2019年10月04日

第7回研修旅行の準備 その1

今年もこの季節がやって来ました。
2019年の締めくくりの旅は・・・

UAE(アラブ首長国連邦)のアブダビと、
レバノンのベイルートです。

期間は11月25日(月)から12月3日(火)までの9日間。

もうお気付きの方もいらっしゃると思いますが、
今年の取材地はシビアな理由で、
渡航の難しかった国がいくつか含まれています。

1月のトルコ、エジプト、そして今回のレバノン。

いずれも以前から、
重要な取材対象地としてリストアップされていた国ですけど、
ご存知のように、ととら亭を始めた2010年以降、
ジャスミン革命の影響やクーデター、ISの跋扈などさまざまな理由で、
外務省発表の危険レベルが1の『十分注意して下さい』まで下がったのは、
つい昨年年頭のこと。
くわえて、いつまたドンパチ始まるか分かりませんから、
入れる時にささっと調べに行こう!
と、チャンスを伺っていたのですよ。

レバノンは世界で最も洗練された中東料理を味わえる国として、
かなり前から注目していました。
アラビア半島に位置しながらも、
キリスト教徒が人口の30パーセント前後いるせいか、
ハラール(食の戒律)の縛りが緩く、
また、フェニキアと呼ばれていた古来より、
さまざまな民族や文化が混淆する場所でもあったので、
実に豊かな食文化が育まれてきたのです。
実際、ヨーロッパの国々を訪れていた時でも、
「お、いい感じの中東系レストランがあるな!」と近付けば、
それはおしなべてレバネーズでした。

以前、ヨルダン料理特集でご紹介したパセリのサラダのタブーレは、
レバノン発祥と言われていますし、
ブルグル(ひきわり小麦)でコーティングした揚げ物のキッベや、
パン入りサラダのファットゥーシュもかの地で生まれたそうです。

また、今やっているエジプト料理特集で人気のターメイヤ(ソラマメのコロッケ)と、
その伝播したものと言われるファラフェル(ヒヨコマメのコロッケ)の中間系、
すなわちソラマメとヒヨコマメが50/50バージョンのファラフェルや、
モロヘイヤのスープがあるというのも、
比較対象として興味をそそられるじゃないですか。
そうそう、カイロのレバネーズレストランでチェックした、
タヒーニ(ゴマペースト)とトマトのコクのあるソースを使ったシーフード料理も、
忘れちゃならない要チェック料理のひとつです。

今回、移動でお世話になるのは2012年以来のエティハド航空さん。
ハブになっているUAEのアブダビでストップオーバーし、
2017年のドバイに続いて、ここでも料理の下見をする予定です。

で、ほぼ移動手段と宿のブッキングは終わったのですが、
お約束と申しますか、
周辺諸国や国境付近でなにやら不穏なムードが・・・

そのお話はまた次回に。

えーじ
posted by ととら at 12:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2019年10月01日

高税率は悪なり! ・・・かな?

10月10日(木)から始まるスウェーデン料理特集。
料理を再現し、オーダーラインを作るという、
ともこのパートはおおむね目途が立ちました。
ここからバトンは再度、僕の方へ。

そこでキャプション書きを始める前に、
もう一度、取材ノートや資料を読み返していたのですが、
スウェーデンのみならず、北欧5カ国は、
いろいろな面で、『先進国の中の先進国』なんだよな・・・
という思いをあらたにしました。

以前、このブログでもお話しましたように、
北欧の国々は、よく知られた福祉のみならず、
環境、経済、政治、教育、人権など社会の基本を成す部分で、
だいぶ僕らをリードしているように見えます。

その結果の一端が、
世界幸福度ランキングの上位を独占する形にも表れていますが、
こういうことを言うと、
「だって税金が高いんでしょ?」と眉をひそめる人もいますよね?

