2020年04月12日

ととらなハイパースリープ戦略

今日からととら亭も期間未定で休業に入りました。

なかにはランチ営業のみとか、
カフェとテイクアウトで「しぶとく続けるのでは?」
と思われていた方もいらっしゃいましたが、
まぁ、この辺が潮時でしょう。

でも心配しないで下さいね。
実はこのシナリオ、
僕らが1日2回の検温を始めた2月中旬から考えていた戦略なのですから。

そう、休業して冬眠(春眠?)に入る。

しかし、そのタイミングは、
『政府から要請があったら』という単純なものではありませんでした。

僕らはこの現状をより複雑な、
一種のサバイバルレースと見なしているのですよ。

サバイバル(survival)とは『生き延びる』の意。
そして今のコンテクストでは、
生命と経済という、ときに矛盾するふたつの要素が複雑に絡み合っています。

もちろん究極的な選択をするなら、
誰もが生命を取るのに躊躇はしないでしょう。
しかし、選択結果の正誤は選択する状況が決定するんですよ。
素朴なヒーロー、ヒロインには、
ときに論理矛盾を含むこの複雑性が分かっていない。

だってほら、
『命を守るために!』と旗を振っている方たちの殆どは、
現時点で収入の心配がない方たちでしょう?

違います?

個人事業主である僕らは、
個人的に、自らの生命だけではなく、
経済(生活=ととら亭)も守らなければならない。
究極的な選択とその結果を口実に、
おカネを気にせず家にこもるわけにはいかないんですよ。

では、どうしたらいいのか?

この誰も教えてくれない答えを2月から考えていたわけです。

当時、僕は武漢市の状況は数カ月後の東京であると想定していました。
違いはアドバンテージとして、
新型コロナウイルスについてより多くの治験情報が集まっていること。
ディスアドバンテージは、
社会主義国家のように都市封鎖ができる強権を日本が持っていないこと。

そこで僕が追っていたのは、
感染者数、特に東京における罹患率と、
重症化する確率、死亡率、治癒率の推移、
それに並行する同じタイムライン上の、ととら亭の集客数と売上高、
これらの数字でした。

つまり何をしていたのかと申しますと、
リスクを横目で見ながら休業というフェーズ2に突入する、
タイミングを見計らっていたのです。

無収入期間を持ちこたえる経済的体力をどれだけ持って、
無期限休業状態に飛び込むか?
このジャンピングポイントが、経済(生活=ととら亭)の死活を分ける。
これは僕らに限らず、業種業態を超えて、
すべての個人事業主に共通しているはずです。

確かに政府の救済策は出されました。

でもね、個人事業主を10年以上、
さらにバックパッカーを30年以上もやっていると、
うまい話を額面通りに受け取って飛びつく無邪気さはなくなるものです。

またテイクアウトで減収の補填をというオファーを受け、
実行している店が野方でも何軒かありますけど、
これもほどなく皆さんやめてしまうでしょう。
その理由の説明は長くなるので、またいずれかの機会にお話しますね。

とまぁ、こんなわけで、
ととら亭の休業は、戦略的判断に基づいた作戦であり、
こと僕らに関していうなら、
こうした氷河期のサバイバルに関しちゃエキスパートですから、
大丈夫ですよ。

だってほら、あの時代、威勢のいい恐竜は淘汰されてしまいましたが、
小さなげっ歯類、つまりネズミなんかは生き残れたでしょう?

僕らはリーマンショックの余韻のさなかに独立したんですよ。
要はセコイから生き残れるのです。

えーじ
posted by ととら at 12:45| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記

2020年04月11日

春眠のお知らせ

いよいよ東京も緊張感が高まって来ましたね。

昨日、東京都から具体的な内容の営業自粛要請が出ましたので、
明日から当面の間、ととら亭も昼夜ともに休業することと致しました。

本日のランチは通常通り。
ディナーは昨日までにご予約いただいていたお客さまのみで行います。

現時点では来月はおろか、明日のことすら予測できませんけど、
4月2日にリリースしたばかりのギリシャ料理特集パート2は、
お楽しみ頂いた方も少ないため、
営業再開後に期間を延長しようと思っています。

先は長そうですけど、みんなで耐えましょう!

えーじ
posted by ととら at 10:33| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記

2020年04月09日

入院日記 パート3 その8

やりましたぁ〜っ!

