2019年05月06日

ととらな旅のおすすめ その5 最終回

スーパーゴールデンウィークもいよいよ佳境。
皆さんはどんな休暇を楽しんでいましたか?

ととら亭でもいろいろな旅の話を聞いています。
人によって行き先や目的、そしてスタイルはさまざま。

旅のグレードに訪れる場所やそこまでの距離は関係ありません。
地球の裏側まで行くとなれば、
誰もがそれを旅と呼ぶかもしれませんが、
日帰りで近くを歩いてみることだって、
場合によっては同じことだと僕は考えています。

では、ととら流の旅の定義とは何か?

それは自分にとって未知の領域へ、
主体的にアクセスすることなのですよ。

そこで『その1』から4回に分けて、
そうした旅のコツをお話していたのですが、
実はその裏側にディープな理由がありまして。

この仕事を9年余りやっていて何度となく残念に思ったのは、
『旅人が思い出をなくしてしまう』という、
一種不思議な現象でした。

たとえば、多くの旅行経験を持っている人が、
自分で行った旅のディティールを思い出せない。

もちろん僕だって、
すべてのことを克明に記憶している訳ではありませんが、
訪れた街の名前や何を食べたかすら覚えていないというのは、
旅の最高のお土産がその思い出だとすると、
結構シビアな問題だと思いませんか?

解決のヒントをくれたのは、ひとりのご婦人でした。
彼女もまた旅行経験が豊富な方ですが、
「やぁ、ローマはいかがでしたか? ニューヨークは?」
と訊いても、それほど前のことではないにもかかわらず、
どうも答えが曖昧になりがちだったのです。

しかし例外的に、
彼女がはっきり反応する話題がふたつありました。

それはトイレとイミグレーション。
このふたつは対称的にディティールまでよく話してくれます。

なぜだろう?

僕はしばし考えていました。
そして思いついた説明がこれ。

至れり尽くせり型ツアーでも、
トイレとイミグレーションだけは自分ひとりでやらなければならない!

添乗員付きのツアーでは、
出発地の空港に着いて集合場所まで行った後は、
すべからく甲斐甲斐しいツアコンさんが面倒を見てくれますが、
先のふたつはだけは彼女も主体的にやらざるを得ません。
結果的に、それが記憶に残ることとなったのです。

さて今回、僕がお勧めしたのは、
場所、移動、食事、会話についてのティップスでした。
でも実のところ本当に言いたかったのは、
それらすべてに共通する、
『コミットメント(主体的な関与)』だったのです。

旅行産業がとことん発達した現今、
極端に言えば、渡航先の知識がまったくなくても、
ツアーを申し込み、
あとはパスポートとクレジットカードさえ持って空港に行けば、
秘境ツアーにだって参加できますし、
旅先で困ることもほとんどないでしょう。

しかし、旅そのものにコミットしないのであれば、
逆の意味で地球の裏側に行くことも近所の公園に行くことも、
記憶に残らないという点では同じなのです。

僕がお勧めした例は、ほんの一部に過ぎません。
旅の空間ではコミットできるチャンスが無数にあります。
そのすべてにとっかかるのは現実的ではなくても、
1日にひとつかふたつでもコミットすれば、
その旅はツアコンさんの背中を追い続けたものより、
少なからず豊かなものになるのではないか?

これは個人旅行でも2人以上で行くのなら、
相手まかせにしてしまうとまったく同じことが言えます。

ときに人生が旅に例えられるように、
僕たちの日常もまた、コミットしないのであれば、
誰のものともつかないものになってしまうでしょう。

受け身の指定席から立ち上がり、自分自身の記憶に残る体験の世界へ。
そう、広大なこの星へのコミットメント。

それを僕は旅と呼びたい。

Let's dive into the unknown future by wings of free will.

えーじ

End
posted by ととら at 16:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2019年05月03日

ととらな旅のおすすめ その4

ひとり旅。
ふたり旅。
そしてグループ旅行。

みなさんもご存知のとおり、
旅の経験の質には人数がとても大きく影響します。

では、ひとり旅とふたり以上の旅における最大の違いとは何か?

僕の個人的な経験から申しますと、
それは『他人との会話量』です。

たとえばひとり旅とグループツアーの差を考えてみて下さい。
いつも隣に話し相手がおり、道に迷うこともまずない旅で、
他人に話しかける機会がどれくらいあります?

逆もまたしかり。

ローカル側から話しかけてくる場合でも、
ひとり旅 > ふたり旅 > グループ の順に少なくなるのは、
話しかけやすさを考えれば当然ですよね?

次にもうひとつ質問です。

旅で最も記憶に残ることとは何か?

これまた僕の経験から申しますと、
人との出会い。
これに尽きます。

もちろん美しい風景に惹かれて僕も旅をしました。
広大なサハラ砂漠、突然目の前に広がったマチュピチュ、
森厳なアンコールトム、青空とのコントラストが美しいパルテノン・・・

しかし美しい青の街、ウズベキスタンのサマルカンドですら、
不思議なことに後になって思い出すのは、
荘厳なモスクやマドラサ(神学校)ではなく、
愛らしい子供たちや親切な市場の売り手たちとの出会いなのです。

そんなわけで今回のおすすめは、会話。

あ、また眉間にしわを寄せていますね?

英語は話せないって言ったじゃないか?