確かに高いです。
消費税(付加価値税)に限って言えば、

スウェーデン  25%
デンマーク    25%
ノルウェー   25%
アイスランド  24%
フィンランド  24%

ほぇ〜・・・

これは当然、物価にも反映されており、
卑近な例では、ととら亭の取材予算で比べると、
北欧旅行1回につき、東南アジアであれば3回以上行けます。

しかし、当のローカルには
日本比較で平均1.2倍はある(ノルウェーは1.7倍!)、
平均収入が後ろ盾になっており、
重税にあえいでいるという印象はありません。

むしろ誰もが支出を迫られる教育や医療、
可能性の高さで言えば子育てや介護などの費用が、
税の一部で先払い的に確保されているので、
個人的にやりくりする必要が基本的にない、
安心感のアドバンテージが高い。

ここではたと思うのですよ。
日本との税率の差は今日の時点で15パーセントでしょ?
その差から享受できるサービスって、
逆にすんごく割安だと思いません?

もちろん、この手厚いサービスは、
消費税だけで賄われれているわけではありません。
これに加えて強烈で抜け道のない累進課税制度も動いています。
だから財源を確保するだけではなく、
別の文脈で社会問題化することの多い収入格差もずっと少ない。

全国間税会総連合会の
『世界の消費税(付加価値税)152ヵ国』平成30年4月版を眺めていると、
消費税率が1桁台というのは、
152ヵ国中、日本を含むたった9カ国しかありませんでした。
ほとんどは20パーセント前後なのですよね。
そしてその顔ぶれを見ていると、この程度の税率(つまり財源)では、
貧困、犯罪、衛生、教育など、
未解決の社会問題を抱えた国がだいぶ混ざっている。

しかし、24パーセントを超えると、
クロアチア、ハンガリー、ギリシャを除けば、
自他ともに結果を出していると認められるメンバーが揃っているじゃないですか。

旅を通して自分の目で見たその国の様子と、
こうした一般情報を重ね合わせてみて、
僕が何を言いたいのかと申しますと、

高税率というのは必ずしも国民を苦しめるものではない。

ということ。

税は日本の庶民的イメージとして年貢に結び付き、
強欲領主と苦しめられる民という、
ステレオタイプの対立構造を想起させるのかもしれませんが、
いまさら封建主義ではないのだから、
そのへんはもうちょっと民主主義を評価してあげてもいいのではないかしらん?

現実的な財源と、フェアなその運用。

自滅的ポピュリズムに陥ることなく結果を出すキーは、
そのへんにあるのではないかという気がしてきました。

で、その観点に立つと、
消費税率10パーセントと今の累進課税率で得られる程度の財源で、
何をどこまで出来ると思います?

ん〜・・・

消費増税に伴う議論のベクトルが、
僕はにちょっとぶれているように思えるんだけどな。

えーじ
posted by ととら at 12:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2019年09月28日

よくいうフレーズのディープな理由

ふたつ前のブログで、
ともこのよく言うフレーズをお話しましたが、
その背後にあったディープな理由がわかりました。

それは・・・

「今年の区民検診はいつ行くの?」
「ん〜・・・」
「僕は来週の定休日に行って来るよ。
 この後いろいろ忙しくなるかもしれないから、
 なるべく今月中に受診しといた方がいいよ」
「だって・・・」
「なにか予定でもあるの?」
「べつに・・・」
「じゃ、僕と同じ日に行っちゃえば?」
「それは困るよ」
「なんで?」
「だって・・・」
「だって?」

「減ってないから・・・」
「なにか?」
「体重」
「・・・? 別にいいじゃん」
「よくないよ!」
「なんて?」
「どうしよう?」
「なにを?」
「・・・・・・」
「黙ってちゃわからないよ」
「ど〜せ、えーじにはわからないよ!」
「おいおい、そりゃ藪から棒だね。
 なんにも言わないで決めつけられちゃかなわんよ」