って、このシリーズはこういう唐突な始まり方が多いな?
でもま、本当なんだからいいか。

いや、6日の月曜日、退院後初の検診に行ったのですけどね、
経過は順調で、あの邪魔な大型装具から解放されたのですよ!

左足にまだ体重はかけられないものの、
膝関節は60度まで曲げられるようになりました。
普通に椅子に座れるだけでもありがたい。
また、シャワーの許可が出たので、
傷をカバーすることなく、そのままお湯が浴びられるのです。

え? 今までどうしてたんだ?

それはですね、
スーパー袋の下を切り、さかさまにして膝まで上げ、
上下の部分にガムテープをリング状に貼って防水。
それでシャワーを浴びてたのですよ。

ま、これは手間なだけでしたが問題は出たあと。
ともこが、び〜っとガムテープを剥がすでしょ?
そう、おかげで僕の哀れな左足はリング状のしましま脱毛状態。

おっと、いいことがもうひとつありました。
検診の前日、松葉杖の使い方でブレイクスルーがありまして。
なんと最初は大変だった通勤も、
登りのある往路(約430m)ですら今日のタイムは8分40秒!
初挑戦が15分でしたから、半分近い短縮です。
しかも疲れはその半分以下。
まじめな訓練は報われるものです。

しかし、ここまでの道のりは遠かった!
そのはじまりが・・・

________________________________

「こんにちは、持って来ましたよ」

昼過ぎ、松葉杖を持ったリハビリの先生がやってきました。

「以前に使ったことはあります?」
「いえ、歩行器と車椅子はありますが」
「わかりました。じゃ、これを使って立つところから始めましょう」

僕は頭をデフォルトにフォーマットしました。

初めてのことをする子供に戻るんだ。
相手の言葉に集中し、100パーセント従う。
まずはフォームが大切だ。
ゆっくりやろう。

ベッドに横座りしていた僕は松葉杖を受け取り、
3回深呼吸したあと、ゆっくり腕に力を入れて立ち上がってみました。

「松葉杖は手だけで使うと思っている人が多いのですけど、
 大切なのは脇で固定することです」
「こうですか?」
「そう、体重を掌で支え、杖を脇でしっかり固定して下さい。
 脇からはずれると一挙にバランスが崩れて転倒してしまいます」

なるほど、そいつは気を付けなくちゃ。

「じゃ、僕に貸して下さい。前に移動するところをやってみせますね」

先生はゆっくり松葉杖を僕からよく見えるように持ち、
前に2歩ぶん進みました。
パッと見はとても簡単に思えます。
しかし・・・

「ではやってみましょう」

よ〜し・・・

掌で体重を支え、脇で固定し、体を軽く前に倒して・・・
振り子のように体を振って着地・・・

「いいですよ、もう少し進んでみましょうか」

僕は自分の動きをイメージしながら、
一歩ずつゆっくり病室の外へ向かって進みはじめました。

おっと、こうか? いや、左右のバランスが悪い。
あ、着地が遠すぎるな、もっとショートピッチで!

彼がやったスムーズな動きとはほど遠く、
僕はさながら壊れたR2−D2のようです。

「松葉杖を開く角度は?」
「肩幅よりやや広く」
「フォームはどうです?」
「前傾がちですね、少し胸を張るように、そうそう」
「視線の向け場所は?」
「最初は足元を、慣れてきたら少しずつ先を見るように」

こんな調子でフロアを1周した時には、
額にうっすら汗が浮かんでいました。

ふ〜、慣れていないから結構疲れるね。
でも、大まかな動きは飲み込めたぞ。

「もう1周していいですか?」

僕は目を閉じて呼吸を整え、ゆっくり最初の一歩を踏み出しました。

なんだか初めてスキーをやった時みたいだ。

フォームやピッチなど、さまざまな修正点を意識しながら、
トライアルアンドエラーで少しずつ進みます。

う・・・、着地する右足の踵が痛んできた。
病室用の上履きって買ったばかりで足に馴染んでないんだよな。

2周目が半分にさしかかるころ、
僕はその痛みがだんだん気になって来ました。
そしてもう少しでゴールというところで・・・

「危ない!」

左の松葉杖が脇からはずれ、バランスを崩した僕は一瞬、
手術した左足をフロアについてしまったのです。

いててててて・・・

転倒こそしませんでしたが、
さっきとは違う冷や汗が・・・

「大丈夫ですか?」
「ええ」
「これが一番危ないんですよ」

OK、身をもって理解しました。

「右足の着地はつま先ではなく、踵の方がいいですよ」
「それが踵に痛みがあって、かばってしまって」
「え? ありゃ、血が出てる」
「靴擦れが出来てるのかもしれないな」
「ではベッドに戻りましょう」