では僕ももう一度、断言しましょう。

心配はいりません。

大体にしてですね、
『英語は世界語』なんてのは風説もいいところなんですよ。
もし本当に世界中で標準化されているなら、
僕もここまで苦労はしませんでしたからね。

たとえば、そう、あれは2002年5月のこと。
僕たちはベトナムからカンボジアにかけて、
陸路で国境を越えながら旅をしていました。

あの時も、ともこがプノンペンに滞在中、熱を出してダウンし、
僕はひとりでモニボン通りへ夕食を食べに出かけたのです。
そこで入ったのは、よくある華僑系の中華料理店。
扉を開けて入れば、これまたフツーのお店。
しかし夜の7時過ぎにもかかわらず、お客さんは誰もいません。
僕はホールの少女に挨拶して端のテーブルにつきました。

あれ? メニューは?

店の奥には4人の少女がいます。
僕がキョロキョロしているのを察したのか、
そのうちの一人が中国語で書かれたメニューを持って来てくれました。

なるほどね。
でもみんな中華系ではなくカンボジア人だな。
さて、何を食べようか?
お腹が空いたから麺ものとご飯もの1品ずつがいい。

僕は手を挙げてホールを呼びました。
すると今度は別の少女が来たので、
ダメもとの英語で話しながら指差しオーダー。

ここまでは良かったのです。

料理が来るまで本でも読んでようかな?
と思った僕がふと顔を上げると、
4人の少女たちが揃ってこっちにやって来るじゃないですか。

ん? なんだ? どうしたんだ?

彼女たちは愛らしい笑顔を浮かべています。
推定年齢はみな18歳前後でしょうか。
そして本当のサプライズはその次です。
僕がハト豆な顔をしているのを尻目に、
彼女たちは僕を囲むようにして座り出したのですよ!

え、ええ? なにこれ?

至近距離に腰かけた少女4人が、
僕をじっと見つめながら微笑んでいます。
しかも何も喋らずに。

「あ、あ〜、君たち。英語は話せるかい?」

し〜ん・・・

今度は日本語で、

「OK、僕はクメール(カンボジア)語が話せないんだ。
 僕の言っていること分かる?」

し〜ん・・・

彼女たちは時折お互い顔を見合わせてくすくす笑いはしますが、
言葉は何語にせよ、いっさい話しません。
僕との距離はみんな約1.5メートルほど。
店内には僕ら以外、誰もいません。

おいおい、こりゃなんだ?
風俗店? じゃないよな?
うん、どこから見てもここは中華料理屋だ。
彼女たちもフツーの格好だし化粧もケバくない。
しかし、このシュールなシチュエーションはどう説明がつく?

そうこうするうちに、ふと一人が立ち上がって店の奥に行くと、
僕が注文した料理を持って来ました。

お、料理が来たか、
あれを置いたらみんな離れて行・・・かないじゃん!

そう、料理が来たのはいいのですが、
みんなさっきのまま、座って僕をじっと見ているのです!
しかもいまだ一言も喋らずに。

分かります?
この思考停止の緊張感。

「あ〜、君たち。お腹空いてるの?
 一緒になにか食べるかい?」

し〜ん・・・

「そ、そう? いらない?
 じゃ、失礼して、食べ始めてもいいかな?」

し〜ん・・・

彼女たちは変わらず、にこにこしながら僕を見つめています。
たった1.5メートルの至近距離で。

僕はこの無言のニコニコ攻撃についにキレました。
といっても怒ったのではありません。

「いただきま〜す!」

と大きな声で言ったあと、おもむろに食事を始め、
イッセー尾形氏のひとり芝居よろしく、食べながら自己紹介を始めたのです。

もぐもぐもぐ・・・

「やぁ、僕の名前はえーじ。日本人だよ。
 東京に住んでてね。仕事はシステム関係(当時)のことをしてるんだ」

もぐもぐもぐ・・・

「あ、このチャーハンは美味しいなぁ!
 汁ソバもいけるじゃないか。
 でね、今回、ワイフと一緒にベトナムから旅して来てさ」

もぐもぐもぐ・・・

こうなったら僕も長年の旅で神経戦には長けているつもりです。
相手が黙っているならこちらはしゃべり続けてやろうじゃないですか。
こうして15分から20分間ほどが経ち・・・
(僕には1時間以上に感じましたけど・・・)

「ふぅ〜、おいしかった! お腹いっぱいだ。
 それじゃお会計してくれる?」

そういうと、ひとりが金額だけ書いた紙片を持って来ました。
こうした反応を見るかぎり、
あながちまったく意思疎通が取れていない訳でもなさそうです。
加えて安心したのは、ガールズバーよろしく、
ぼったくりな追加料金が上乗せされていなかったこと。
細かい値段は忘れてしまいましたが普通のカンボジア価格でした。

「ありがとね! ごちそうさま! バイバ〜イ!」

彼女たちがドアまで出てきて手を振っています。
そう、あの愛らしい笑顔を浮かべて例の無言のまま・・・

あの夜の出来事がいったい何だったのか、未だに僕は分かりません。
しかし、共通言語がなくても、
こうして『コミュニケーション』はとれるんですよ。
そしてなにより17年の年月が流れても、
こうした経験は色褪せないものです。

というわけで日本語しか話せなくても大丈夫、
グループツアーでも買い物や食事の時に思い切って『お話』してみましょう。
きっと世界遺産の風景以上に、
あなたの旅のハイライトになりますよ!

to be continued...

