2020年05月02日

戦略的共存の道へ

皆さんもご存知のとおり、
国レベルでの非常事態宣言は延長の方向で調整に入りました。
さらに自治体の中でも僕らの住む東京都は、
感染者数において最もクリティカルな存在です。

となると、僕らも生き残りをかけて、
次のフェーズに入らなくてはならなくなりました。

そこで僕らが考えた戦略は・・・

ウイルスとの共存です。

こういうシビアな時は、
事実と推測、希望的観測、理想をしっかり区別し、
純粋にファクト主義で行きましょう。

そのためにはまず、ハリウッド映画にあるような、
悪(ウイルス)が滅び、
善(人類)が完全勝利するようなシナリオは捨てることです。

アビガンやレムデシビルの有効性には希望が持てますが、
それらは専用の予防ワクチンや治療薬ではありませんし、
特効薬を作って量産するには、
少なくとも半年から、
1年以上の時間はかかると想定した方が現実的でしょう。

これは言い換えると、それまでの間、
「何かあったらどうする?」という不安の延長にある、
完璧な安全と安心を求める夢を捨てることを意味します。

それは今のところ、地球上のどこにもないんですよ。

これ、ファクトでしょ?

そこで次に個人的な罹患リスクを評価してみました。

2020年1月1日における東京都の人口は13,951,636人。
これを母数にして5月1日のCOVID-19関連の数字で計算すると、

東京都の感染者数 4317人
重症者       97人
死亡        126人

ですから、

東京都の感染率     約 0.031 パーセント
罹患した場合の重症化率 約 5.2  パーセント
死亡率         約 3.0  パーセント

さらに2020年4月における中野区の人口は336,424人なので、
同じように計算すると、

感染者数        151人
中野区の感染率     約 0.045パーセント

なるほど。

このリスクと、
行政による協力金等の援助で経済的な『延命率』を評価した結果、
僕らは5月7日(木)から、まずランチ営業を再開することにしました。

ディナーについては先の罹患リスクの推移と、
東京都による営業時間の規制、そして実際の集客状況を勘案し、
5月13日(水)から再開する方向で調整に入っています。
(詳しくはウェブサイトの営業スケジュールを更新しますね)

このきわどいオペレーションは、
例えるならディーゼル機関の潜水艦で、
多数の駆逐艦や雷撃機と長期間にわたって交戦する状況に似ています。

艦(ととら亭)内の酸素(資金)には限りがあるため、
窒息(破産)する前に浮上(営業)しなければなりませんが、
それは爆雷による被弾(感染)するリスクを伴いますし、
また酸素(資金)を十分に補給するための浮上(営業)時間も、
別の雷撃による被弾リスク(営業時間規制)で十分には取れないのです。

要はトレードオフの関係にある二つのリスクヘッジを、
刻々と変化するリスク評価の結果と照らし合わせつつ、
ヒット・アンド・アウェイで切り抜ける。

これをやろうってわけです。

スリルありますよ。ほんと。

えーじ
posted by ととら at 11:35| Comment(3) | TrackBack(0) | 日記

2020年04月30日

ピンク色の思い出

ともこです。

商店街の中にあっても、
シャッターを閉めたととら亭の中はとても静かです。
旅の料理の試作はある程度のまとまった時間と集中力が必要なので、
この機会にどんどんやってみようと思っていました。
そこへちょうど、カフェリーゾのみなみちゃんのお母さんから、
北海道産のすごくいいビーツをいただいたんですよ。

それを下茹でしてからピューレにするとこんな風になります。

beetpule.jpg

すごい色ですけど自然のままなんですよ。
ここから私が作ろうと思ったのは、
ロシアとバルト三国を旅した時の思い出の料理です。
3年前にロシア料理特集をやりましたけど、
そこでご紹介したもの以外にも美味しい料理がたくさんあって、
いつかやってみたいとずっと思ってました。

最初は夏の冷たいスープ。
リトアニアの『シャルティバルシュアイ』です。

beetsoup.jpg
試作

beetsoup02.jpg
現地で食べたもの

さっきのピューレをヨーグルトと牛乳で伸ばし、
刻んだキュウリとビーツを入れて最後にディルを散らします。
いちごのミルクシェークみたいですけど甘くありません。
コクがあるけどさっぱりしていてとても美味しいんですよ。