ソックスを下げてみれば、
なるほど1円玉くらいの大きさで皮が剥がれ、
血がにじみ出しています。
ナースセンターに行った先生はバンドエイドを持って来てくれました。

そしてしばらく休憩したあと、今度はひとりで練習を再開。

フォームを注意して1周、ピッチを修正しながらまた1周、
視線の位置を変えながらさらに1周・・・

いいぞ、だいぶ動きがスムーズになったじゃないか。
でも靴ずれの他に掌まで痛むのはなぜなんだ?

見れば両掌のグリップが当たる部分に水泡が出来ています。

うへぇ〜・・・血染めのソックスに豆だらけの手ときちゃ、
巨人の星みたいじゃん!

それでも特訓の成果があって、
昨日の遅れをミッション3まで取り戻したぞ。
明日は残るハードル、床からの寝起きと階段の昇降に挑戦だ。
このふたつをクリアすれば退院できる。

to be continued...

えーじ

rehabilieiji.jpg
松葉杖デビュー!
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2020年04月07日

僕の関白宣言

世の中いろんな『宣言』がありますけど、
わが家の場合、今回の退院のタイミングで僕がしたのは、
関白宣言です。

いや、僕は元来リベラリストですので、
男たるもの、女たるものかくあるべし!
なる封建的なイデオロギーは持っていません。

ですから20年以上にわたり、
わが家では『やれる人がやれることをやればいい』が、
暗黙のルールになっているのですよ。

たとえば収入。

ある時はともこの収入で家計の8割以上をまかない、
その逆の時期もあり、
また、ととら亭以降の僕らと出会った方には、
想像できないかもしれませんが、
僕が食事を担当していた時期ですらあるんですよ。

これは仕事のパートナーとなった今でも同じで、
調理とホールという大まかな役割分担こそありますけど、
『これをやるのはあんたの役目』のような職掌的線引きはなく、
相手が迷惑でなければ、
自分が空いた時に遅れた仕事を手伝う。
結果的にその方が早く全体が進みますからね。

ところが!

今回の手術が終わってからというもの、
松葉杖状態の僕は移動が制限されているだけではなく、
手に物を持てないというハンディキャップまであります。

となると、食事をするにも
「いただきま〜す」&「ごちそうさま〜」の『上げ善据え膳』状態ですし、
デスクワークをしている時は、
「ともこ〜、パソコンのACアダプター取ってくれる?」
「あ、それから引き出しの資料もお願いね。
 いやいや、それじゃなくて、その下の赤いバインダーの方」
「喉が渇いちゃったな。お茶淹れてくれる?」

挙句の果てに、

「ともこ〜、靴下履かせて〜」
(足を伸ばしたままなんで手が届かないんですよ)
とか、シャワールームから、
「お〜い、タオル取って〜」
(中から手が届く範囲に置き場がないんですよ)

こうしてとにかく座っているだけという、
明治男も顔負けの関白オヤジとなったのでありました。

しかし、
資本主義の国では基本的に『無料(タダ)』ということはありません。

にっこり笑っておカネをもらった後で、
『なんちゃら復興税』とかいう名目の『請求書』が来たりするのは、
まぁ、よくあることでございます。

で、わが家の場合は・・・

「うふふふふ・・・」

こうした不気味な笑い声が後ろから・・・

えーじ
posted by ととら at 11:18| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記

2020年04月05日

入院日記 パート3 その7

ヨガです。

え? 藪から棒になんだ?

いや、手術が終わってからの僕の生活を例えると、
一番フィットするのがヨガという表現なんですよ。

試しにですね、左足をまっすぐ伸ばし、
いっさい体重をかけずにトイレまで行って、
用を足してみて下さい。

いかがです?

体重のかかる右足は1分もしないうちにブルブル震え、
初心者バレリーナのように上げた左足はももがつりそうになり、
掴まれるものには何でも手を伸ばしてバランスを取っているうちに、
おかしなポーズになってきたでしょ?