「・・・・メタボって言われちゃったらどうしよう?」
「はぁ?」
「メタボって言われたら恥ずかしいじゃん!」
「ともこの体形でそれはないと思うよ」
「そうかな?」
「うん」
「じゃ、行っても平気かな?」
「平気じゃない?」
「ほんと?」
「ああ」
「じゃ、行って来る!」

で、いそいそ出かけて行きました区民検診。
その結果は・・・

「やった〜っ! 平気だったよ! メタボって言われなかった!」

で、ぐるっと回って振り出しに戻り、その日の晩は・・・

「ビールちょうだい!」

・・・か。

乙女心とは、げに不可解なるものでございます。

えーじ
posted by ととら at 16:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2019年09月25日

「おめでとう!」と言える日

「今日は記念日なのです」

そう仰られるお客さまが度々いらっしゃいます。

誕生日、結婚記念日、
ときには『出会いの日』や『付き合い始めた日』などなど・・・

ここ、ととら亭では、
それを一緒に祝う方々もまたさまざまです。

異性同士だけではなく、男性同士、女性同士、
もしかしたら、僕に分からないだけで、
男性でも女性でもない性をもつ方たちだっていたかもしれません。

先日も、付き合い始めて10年になる、
男性同士のカップルがお祝いでいらっしゃいました。

パントリーから眺めた彼らのテーブルは、とても幸せそう。

いろいろな所で、いろいろな人が、
いろんなことを言っていますが、
僕にしてみれば、いずれも人が人を愛している、
ただそれだけのことです。

人と人の幸せに、
おめでとうと言える人、
おめでとうと言える場所、
そして、おめでとうと言える社会。

僕たちは進むべき方向へ進んでいる。

ゆっくりとだけどね。

えーじ
posted by ととら at 15:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2019年09月22日

よくいうフレーズ in ととら亭

誰にでも『よくいうフレーズ』というのがありますよね?
で、朝から体重計に乗ることが日課のともこさんの場合・・・


「今日からぜったいダイエットする!」

から始まり・・・


「あ〜、食べすぎちゃった! 今夜は軽くしとこ!」

と続き、
夜、営業が終わると・・・

「ビールちょうだい!」

で、幕を閉じます。

そして翌朝また、

「今日からぜったいダイエットする!」

・・・・・・・・・・・
はいはい。

えーじ
posted by ととら at 22:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2019年09月19日

選択のコスト

突然ですが、質問です。

もっともコスパの優れた飲食店とは、
どんな店でしょう?

そう、
「この値段でこんな料理が楽しめちゃうなんて!?」
という、ある意味、理想的な店とは?

え? お得なクーポン連発の店?

違います。
そういうところにパフォーマンス(質)は期待できないでしょう?

物価の安い国で高級レストランに行く?

それじゃ旅費が上乗せされちゃいますよ。
条件は『国内で』です。

思い浮かばない?

正解は・・・

完全予約制で『おまかせ』料理の店!

なぜか?

食材のロスがないだけではなく、
労働力の究極的な最適化がはかれるからなのですよ。

この双方、いずれもおカネに換算すると、
バカにならない数字になります。
つまり、仕入れと人件費ですからね。
このロスを織り込まないのであれば、
「そのぶん儲けちゃおう!」でない限り、
価格はだいぶ安くできます。

そこで次の質問です。

ではなぜ、この『理想の飲食店』が見当たらないのか?

これはお分かりになるでしょう?
皆さんマターのことですから。

え? 分からない?
こりゃちょっと意外ですね。

この仕事をしていて今更ながらに気付いたのですけど、
飲食店に求められているのは、味と値段以上に、
「好きな時に、選んだものが食べたい」という、
利便性と選択肢なのではないかしらん?