えーじ
posted by ととら at 12:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2019年05月01日

ととらな旅のおすすめ その3

あなたにとって旅の楽しみとは何ですか?

こう訊かれて「おいしい食べ物やお酒!」
と答える人は少なくないでしょう。
それを目的にした『美食ツアー』だってあるくらいですからね。
そもそもととら亭だって、
そうした楽しみ方から始まったようなものですし。

しかし残念なのは、
これまた多くの人に「では何がおいしかったですか?」と訊いた時、
答えが「ん〜・・・あれ? なんだったっけ?」となってしまうこと。

そう、おいしかった記憶はあるのですが、
それが何処で食べた何だったかは覚えていない。

なぜか?

たぶん、ご自分で注文しなかったからでしょう。
上げ善据え膳式の食事の内容が長く記憶に残ることはまずありません。
でも旅の最高のお土産が『思い出』だとしたら、
はるばる外国まで行ってこんなにもったいないことはないと思いません?

そこで今回のおすすめは、
『料理やお酒は自分で注文する』です。

あれ、急に顔色が曇りましたね?
外国の言葉は何も話せないし、メニューも読めない?

それでは断言しましょう。

心配には及びません。

コツはただひとつだけ。

それは『柔軟な発想』です。

20数年前、僕はとある縁から、
ハイティーンの男の子二人を連れてタイに行ったことがありました。
彼らはいずれも初の海外旅行。
とうぜんタイ語はおろか英語も「あい・あむ・あ・ぼーい」状態。

しかしまがりなりにも一種のスタディツアーですから、
ひな鳥よろしく、
最後まで僕がなんでも口に入れてやるわけにはいきません。
そこである朝、ロビーで・・・

「おはよう。今朝は君たちに任務を与える。
 ミッションはシンプルだ。
 これから外に出かけて朝食を食べてきたまえ。
 ルールはひとつだけ。
 ふたりとも別々の店に入ること」

ほらほら、彼らの表情に漂う緊張感・・・
それでも腹を決めたのか、じゃんけんをすると、
勝った方が先にホテルを出て右に曲がり、
負けた方はその逆の左に曲がって行きました。

そして30分ほどが過ぎ、
ホテルのラウンジでコーヒーを飲んでいる僕のところへ、
顔を輝かせた彼らが戻り、

「どうだった?」
「うん! 食べて来たよ!」
「OK、どうやって注文したの?」
「オレは他のお客さんが食べてるのを指差した」
「僕はメニューを適当に指差した」
「何を食べたの?」
「サンドイッチ」
「君は?」
「焼きそばみたいなやつ」
「ああ、パッタイね。で、美味しかったかい?」
「うん!」

彼らが覚えていたタイ語は、
サワディーカップ(こんにちは)とコップンカップ(ありがとう)だけ。
それでもこうして食事を楽しんで帰って来ました。

あれから20数年が過ぎましたが、
僕は確信していることがひとつだけあります。

それは彼らがあの旅で、
僕が注文したものは殆ど覚えていないだろうけど、
あの日の朝食だけは、けして忘れないだろうということ。

ちなみに中南米を3カ月旅した時、
ともこが覚えた最初のスペイン語のフレーズは、

Cerveza,por favor!
(ビール下さい!)

でした。

to be continued...

えーじ
posted by ととら at 15:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2019年04月29日

ととらな旅のおすすめ その2

旅の移動方法の基本は徒歩。
飛行機で移動するにしても鉄道を使うにしても、
歩くことなくして旅は成り立ちません。
そこで最初にお勧めしたのが地図を使って、
地理的なイメージを持つことでした。

自分がどんな場所に居て、
どう移動しているのかを主体的に把握することは、
ある意味で旅の基本でもありますからね。

そこで次にお勧めしたいのがローカルな交通手段の利用です。

すべて手配された自動車で移動するのはもちろん楽ですが、
それだけではなかなかその土地の素顔の人々と出会うことができません。
でも、そんなチャンスを簡単に得られるのが、
バスやローカル鉄道なのですよ。

僕はみんなが余所行きの顔をしている空港より、
市井の駅やバスターミナルの方が好き。
その待合室でマンウオッチングしていると、
いろいろなドラマが楽しめるからです。

娘や息子を見送る親、
別れを惜しむ恋人たち、
お土産をたくさん持って出かける家族・・・

今年の1月に行ったエジプトでは、こんなことがありました。

ナイル川のローカル渡し船に乗っていた時のこと。
オートバイを乗せた男性が下船しようとしてバランスを崩し、
あわや川へ転落! という瞬間、
近くにいたハイティーンの少年たちがさっと駆けつけ、
男性を助けはじめたではないですか!

僕らがはらはらしながら見ているうちに、
後と左右から支えられてオートバイの男性は危険な一本橋を渡り、
なんとか無事に岸へ上がれました。
それにしても驚いたのは、彼に礼を言う間も与えず、
少年たちが風のように去ってしまったことです。

また、駅のホームではこんなことがありました。

僕らが列車を待っていると、
ベンチに行儀悪い姿勢でふんぞり返っている二人の若者に気付きました。
こうしたハイティーンはどこにでもいるものです。
ところが彼らの近くに年配のご夫婦が通りかかるやいなや、
二人の若者はさっと立ち上がって席を空けたではないですか。
そしてまた礼を言う間も与えず歩き去ってしまったのです。

困った人がいれば助ける。
その見返りは求めずに。

そうムスリムたちが教えられているという話は本当でした。

こうした光景はけしてガイドブックに載っていませんけど、
いつまでも記憶に残る旅のハイライトになると思います。

そう、素顔の街へのアクセスは、
ローカル鉄道やバスが一番なのですよ。

to be continued...