これ、本人はしごく真面目なんですけど、
傍から見ると、かなり変です。

そのシリアスコメディは、病院でこんな風に始まったのでした。

__________________________________

ん〜・・・よく寝たな。
あの錠剤の睡眠薬は効き目のわりに翌日まで残らないね。
チューバッカのいびきや寝言に悩まされることもなく、
朝までぐっすり熟睡できた。

じゃ、セルフチェックを始めるか。

僕はベッドに寝たまま体を伸ばし、
左足からコンディションチェックを始めました。

足首は回せる・・・手術した膝の鈍い痛み・・・
これは無視できるな。
開脚は・・・開けるけど・・うっ・・閉じる時に痛いね・・・
でも、できないことはない。

問題は腰だ・・・お・・・大丈夫・・・そうだな?
うっ・・・捻るとピリッとくるか・・・まだ安全装置はかかってない。
でも、すぐ爆発するような状態じゃなさそうだ。

ここで電動ベッドの助けを借りながら上半身を起こし、
僕は両腕をベッドに押し付けて体を浮かしてみました。

お、いいじゃないか、なんとか動けそうだぞ!
試しにベッドに横座りできるかゆっくりやってみよう。

両足を伸ばし、右足を右へ、左足も右へ・・・
って、いててて・・・よ、し動いたぞ、こんなもんか?
次は腹筋に力を入れて体を浮かし、同じように右を向く・・・
OK、いいぞ、ここから体を前にずらせば・・・
ほ〜ら、横座りできた!

ここで大きく深呼吸して意識を集中し、
ふたたび腹筋に力を入れて右足一本で立つ・・・

いぇ〜っ! できたぜ〜っ!
すごいぞ、えーじ!

僕は思わずグリコのポーズ。

って調子に乗ってると危ない。
ふらふらしてるし。一回ベッドに座ろう。

そこへ昨日のスパルタ看護士さんが現れました。

「久保さん、どうですか、腰は?」
「お蔭さまで少し落ち着いたようです。
 そこで車椅子を持って来て欲しいのですが」
「え? 大丈夫なんですか?」
「たぶん。あとでゆっくり試してみますよ」

そうそう、こういうのは自分のペースでやった方がいい。
またにっこり笑って「えいっ!」ってのはゴメンだからな。

そして彼女がいなくなったのを見計らって、
さっきのリハーサルどおり、最初のハードルに挑戦してみました。
すると・・・

おおっ! やったぜ、車椅子に無地着地成功だ!
さっそくこのままトイレに直行しよう。
(トイレに行きたかった!)
まず両方のストッパーを解除して、バックでカーテンを抜け・・・
よし、ここで左に車輪を切って・・・OK、前進だ!

車椅子は腰部椎間板ヘルニアで入院した時に仮免まで行った腕前。
あれから6年経ってるとはいえ、体で覚えた技術は忘れないものです。

廊下で別の患者さんを診ているリハビリの先生が目に入りました。

「あれ、久保さん! 乗れたんですか?」
「ええ、ヘルニアが落ち着きまして。
 いま車椅子の練習中です」
「昨日とはまるで別人のようですね」
「みなさんのお蔭ですよ。それでは後で会いましょう!」

さぁ、トイレに急ぐぞ!
膀胱のキャパメーターがレッドゾーンだ!

そこへ早歩きで看護士さんが追い付き、

「ここまでひとりで来てたんですか!」
「ええ、車椅子は以前、乗っていたことがあるんですよ。
 短期間でしたけどね」
「トイレは分かります?」
「はい」
「中に丸椅子がありますから、そこに左足を乗せると楽ですよ」
「ありがとうございます」

トイレのカーテンを閉めた僕は、
深いため息をつきながら、
膀胱のキャパメーターがブルーゾーンに戻るのを感じつつ、
ふたつの高いハードルを午前中に越えられた達成感にひたっていました。

よ〜し、この調子なら昨日の遅れを取り戻せるかもしれない。
そのためには・・・
今日の午後のうちに松葉杖を使っての水平移動をマスターしなくちゃ。

やれるかな?

to be continued...

えーじ
posted by ととら at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2020年04月04日

入院日記 パート3 その6

ありがとうございます。

退院して6日、
いろいろな方から励ましのお言葉を頂きました。

ほんと、場合によって、
薬より傷を癒すのはひとの気持ちなんだな、
と、しみじみ思います。

また同じ病室で、
僕以上に厳しいコンディションと向き合っていた方々の姿は、
(なかには2カ月以上入院している方も!)
直面した困難に挑む大きな力になったものです。

そして今、業種業態を超えて、
明日の仕事や生活に不安を持つ皆さま。
多かれ少なかれ僕らはみんな同じですよ。

やるべきだったことが、
やるべきではないことに変わった価値観の大逆転。

でもね、どんなに追い詰められた状況でも、
チャンスはどこかにあるものなんですよ。

それを見つけるコツは、
プライドと期待を捨て、既成概念に囚われないこと。

難しそうですか?

