2017年02月18日

第13回取材旅行 その3

一昨日は夕方取材から帰ると、
ともこが珍しくブログを書いたというので、
前回に追記しておきました。

あ、彼女が『書く』というのは字義通り『紙に書く』という意味なので、
タイプするのは僕。
本人の意向を尊重し、赤ペンなしのダイレクトプリントです。

さて、市場での仕事が終わった僕たちは、
明日のテッサロニキ行きの鉄道チケットを買いに、
ブラブラ歩いてアテネ中央駅へ。
手前のオモニア駅周辺からは一般エリアなので、
ある意味、素顔のアテネが垣間見られます。

道々歩いていて気になったのは物乞いの数。
かなり目につきます。
アテネに到着早々、
空港から市内への地下鉄内で喜捨を求めるロマがいましたが、
市内ではハンディキャップを持つ人々を始め、
時には幼稚園くらいの子供を連れた家族が、
冷たい北風に吹かれながら紙コップを持ってうずくまっていました。

ギリシャの失業率は昨年10月のデータで23.0%。
域内格差も大きく、
25歳未満の若年層に至っては何と40%を超す状態だそうです。
この数字がけして誇張ではないことが、
たった数日滞在しただけの僕たちにも分かる気がしました。

実際、公共機関のストライキは日常茶飯事で、
今日も僕たちが使おうとした地下鉄のオモニア駅は、
13時から17時まで閉鎖されてしまったではないですか。
明日も朝は最寄りのシンタグマ駅が閉鎖されてしまうとのことなので、
テッサロニキへ向かう列車の出るアテネ中央駅までのアクセスは、
一つ手前のアクロポリス駅から地下鉄2号線に乗ることにしました。

それでもギリシャはバルカン半島に割拠する国々のなかで、
最も平均所得の高い国なのですよ。
これから行くEUに加盟できなかったマケドニアやセルビアは、
どんな状況なのか、料理は楽しみな反面、微妙な気持ちもあります。

テッサロニキ行きの列車は明朝7時18分発。
たった4日間とはいえ、
顔馴染みまで出来てしまったアテネを離れるのは、
ちょっと寂しいですね。
ほんと、僕たちには肌の合う街でした。
しかし明日からがこの旅の山場。
テッサロニキで一泊した後は、
毎日国境を越えて移動しながらハンガリーの南端の街、
セゲドを目指します。
バスか鉄道か、交通手段はテッサロニキから先は未定。
現地でお馴染みの出たとこ勝負です。

幸い寒波は緩み、
一番寒いマケドニアのスコピエでも青森県くらいでしょうか。
天気は概ね良さそうです。

さて、次はテッサロニキからお話しできるかな?
ホテルのWi-Fiがちゃんと機能していることを祈っています。
僕らが泊るようなホテルでは、『Wi-Fiがある』というのと、
『Wi-Fiが使える』というのは、別の意味の場合が多いので。

えーじ
posted by ととら at 05:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年02月16日

第13回取材旅行 その2

今日はアテネでの3日目。
これから市場へ行って来ます。
いつもなら最初に行くべき場所ですが、
昨日は絶好の晴天に恵まれ、
ホテルのフロントの女性からも、
「アクロポリスへ行くならチャンスよ!」
と背中を押されてしまったので、
朝からアテネ観光のゴールデンコースへ。

確かに彼女の言う通り、終日雲一つない晴天で風もなく、
パルテノン神殿まで丘を登ってみればTシャツ姿の人もいたくらい。
僕らもこの景色には感無量でした。
と言うのも、
ギリシャは2つの意味で思い入れがあったからなのです。

僕が生まれ育った横浜の本牧。
ここは当時、まだ米軍に接収されたままで、
広大な彼らの居住地の周りには、
米軍相手の飲食店がそこかしこにありました。
かつて知られた『リキシャルーム』や『アロハカフェ』などは、
その中のひとつです。
そして僕が出入りしていたレストランに、
ギリシャ料理店があったのです。
ですから僕にとってギリシャ料理は異国の味と言うより、
どこかノスタルジックなものなのですよ。