えーじ
posted by ととら at 17:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2019年04月27日

ととらな旅のおすすめ その1

さぁ、始まりました10連休!
今頃、このブログを旅先で読んでいる方もいらっしゃるでしょうね。
そこで今日から数回に分けて、
『ソロの個人旅行以外』で旅をしている方に、
ととらっぽいリコマンドをしたいと思います。

え? なんで『ソロの個人旅行以外』なのかって?

というのも、これからお勧めすることは、
ソロの個人旅行なら当たり前というか、
避けて通れないことだからなのですよ。

それでいて『ソロの個人旅行以外』だと、
たとえそれが『個人旅行』であっても必須ではなくなります。

しかし必須でないからと言って、けして無駄や無意味ではありません。
いや、むしろ旅の密度を上げるにはとても効果的なことだからこそ、
ぜひこの機会にお勧めしたいな、と思いまして。

じゃ、まずこれから行きましょう。

地図です。

訪れる国や街の地図を広げて、
これから旅するルートをトレースしてみてください。

地図を使い慣れていない方にはとっつき難いかもしれませんが、
コツは基準点を設けることです。

たとえば国であれば首都、街であれば広場や駅などがいいでしょう。
そこを中心に移動するルートをトレースすると、
頭の中に旅の空間がだんだんイメージできてきます。

もう一つのコツは現地で方角とイメージを一致させること。
地図の上下左右は一般的に東西南北と対応しています。
(上が北。ずれている場合は地図の中にコンパスの絵が描かれており、
 矢印が指し示してあるかNと書かれている方が北です)

最近はスマホのアプリにもコンパスがありますから、
旅先でコンパスが指し示す北へ地図の上辺を向けて、
実際の風景とイメージを重ねてみて下さい。

どうです?
GPSを使わなくても自分がどこにいるのか分かりましたか?

これを移動中に何度かやるとですね、
初めて訪れた街でも迷うことが減ってくるだけでなく、
効率的な移動ができるようになるんですよ。

あ、忘れちゃいけない注意がふたつありました。

旅先で移動中に地図を見る時は、
脇に寄るなどして建物を背にして下さいね。
道の真ん中でやると往来の妨げになりますし、
何より後ろから引ったくりに遭う可能性があります。

それから地図を使ってのオリエンテーリングは、
スマホのナビゲーションとはまったく別物です。
スマホの画面を見つめながら歩いても、
目的地には『効率的』に着くかもしれませんが、
それ以外には、はっきり言って何の意味もありません。
いや、むしろ百害あって一利しかないでしょう。

試しに二つのやり方を試してみて下さい。

後日、歩いた道を思い出そうとすれば結果は歴然ですよ。
なぜならオリエンテーリングで歩いた道以上に、
ナビゲーションに頼った道を思い出せることはまずありませんから。
それじゃ旅がもったいない。

さぁ、前置きはこれくらいにして、
歩き始めましょう!

to be continued...

えーじ
posted by ととら at 15:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2019年04月25日

連休狂騒曲

ゴールデンウィークまで2日。

大型連休中の交通機関や観光地の恐るべき混雑は、
誰もが知るところですけど、
それが『始まる前から始まっている』のを体感しているのは、
特定の業界に限られているような気がします。

それは1カ月のあたりの業務量が決まっている仕事。
休みが多ければ多いほど、
営業日の仕事量にそのしわ寄せが行ってしまうんですよね。

一昨日、病院の帰りにいつもお世話になっている調剤薬局に寄ると、
普段にこやかな薬剤師さんたちは額に汗して大わらわ。
(あ、椎間板ヘルニアではありませんよ。
あれ以外に左手の関節炎やら左ひざの靭帯の痛みなどで、
故障だらけなのでございます)

それもそのはず、薬局が1週間以上休むとあって、
患者さんたちが事前に集中してしまったのです。

当然、その上流にある病院も同じ。
病気や怪我は人間の休みに合わせてはくれません。
待合室ではベンチに座れない患者さんが立って待っていました。

この騒ぎは僕たち飲食業界も例外ではなく、
繁忙期を前に大量の仕込みをするのはいわずもがな、
業者さんたちが休んでいる間に必要な食材を、
事前に調達しなければならないのです。

え? それなら発注すればいいだけだろう?

いやいや、そう簡単な話ではないのですよ。
とりわけ世界有数の坪家賃で汲々と営業している狭小店舗では、
そもそも在庫の置き場がないのです。

というわけで、
ととら亭ではまず置き場所づくりの断捨離から始めました。
ベンチシートの中を重点的に片付けて、
ワインや乾物系のストックスペースを作るのです。

中でも今回スペースを取っているのが、
ととら亭で春から夏の風物詩ともなったヴィーニョヴェルデ。
この時期の一番人気とあって連休中の欠品は許されませんからね。
特に今年は僕らがリスボンで飲んだ思い出のヴィーニョヴェルデが入荷したり、
レアな赤まで手に入ったので、置き場も考えずどっさり確保しました。

ヴィーニョヴェルデフェア2019

こうして連休が始まる前からととら亭も盛り上がっています。

え? そんなに飛ばして13日間連続営業は大丈夫なのか?