次はロシアの『セルド ポド シュボイ』といって、
ビーツとニシンのマリネ、ポテト、茹で卵を使ったサラダです。

beetsalad.jpg
試作

beetsalad02.jpg
現地で食べたもの

これはセルクルという円筒形の型の中にポテト、ニシンのマリネ、
マリネしたビーツ、おろした茹で卵をケーキみたいに重ねたもの。
日本では生食用のニシンが手に入り難いので、今回はイワシを使いました。
白ワインがぴったりの前菜です。

ロシアやバルト三国ではどこも黒パンがおいしくて、
それと『シャルティバルシュアイ』と『セルド ポド シュボイ』があれば、
主菜がなくてもふたりとも大満足でした。

こうして作った試作の料理を賄いで食べてから、
ふたりで3年前の取材旅行の写真を見ました。
その時の景色だけではなく、
風の香りや太陽の光まで一緒に思い出せて、
また楽しい気分になれました。

次は何を作ろうかな?

beetmakanai.jpg
posted by ととら at 11:38| Comment(3) | TrackBack(0) | 日記

2020年04月28日

自分の旅のために その10

半月板の手術から34日が経ちました。
毎日、地道に自主リハ+筋トレを続けています。

まだ左ひざは皮膚の表面に違和感が残り、
曲げ方によってはギシギシしますけど
経過はたぶん順調なんじゃないかな?

今日から加重も2/3までかけられるんですよ。
ということは、まっすぐ立つのであれば、
松葉杖は必要なくなります。

これは大きい進歩だ。うん。

歩行も松葉杖は補助程度になりますので、
様子を見てトレッキングポールに変えるかもしれません。

え? 腰はどうなんだ?

ああ、あれは退院して間もなく安全装置がかかりました。
というか、手術が終わって10日もしたら、
左ひざと松葉杖を力まかせに使った両腕の故障の再発を除けば、
僕はここ10年間でもっとも調子が良くなっています。

実はこれ、予想通りの結果なのですよ。

この事実に初めて気付いたのは、
最初の腰部椎間板ヘルニアで病院送りになった2012年の1月。
入院して2日目にブロック注射で痛みから解放されるやいなや、
3日目にはもう元気いっぱい!

なぜか?

治療のお蔭だけではありません。

毎日7時間以上寝て、
あとはゴロゴロ寝転がりながら本を読んでいたからです。

休んだら元気になった・・・
つまり重度の慢性疲労だったのですよ。

疲労は常態化すると、
それを普通のように感じはじめてしまうんですね。
そしてそのクレイジーな状態は、
皮肉なことに、ドツボの穴からはい出さないと分からない。

ですから今回の長期休業で、
またあの時みたいに元気になるな、と確信していたのです。

ちなみにこれは僕だけではなく、
ともこにも完全に当てはまることですから、
(ん〜、もしかしたら僕以上に!)
2013年以降、『人間らしい生活をしよう』というのは、
ととら亭の業務課題の筆頭に挙がるようになりました。

ところがこれ、ある意味、構造的な問題なので、
「それじゃ明日から労働時間は1日8時間にして、
 水曜日はノー残業デーだ!」
とはいきません。

長期計画として取り組んでいるこの課題、
いずれはその結果をご報告できる日が来ると思いますが、
まだまだ先は長そうですね。

ともあれ、今はふたりとも、すこぶる元気です。

毎日7時間寝て、風呂に入ってからゆっくり食事を楽しみ、
1日3時間前後の余暇を持つ。

ああ、普通の生活というのは本当に素晴らしいですね!

そうか、こういう有り難さというのも、
マッドな人生から戻ってはじめて分かるのかもしれないな。

to be continued...