それからもうひとつは2013年のこと。
冬の取材地の第1候補はギリシャだったのですが、
皆さまご存知のように、
政治的、経済的な混乱が続いたアテネではゼネストが頻発して、
取材地の変更を余儀なくされた経緯がありました。
(結果的に行ったのは第2候補だったチュニジアです)

そんなこんなで、いよいよ念願のアテネ。
知恵と芸術の女神の名を冠したこの都市は、
僕たちをフレンドリーに迎えてくれました。

取材の中心地となるプラカ地区は、
アクロポリスや古代アゴラなど世界遺産が密集していることもあって、
どこも普通に英語が通じます。
日本人の観光客も多いので、
片言の日本語で挨拶されることもしばしばありました。
アテネっ子はおしなべてラブリー。
今朝も近くのカフェへコーヒーを飲みに行ったら、
前日も来た僕たちを覚えてくれていたマスターが、
チーズパイやホウレンソウのパイをサービスしてくれました。
取材先のレストランでも僕たちの質問に皆さん快く答えてくれますし。

そうそう、僕たちが投宿しているホテルはここ。

Myrto Hotel Athens

プラカ地区の中心にあり、
アクロポリスの入り口まで徒歩10分という好立地ながら、
1泊なんとダブルルームが約2,250円!
と聞くと恐ろしい安宿と思われるかもしれませんが、
実際はかなり居心地のいいホテルなのですよ。
もちろんこの価格で朝食は付いていませんけど、
先ほどお話したような雰囲気のいいカフェが近くに沢山あるので問題なし。

さて、こちらの時計は間もなく午前10時。
そろそろ市場へ出かけます。
食材を調べた後はタベルナ(ローカル食堂)で取材です。
ギリシャの食事は量が多いですから、お腹をすかせて行かなくては!

えーじ
_________________________________
ブログは久し振りのともこです。

毎回どこの国に行っても市場巡りが楽しみなので、
今日は朝からワクワクしていました、
アテネの中央市場は大きな道路を挟んで魚と肉売り場、
野菜、フルーツ、乾物売り場に分けれています。
商品のディスプレイの仕方にも各国の違いがあって面白いです。
アテネは海が近いので魚介類の種類が豊富。
色々な種類の魚は見ているだけで楽しくなります。
売り場のおじさんたちが威勢の良い声で呼びかけて来るので、
買いたい気持ちを我慢するのがつらかったなぁ。
近くにこんな市場があったら、
毎日どんな充実した仕入れになるか!
羨ましくなってしまいました。
ランチは市場内のタベルナで、
新鮮な魚のサヴォロ(フリット)を頬張り大満足。
でも食べた分のカロリーの消費が・・・ちょっと心配です。
posted by ととら at 16:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年02月14日

第13回取材旅行 その1

日本の皆さま、こんにちは、そしてこんばんは!
僕たちは今、ギリシャのアテネにいます。
そちらとの時差は7時間。
ですからまだ外は太陽が燦々。
気温は東京とほぼ同じですが、
今日は風がやや強くて寒いですね。

野方を出てからここまでは、
皆さまのご期待に反してとてもスムーズに来れました。
航空会社はターキッシュエアラインズさん。
丁度10年前に一度お世話になったことがありますが、
そのサービスレベルの上がり方には出発前から驚きましたね。

前日にウェブチェックインをしたところ、
卒業旅行シーズンの所為か、
出発の20時間前にもかかわらず、席の指定はほぼ不可能の状態。
機体は座席の配置の使い勝手が悪いボーイング777ですから、
仕方なく、中央の列の通路側を二人別々に指定していたのですが、
チェックインの担当の方が、確保していた空き席から、
隣り合わせに変えてくれたのです。
それだけではなく、乗継便の座席まで使い易い席に変更して頂き、
何だか恐縮してしまいました。