あ、そうでした。

だいぶポンコツ化してきているので、
体力温存で行きたいと思います。

えーじ
posted by ととら at 16:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2019年04月23日

超ゴールデンウィークのの営業

超大型連休に向けて秒読みの段階に入りました。
皆さんはもう準備万端整っておりますでしょうか?

ととら亭でもいろいろな休暇の過ごし方を聞いています。

「10連休をフルに使って海外へ。
 どうせなら1週間では行き難い南米やアフリカ南部!」
「いやいや、アジアやヨーロッパの国をじっくり掘り下げに!」

そんな強気の声を聞きながらも、

「値段を聞いて諦めました。
 近場でのんびりしています」

という方が少なくありませんね。

確かに僕らの旅費相場から言っても、
「ちょっと高いけど、それって二人分だよね?」
「いいえ1人分です!」
な価格が飛び交っています。
まぁ、カレンダー通りでしか休みが取れない方は、
耐えがたきを耐え、忍び難きを忍ぶしかないのも無理からぬ話。

そのせいか折衷案も結構ありました。
休みの前半に3〜4泊程度でアウェイに出かけ、
後はホームでのんびり。
意外とこのプランCが一番多いみたいですね。

さて、かくいう僕らはどうかと申しますと・・・

blackweek2019.jpg

じゃ〜ん、ご覧の通り!
一般的には『ゴールデン』ウィークですが、
冥府魔道の飲食業界に属するととら亭は、
字義通り、13日間連続営業の『ブラック』ウィークなのでございます。

ちなみにここまでの連続旗日は、
僕らもこの仕事で経験したことがありません。
となると、どうなるかも予測できないのですよ

たぶん、
極端に混む日とヒマな日が入り乱れるのではないかな?

そんなわけで、
混雑した日にせっかく来て頂いたお客さまを、
入り口でお断りするのは僕らも悲しいので、
できましたら事前にご予約を頂けますと助かります。

よろしくお願い致します。

えーじ
posted by ととら at 13:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2019年04月19日

第17回取材旅行番外編 その6 最終回

「ともこは先に部屋へ帰って休んでて。
 僕は薬局で薬を手に入れてくるよ」

ホテルのロビーまで戻った僕らは、
ほぼ最後の気力を使い果たした状態でした。
しかしまだこのミッションが終わったわけではありません。
いや、むしろ治療という点では何も手が付いていないのです。

さぁ、ラストタスクだ。
まず薬局を探さなくちゃいけないんだけど、
英語が話せる彼女は・・・いないんだよね。

僕はフロントカウンターの中から心配そうな面持ちでこちらを見つめる、
朝番のおじさんと目が合いました。

「さっきはありがとうございました。
 病院へ行って来ましたよ。
 で、次は薬局に行かなければなりません」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ダメか。

「僕は 薬局(pharmacy)に 行きたいです」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

え〜っと、何て言えばいいんだ?

トゥヴァレット ネレデ?

ちがう! それじゃ「トイレはどこですか?」だ!
む〜、ファーマシーはトルコ語で何て言うんだろ?
頭がぼ〜っとして意識を集中できない。

Think,Think,Think,Think....

あ、そうか!

僕は処方箋を取り出し、彼にそれを見せながら、

「ネレデ?(どこ?)」

すると彼は即座に窓の外を指差したではないですか。

え? このホテルの前?

またここからタクシーに乗って、
どこぞまで探しに行かなければならないと覚悟を決めていた僕は、
嬉しさのあまり彼をハグしたくなりました。

しかし喜び勇んで表に出た僕の目に飛び込んできたのは、
バケツや洗剤を並べた雑貨店とメガネ屋の2軒だけ。

はぁ・・・マジですか。
今度は誰に訊けばいいんだ?
ん〜・・・もしかしたら左の雑貨屋が薬も置いているかも。
んなわけないか。
と決めてかかってもしょうがない。
ダメもとで訊いてみよう。

「メルハバ(こんにちは)」

店に入った僕は初老のご主人に処方箋を見せながら、

「この薬はありますか?」

って英語は通じないよね。

しかしご主人は処方箋を手に取って内容を読むと、
トルコ語で何かを言いながら隣の店の方を指差しています。

え? そっちはメガネ屋じゃん。
はぁ・・・マジですか。
OK。分かったよ。
こうなったら行けと言われれば何処へだって行くぜ。

僕はメガネ屋に入って雑貨屋と同じアプローチを試みてみました。
すると右側のカウンターにいた若い男性は雑貨屋の方を指差しています。

あっちへ戻れ? おいおい、ここでループかい?

と天を仰ぎそうになりながら左側を見ると・・・

え? あれはまさか!

なんとこのメガネ屋の左側には、小さな薬局が併設されていたのです!

意味が通じていなかったわけじゃなかったのか。
ふぅ〜、やっとここまで来たぜ!