えーじ
posted by ととら at 10:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2020年04月26日

思い出と料理

ともこです。

今日はピカピカの青空で気持ちいいですね。
こんな空を見上げていると、
11年前に南米を旅した時を思い出します。

あれは私にとって言葉に出来ないくらい印象深い旅だったので、
今でも急に当時の何気ない光景が思い浮かんできたりします。
そうすると平凡な毎日でも、ただそれだけで楽しい気分になるんですよ

旅の思い出というのは私にとって、やる気の素なのかもしれません。

そんな気分に背中を押されて、
今日は4年前に訪れたウズベキスタンのサマルカンドで食べた、
思い出のナンを作ってみました。

samarkandnun.jpg

私は昔からパンが大好きで、
日本を旅していた頃も訪れた街でパン屋さんを見かけては、
食べ比べて楽しんでいました。

こうして外国に行くようになってからは、
世界のパンの種類の多さにびっくりすることがよくあります。
サマルカンドで食べたナンは、今まで食べたどのパンとも違う食感があり、
いつか作ってみたいなーって思っていたんですよ。
左側に写ってる独特な模様をつける押し型も、
サマルカンドの市場で買ったものです。

今回はたっぷり時間をもらえたので、
この機会を活かして、こうしたパンやデザートの試作に挑戦しています。

まだ1回目なので完成するにはもうちょっと時間がかかりそうですけど、
あの旅で出会った人々や景色を思い出しながら、
のんびりやろうと思ってます。

uzbeknun.jpg
posted by ととら at 16:36| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記

2020年04月24日

旅の前後も旅ありき

「しばらく旅に出れなくて残念ですね」

3月中からこんなお言葉をしばしば頂戴しました。
ん〜・・・確かに、
少なくともこのさき半年は難しいかもしれません。

でもね、
旅は飛行機に乗ったところから始まるとは限らないのですよ。

僕らの旅は、
「この次どこへ行こうか?」と地図や本を広げた時から、
すでに始まっています。

現に今も休業中で読書三昧の日々を送っていますが、
読み物の半分は取材候補地の下調べに関するものですからね。

以前、ギョーザ本の読者の方から、
「実際に旅行はしませんけど、
 えーじさんの本を読みながら地図でルートを辿っています」
とのコメントを頂いたことがありましたが、
(おかげで本文中の間違いが分かりました。さんきゅ!)
これはまさしく紙上の旅の楽しさを表す好例です。

そして旅とは実に経済的なエンターテイメントでして、
出発前から旅の最中だけではなく、
帰ってからも長らく楽しむことができます。
場合によっては、
終わってから新しい発見があることだって珍しくありません。

僕にとって、この休業期間にできた時間は、
旅から旅へ慌ただしく走り回っていた日常では不可能だった、
振り返りの機会を与えてくれました。

と、前置きが長くなりましたが、
そうして久し振りに更新しました、ウェブサイトの旅の記録ページ!
今回は2014年の1月に行った(うひゃ〜、6年も遅れてる!)、

第7回取材旅行キューバ・ジャマイカ編です。

ほんと、今更ながらに取材ノートや資料を読み返していると、
新しい発見がぞくぞくと出てきますね。
ん〜・・・なんであの時これらに気付かなかったんだろう?
取材中に分かってたら、もっと掘り下げることができたのに。

おっと、お分かりになりました?
こういう心残りも旅の魅力、いや魔力のひとつなんですよ。
これにまんまと魅せられた僕らですから、
また、のこのこ旅のやり残しを片付けに出かけて行くのです。

その結果、またお釣りをもらっちゃうんですけどね。

えーじ
posted by ととら at 11:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2020年04月22日

料理以外も手作りで

ともこです。

緊急事態宣言が出て2週間以上になりました。
通勤が必要な方もいらっしゃるでしょうけど、
多くの方が自宅での生活が続いていると思います。

私たちもお店を休業して11日目になりました。
このままこの先だいじょうぶなのか?
テイクアウトくらい始めた方がいいのか?
いつから再開できるのか?
どちらかが感染してしまったら?
こんな風に心配ごとは今でもいっぱいあります。

でもふたりでいつもいろんなことを話し合い、
気持ちを落ち着かせて、前向きに進んでゆこうとしています。

この前、休業期間中の過ごし方をお話しましたけど、
今日はその中のひとつをお見せしますね。

私の場合、普段は仕込みに追われていて、
やりたくてもできなかったことが沢山あります。
その中の一つが、食器を乗せるコースター作りです。

coaster.jpg

ととら亭でデザートをお召し上がり頂いたお客さまなら、
見覚えがあるかもしれませんが、
このちょっと不細工な布製コースターも私の手作りなのです。
うちにはミシンがありませんから、ぜんぶ手縫い。