そしてアメニティの充実度。
ソックス、アイマスク、スリッパ、歯磨きと歯ブラシ、
耳栓、リップクリームがセンスのいいお洒落なポーチに入っており、
乗客の間から「わぁステキ!」「へぇ〜、いいなこれ!」
と言う声がそこかしこから聞こえました。
中身はともかく、僕もこのポーチなら後で使えると思います。

それから食事。
10年前の記憶では、正直、あまり期待していなかったのですが、
今回提供されたのは、
ブリティッシュエアウェイズ、KLMオランダ航空と並ぶ美味しさ。
昨今、経営難から長距離フライトにも拘らず、
コンビニの弁当にも負ける悲しい機内食が増える傾向にある中、
エコノミーでこのレベルが出てくるのは嬉しい。

ちなみにイスタンブールからアテネまでの、
55分のフライトで出て来た軽食のホットサンドウィッチでさえ、
「お、こりゃ美味しいね!」でした。

アテネでの入国はパスポートコントロール、税関共にさらっとスルー。
通貨はユーロですから事前に日本で両替済。
空港からアテネ市内までの移動も直結している地下鉄一本ですから楽なもの。
僕たちは11時丁度、プラカ地区にあるホテルに着いたのでした。

野方を出てからほぼ24時間の旅。
今日は早めに休んで体調を整え、
明日から本格的に取材を始めようと思っています。

えーじ
posted by ととら at 23:11| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記

2017年02月13日

第13回取材旅行の準備 その3

タスクが詰め込まれた危ういスケジュールも、
何とか予定意通りに消化して、
残るはお店のシャットダウンだけになりました。

いやぁ〜、イレギュラーなことが起こらなくてほんと良かったです。
こういう綱渡りオペレーションをやっていると、
『薄氷を踏むような』という比喩がリアルに実感できますね。
可能な限り前倒しで仕事をしてはいるものの、
最後がギュっとなるのはお約束。

しかし、疲れた時に元気が出るのは、
お客さまや野方のフェローたちから、
「行ってらっしゃい!」と声を掛けられた時です。
本当にいつもありがとうございます。

さて昨夜遅く、
というか今日の未明、最後の現地情報を確認したところ、
寒波が緩み、冷え込んでも札幌か旭川くらいの気温のようです。
気になる治安や疾病も問題なし。
成田の天候もいいのでオールグリーンの出発です。

今日は18時に野方を出て新宿から成田エクスプレスで空港へ。
このルートだと、感覚的に「ああ、旅が始まったな・・・」と感じるのは、
新宿駅の5、6番線ホームへ続く通路に入ったあたりから。
終日ごったがえしている新宿駅で、あそこは唯一異空間的なところなのですよ。
何と言っても急に人がいなくなりますからね。
そして僕らが取材旅行に出るのはシーズンオフの所為か、
ホームに上がっても乗客の姿はまばら。
それでいて反対側のホームは通勤の方たちでいっぱい。

ああ、いで立ちからして違いますからね。
野方駅のホームにいる時から、
僕らのようなバックパッカースタイルはかなり浮きます。
今回の装備は寒冷地仕様なので、結構な量になりました。
空港でチェックイン前にコートも入れるので、
僕のバックパックの容量は最大100リットル級です。

それではそろそろ自宅に戻って着替えてきます。
次はアテネから!

えーじ
posted by ととら at 17:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記

2017年02月11日

10年間で3回目

人間、歳を取るとだんだん自信が揺らいでくることがあります。
それは若かりし頃の自信が、
視野の狭さに支えられていたことの反動でもあるので、
自分の実力のなさも含めて見識を深めることは、
前向きなことなのかもしれませんけどね。

ともあれ、卑下しがちなおじさんにも、
よくやった! と自分を褒めてやれることがたまにはあります。

僕の場合、この10年間なら3回かな?
(少ないね・・・)

