮なんで、子供の頃よく行ってたんです」
「どこかお店を覚えていますか?」
「焼肉屋の基順館はよく行ったなぁ」
「基順館? オヤジさんは僕らの友だちですよ!」

そんなこんなでその後も、

「以前、都立家政に住んでいたんです」

や、

「実家は田無なので西武新宿線はホームなんですよ」

などなど、移住組の方が次々と現れ始めました。

嬉しかったですね。
さながら故郷から遠く離れた街で同郷人に会ったような気がして。

そういえば、ご来店いただいている方々の中には、
野方から引っ越して、
今は別の街に住んでいる方も少なくありません。

思い出の街から新しい店へ。

時間が交差する旅の食堂でありました。

えーじ
posted by ととら at 09:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2022年08月13日

ずる休みのいい訳が・・・

台風8号が発生しております。
関東地方には18時ごろ最も接近するそうですので、
通勤の安全性を鑑み、
本日のディナー営業はお休みとさせて頂きます。

と、野方時代は強弁できたのですが、
(通勤といっても徒歩8分程度でしたからね)
柴又では、

階段を降りるだけだろ!

と言われちゃ返す言葉がありません。

困りました。
(文脈が違う?)

そこで、
遠距離の方は交通機関の混乱が予想されますし、
近隣の方もメリーポピンズ事件の被害者になりかねません。

との人道的な配慮で、
本日のディナー営業はお休みとさせて頂きます。

えーじ

P.S.
いや、仕事はしているのですよ。
デスクワークですが。
posted by ととら at 14:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2022年08月11日

柴又の音

柴又は静かな町です。

主な道路は南北に走る柴又街道ですが、
片側一車線で交通量も少なく、
野方でいうところの環七や新青梅街道のような、
主要道路はありません。

また柴又駅は道路から奥まっているので、
隣の新柴又駅や金町駅のような駅前ロータリーもない。

実際、こうして窓を開けた3階でこれを書いていて、
自動車の音は聞こえないのですよ。

そして驚きはととら亭。
駅のホーム隣接にもかかわらず、
これまた鉄道の音は聞こえてもかすかなもの。

まぁ、それもそのはず、
京成電鉄金町線は高砂、柴又、金町の3駅しかなく、
当然、快速や特急列車は走っていません。
車両も4両編成でスピードは自転車級ですから、
ホーム中ほどともなると、
振動も走行音も微々たるものなのです。

それでも最初は「毎日始発電車で起こされたらイヤだな」と思い、
寝室周りは遮音シートを貼り、窓は2重窓にしたのですが、
住んでみたら日中ですらし〜んとしてしまいました。
この静けさは駅のホームから、
6メートル程度しか離れていないベッドで寝ているとは思えません。

そんなわけで、
営業中もお客さまがホームからの音に気付かれることはないですね。

僕としては、時おり聞こえてくる微かな電車や踏切の音は、
一種の心地よいBGMのように感じています。

これもまた柴又で得た贅沢のひとつです。

えーじ
posted by ととら at 16:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2022年08月08日

空が広い街

柴又に引っ越して感じる贅沢のひとつが空の広さ。

ととら亭から10分も歩けば江戸川の河川敷ですから、
360度の視界が開けています。
土手の上をジョギングしていると、
自分が広大な空の一部になったような気がしてくるんですよ。

この空は、かつて旅した遠い国々まで続いている。
そう思えば、
日常の些事がなんとも小さく見えてくるじゃないですか。

トラブルの連続で、
「まったくどいつもこいつも!」な気分のとき、
広い空はいつも一大事と思いこんでいることの、
本当のサイズを教えてくれます。

そう、大したことではないんですよ。
大抵のことはね。

この空に比べて自分が小さいように、
あれこれ考えあぐねた悩みも、
後になってみれば、小石程度のものでしかない。

totorasunset.jpg

これ、
仕事部屋のある3階から見たある日の夕焼けなんですけどね。
(下は柴又駅のホーム)

美しいでしょ?

広い空は、いつも自分の原点を思い出させてくれる。
僕にはそう思えてなりません。

えーじ
posted by ととら at 15:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2022年08月06日

変わって同じのととら亭

柴又で再デビューして半月余り。
所要時間、片道約70分の距離にもかかわらず、
野方時代のお客さまにもたくさん来ていただきました。

皆さん、野方のお店をご存知ですから、
とうぜん入店されてすぐ着席されるのではなく、
しばし新しい店内を観察されます。

そこで「素敵なお店になった」と言われると、
これまでの苦労が本当に報われた気がしますね。

古い家屋を解体するところから、
とにかく山あり谷ありの日々が続き、
最後は僕らが自ら作った部分もありますし。

この印象はファサードからアプローチへ、
ホールからトイレに至るまで、
野方のお店のコンセプトを引き継ぎつつも、
かなり変わったと思います。

しかし、お料理が出始めて気付かれるのは、
実はその本質が、何も変わっていないこと。

そう、ハードはまったく別物になっても、
ソフトの部分は同じなんですよ。

何より僕らがあの頃のままですからね。

変わって同じのととら亭。

それは齢を取っても中身が変わらない、
僕らそのものなのかもしれません。

えーじ
posted by ととら at 15:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2022年08月03日

僕らの New Normal

と申しましても、
新型コロナ絡みの話ではありません。

今日からランチ営業が始まりました!