今回は10年以上前に、
京都で買っておいた端切れを使って作ってみました。
こういうのも既製品を買うとけっこう高いんですよ。

料理だけではなくて、備品だって作れるものなら自分で作る。
これがととら的な発想のひとつなんです。
お店を再開できたら、さっそく使ってみようっと!
posted by ととら at 11:01| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記

2020年04月20日

入院日記 パート3 その10 最終回

今日の東京地方は雨。
皆さま、いかがお過ごしでしょうか?
在宅勤務の方は、
この微妙な軟禁状態に辟易し始めた頃じゃないかな?

僕らの休業も9日目に入りました。
と申しましても、アパートにじっとこもっているわけではなく、
日中は店に出て、それぞれ営業以外の仕事をしていますから、
生活のメリハリはあまり変わりません。

しかしながら僕は入院以来、
生活パターンとその内容が一変し、
さながら別の国を旅しているような感じになっています。

そう、いろいろありましたけど、
病院での不自由な日々も終わりが近付くにつれ、
いつもの旅と同じように、
何となく名残惜しい気分になってきたのですよ。

_____________________________

今日は3月29日。

お約束どおりのトラブルに見舞われましたが、
どうにか退院可能な状態までリカバーできたようです。
僕はデイルームの窓から新宿の高層ビル群を眺めつつ、
帰宅後の生活を考え始めていました。

ここまでほんの6日間しか経ってないのに、
あれこれあったせいか、もっと長くいたような気がする。
それに何かとやるも少なくなかったから、
入院中に予定していたことを全部はできなかった。
でも、まぁ、いいか。
いちばん大切なことは終わったんだ。

今日は明日の退院に向けて、
松葉杖の使い方のおさらいをしよう。
リハビリの先生は、
ひとりで階段の昇降練習はやらないようにと釘を刺していたけど、
大丈夫、うまくできるさ。

僕は退院後にすぐ必要となる動作を中心に、
午前と午後、それぞれ自主リハビリのための時間を決めました。

ん〜・・・手術した左ひざはともかく、
このリハビリで両腕の故障が再発したな。

両掌の体重がかかる部分にまめができて痛み、
右ひじもギシギシきしみ始めています。
腰の危険レベルが下がったことが唯一の朗報でしょうか。

そして翌日。

「やぁ、久保さん、どうですか?」

朝食が終わって間もなく主治医の先生が現れました。

「お蔭さまで。もう痛み止めも飲んでいません。
 それから松葉杖で階段の昇降もできるようになりましたよ」
「それは良かった。じゃ、ちょっと傷を見せてもらえます?」

僕は自分で装具を外すと、

「ふぅ〜ん、いいですね。
 今日、退院ですからカーゼを取り換えておきましょう」

そういえば傷口を見るのは初めてです。
広い面積の特殊なフィルムを剥がすと、
内視鏡を入れた二つの小さな傷と、
5センチほどの長さの縫合後の残る傷が現れました。

「うん、きれいになってるな。抜糸はありません。
 シャワーを浴びてもいいですけど、
 この傷の部分は濡らさないで下さい。
 化膿するかもしれませんからね」

僕は医療関係者と話をする時、
相手の言葉だけではなく、話し方や表情にも注意を払います。
こちらが一番知りたいことは、
実のところその辺から読み取れることが多いのですよ。

