2017年09月10日

僕の小宇宙 その3 神保町2

僕の辞書にない言葉。
それは『出世』と『定年』。
こんな話を本にも書きましたが、実はもうひとつない単語があります。

それは『退屈』。

昔から趣味が服を着て歩いているような人間ですから、
時間さえあれば、やりたいことが今でも沢山あります。

そんな僕にとって神保町は、
音楽以外にも重要なニーズに応えてくれる小宇宙的な街なのです。
では中古CDショップの他に行くところといえば・・・

それは山屋。

この街にはICI石井スポーツさんやサカイヤさんをはじめ、
登山に軸足を置いたスポーツ店が点在しています。
20歳代の頃から登山ライダーだった僕は、
度々ここを訪れては装備を調達していたのです。
キャンプツーリングとトレッキングのギアは殆ど重複していますからね。

思えばアウトドア用品はここ30年で大きく変わりました。
たとえば皆さんが日常的に着ているフリース。
あれは当時パタゴニア社のシンチラベストくらいしか輸入されておらず、
価格もすこぶる高価だったので、
「へぇ〜、ウールに代わるそんな素材があるのか」
程度の認識しかなかったのですよ。

しかし新しい物好きな僕は、
ちょっと値段を下がってリリースされたノースフェイス社製を気張ってゲット。
しかも上下です。当時はなんとボトムもあったんですよ。
当然強度が足りませんから、
お尻や膝はナイロンの黒い生地で補強されていました。
これを着て山に行った時には注目されましたね。
「その毛布みたいな服はなんだい?」ってな具合に。
ところがやっぱり無理があったんでしょう。
5回も使わないうちにボトムのフリース部分がへたったり、
破れたりして程なく使い物にならなくなりました。
どうりであれ以来、再版されないわけですね。

そしてこれまた今では誰もが知っているグレゴリー社のバックパック。
当時はキスリングタイプがまだ主流でしたから、
すらっと縦に長いナイロンタイプはクライマーの間でも、
あまり使われていなかったのです。
これにも僕は飛びつきました。
カッコウから入る。これです。
しかも背負ってみると明らかにキスリングタイプよりバランスが良く、
2気室タイプは底のものもすぐに取り出せるので、
便利なことこの上ない。
以来、メーカーはミレー、カリマー、ノースフェイスなどに変えつつ、
30リットルのデイパックから100リットル超の遠征用まで、
行き先に応じて使い分けています。

当時は冬山もソロで登っていましたから、
各ギアの重さは重要なファクターでした。
ですからコッヘルやガスコンロ、はてや魔法瓶まで、
まだまだ高価だったチタン製を早くから取り入れていたのです。
どうしても手が出なかったのは、同じくチタン製のアイゼン。
あれはさすがにちと高過ぎた!
それでもとにかく荷物を減らし、必要なギアを軽量化することは、
膝上の新雪をひとりでラッセルしながら進まねばならない僕にとって、
至上命題だったのです。
ほんと、フルパワーで15メートルほど雪の斜面を登ったと思ったら、
滑ってズルズル元の場所まで落ちてしまったときなど、
放送禁止用語連発で毒づいていましたよ。

軽量化と言えば、
テントはICI石井スポーツさんのゴアライト1〜2人用を愛用していました。
これは本当に優れモノで、驚くべき軽さもさることながら、
ゴアテックスならではの通気性には驚いたものです。
たとえばテントで一夜明かすと大切なシュラフの下側がぐっしょり濡れた!
なんてことがよくあるのですが、
これは自分の体から出た水蒸気がテント裏側の表面で結露し、
じわじわ垂れて来るのが原因。
ところがゴアテックスだと、
テントを締め切っていても水蒸気は外に排出されるので、
1週間の縦走中でさえシュラフはさらっと乾いたままです。

旅に出る前に神保町で幾つかの装備を新調する。
僕にとってはこの時点でもう新しい旅が始まっていました。
この街の山屋もまた、一つの旅の入り口なんですね。

今日の東京地方は素晴らしい秋晴れ。
ああ、トレッキングに行きたい!