この前者の要望は食事のタイミングや、
行動の予定などから十分理解できるのですが、
よくよく考えてみると、
選択というのは奇妙な話のような気がしないでもありません。

なぜなら、お腹に入るのは1品であるにもかかわらず、
『食べないその他』が必要なのですからね。

一般的に、お客さまはメニューの数が多ければ多いほど、
「わぁ〜!」っとなります。
反対に、たとえば、ランチでご来店され、2種類しか料理がないと、
(ととら亭のことです)
「なぁ〜んだ・・・これしかない」ってなっちゃう。

だから飲食店は長い時間営業し、
専門店を除けば、多くのメニューを揃えているのですよ。

ところがこれには、目に見えないコストが含まれています。

さっきの例で続けると、
たとえば5種類用意して3種類しか売れなかった場合、
残った2種類はロスとして、よくて賄い、最悪は廃棄されてしまいます。
つまり店にとっては損失ですね。

え? それはその店が被っているんだから関係ない?
いやいや、そうとも限らないのですよ。

もし、その店の経営が続いているのであれば、
それは収支のバランスがとれているということですよね?
(業績の良し悪しは別として)

ではどうやって、その損失を埋めているのか?

ロスの発生は突発的なものではなく、構造的な問題ですから、
常に起こることが前提となります。
そこで、そもそもの価格にロスの補填分が転嫁されているのですよ。

とりわけ素材の共通性が低く、
メニュー数が多ければ多いほどロスの確率が上がります。

冷凍食品を多用すれば、ある程度のリスクはヘッジできますけど、
それとてゼロでない限り、
名目を変えて価格に含まれるのは避けられません。

そう、高価な食材以上に、実は高くついているかもしれないのが、
「好きな時に、選んだものが食べたい」という、
利便性と選択肢のコストなのですね。

同業者にはこの意見に異議を唱える方もあると思いますが、
飲食店の売り上げが基本的にお客さまの財布だけに依存し、
ロスがビジネスの構造上、避けられない現実であることを鑑みると、
意図の有無は別として、
結果的に損失は価格の中で調整されていることになる。

選択とは常に選択されない何かを伴い、
そのコストは按分率に差こそあれ、
直接的、間接的に、すべてのプレーヤーで負担するしかありません。
思った以上に贅沢なことなのですよ。

あ、だから先進国ほど、さまざまな分野で選択肢があるのか。

えーじ
posted by ととら at 22:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2019年09月16日

商店街のババ抜き

今日は3連休の最終日。

「すみませんが、細かいの、ございませんでしょうか?」

ということは・・・

負けちゃいましたね、ババ抜き。

毎回、商店街で繰り広げられているこのゲーム、
通常のトランプでやるババ抜きとは、ちと違います。

ジョーカーに相当するのは1万円札。

それぞれのお店が連休、つまり書き入れ時に入る前、
商売の内容に応じた釣銭を用意していますが、
予想以上に1万円札で支払いがあると、
とうぜん最後は底をついてきます。

やば・・・あと1枚出されたらゲームオーバーだ!

普段ならここで銀行へ行けばいいのですが、
連休となるとその手は使えません。

そこで負けないためには、
どこかの店で『両替』するしかない。

「あれ〜? 細かいのなかったんだ。
 ゴメンね〜、大きいのでいい?」

なんて、くさい芝居を打たれても、イヤとは言えないのが商店街。
しかし、これでは1店で1枚しか両替できないので、
買い物を小分けにしてハシゴすることになりますが、
あからさまにやり続けていると、さすがに嫌な顔をされます。

そこで同じ店を避けるものの、
結局、いろんなお店が同じことをしていますから、
一万円札が商店街をグルグル回る、
まさしくババ抜き状態になるのですよ。

え? ととら亭の戦績はどうなんだ?

ふふ、うちは常勝です。

なぜなら、
ランチタイムに1万円札を出されることが少ないだけではなく、
なんと逆に、
『チェンジマネー』してくるお客さままでいるからなのですよ。
ほんと、助かってます。

この3連休もありがとうございました!