ひとつ目は、2009年に行った3カ月間の中南米の旅で、
ずっと想い憧れていたマチュピチュを訪れた時。
日本を出発して約1カ月後、いろいろすったもんだがあった後に、
あの写真で有名な景色がバーンと目の前に広がった瞬間は、
「えーじ、やくやったな、お前はついにここまで来たぜ!」
と自分に言ってやりました。

二つ目は、翌2010年3月。
紙に描いただけのととら亭が本当に形になった時。
「いつかできれば・・・」では、けして夢は実現しない。
「この日にやるんだ!」と決めてようやくここまで来れた。
今から思えば当時のととら亭は現在のような完成形ではなく、
営業するのにぎりぎり必要な部分が出来ていただけでしたが、
灯りを点けて暖簾を出した時の感動は、今でも忘れられません。

そして3つ目。
それは昨日のこと。

bookandlou.jpg

じゃじゃ〜ん!

かもめのルー・・・
じゃなくて、ともこの右手にご注目を!

そう、ととら亭の本『世界まるごとギョーザの旅』が形になったのです!!

昨日はこの仕事のプロジェクトリーダーこと、
「かもめの本棚」編集長の村尾さん(左)が、
発売に先立ち見本を持って来てくれました。

製作過程でゲラは見ていたものの、
やはり本の形になると大分印象が違いますね。
感動しました。うん。

毎回、旅に文庫本を持って行くだけではなく、
若かりし頃は、
風呂の中でも何かを読んでいたくらい本が好きな僕にとって、
(脈略のない乱読ですが・・・)
その作り手としてのオファーを頂けたことは、
新しい旅の始まりでもありました。

もちろん初めてのことなので、
もろもろご指導を賜りながらの長い道のりでしたが、
自分の書いた文章だけではなく、
旅の思い出の結晶でもある写真まで含まれた本が形になったのは、
ととら亭で独立した時とはまた違う、感慨深いものがありましたね。

今月末から順次書店に並びます。
自分でいうのもなんですが、面白いですよ。
乞うご期待下さい!

えーじ
posted by ととら at 15:53| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記

2017年02月08日

ちょっと怖い話

昨日の『定休日』、
僕はこの時期恒例のしこしこ決算で、
朝からお店にこもっていました。

ともこがレシート入力を手伝ってくれたおかげで、
どうにか決算書を出力するところまで持ち込めたので、
今日はひと息つけたところです。
何とか取材旅行に出かける前には、
税理士さんのチェックを受けられる状態まで詰めたいですからね。

さて、この地味な作業をやっていて今回気付いたのは、
じわじわと浸透しつつあるマイナンバー。
確定申告の申告書には、この記入欄がしっかりありました。
これからそこかしこで同じように導入され、
役所、税務署、病院、銀行、クレジット会社、そして企業や学校・・・
行く行くは、こうした所のシステムがオンラインで結ばれると、
かなり詳しい個人のプロファイルを描き出すことが出来ます。

これに生体認証、画像解析の技術を組み合わせれば、
ジョージ・オーウェルの近未来小説『1984』に出て来る、
『ビッグブラザー』が現実のものになるもの、
そう遠い話ではないような気がします。

ああ、ドローンやロボット技術も足せば、
『ターミネーター』なんかも、
スクリーンの向こうの話ではなくなるかもしれませんね。

ん〜・・・アタマのイイ人間たちは、
何処へ行こうとしているのかしらん?

とまぁ、いつもの僕の夢想はともかくとして、
とてもリアルな話をひとつしましょうか。

昨日は先日お話した保健所さんの検査があったのですけどね、
その際に担当の方と話をしていて驚いたことがあります。

僕が受けたあの営業許可更新講習、
あれは月にたった1回しかやっていないそうで。

にもかかわらず、
中くらいの会議室程度の広さがある講堂に受講者はパラパラ。
正確には数えていませんが、ほぼ半分は空席だったので、
概ね25名前後しか出席していなかったのではないでしょうか。

これが何を意味するかお分かりになります?

営業許可の有効期限は7年間ですから、
中野区で2010年3月に開業して、
8年目(もしくは15年目)を迎えられたのは、
たったこれしかいない、ってことですよね?