いや、これらこそ他人を頼らず、
自分自身の問題として取り組めることなんですから、
(しかもおカネがかからないし)
考えようによっては簡単といえるかもしれません。

僕の人生は不本意ながらスリルとサスペンスに満ちているので、
ピンチは十八番になってしまいました。
(ほんと不本意なんですよ)
そこで、あのイヤなミッションインポッシブルのテーマが聞こえてきた時は、
いつもこの原点に戻ることからはじめるのです。

たとえば今回も・・・

__________________________________

今日は3月26日木曜日。
時刻は21時半。
まもなく消灯時刻です。

僕はベッドに横たわり、天井を見つめながら考えていました。

ふぅ〜・・・
薬のおかげで取りあえず爆発寸前の状態は脱したな。
でも退院に向けたハードルがだいぶ上がっちまった。
今の社会的な状況で、ともこがワンオペをやっているのはマジでヤバイ。
一日も早く帰らなくちゃいけないのに、
この体たらくじゃ泣けてくるね・・・

どうしたもんだろ?
よし、例によって、
超えなきゃいけないハードルを整理するところからはじめるか。

まずミッション1.
曲げることも体重をかけることも出来ない左足の状態で、
安全装置のはずれた腰をケアしながら車椅子に乗る。
いきなりスーパー高難易度だけど、
これをクリアしない限り明日にはおむつになっちまう。
そいつはぜひ避けたいね。

ミッション2は、
この体の条件でトイレに行くこと。
さいわい手術前にトイレは確認済みだから、
全体のイメージトレーニングはここでもできる。

で、ミッション3。
松葉杖を使って水平移動をマスターしなくちゃ。
歩行器と車椅子は経験あるけど松葉杖は触ったこともない。
どんな動きになるか想像もつかないな。

最後がミッション4。
退院してからの生活の前提として、
松葉杖を使って階段の昇降と布団からの寝起きができるようにする。

この4つをクリアしない限り、
退院してもアパートの部屋にすら入れないんだ。
(2階の部屋に住んでるんですよ)

僕は祈るような気持ちで消炎鎮痛剤を含む夜の薬を飲みました。
やがて睡眠薬が効いてきて、
(ふだんは寝つきがいいのですが、ルームメイトがチューバッカがなもんで)
僕は深い眠りに落ちたのです。

そして翌朝、目覚めて体を伸ばすと・・・

to be continued...

えーじ
posted by ととら at 10:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2020年04月03日

入院日記 パート3 その5

昨日のパフォーマンステストの結果、
ホールではまったく機能しなかったものの、
パントリー内であれば片足立ち状態で、
ほとんどの業務はできることが分かりました。
(もちろんスピードは落ちますが・・・)

よっしゃ、これで行こう!

と気合を入れた矢先に、ともこからモノ言いが・・・

「ランチならあたしひとりでもできるから、
 ディナーのちょっと前に出勤すれば?」
「それじゃ大変だろう?」
「あのね、そこでえーじが片足でぴょこぴょこやってると、
 気になってしょうがないのよ!」
「う・・・そう?」
「それにまだ決算終わってないんでしょ?」
「あ、そうだった」
「じゃ、夕方までアパートでそれをやってた方がいいんじゃない?」

ってわけで戦力外通知を受け、
僕は先発ならぬリリーフ選手となってしまいました。
ま、確かに決算も遅れていましたからね。
実はこういうデスクワークも入院中にやるはずだったんですよ。
ところが例によって想定外のことが起こりまして。

それというのも・・・

__________________________________

車椅子に乗るためにはまずベッドに横座りになり、
そこから立ち上がって座面にお尻を向ける・・・

この流れで腰の位置を変えようとした時、

はうっ!

って、・・・こ、これは・・・マジかよ?

腰の安全装置が外れたぞ!
それも爆発寸前だ!

しまった、左足に気を取られていて力技で腰を回すのに、
腹筋に力を入れるのを忘れてた!
こいつはまずいな・・・ビリっときたぜ。
もう一回、無理したらたぶん、そのまま動けなくなっちまう。

(BGM: Theme of Mission impossible)

なんてこった! この音楽はやめてくれ!
まったく、どうして毎回こうなっちまうんだ?