僕は薬局側のカウンターにいたお兄さんに処方箋を渡しました。
予想通りこの店の人たちは誰も英語を話しませんでしたけど、
トルコ語で書かれた処方箋があれば問題はありません。
お兄さんは薬の並ぶ棚から三つの小箱を取り出して僕の前に並べました。

彼も当然、僕がトルコ語を話さない外国人だと分かっています。
そこで彼はレジ横にあったパソコンのディスプレイを僕から見える角度に調整し、
ブラウザを立ち上げて、

ん? なるほど翻訳サイトか。

彼がトルコ語をタイプして変換すると英語になります。
ひとつの箱を僕の前に置き、

morning, after, breakfast, one
evening, after, dinner, one

表現はただの単語ですが、意味を汲むだけなら十分です。
僕が箱に書きとめるのを待って彼は次の箱を前に置きました。
同じように飲み方を説明し最後の箱が終わるとここだけ英語で、

「OK?」

料金は日本円にして全部で850円ほど。
思ったより大分安くて助かりました。
支払いが済んだ僕はやっと手に入れた薬の箱を手に出口へ。
というところで後ろから薬局のお兄さんの声が。
戻ってみればディスプレイに1行の英文が表示されています。
それは、

Get better soon.(すぐ良くなりますよ)

薬局のお兄さんと、
このやり取りをずっと見ていたメガネ屋のスタッフの笑顔に見送られて、
僕は店を出ました。

よし、ゴールは目の前だ!

「ただいま」
「あ、えーじ? 大丈夫?」

ともこはベッドの中で丸くなっていました。

「薬を手に入れたよ。
 おっと、その前にさっき病院で買ったシミットを食べよう。
 食堂でチャイをもらって来るよ」

時刻はもう14時半。
朝からほとんど飲まず食わずだったお腹に熱いチャイが沁みます。
この時食べたシミットの美味しいことといったら・・・

「さぁ、薬を飲もう。時間は中途半端だけど問題ない。
 いまなら解熱剤と咳止め、胃薬をそれぞれ1錠ずつだ」

はぁ〜・・・なんともまぁ長い一日だったな。

暖かいベッドに入って体を伸ばした僕は、
横になることの有り難さを全身で感じました。
と同時に記憶がなくなり、気が付けば部屋は真っ暗です。

ん? 何時だ? 腕時計は?

「えーじ、起きたの? いま何時?」
「もうすぐ19時だよ。ぐっすり眠っちゃったな。具合は?」
「ん〜・・・なんかすっきりした感じ」

僕も日中の症状が嘘のように体が軽くなっています。
そこで熱を測ってみると、ともこは36.4度。
僕も平熱に戻っているじゃないですか!

「治った〜!」
「食欲は?」
「お腹空いた! もうなんでも食べられるよ。
 それにしてもよくすぐ薬局が見つかったね。
 病院で待ってた時はどうなるかと思っちゃった」

ともこが喋り続けています。
ということは元気になったということでしょう。
こうして何とか元のレールに戻った僕らは、
トルコでの取材を再開したのでした。

End

えーじ

P.S.
それにしてもあの薬。
1回飲んだだけであんなに効くとは・・・
きっと日本ではまず認可されない、過激なシロモノだったんでしょうね。
posted by ととら at 14:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2019年04月14日

第17回取材旅行番外編 その5

あいやぁ〜・・・これから何が始まるんだ?

突然現れた外国人を前に、顔を見合わせる病院職員。
ささっと鳩首会議を切り上げたかと思うと、
ひとりの女性がカウンターから出てきました。

彼女に導かれるまま入ったのは受付の反対側にあるオフィスです。
中には事務職の女性がひとり。
僕が同じ説明を繰り返すと今度は・・・

「分かりました。彼女と一緒に受付で手続きをして下さい」

やった!
ようやく話が通じたみたいだ。

僕はだいぶ熱が上がってきているのを感じていました。
ともこはもう目がうつろです。

む〜・・・
頭の回転がこれ以上落ちる前にドクターと話をしなくちゃ。
でも受付からやり直しなんだよな。

戻ったところでアテンドしてくれた女性が、

「トルコの・・・ホ、ホケン、ハイってマスか?」
「保険? いいえ。日本で旅行保険には入りましたけど」
「はい。では、ココで、さき、払います」

・・・?
診察料を前払いするってこと?
それから?

「なまえ、バースデート、お母さん名前、お父さん名前」
「え? 両親の名前?」
「はい」
「母はもう亡くなってますよ」
「はい。OK、OK、お母さん名前」

こりゃカルテの記入欄の必須事項なのかな?
まぁ、この際こまかいことはいいや。

僕らは訊かれるがままに答えつつ、
日本円にして約6千円相当のトルコリラを支払い、
領収証を持って再びアテンドの女性の後に続きました。
院内の表示は全てトルコ語です。
僕たちだけでは診察室に行けと言われても迷いに迷ったでしょう。

階段を昇って廊下を進んだ先に幾つかドアが並んでおり、
その前のベンチはどこも患者さんたちでいっぱい。
僕らに気付いたおばあちゃんたちが詰めて席を開けてくれました。
言葉は分かりませんが、
ともこを指差して「ここにおかけなさい」と言っているようです。
やさしいね。
まもなくアテンドの女性が僕らを呼びに来ました。

「こんにちは。どうしました?」

大きな机の向こうには40歳代中頃と思しき男性のドクターがひとり。
若干たどたどしい英語でしたが、意思疎通を図るには十分です。
僕は細かく状況の説明をしはじめました。

「なるほど、二人ともほぼ同じ症状なのですね。
 それではベッドに横になって下さい」
「ともこから診てもらおう。靴を脱いでベッドに横になって」

ドクターは聴診器を使いながら背中や腹部を触診して行きます。
見慣れた手法に僕は少し安心しました。

「OK、じゃ次は僕の番だ」

同じ手順で診察した後、

「それでは血液検査とレントゲン撮影をしましょう」

看護士さんがてきぱきと採血し、次はレントゲン室へ・・・
と思いきや、僕らは再び受付へ。
ここで検査費用の前払いとなりました。
保険に入っていないので、
何をするにも都度キャッシュ&デリバリー式なのですよ。
懐具合が心配でしたが、
今回も支払ったのは日本円にして約6千円程度。