むわぁ〜、怖ぇ〜・・・

確かに日本の飲食店の平均寿命は3〜4年と言われている訳です。
ととら亭を始める前にこの数字を目の当たりにしていたら、
かなりびびったことでしょう。

「そうですね、居ぬきで事業主がコロコロ変わっているテナントでは、
 私たちの方が物件に詳しい場合もありますよ」

とは保健所の方の話。
なるほど〜・・・

飲食業とは、冥府魔道の道と見つけたり。

独立をお考えの方は今一度ご一考を。

えーじ
posted by ととら at 20:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年02月05日

パラレルワールドの入り口で

「えーじさん、スマホから印刷ってどうやるの?」

先日、大学を受験する息子さんのいる友人から、
こんなヘルプコールがありました。
最近では受験にも、ある程度のITリテラシーが求められるのか、
僕らがよくやるe-VISAを入力してから申請用紙を印刷するような手続きが、
多くの大学で採用され始めているそうです。

詳しく訊けば、友人のプリンタが壊れており、
願書の提出期限も迫っているとのこと。
そこで手っ取り早く、
僕のPCで受験者のパーソナルページから申請用紙をダウンロードし、
自宅にあるプリンタで印刷することにしました。

「すみません。よろしくお願いします」

間もなく、ととら亭に来た息子さんがカウンターで僕の隣に座りました。
聞いた大学名からウェブサイトの受験ページにアクセスし、
IDとパスワードの入力画面まで来たところで操作を息子さんにパス。
彼は真剣な面持ちで入力を始めました。

こういうシチュエーションは、思えば初めてだな・・・
もし、僕に息子がいたら、ちょうど彼くらいの年齢かもしれない。

僕の中で子供と言うと、かつては赤ちゃんをイメージしていたものですが、
この歳になると、イメージも歳を取っていかないとおかしい。
しかし、自宅に帰ったら髭の生えた息子や化粧した娘が待っていて、
「ねぇ、おとうさん! 新しいスマホに乗り換えたいんだけど!」
なんて言われる自分は、まったく想像が出来なかったんですよ。

いろんな人生があるものです。

僕は自分の選択でここまで来ました。
良くも悪くも、今ここにいる僕は、過去の僕が作り上げた結果です。
振り返れば、くねくねと曲がった過去の航跡には、
例えば、3カ月間に及ぶ中南米の旅や、ととら亭の開業など、
無数の分岐点が見え隠れしています。
その節目は、可能性と選択と言う言葉で言い換えられるのかもしれません。

あの日、あの時、あの分かれ道で、もし反対方向へ進んでいたら、
今ごろ僕は、どこで、誰と、何をしているのだろう?

皮ジャンとブーツ姿でオートバイに乗り、
ひとりで日本を旅している僕。

スーツ姿で会社に勤め、
自宅に帰れば受験を控えた子供のフォローをしている僕。

日本を捨て、遠い外国で現地の人々の大家族の一人になっている僕。

もしかしたら、この世界と並行する世界で、
僕は、それぞれの可能性と、
選択の先にある人生を歩んでいるのかもしれないな・・・

「あ、あの、えーじさん、すんません!」
「え? ああ! 出来たかい?」
「はい、このページです」
「じゃ、ダウンロードするから操作を変わろう」

おっと、ぼんやりしていました。

自分で考えている以上に、選択肢の数は多いもの。
しかしながら、同時にふたつの人生を生きることはできない。

そう考えると自分の下した判断の自信が揺らぐかもしれませんけど、
自己評価はどうあれ、
ひとは結果的に、自分にとってベストの選択をしている。
だから平凡に見える日常が、ある意味、ひとつの究極的な奇跡なんだ。

僕は最近、そんな風に思えてきました。

えーじ
posted by ととら at 17:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年02月03日

僕らの街で

昨日はランチを休んでお役所回りに行って来ました。
まず、中野駅北口にある都税事務所さん。
ここは固定資産税申告書の提出です。

え? いつから不動産持ちになった?