この2年余のあいだ、何かと営業規制に悩まされ、
片や進んでいた移転プロジェクトは、
トラブルてんこ盛りで8カ月間の失業状態。

それがようやくフツーに戻ったのです。

ん〜・・・感無量とはこのことかな?

スリルとサスペンスの人生もいいんですけどね。
それがあんまり長く続くと、
いわゆる平凡な日々が恋しくなるものです。

新しい環境で始まったこの仕事と生活は、
まさしく僕らにとっての New Normal。

いろいろ戸惑いこそあるものの、
新鮮な驚きを楽しみつつ、
生まれ変わったととら亭を育てています。

こうしてみると、
やっぱり僕らは変化を求めてしまうんだなぁ。

え?
だからスリルとサスペンスになるんだ?

そうか、
自業自得のマイライフでございました。

えーじ
posted by ととら at 17:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2022年07月31日

風の街のととら亭

ととら亭の場所は、
江戸川から直線でほんの670メートル。
高い建物も少ないせいか、風通しがとても良いです。

そう、良い。

いや、良すぎるんですよ!

とりわけ南風が吹くときの3階は、
ちょっとした台風のようになります。

先日、洗濯物を干して置いたら・・・

「ん? 僕の黒いTシャツは?」

ベランダを見回しましたが、どこにもありません。

I have a bad feeling about this...

風は南から。
向かいのマンションに当たって強い東風になる。
そして寅ちゃんの西側は京成金町線の柴又駅。
ということは・・・
と恐る恐る西側を見下ろしてみれば、

Hooooly shit!

僕の哀れなTシャツがハンガーごと、
高砂行き側のホームの屋根の上にあるじゃないですか!

僕は1階へ駆け下り、
きょとんとしたともこに状況を話しました。

「え〜っ! どうすんの?」
「どうするもこうするも、
 ハンガーと一緒だから架線に引っかかったら大変だ。
 駅まで行って話してくる」

そこで駅員さんに手早く事情を説明し、

「どの辺ですか?」
「改札から南へ20メートルほど行ったやや東側です」

駅員さんは駅舎裏から屋上へ登り、僕を手招きしています。

「どうも見当たらないのですが」

僕も駆け上がり、

「・・・? いや、ほら、あれです!」
「あ、あれか! ん〜・・・まずいな。
 あそこじゃ業者を呼ばないと取れないかもしれません」
「申し訳ありません。費用はこちらで負担しますので、
 架線に引っかからないうちに撤去していただけますか?」
「それでは本社に相談しますので少々お待ちください」

名刺を渡した僕は寅ちゃんに戻り、再びベランダへ。
そこには心配そうなともこが待っていました。

「どう?」
「ちょいと大ごとになっちまった。ん? 待てよ」

見下ろすとTシャツはおりからの風に煽られ位置が動いています。
それも寅ちゃんに近い縁の方に。

チャンスだ!
あれなら脚立を建てて竿を使えば届くかもしれない!

僕はお店の高所作業用に買っておいた脚立を裏口から出しました。
そこへ駅員さんも現れ、レスキュー作戦を説明。
しかし、

「すみませんが、
 お客さんに危険な作業をやらせるわけにはいきませんので、
 私がやります」

そこで僕はフェンス越しに脚立と竿を渡し、
固唾を飲んで見守ることに。

程なく駅員さんが竿を引くと、
そこにはメリー・ポピンズと化した僕のTシャツが。

「本当にすみませんでした。
 お忙しいところにご迷惑をおかけしました」
「いや、大したことではありません。
 何かありましたらいつでも連絡してください」
「ありがとうございます」

柴又は風の街。
洗濯ものにはご用心を。

ちむちむり〜。

えーじ
posted by ととら at 16:50| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記

2022年07月29日

よく鳴る電話

開店と同時に電話がよく鳴っております。
たくさんのご予約を頂き、まことにありがとうございます。

と書ければ良かったのですが、その中身は・・・

ぷるるるる・・・

「はい、ととら亭でございます」
「お仕事中失礼いたします。
 オーナー様はいっらしゃいますでしょうか?」
「一応、僕ですが(イチオウね)」
「SNSを使った集客システムにご興味はおありでしょうか?」
「はぁ?」
「Googleの検索順位も上位に上げられます」
「いや、そういうのはねぇ・・・」