ノンバーバルもOK、どうやらうまく行ったみたいだな。

時計は9時45分。
僕は服を着替え、撤収の準備を始めました。
まもなくともこからメールが入り、

「病院に着いたよ。デイルームで待ってるからね」

新型コロナウイルス対策から、
この病院でも原則的に面会は禁止され、
特例的に認められている入退院の付き添いも、
病室に入るのは制限されています。

「やぁ、ありがとう」
「どう、具合は?」
「とてもいいよ。松葉杖の使い方も結構うまくなったんだぜ」
「じゃ、病室からバックパックを取って来るね」

こうして会計を済ませた僕らは、
ナースセンターで顔なじみになった看護士さんたちに別れを告げ、
タクシーでアパートに戻ったのです。

「大丈夫、気をつけてね」

帰ってすぐ自主リハの成果が試される時となりました。
アパートの階段は病院のそれと違い、
段の奥行きが浅く、
登る角度も急になっている上に段数が倍はあります。

さぁて、本番だ。

僕は練習の時と同じように目を閉じて深呼吸し、
感覚を集中させてから最初の一段に取り掛かりました。

杖に重心、右足を上げる、右足に加重、体を引き上げる、
杖に重心、右足を上げる、右足に加重、体を引き上げる、

これをゆっくり無心に繰り返し、やがて2階の通路に到着。

よし、次でいよいよ終点だ。部屋に入るぞ。

かって知った場所でも松葉杖では初めてですから緊張します。
ともこが先に回ってドアを開けてくれました。

たたきを上がって・・・靴を脱ぎ・・・そしてもう一段上がる・・・

僕は部屋の中をゆっくり進み、仕事部屋にある椅子に腰かけて、

「ふぅ〜・・・帰ってきたぜ」
「おつかれさま!」

ひとつの旅の終わり。
それはまた同時に、次の旅の始まり。

ま、それはいつものことなんだけどさ、
今日のところは、ちょっと一息つかせてもらおうかな?

僕はともこが淹れてくれたコーヒーを飲みながら、
まるで初めてチェックインしたホテルの部屋であるかのように、
自分の部屋を見つめていました。

End

えーじ
posted by ととら at 12:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2020年04月18日

入院日記 パート3 その9

早いですね。

手術から今日で24日、退院してからは19日が経ちました。

自主リハビリは順調で、
まだ左足に荷重はかけられませんけど、
普通に曲げるだけなら130度はいけるようになったんですよ。

松葉杖の使い方もかなり上達しました。
今は通勤の登り坂を含む430メートルの道のりを平均8分15秒で歩けます。
帰りは7分30秒! 両方とも途中休憩なし。
ほんと、何ごとも地道な努力から・・・ですね。

で、ここへ至る病院における最後のハードルは、
こんなのが待っていたのです。

____________________________

いてててて・・・

時計は6時。
病院の朝は早いですね。
起床時の僕のタスクは全身の動作チェックの後、
寝転がったままの軽いストレッチ。
大きな装具で固定されている左脚は、
足首を回すところから膝に力を入れて押し下げる動作、
そして開脚と閉脚をゆっくりやります。

ふぅ〜・・・
痛みはあるものの全体的に異常なし。
左脚は微妙に良くなって・・・いる気がする・・・
というか、そう思いたい。

トイレと洗顔を済ませたら、
8時の朝食までメディテーション。
ここでの仕上げは今日のミッションのイメージトレーニングです。

松葉杖での平行移動はおおむね飲み込めた。
今日は退院に向けた最後のハードル、
布団で寝ることを想定した床からの寝起きと階段の昇降だ。

本番は10時半。
リハビリの先生が来て特訓の再開です。

「おはようございます。踵と腰の調子はどうですか?」
「踵はバンドエイドでカバーしましたし、
 腰もコルセットを付けていますから大丈夫」
「それじゃ、今日は難易度を上げましょう。
 ご自宅では布団で寝ていらっしゃるのですよね?」
「はい」

BGM: Eye of the tiger by Survivor

彼は病室の床に薄いマットを敷きました。

「ちょっと狭いんですけど、ここで床からの寝起きをやってみましょう
 まず見本を見せますね」

彼は僕と同じように左脚を伸ばしたまま、右手でベッドの縁を掴み、
ゆっくり右足を折り曲げてマットに座りました。
そして起き上がる時はその逆。

「まんま片足スクワットですね?」
「ええ、だから年配の方には難しいのです。
 かなり力が必要ですからね。
 椅子やテーブルなどに掴まってバランスを維持して下さい」

選手交代。
僕は彼の動きをトレースしてみました。

「そうそう、いいですね」

でしょ?
実はこれを想定して手術の2カ月前から、
トレーニングのスクワットの量を倍にしていたんですよ。

「それじゃ、いよいよ階段に行きましょうか」

階段は大部屋を出て5メートルほど先の右側にあります。
段数は踊り場まで15段。

「まず手すりに掴まりながらやりましょう。
 僕のやり方を見ていて下さい」

手すりは僕の左側・・・か。
アパートの階段とは逆だけど基本は同じだろう。

「先に右側の松葉杖に重心をかけ、右足を次の段に置きます。
 次に重心を右足に移し、杖を同じ段に移動させます。
 左手は手すりを掴んで床からの寝起きと同じように、
 バランスを取って下さい」