いや、そんなものあるわけないじゃないですか。
土地や家屋ではなく、お店の『内装』が対象なんですよ。
ととら亭は僕らと同じ仮屋(テナント)住まい。
しかし壁紙から内側は、僕がおカネを払って作ってもらったので、
名義は僕なのです。

ちょっとイメージし難いのが、
『不動産』だけではなく、動かすことが可能な冷蔵庫やガスレンジなども、
固定資産税の対象となっていること。
一般的に購入価格が10万円以上で減価償却するものは、
固定資産ってことになるそうで。
雑多な費用の塊りである開業費用もぐるっとまとめてこれに含まれています。

で、概ね償却期間を超えてきましたから、
去年から固定資産税はゼロ。
それでも申告はしなければいけませんので、
固定資産の「増減なし」で申告書を提出したらおしまい。

冷たい北風が吹く中、今度は南口方面へ移動して保健所さんへ。
ここでは営業許可の延長を申請して講習を受けます。

飲食店の営業許可の有効期限は7年。
日本の飲食店の平均寿命は3〜4年と言われていますから、
これは言い換えると高齢者講習になるのかしらん?

ともあれ、これに招待されたことは、喜ぶべきことなのでしょう。
この歳まで生きて来れたのですからね。

約2時間の講習が終わると営業許可の申請です。
これは現場の検査ありきなので、
その日時のブッキングから始めるのですが、
ご担当の方が僕の書類を見るなり、

「ととら亭さん? ああ!
 今日は講習会でランチは休みって書いてありましたね!」

驚いたことに、その日は野方で別件の検査を行っており、
その際にととら亭の前を通りがかり、
外に出してあった黒板の告知をご覧になっていたとは!
しかもそれを屋号とペアで覚えていらっしゃった。

官民業種は違えども、
こうしてひとつの地域で一緒にやっているというのは、
嬉しくもあり、心強くもありますね。

思えば郵便配達さん、宅急便屋さんを始め、
会社は野方になくても、
この街が職場の一部である人たちが沢山います。
そしてその人たちは、時に住んでいる僕たち以上に、
野方のことを知っていたりするのですよね。

街は特定の誰かのものではない。
みんなでシェアしているんだな。

帰りのバスの中で、僕はそんなことを考えていました。

えーじ
posted by ととら at 14:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年02月01日

気持ちと気持ち

先日、へぇ〜っと思ったニュースがありました。
それは『焼き鳥の食べ方』。

焼き鳥は『串から外して食べるべからず』なんですね。

温かい状態で食べるのが身上の料理ですから、
串から外し、冷めた皿の上に置けば、
みるみるうちに冷たくなって不味くなる。

そして焼き鳥を提供する店は一般的にオープンキッチンですから、
作り手は、その残念な食べ方を目の当たりにしてしまう。

当然、気持ちはがっかり・・・

この作り手側がした心情の吐露に対する反応は、きっぱり二分されたそうです。

A.どう食べようがお客の勝手
B.なるほど、次は串に刺したままがぶっと食べよう


あなたはどっちですか?

僕は基本的にAでいいと考えています。
だから、ととら亭でお客さまに、
「その料理はそんな風に召し上がらないで下さい」
と言ったことは一度もありません。

でも、ホンネはB。

開業して間もない頃、こんなことがありました。
質のいい秋鮭が入荷し、スポットでグラタンをやってみた時のこと。
カウンターに座ったお客さまがこれを注文し、

「すみません、タバスコはありますか?」

僕は一瞬躊躇しましたが、賄いで使っていたもの出したのです。
するとそのお客さまはグラタンの表面が真っ赤になるほど、
タバスコを振りかけたではないですか。
それも味見もせずに。

ありゃ〜・・・

お客さまは、美味しそうにそれを召し上がっていました。

先の意見でA派の方であれば、これでハッピーエンド。
しかし、そのグラタンを作ったともこの表情を見た僕は、
この一件以降、お店でタバスコを出すことはやめました。

あそこまでオリジナルを破壊して食べるのであれば、
プロの料理人が時間をかけて手作りしたものでなくても、
冷凍食品で十分ニーズは満たせる筈です。
言い換えれば、ととら亭に来る理由はありません。

ゴーマンに聞こえますか?