と9割はこればっか。
で、

「うちは道楽でやっているのでも有名店でもないんですけど、
 行列ができる店を目指しているんじゃないんですよ」

そう答えると、今度は相手が、

「はぁ?」

ってなっちゃう。

ととら亭みたいな経営ポリシーはレアですからね。
「いいね!」やフォロワーの数を競う販促を是とする企業さんとは、
なかなか分かり合うのが難しい。

そもそも12年前に独立したときから、
チェーン店展開とか、一部上場とかを目指したことはありません。
そういうのは僕らが望んでいることではないのですよ。
だから孫さんや三木谷さんを羨ましいと思ったこともない。

僕らがやろうとしているのは、まったく別のことなのです。
端的に申しますと、ただの旅人なんですよ。

それ以上でもそれ以下でもない。

柴又で新しい旅が始まりました。
もうそれだけで僕らはハッピーです。

ぷるるるる・・・

ふぅ、やれやれ。

えーじ
posted by ととら at 08:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2022年07月27日

Totoratei on media

柴又で受けた初取材は、
拙著「世界まるごとギョーザの旅」の版元でもある、
東海教育研究所さん。

ところがインタビューを前にして困ったのは、
内装工事がまだ終わってなかったこと。
いやはや女性二人の取材チームを迎えるのに、
乱雑で埃っぽい工事現場じゃあねぇ・・・
と心配だったのですが、
この方がより「ととら亭らしさ」を感じられるのではと開き直り、
急ごしらえの会場で話が始まったのでした。

柴又で始まる「ととら亭」の第2章
前編 新店舗の準備はハプニング続き!?

いま明かされる移転の背景と、構想7年、制作4年に及んだ、
TReP(ととら亭リニューアルプロジェクト)の裏話、

人生の反面教師ネタとしては最適でございます。
お楽しみ下さい。

えーじ
posted by ととら at 12:44| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記

2022年07月26日

初にして相変わらず

今日は柴又で初めての定休日。

と申しましても、
野方時代をご存知の方には聞き飽きた話ですが、
ぜんぜん定「休日」ではありませんでした。

朝から晩まで、
ここ6日間の営業であぶり出したバグのシューティング三昧。
これまでの経験が活かせたのか、
さすがにデビュー当時のような「あちゃ〜!」はありませんでしたが、
デザートフォークを取ろうとして、
重ね置きしていたスプーンのケースをひっくり返したり、
ワインセラーを開けようとしたら、
ビールディスペンサーの電源コードが扉に引っかかってしまったりと、
小さな「おおっと!」は幾つもあったのですよ。

それから構造上の問題も作って分かったことがありました。
たとえば天窓からランチタイムの採光をしようと思ったら、
なんと強すぎて眩しいやら暑いやら。

そこで午後はホームセンターに出かけて部材を買い、
帰ってから採光量の調整を始めたのです。

どうやったのかって?

まず窓枠にすっぽりはまるフレームを作り、
それに障子紙を2重に貼って取り付けたのです。
そう、発想はまさしく障子。
強い光も柔らかくなるでしょ?
明日は晴れそうですから、
さっそく効果を確かめてみたいと思います。

それからチラシのケースも取り付けました。
これはアクリル製の既製品を購入し、
「日本語」、「English」と書いた仕切りを入れ、
メニュースタンドの後ろにある酒瓶などの返却箱に設置。
これでウェブサイトをご覧いただけない年配の方にも、
旅の食堂の概略を伝えることができます。

最後は明日の大工仕事の下準備として、
新しく買った防塵機能付きの丸ノコに、
チップソー(丸ノコの刃)を取り付けて終わり。
時計を見れば時刻は21時半を周っていました。

やれやれ、はやくフツーに休める日が来ることを、
祈るばかりでございます。

えーじ

P.S.
現実的にはまず半休からですな。

posted by ととら at 23:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2022年07月24日

錨を上げろ!

7月20日17時30分。
新しい旅の始まりまであと30分。

僕らは慌ただしく動きながらも、
どこか落ち着いていました。

そうですね、個人的な経験にたとえるなら、
じゅうぶん練習して臨む試合のキックオフを待つときとか、
ライブのステージが暗転して、
ドラムスのカウントを待つあいだとか、
そんな感じでした。

やるべきことはすべてやった。
さぁ、次を始めよう。

newbigining04.jpg

7年に及んだ移転計画。
これ自体が実に困難な長い旅でしたが、
ここまで来ると、すべては過去のことです。

newbigining03.jpg

今こそ、この瞬間に集中しよう。
この日のために、
地図のない長い道を歩いてきたのだから。

newbigining02.jpg

新しいととら亭の中と外。
それぞれを見回して思う不完全な完璧さ。
ここからまた少しずつ、育てて行くのです。

newbigining01.jpg

僕らと、皆さんと一緒に。

ともこ&えーじ
posted by ととら at 16:49| Comment(4) | TrackBack(0) | 日記