と嘆いていてもしょうがない。
なんとかしなくちゃ。
考えろ。落ち着いて考えるんだ。

そこへ別の看護士さんが現れました。

「久保さん、もうすぐリハビリの先生が来ますからね」
「あ、いやちょっと別の問題が起こりまして」
「・・・? どうしたんですか?」
「僕は腰部椎間板ヘルニアの持病があるんですよ。
 で、リハビリ前にウォームアップしていたら、
 発作寸前の状態になってしまったのです」
「え? 痛いんですか?」
「いや、まだ痛くはないんですが動けなくなる寸前なんですよ」
「まぁ!」
「そこで3つお願いがあります」

僕がそういうと彼女は素早くペンとメモを出しました。

「まず僕が預けた薬の中にトラムセット、ロキソニン、
 テルネリン、ムコスタの4点セットがあります。
 それを至急持って来て下さい。
 あとコルセットを貸して頂けると助かります。
 最後に尿瓶も!」
「分かりました。ちょっと待っていて下さい」

僕はゆっくり体を元の姿勢に戻すと、
そのまま彼女が戻って来るのを待ちました。
ほどなく病室に急ぎ足の足音が近付き、

「久保さん、はい、お薬!」

おお、ありがたい!

僕はその場で薬を飲みました。

「で、コルセットですけど、今これしかないんですよ」

彼女が手にしていたのは僕が緊急用に持ち歩いてるものとほぼ同じ。

「OK、それなら自前の物を持って来ています」
「あと尿瓶。これで大丈夫ですか?」
「ありがとう、これで十分です」

こんな話をしているところへ現れたのがリハビリの先生。

「久保さん、まず今日は車椅子に乗りましょうか」
「いや、先生、ちょっと状況が変わりまして・・・」

僕が経緯を話しているうちに彼の表情が次第に曇り、

「ん〜・・・たしか退院の希望日は・・・
 今度の日曜日でしたよね?」
「はい」
「今日は木曜日・・・この状態で3日後に退院は無理ですよ」

ん〜・・・反論の余地なし。

まずいな、シナリオが狂っちまった。
プランBは・・・

どうする?

to be continued...

えーじ
posted by ととら at 12:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2020年04月02日

入院日記 パート3 その4

今や世界の一寸さきは闇。
それでも始めましょう、

ギリシャ料理特集パート2!

と威勢よく店を開けるのはいいんですけど、
ととら亭も未知の領域に入ろうとしています。

体の動作テストの結果、
僕はホールでまったく機能しないことが分かりました。
昨日もお話しました通り、
松葉杖は腕の全機能を使ってしまうので、
他のことはまったくできないのですよ。
つまり何も手に持てない。

しかしパントリー内であれば、だいぶ速度は落ちるものの、
たいていの仕事は出来そうな気がします。
(今日はその人体実験!)

思えば腰部椎間板ヘルニアの場合は、
店に来ることすらできませんでしたから、
あれに比べたらまだマシなのかもしれませんね。

というわけで、
僕はしばらくスポーティなスタイルで仕事に出ます。

それじゃ本編も始めしょうか。

______________________________

一夜明けると麻酔が切れたせいか傷がうずきだし、
睡眠薬の影響で頭はボーボー。

ほぇ〜、昨日のハイな気分はどこ行っちゃったんだ?
む〜・・・今朝から食事が出るんだったよな。
とりあえず腹ごしらえしたらリハビリの段取りを考えよう。
と、その前に・・・

僕は体のチェックを始めました。

手術をした左足は腿からふくらはぎまで、
膝を固定する装具ががっちりついています。
そこで寝た姿勢のまま足を外側へ開こうとすると・・・

う、足が鉛のようだ・・・あ、いてててて・・・
でもま、少しは動かせたな。
じゃ、もとに閉じれるか・・・
って、いててててて・・・・ぜんぜん動かせないぞ。
おいおい、手術後は痛みがないから、
すぐリハビリが始められるんじゃなかったっけ?

こうして僕が悪戦苦闘しているところにきれいな看護士さんが現れ、

「久保さん、車椅子を持って来ましたよ」

それに乗るの? いま?

彼女の可愛らしい笑顔と緊迫した状況のギャップで僕は凍りつきました。

この状態からあの車椅子に乗り移る?
動きのイメージがまったくできないよ!