えーじ
posted by ととら at 15:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2019年09月13日

時計を見ないで

今週は火曜日から僕らも遅ればせながらの夏休み。
ほんの3.5日ですが、のんびりしました。

といっても例によってやっていたのは、
溜まった仕事のリカバリーでしたけどね。

それでも普段のように時間に追われていませんから、
気分的にはだいぶ違います。
別の要件に割り込まれることもないので集中できますしね。

こういう仕事の仕方はお勧めできませんが、
営業のある日だと、
僕はいろいろなタスクを細切れにしてやっているのですよ。、
コンピュータ用語で申しますと、マルチタスク、
いや、ハイパースレッディングかな?

たとえばこのブログ。
椅子に座ってじっくり書いていることはまずありません。
「こういう話をしようか?」
なんてネタはよく掃除をしながら考えています。
そして実際に書くのは、
営業中が多いですね。ヒマな日でお客さまが途切れた時とか。
つまり3分の2は立って書いているというわけです。

まぁ、すべからくそんな調子なもので、
かりにやっているのが退屈なペーパーワークだとしても、
それひとつに集中してやれると、気分も疲れ方もぜんぜん違うのですよ。
ましてやそれが好きな読書だったりすれば、気分はもうバケーション!

思えば僕はオンの日に、何回、時計を見ているんだろう?
それはいつも時間を気にしている、ってことですよね。
いや、正確に言えば、時間に追われてるってことか。

ん〜、なんとしても、こいつから自由を取り戻したいですね。

あれ? もうこんな時間か!
今夜はディナー営業があるんだった。
掃除しなくちゃ!

えーじ
posted by ととら at 13:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2019年09月10日

ありがたき屋根の下

一昨日の台風はすごかったですね。
あの日は僕らも早々に店じまいしてアパートに帰ったのですが、
夕食を食べる頃になると、だいぶ風雨が強くなってきました。
そこでちゃぶ台を囲んだ僕たちが顔を見合わせて言ったのが、

「あ〜、僕らは幸せだねぇ!」

え?
いや、この歳になってのろけているわけではありません。
心から喜んでいたのは以下の4点です。

1.嵐の夜に雨風をしのげる部屋にいる。
2.しかもその部屋はエアコンが効いている。
3.僕らはシャワーを浴びてさっぱり。
4.そして美味しい食事(冷たいビール付き!)が目の前にある。

え? それがどうした?
別に当たり前のことじゃないか?

ん〜・・・かもしれませんね。
でも、僕らの物差しでは、そうとも限らないのですよ。

その評価基準といえば、
起業家の中でも志の低さでは定評のあるととら亭、
バックパッカーのビンボー旅行がベースになって・・・

いません。

僕らの生活水準のベースになっているのは、
もしかしたらそれ以下の・・・

キャンプです。

そう、いつぞやお話したと思いますが、
僕もともこも、国内を旅していた時の宿泊はキャンプが基本。
特に僕は登山ライダーだったので、荷物はバイクに積めるだけ。
山に登る時はバックパックに入るだけでしたから、
装備はいつも必要最低限だったのです。

そこでもし、一昨日のような夜をテントで明かすとなると、
そりゃもう、涙なくしては語れない話になるのですよ。

たとえば、あれは稚内の近くにある、
クッチャロ湖のほとりでキャンプしていた時のこと。
夜半に寒冷前線が近付き、強風と共に大粒の雨が降り始めました。

その時、僕が使っていたのはクロスドーム型のテント。
ジュラルミン製のポール2本を交差させて、
概ね横1メートル×縦2メートルの空間を作り出す構造になっています。

これは入り口のある短辺方向からの力には強いのですが、
長辺から受けると、形がひしゃげてしまい、
1メートルの幅があった空間が半分くらいなっちゃうんですよね。
風向きが変わってからというもの、
中にいる僕はポールを折られないよう、
両手で支えていなければならなくなりました。
もう寝るどころではないのですよ。

しかし本当の悲劇はこれからです。

ひとり、風に耐えていた僕は、
ほどなくしてテントの下部を囲うグランドシートの異変に気付きました。
内側に向かって妙な湾曲のしかたをしています。
触ってみると、なんかタプタプしてる。

大変だ! 水没している!