了解。それじゃいってみますか。

僕は彼から松葉杖を1本受け取り、
位置について上を見上げました。

よし、1アクションずつ、ゆっくり、確実にやろう。

僕はイメージトレーニングした動作をトレースし始めました。
そして1段登ったところで、先生を見ると、
彼の表情はゴーサイン。

OK、慌てるな。
愚直にいまの動作を繰り返して踊り場を目指すんだ。

「いいですよ、その調子」

踊り場に着いた僕はうっすら汗をかいていました。
ここで一息。

「さて、下り方をやってみせますね」

僕は振り返って松葉杖を彼に渡しました。

「登りとは逆で、今度は右足に重心を置き、
 先に左手に持った松葉杖を下の段につきます。
 それから重心を杖に移して右足を下げて着地。
 下りの方が転倒リスクが高いので気をつけて下さい」

僕は登りより更にスピードを落として下り始めました。
視線を真下の階段に向けるとフォームが崩れます。
しかし少しでも先に見たら踏み外してしまいそうな気がしてきます。
そして集中力が散漫になればバランスも崩れる。
無事に戻ってはみたものの、
体全体のモーションイメージが掴めません。

「先生、改善点を指摘して下さい」
「登りはOKです。下りでは頭が下がっているので腰が引けています。
 それから杖をつく位置が縁に寄り過ぎているので、
 もう少し手前がいいでしょう」
「分かりました。じゃ、もう一回やってもいいですか?」

彼は僕が転倒しないように真後ろについて一緒に登ってくれています。
往復した時には汗が額を伝って落ちてきました。

「1回目よりだいぶいいですよ。
 それでは手すりを使わず、松葉杖だけでやってみましょう。
 バランスを崩しやすいので、さっきよりゆっくりと」

さぁ、いよいよ最後の難関だぞ。
やってみて分かったけど、これは床からの寝起きみたいな力技じゃない。
スキーと同じく、バランスの取り方がコツなんだ。

登山をやっている時と同じように、登りは案外すんなり出来ました。
問題はやはり下りです。
視線のぶれがそのままバランスに影響してしまいます。
バランスを失うとリズムが崩れ、それがフォームに影響し、
さらにふらついてしまう。

おっと、ヤバイ・・・
負のスパイラルにはまっちまうとこだった。

僕はここで最善策に気付きました。
それは止まること。

僕は階段の途中で背筋を伸ばして目を閉じ、
ゆっくり深呼吸を始めました。

いいんだよ、えーじ。
うまくできなくたっていい。初めてやってることなんだから。

この往復はなかなか緊張感のあるものでした。
しかし僕は落ち込むどころか、
場違いともいえる達成感というか、一種の高揚感を感じていたのですよ。

よ〜し、ナイスリカバーじゃないか。
一昨日はほとんど万事休すだったけど、今日ここまでこれたんだから、
予定通り明後日の月曜日には退院できるかもしれない。
トンネルの出口が見えて来たぜ!

「先生、もう一回やってもいいですか?」

僕は視線を再び15段上の踊り場に向けました。

to be continued...

えーじ

withcruches.jpg
入院中の写真でお見せした大型の装具は前回の検診時に返却し、
いまは自前の軽量アルミ2軸ヒンジが入ったサポーターを付けています。
松葉杖の腕前?
スキーでいったら、
ボーゲンからパラレルができるようになった、ってとこですかね。
もう少ししたらモーグルに挑戦できるかも?
posted by ととら at 12:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2020年04月16日

私らしい毎日

ともこです。

先が見えないのは本当に不安ですよね。
私たちもこの前の日曜日から収入が止まり、
それがいつまで続くか分からない悩みは他のお店と同じです。
でもこうして悩むこと以上に、
私はいま何ができるかを考えながら過ごしています。

私は自分の努力や能力で何とかできることなら、
悩んだり、落ち込んだり、怒ったりと激しい性格です。
(たとえば旅の料理の試作がうまくいかなかったり、
仕込みが間に合わなくなったりしたときなど・・・)

でも自分ではどうにもできないこと、
料理の評価や自分の病気、それからまさに今のような状況については、
不思議なくらい、すっと受け入れてしまうところもあります。

今回の休業は収入が止まることと引き換えに、
貴重な時間をもらえたんだと考えて、大切に使おうと思っています。

この10年間で忙しさを理由にできなかったことをしよう!