たじろいた僕に気付いた彼女はにっこり笑って、

「じゃ、お手伝いしますね!
 まず右足をベッドに下に降ろすでしょ?
 それから手術した足を外側にずらして・・・」

そう言いながら彼女は僕の左足をむんずと掴み、
ベッドの外へ向け始め・・・

いやおぅっ!ちょぉぉぉっとまったぁぁぁぁぁ!
「え? 痛いですか?」
たたたたたんま!たんま!たんま!」

彼女はきょとんとこちらを見つめています。
僕はほぼ思考停止状態。

「ああ、最初は足の重みで下に下がると、
 いたぁ〜いってなることがあるんですよね」

Y...Yes I am...涙でてきた・・・

「じゃ、もう一回」
「あ、いやいやいや、ちょっと待って、心と体の準備がまだなんで。
 もうちょっと後でいいですか?」
「ええ、慌てなくてもいいですからね」

さ、さんきゅ〜べりまっち・・・

「それじゃ後でリハビリの先生に来てもらいましょう」

ふ〜・・・驚いた、冷や汗かいたぜ。
荒っぽく始まるじゃないか。
それならそれでこっちも動作イメージを考えればいい。
ベッドの右側に車椅子がある。
左側だったら楽なんだけどな。
どうしたもんだろ?
最初はベッドに腰をかけて・・・
そこから右足だけで立ち上がり、体を右に90度転回する。
そしてゆっくり座る・・・だな。
問題は痛む左足をどうやって座る姿勢まで持って行くか・・・だ。

じゃ、リハビリの先生が来る前に、立ち上がるところまでやってみるか。

まず右足を開いてひざ下をベッドから降ろし・・・
そうそう、次は左足を両手で補助しながらもう少し右側に寄せて・・・
いてててて・・・ま、こんなもんかな?
で、次は両手をベッドに突っ張って体を持ち上げ、
腰を右に回転・・・

はうっ!

って、・・・こ、これは・・・マジかよ?

to be continued...

えーじ
posted by ととら at 11:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2020年04月01日

入院日記 パート3 その3

今日は僕も在宅勤務です。
朝からアパートにこもり、
せっせと明日から始まるギリシャ料理特集パート2のメニュー作り中。

え? ととら亭もついにコロナウイルス対策か?

もちろん!

と、言いたいところですが違います。

今日の関東地方は終日雨でしょう?
両腕で松葉杖を使っていると傘がさせないんですよ。
腕は3本ないんでね。
となれば、ポンチョを着て行くしかない。
そこまでしなくてもデスクワークならアパートでもできます。

そんなわけで、ともこはお店で仕込み、僕はアパートで分業中。
食事は彼女にケータリングサービスを頼みました。
(すまんのう・・・)
いかんせん、持てないのは傘だけではなく、
歩けてもコーヒーカップひとつ運べないのですよ。
(昨日試したらだいぶこぼしました)
ん〜・・・困ったもんだ。

とまれ工夫をすれば松葉杖を使っても何かできることはあります。
そこは明日お店で考えるとして、本編に戻りましょうか。
_____________________________

「えーじ! えーじ!」

・・・ん?

「えーじ! えーじ!」

・・・うりょ? ともこが呼んでる?

「えーじってば!」

お? あれ? ここは? 病室に帰ってる。
ああ、手術が終わったのか?

「えーじ! 大丈夫?」
「ああ、痛みはないよ。ぐっすり眠った朝みたいで、なんか気分がいいな」

そう、バイクの事故で手術された時は、
目が醒めると頭はガンガン、視界はムンクの絵みたいにグニョグニョ、
喉はカラカラで上半身は包帯グルグル巻きのミイラ状態。
おまけにナースコールのボタンには手が届かず・・・
僕はかすれた弱々しい声で、
「お〜い、誰か〜・・・すんませ〜ん、お〜い、誰か来て〜・・・」
と助けを呼び続けたのでした。

それが今回はどうでしょう。
痛みがないどころか体がぽかぽかして Feel so good!