そう、テントの周りにはあらかじめ排水用の溝を掘っておきましたが、
降雨量がそれを上回って、
テントは今や水たまりの中に浮かぶ島のような状態となっていたのです。

脱出しなくちゃ!

僕は狭いテントの中でレインウェアを着込み、
ブーツを履いてから外に出ました。
叩きつけてくる風、全身を打つ大粒の雨。
テントは直径6メートルほどの水たまりの中に浮かんでいます。

まずやらなければならないのは、重い荷物の移動です。
雨が当たらない公衆トイレの中までピストンで荷物を運び、
次はテントを地面に固定しているペグを抜いて、
飛ばされないようにしっかり掴んだまま、
公衆トイレの風下側に移動しました。

ようやく一息ついてトイレに入ってみると、
手洗い場には同じように避難したずぶ濡れのキャンパーが数人。
中には移動中、強風にあおられ、
テントが湖上を去っていった悲劇に見舞われた人も。

結局、嵐がやむまで、まんじりともせず、
僕らはそこで臭い仲となったのでありました。

南でも安心はしていられません。

あれは石垣島の米原キャンプ場でのこと。
サンゴの砂のビーチでキャンプなんてステキ!
と皆さんは思うかもしれませんが、その実情は・・・

この時はともこも一緒だったので、
テントはより大きい3〜4人用のものを持って行きました。
(といっても3人で使うのは厳しい)
ところが訪れたのが6月下旬の南の島となると、
締め切ったテントの中はもうサウナ状態。
とても寝るどころではありません。

かと言って、少しでも風を入れようと入り口を開けたが最後、
ジーンズの上からでも平気で刺してくるマッチョな蚊の集中攻撃を受け、
ふたりとも献身的なブラッドドナーになってしまいます。

そこで僕らはビーチまで出て、砂の上にマットをひいて寝ていたのです。
ここならずっと海風が吹いているので涼しいし、
蚊も近寄れませんでしたから。

しかし、砂浜で風が吹いているということは、
砂が飛んでくるということでもあります。
そう、朝になると髪も体もじゃりじゃり。
さいわい水シャワーが近くにありましたけどね。

とまぁ、これくらいのお話でも、
僕らの生活基準がどんなレベルか、ご理解頂けたかもしれません。

いま、僕らが住んでいるのは月家賃7万5千円の狭い2Kアパート。
それでも雨風がしのげるだけではなくエアコンがあり、
お湯の出るシャワーだってついてる。
そう、刺されると厄介な虫だって入ってこない。

だから、幸せだねぇ!

なのでございます。

えーじ
posted by ととら at 21:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2019年09月08日

サラリーマンホテルで嵐の夜に

関東地方は台風15号が接近中。
ここ東京でも空模様がだいぶ怪しくなってきました。
これから明日未明にかけてだんだん荒れて来るそうですね。

こりゃ今夜のディナー営業はアーリークローズかな?

とまぁ、ととら亭の営業ではこういうのもよくあることですが、
不思議なことに、今まで外国を旅していて、
天候理由で予定を変更したことは一度もないのですよ。
成田を飛び立った直後に大雪で空港閉鎖、
なんて、おっと危ねぇ! なケースもありましたけどね。

ところが国内では足止めを食ったことがあります。

あれは10数年前、会社員をやっていた頃のこと。
6月の蒸し暑いとある日、僕はチームメンバーのJ君を連れて、
名古屋に出張していました。
その時、進路を変えた台風の影響で、
思ったよりも早く上りの新幹線が運休になってしまったのですよ。
名古屋駅は足止めされた乗客たちで大混乱。