私はまず次の5つを始めています。

1.英会話の勉強
2.ジョギング
3.時間に追われない旅のメニューの試作
4.時間を気にしない、ゆったりとした食事
5.残りものではなく、食べたいものを作って食べる

これらは私にとって、
普段はどんなに頑張ってもできなかったことなので、
このチャンスを使ってぜひやってみたいのです。

今みたいに時間の充実した毎日を大切に過ごしたいと思います。
posted by ととら at 10:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2020年04月14日

ととらな軟禁生活の過ごし方

新型コロナ怖い・・・

営業自粛で収入が止まった・・・

そんな中で満足に歩くことすら出来ない・・・

お先真っ暗だ! うわぁ〜ん!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

とはなってません。
ぜんぜん。

世の中、純粋に100パーセント悪いことも、その逆もない。
ものごとの良し悪しは、判断する本人の個人的な視点が決めている。

なんてことをものの本で読んだ記憶がありますけど、
今回、自分に当てはめてみた限り、これは真実だと思います。

そう、世の中、悪いことばかりじゃない!

僕らが休業前に行った経営会議は、まさにそんな雰囲気でした。

確かに、新型コロナウイルスの罹患リスクは洒落にならないし、
もし僕かともこのどちらかが感染しただけでも、
両方揃ってクリティカルな状態になるのは明らかです。
(僕はまだこの通り行動制限がありますし・・・)

また、収入停止は宇宙船の中の酸素供給装置が壊れたようなもので、
ととら亭の命の砂時計は、僕たちの目の前でさらさら落ちて行く。

しかし、終日ふり続いた雨の後の晴天のように、
この状況だって悪いことばかりじゃない。
それは・・・

時間ができたじゃないですか!

思えば僕らふたりが、2日以上そろってのんびりしているなんて、
ここ10年で1回たりともありませんでしたからね。
ですから今朝もゆっくりアパートでコーヒーを飲みながら、

「こんなの会社員をやっていたとき以来だね」

なんて話していたのです。
(だからお勧めしないのです。独立なんて・・・)

話を戻しましょう。

先の経営会議で上がった議題の一つは、
休業期間中の過ごし方。

こういう時はまず、新しいリズムを作ることが肝要です。

最初に僕らはお互いの行動を合わせなくてはならない、
食事の時間を決めました。
それをもとに僕が決めたパーソナルなタイムテーブルは・・・

8:00 起床
8:15 メディテーション
9:15 軽く朝食(これは個別にいただきます)
9:30 情報収集&メールチェック
10:00 読書(2時間も! 嬉しい!)
12:00 リハビリ&トレーニング
12:45 出勤(松葉杖を使いながら約8分30秒)
13:00 ととら亭でランチ
14:00 お仕事(溜まりに溜まった仕事に取り掛かっています)
18:00 アパートへ戻ってまたリハビリ&トレーニング
19:00 シャワー(あ、今日から風呂に入れるんだった!)
20:00 ディナー
21:00 自由時間(ブログを書いたり、また読書したり)
24:00 就寝(おお、8時間も寝ちゃう!)

いかがでしょう?
皆さんからすれば退屈に見えるかもしれませんが、
僕にしてみれば、ある意味で理想的な『軟禁生活』なんですよ。

そうだ、来月、歩けるようになったら、
夕方は外で散歩もできるな。
(ジョギングはまだその1カ月半先・・・かな?)

こうしていると、自分にとって最も大切なリソースとは、
おカネよりも時間なんだな、としみじみ思えてきます。

発想を変えましょう。

皆さんはせっかく手に入ったこの時間、
何をして過ごします?

えーじ
posted by ととら at 09:56| Comment(4) | TrackBack(0) | 日記