しかし、この話は、
皆さん全ての立場に当てはまると僕は考えているのですよ。

たとえばあなたが、教師やパフォーマーなど、
人前で話や演技をするのが仕事だとしましょう。

で、あなたの仕事中に最前列のお客さんの殆どが、
お喋りをしていたり、居眠りしていたら、どう思います?

ああ、別に構いませんよ、おカネはもうもらっていますから。

ホントに?
ではその割り切り方で、
より良いものを作ろう! より素晴らしいパフォーマンスを目指そう!
なんてモチベーションをキープできます?

日本は資本主義の国です。
おカネなくして仕事はあり得ません。
しかし、文化、ひいては文明を支えているもの、
それはおカネよりむしろ、
送り手と受け手の気持ちなのではないでしょうか?

え? また話がマクロになって来た?

では最後に、これだけは言えるということで締めましょう。

ととら亭は間もなく開業8年目に入ります。
ここまでこの仕事を続けて来れたのは、
多くのお客さまが『おカネを使ってくれた』からではありますが、
それ以上に、『僕たちの気持ちに気持ちで応えてくれた』からに他なりません。

もしそうでなかったら、たとえ儲かっていたとしても、
ともこも僕も、早々に移店するか、別の仕事を始めていたことでしょう。

国であろうが、街であろうが、組織であろうが、
小さなレストランであろうが、
人の営みを支えるために欠かせないもののひとつが、
かかわりあう人々の『気持ち』なのではないか?

ととら亭に限らず、自分がやって来た色々な仕事を振り返っても、
僕にはそう思えてならないのです。

えーじ
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2017年01月29日

ととらな本 その2

ととら亭を音楽のジャンルに当てはめるとしたら?

答えはクラシック。

そのココロは?

楽譜(レシピ)に忠実なお仕事だから。

旅先で出会った料理をアレンジせずに再現し、
お客さまとその感動をシェアすることが僕たちのミッションです。

実はこれ、料理に留まらず、
お店の設計やデザインにまでおよび、
きっちり考えてスコアを書き、その通りにプレイしているのですよ。

マジメでしょ?

確かに自分たちで何でもやらなければならないのは骨が折れますけど、
このやり方は自分たちのイメージの純度を保ったまま形にしようとした場合、
とてもいい方法なのです。

半面、長く続けていると、少々マンネリ化してきます。
取材旅行で新しいイメージのインプットはあるものの、
それを解釈するのは、ともこと僕の二人だけですからね。

今回の出版という仕事では、そのスタイルを大きく変えてみました。
もう一度音楽に例えるなら、まさにジャズ!

決まっているのは、曲のテーマとテンポとキーだけ。
それぞれのプレーヤーが曲を自由に解釈し、
手慣れた楽器で自分だけのプレイをしたのです

メンバーは、
「かもめの本棚」編集長 村尾由紀さん、
デザイナーの稲葉奏子さんと大口ユキエさん、
そして僕たち、ととら亭コンビ。

実際、この曲(本)の作曲者(著者)は僕ですが、
敢えて各プレーヤーのプレイには最初からオーダーをしませんでした。
必要なのは、スコア通りのプレイではなく、
このメンバーでしかできない、
バンド全体の『グルーブ』だったのですから。

そして届いたデザインを見てみれば・・・

bookdesign.jpg

封筒から出して一目見た途端、
僕たちは「これだ!」となりました。
まさしくテイク1でOKです。

ととら亭のグラフィックと同じように僕がデザインしていたら、
けしてこうはならなかったでしょう。

旅だけではなく、仕事でも大切なもの。
それはこうした『サプライズ』なんですよね。

えーじ
posted by ととら at 16:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記