「J君、東京に帰るのは無理だ。プランBで行こう」

そこで駅近辺のビジネスホテルを梯子するも、
みな既に満室状態。

出遅れたか・・・

と周囲を見回す僕の目に入ったのが、
開発された駅前で沈み込んだように佇む古ぼけたビル。
褪色した電光看板から読み取れる文字は、

『サラリーマンホテル』

なんだありゃ?
やってるのかな? ダメもとで行ってみよう。

入り口を入るとそこは椅子すらない小さな部屋で、
銭湯の番台のようなフロントに、
およそホテルマンらしからぬおじさんがひとり。
僕は自分の入ったところが何なのか、すぐに理解しました。

駅前にこんな簡易宿泊所があるとは・・・

お値段はシングルで1700円也。
にもかかわらず冷房完備と書いてあります。

「今夜はここに泊ろう」

そう言って振り返った僕の目に入ったのは、
引きつった表情で途方に暮れるJ君。

「こ、ここに泊るんですか?」
「そうだよ」
「ここだけはやめましょうよ!」

彼はすがるような調子で哀願してきました。

「でも駅近辺で空いているホテルはもうないと思うよ。
 近隣も同じ状況じゃないかな。
 ここがいやならプランCは連絡通路でのダンボーラーだけど、
 それでもいいかい?」

彼もようやく運命を悟ったようです。

料金を前払いして入った部屋は、ベッドがひとつ、ぽつんとあるだけ。
風呂とトイレはもちろん共用。

「風呂に行こうぜ」

隣の部屋に顔を出してみれば、
J君はさっきにもまして落ち込んだ様子です。

ま、ひとっ風呂浴びてさっぱりすれば元気になるさ。

ところが地下に降りて入ったのは、浴室というより薄暗いボイラー室。
脱いだ服の置き場にも困るような部屋の中央に、
ひとりしか入れない大きさの風呂桶が僕らを待っていました。

あいやぁ〜・・・

安宿に慣れている僕にはよくあることでしたが、
育ちのいい、きれい好きなJ君には大きなショックだったようです。

さらに追い打ちをかけるように、
22時になったらエアコンが止まってしまいました。
どうしたわけだと廊下に出て、
そのフロアに冷気を供給している大型エアコンの前まで行ってみれば、
操作ノブに触れられないようパネルが塞がれているだけではなく、
ご丁寧にも鎖を巻いて南京錠までかけているではないですか。

おいおい、こりゃどうしたこっちゃ?

とフロントに行けども誰もいません。
で、宿直室とかかれた部屋をノックしてみれば、
さっきのおじさんが・・・

「あの、エアコンを動かして欲しいのですけど」
「エアコンは22時で止めるんです」
「だってフロントに冷房完備って書いてあるじゃないですか」
「そう言われても決まってるんです」
「でも22時で止めるなんて書いてありませんよ」
「俺だって決められたことをやってるだけなんだよ!」

逆ギレか、こりゃダメだ。

さいわい僕らの部屋は南に面していなかったので、
窓を開けていても雨は吹き込んで来ません。
外から風の唸り声が聞こえてきます。

扇風機もない部屋のベッドに寝ころんで天井を見上げていると、
東南アジアの安宿を思い出すな。

いつしか僕は眠りに落ちていました。

翌朝、隣の部屋を見てみるとJ君の姿がありません。
携帯電話にかけてみたら近くのファミレスにいるとのこと。

なんと憐れな彼は一睡もできず、未明のうちにチェックアウトして、
ファミレスで時間を潰していたそうです。

そんなJ君がどうしたわけかバックパッカーとなり、
今ではソロで東南アジアの国々を旅しているというのも、
嵐の夜の数奇な運命を感じます。

もしかしたら彼は僕とは逆に、
タイやラオスの安宿で、
あのサラリーマンホテルを思い出しているのかもしれませんね。

えーじ
posted by ととら at 15:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記