次は地下に降りてレントゲン撮影です。
ここでも混んでいたわりにすぐ僕たちの番となりました。

どうも変だ。
これじゃ僕らを優先してやってくれているとしか思えない。
みんな待ってるのに、なんだか申し訳ないな。

僕は「彼らと同じように順番を待ちますよ」と言ったものの、
通じてないのか、アテンドの女性は微笑むばかり。
レントゲン技師はまったく英語を話さないので、
「ここ、立って」「息、止めて」という彼女の指示だけが頼りです。
彼女が甲斐甲斐しく世話をしてくれたお蔭で、
海外初のレントゲン撮影も無事終わり、
僕たちは1階のロビーに戻って来ました。

「検査結果はどれくらいで出ますか?」
「・・・?」
「あ〜、次はどうすればいいですか?」
「2時間マチます」
「2時間したらここへ来ればいいですか?」
「・・・?」
「あ〜、あなたは2時間後、ここにいますか?」
「ハイ」
「それでは2時間後にここで会いましょう。
 テシェッキュレデリム(どうもありがとう)」

「なんて言ってたの?」
「検査結果が出るまで2時間くらいかかるらしい。
 それまでどこかで休んでいよう。大丈夫かい?」
「うん。ちょっと寒いけど。えーじは?」
「頭痛と悪寒と咳と関節痛と軽い吐き気がある以外は元気さ。
 さぁ、ここはドアが開くたびに冷たい風が入って来る。
 もう少し暖かい2階へ行こう。
 さっきキオスクがあるのを見たんだ」

その店はちょっとした軽食も出しており、
小さなテーブル席が4つありました。
僕らは食欲がなかったので水だけ買い、一番端のテーブルへ。

さすがにミネラルウオーター1本で座ってちゃ悪いよな。
かと言ってこの体調じゃ何も食べられないし・・・
とりあえず一言ことわっておこう。

「すみませんが、あのテーブルでしばらく休んでいてもいいですか?
 昼休み後まで検査結果が出るのを待たなければならないのです」
「ああ、もちろん。好きなだけいていいですよ。
 具合が悪いのは奥さんですか?」

彼は流暢な英語で応えてきました。

「驚いた!
 ここで会った人の中で、あなたが一番上手に英語を話しますね!
 実は僕たち二人とも具合が悪くてここに来たのです」
「それはお気の毒に。なにか必要でしたら力になりますから、
 いつでも言って下さいね!」

親切な人だなぁ・・・

と好意に甘えつつも、さすがに2時間はねばれませんから、
1時間ほどで僕たちは診察室前のベンチへ移動。
時刻は12時。

やれやれ・・・
発症してからのタイムリミットを過ぎたか・・・

二人ともまだ動けはしますが、
朝に比べると明らかに症状は重くなってきています。
ともこときたら、もうほとんど口をききません。
10分、20分・・・
ベンチでたたじっとうずくまって待つ時間がとても長く感じられました。

それから何分経ったのでしょう。
熱で半分まどろんでいた僕がふと気付くと、
隣にいたともこの姿が見えません。
驚いて立ち上がった矢先に彼女が戻り、

「えーじ、昼休みが終わったみたいだよ。
 受付にもスタッフが戻って来たし」
「よし、行ってみよう!」

ロビーに降りるとアテンドの女性が待っていてくれました、
そのまま僕らは重い足取りで診察室へ行き、

「たぶん風邪ですね」
「本当に?」
「ええ、心配いりませんよ。これが血液検査の結果です。
 インフルエンザであれば白血球の数がもっと上がりますが、
 ほら、平常値ですからね」

ドクターは検査結果を広げて詳しく説明してくれました。

ふ〜、とりあえず一安心だな。

「解熱剤と咳止め、胃薬を処方しておきます。
 処方箋を持って薬局に行って下さい」
「薬局はこの病院内にあるのですか?」
「いいえ。ここにはないので街の薬局に行って下さい。
 処方した薬はどこでも売っているはずです」
「ありがとうございました」

さっきのキオスクに寄って、
お礼がてら昼食のシミット(トルコのプレッツェル)を買い、
僕らは振り出しのロビーに戻って来ました。
それに気付いた受付カウンターのスタッフたちが皆こちらを見ています。

「みなさんのお蔭でとても助かりました。
 どうもありがとう!」

言葉は分からなかったかもしれませんが、
僕たちの気持ちは伝わったような気がします。
ずっとアテンドしてくれた女性が奥で手を振っていました。

「みんなすごく親切だったね」
「ああ、病院のスタッフだけじゃなく患者さんたちもね」

凍える外に出た時、僕らの体調はもう最悪でしたけど、
心は反対にとても温かくハッピーでした。
突然現れた言葉もほとんど通じない外国人に、
ここまで親身になって接してくれるとは。

と、喜ぶのはまだ早い・・・んですよね。
僕は肝心の治療がまだ手付かずであることを思い出しました。

「よし、次は薬局を探さなくちゃ。
 取りあえずタクシーでホテルに帰ろう」

to be continued...