「早く終わった?」
「ううん、2時間半くらいかかったよ」
「そんなにかかったんだ? 僕は主治医の先生が来る前に意識を失ってたよ」
「黒縁のメガネをかけた先生?」
「そう」
「わたし説明を受けたよ。なんの問題もなく終わったって」
「それだけ?」
「うん、半月板の傷の場所とか教えてくれたけど、
 話は5分もかからずさらっと終わり」
「じゃ、本当に成功だったんだよ」

時計は15時過ぎ。
ともこはととら亭に戻ってディナー営業の準備に入りました。
僕の左足は腿から足首まで大きな装具で固定され、
他にもチューブやら電極やらがペタペタ張り付いたまま。
痛みや不快感こそないものの、ベッドに寝転がった状態でほとんど動けません。

そうか、明日まで食事も水もなしだったな。
う〜ん・・・

そこで看護士さんを呼び、

「すんません、明日まで何もやれることがないんで、
 睡眠薬を点滴で打てます?」
「そうですよね、じゃ、ちょっと待ってて下さい」

まもなくリンゲルや抗生物質の点滴に、
睡眠薬の小さな別のパックが接続されました。

麻酔や睡眠薬って、眠くなるというより、
すこんと意識がなくなるんだよな。
これはどうだろ?
薬が流れ始めて5分くらい経ったかな。
まだ何も変わった感じはし・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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こうして僕は1日で2度目の気絶となったのでございました。

to be continued...

えーじ
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2020年03月31日

入院日記 パート3 その2

昨日、「予定通り帰って参りました!」
と言ったものの、
これは残念ながら「元通りになりました!」
を意味するわけではありません。

そう、この長いストーリーの第1章が終わったに過ぎないのです。
それを今から1時間半ほど前に、僕は身をもって体験しました。

アパートからお店まで松葉杖を使いながら来たのですけどね、
普段なら5分もかからない道程に実測14分40秒もかかったのですよ。
加えて疲労は3倍ならぬ10倍以上!
さながら湿った雪の平地を、
スケーティングで同じ時間すべったのと同じくらいへたりました。
ですからこの寒さにもかかわらず、お店に着いた頃には額に流れ落ちる汗。
どおりで病院ですら松葉杖をつく年配の患者さんを見かけなかったわけです。
これで100メートル以上移動するのは現実的じゃありませんね。

さて、今朝のお話はこれくらいにして、
昨日の続きを始めましょうか。

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翌日は手術。

時間は前の手術が終わり次第ってことで、
はっきり決まっていません。
とはいえ2番目らしく、たぶん11時半頃ではないか、との説明。

僕は朝から絶食です。
8時を過ぎたら水も飲めないので、
早くやってくれないかしらん? と思っていましたが、
9時頃から始まった点滴のせいか、空腹も喉の渇きも感じません。
やがて時計が10時を回ったころ、看護士さんが現れ、

「11時10分開始になりました。10分前に迎えに来ますね」

OK。
それまでに僕がやるのは手術着に着替え、
加圧ソックスを手術しない方の足だけ履き、
トイレに行っておく・・・だけだな。

ともこが手術前に間に合いました。

「がんばってね」
「ああ、大丈夫だよ。
 今回は気楽なもんさ、僕は寝ているだけだからね」

ほどなくして看護士さんが戻り、

「では行きましょう!」

・・・? って歩いて行くの?

そう、見送るともこをエレベータホールに残し、
僕は点滴を片手に看護士さんと2階の手術室へ降りました。
ドアが開くそこは、SF映画に出て来る、
マッドサイエンティストのラボのような空間。
いろいろなライトがピカピカし、
機械の動作音が独特なリズムを刻んでいます。

お〜、なんかサイボーグに改造されそうだな。
盛り上がって来たぜ。

麻酔科医や看護士の紹介を受けるとすぐ僕は手術台へ。
横になったらすぐ、
体の上に薄いエアマットのようなものを被せられました。
これがほんのり暖かくて気持ちいい。

ほえ〜、なんか近未来エステみたいじゃん。
オイルマッサージが始まりそうだ。
ってなどうでもいい妄想はここまでにして、

「麻酔はどうやるのですか?」
「点滴からの麻酔で意識がなくなります。
 それ以降はマスクからの麻酔でその状態を維持するのです」

へぇ〜、なるほど。

なんて思っているとマスクが付けられ、

「これは酸素です。ゆっくり深く吸って下さい」

以前手術された時もこうだったっけ。
なんかアルコールっぽい臭いのするガスを吸っていたら、
2回目に吸った息を吐いた記憶がなかった。

今回はどうだろう?

1回・・・、2回・・・、3回・・・あれまだ効かないね。

4回・・・、5回・・・、6・・・
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to be continued...

えーじ
posted by ととら at 11:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記