えーじ
posted by ととら at 17:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2019年04月10日

第17回取材旅行番外編 その4

うとうとしているうちに夜が明けていました。
予想通り、二人の体調はさらに悪化しています。

時刻は・・・7時半か。
食堂に行って何か食べ物とチャイをもらってこよう。

「どうだい?」

部屋に戻るとともこが起きていました。
彼女は測っていた体温計を取り出し、うかない顔で、

「38度6分・・・」
「下がらないな。食欲は?」
「少しなら食べられるかなぁ・・・」
「薬を飲むには先に何か食べておかないとね。
 それから温かいチャイを飲むと喉が楽になるよ」

僕はジャムを付けたエキメッキ(トルコのパン)を齧りながら、
プランAを考え始めました。

ともこは長距離の移動どころか取材もできない。
僕も『予定通り』体調が悪化してきている。
ってことは『順調に』行くと、
あと4時間前後で二人とも行動不能ってわけだ。
よし・・・

「手持ちの薬じゃ効かないみたいだから病院に行こう。
 実は僕も具合が悪くなってきていてさ」
「ほんとに!?
 ・・・ゴメンね、伝染しちゃって・・・」
「この狭い部屋に居れば無理はないよ。
 それより悪化のスピードからすると、
 あんまりのんびりはしていられないと思うんだ。
 これから保険会社に連絡して病院を紹介してもらおう」

そこで出発前に加入していた海外旅行保険の連絡先に電話をかけ、
担当者に状況を伝えると・・・

「たいへん申し訳ございませんが、
 ご滞在地域で紹介できる病院が当方のリストにありません。
 ご自分で探していただけますでしょうか?」

さんきゅ〜べりまっち。

「どうしたの?」
「プランBに変更だ。フロントに行って相談してみるよ」

と言って部屋を出てから、
このホテルには英語の話せるスタッフが一人しかいないことを思い出しました。
案の定、フロントにいた朝番のおじさんは、片言の英語しか分かりません。

なんとかチェックインの時に話をした女性とコンタクトしなくちゃ。
時間があんまりない。

「おはようございます。
 昨日僕が話しをした女性はいませんか?」
「・・・・?」
「あ、女性ですよ、女性。昨日会った人」

僕はジェスチャーを交えて意思疎通を試みました。

「レディ? もうすぐ来るデス」
「僕とワイフは頭が痛いのです。病院に行かなくてはなりません。
 それで彼女と話がしたいのです」

ん〜、分かってちょうだい!

しばらく考え込んでいた彼はどこかに電話をかけ、
僕の顔を見ながらトルコ語で何かを話すと、
おもむろに受話器を僕に差し出しました。

「どうしましたか?」

やった!

電話の声は昨日話した女性です。
僕が事情を話すと、

「まぁ、それは大変! 私はちょうどホテルに行くところです。
 あと10分で着きますから待ってて下さい」

まもなく到着した彼女と僕は具体的な話をし始めました。

「病院を紹介して欲しいのですが、
 英語が通じて料金の高くないところに行きたいのです」
「そうですね、この辺でお勧めできるのはクズライホスピタルです。
 私たちは通常、具合が悪い時はそこへ行くのですよ。
 たぶんドクターは英語が話せるでしょう。
 でもトルコの健康保険に入っていない外国人の場合、
 どのくらいの金額になるかは分かりません」
「ありがとうございます。
 その病院はここから遠いですか?」
「いいえ、タクシーなら10分もかかりませんよ」
「ではトルコ語でその病院の名前を書いていただけますか?」

僕は部屋に戻ってPCを立ち上げ、病院名から場所を特定しました。
なるほどここから直線距離で3キロメートル程度しかありません。
しかしこの寒さの中、徒歩で行くの現実的ではないでしょう。

「ともこ、病院が分かった。今から行くから暖かい服に着替えて。
 あと貴重品を忘れずに」

フロントに戻るとオジサンが心配顔で待っていました。

「さっきはありがとうございました。
 これからクズライホスピタルに行きますので、
 タクシーを呼んで頂けますか?」

今度は意図を察してくれただけではなく、
オジサンはドライバーに行き先の説明までしてくれました。
病院は新しい近代的な建物で、入院病棟までありそうです。

よし、ここまでくれば安心だ。

1階の待合室には、
20人ほどの患者と思しきトルコ人の人たちがいました。
入って左側が会計、右側はオフィス、そして正面に受付があります。

「ここで待ってて」

そうともこに言い残した僕は受付に歩み寄り、
突然現れた外国人に驚く女性に、

「メルハバ(こんにちは)。
 僕たちは熱があり、咳も出ています。
 ここで診察を受けたいのです」

「・・・・・・・・・・・・・・」

彼女は僕をじっと見つめたままフリーズしています。

「英語を話せますか?」

たのむよ。

「・・・・・・・・・・・・・・」

彼女は僕を手招きして会計の窓口に行きました。
そこで僕はもう一度、窓口の女性に状況を説明すると、

「ア、あ〜、ちょっト、待ってクダサイ」

病院職員だけではなく、
居合わせた患者さんたちすべての視線が僕たちに向いています。

僕は以前、メキシコのブラジル大使館に、
ビザを取りに行った時のことを思い出しました。

まがりなりにも大使館なんだから英語は通じるし、
申請書も英文併記に違いない・・・と思い込んでいたのですが、
行ってみたら誰も英語を話す人がおらず、
しかもすべての書式はスペイン語だったのです!

ま・・・まさかね・・・

僕は祈るような気持ちで周りの人々を見回しました。

to be continued...

えーじ
posted by ととら at 15:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記