えーじ
posted by ととら at 17:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年09月07日

僕の小宇宙 その3 神保町1

一昨日の定休日は久し振りに神保町へ行って来ました。
目的は『仕入れ』。
と申しましても食材ではなく、
買ったのは営業中に流している音楽CDです。

JR御茶ノ水駅から靖国通りに南下し、すずらん通りを西に通り抜け、
白山通りを北上して水道橋駅へ抜けるコースには、
中古のCDショップが沢山あります。
しかもその殆どが、いわゆるジャンク系の店ではなく、
しっかりした内容の商品を豊富に扱う一種の専門店ともいえるもの。
中でもジャズに特化したDisc Unionさんは、
必ず足を運ぶ場所のひとつです。
幅広いジャンルを網羅しつつ、
思わぬ掘り出し物が多いジャニスさんも外せません。

僕が中古ショップを巡る理由は価格もさることながら、
新品を扱う店にはない幅広い品揃えにあります。
神保町の中古CDショップは販売のみならず、
買取にも非常に力を入れているので、
amasonさんでさえ見つからないレアな作品ともしばしば出会えるのです。

僕の仕入れ方は殆どがジャケ買い。
それもなるべく聴いたことのないアーティストの作品を手に取ります。
国も多岐にわたり、ジャズでいえばアメリカのメインストリームよりむしろ、
ヨーロッパを始め、南米やアフリカなどのサードワールド系が多いですね。
そして構成はスモールコンボ。
ととら亭で回すには大編成だと少々やかましい。
ですからホーンものも基本はワンホーンです。

こうした情報を得るにはジャケットをくまなく見る必要がありますから、
かなりの時間、僕はCDの棚の前に陣取っています。
そして4〜5軒はショップをハシゴしますので、
なんやかんや半日前後は神保町界隈をうろちょろしていますでしょうか。

これがほんと、実に楽しい。
物理的にはほんの数メートルの世界ですが、
僕には国境を越えた広がりと時間を貫通した奥行きが感じられるのです。
いうなれば音楽を扉にした、
小さな旅の気分に浸っているようなものでしょうか。

ん? なんだこれ?
へぇ〜、こんなアーティストがいるんだ。知らなかった!
おや、この作品はどうだ? なかなかユニークじゃないか。

こんな具合に足を棒にしつつ、気が付けば時刻は夕方。

さて、今回はヴォーカルもので収穫がありました。
普段相場の高い Connie Evingson や Alexis Cole、はてや Jacintha まで、
狙っていた作品が手頃な価格でゴロゴロあるじゃありませんか。
ジャケ買いは Erin MacDougald の自主製作版 The Auburn Collection。
これは当りでした。
Hanna Elmquist の Grund も北欧独特の透明感がいい感じ。
インストでは Cherles Lloyd爺が ECM から出したバラード集 The water is wide。
いぶし銀のプレイもさることながら、
ピアノがなんと Brad Mehldau なんですよ。
連弾かと聴き紛うプレイを一人でこなす技巧派の彼が、
これほどまでに情感豊かな演奏をするとは、正直驚きました。
閉店間際に流すには最適な一枚です。

予想外のハズレは Alexis Cole の A Kiss in the Dark。
あ、いや、プレイは素晴らしいんですよ。
問題はミックス。
場末のカラオケのようにリバーブ(残響)のかかったサックスが、
右から大きく全体を覆い、
肝心のヴォーカルはセンターの奥に小さく引きこもっているじゃないですか!
なんじゃこりゃ? と思ったら、これバイノーラル録音の作品だったのです。

昨今、自宅のステレオより出先のスマホで音楽を聴く人が増えたからか、
イヤフォンでもスピーカーで聴いているようなサウンドで再生できるよう、
楽器からの直接音の他、外耳や内耳の反射や回折音を加えた、
特殊な録音方法が取り入れられることがあります。
なるほどってんでイヤフォンで聴いてみると・・・
やっぱりなんか変だ。ぜんぜん自然じゃない。
という訳で残念ながらボツ。

こうしてゲットした作品を自宅に帰ってライナーノーツを読みながら聴くのは、
読書や映画鑑賞とはまた一味違った面白さがあります。
特に知らなかった名品との出会いは格別ですね。
欲を言えば、かつて時間があった頃のように、
1枚のCDを通してじっくり聴いてみたいものです。

えーじ
posted by ととら at 17:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年09月05日

遅れた宿題

週末までには何とか『旅のお話』をアップしなくちゃ!
と前回結びましたが、先週末はあまり忙しくなかったので、
かなり前倒しして仕上げられました。

ととら亭ウェブサイトの『いろいろ』ページをずずっと下へスクロールすると、
『研修旅行  〜 調理を学ぶ旅の記録 〜』が出てきます。
そこの『第1回 (2013年11月) タイ』をアップしました。

旅の食堂ととら亭ウェブサイト

初めての研修旅行で僕も包丁を握っていたことから、
あまり研修中の写真がなくて恐縮ですが、雰囲気は伝わると思います。

お楽しみを!

えーじ
posted by ととら at 00:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年09月03日

寄り道、脇道、迷い道

ウェブサイトの更新をする度に気になっていること、
いや、見て見ぬふりをしていることがあります。
それは『いろいろ』ページにある『旅のお話』。

ととら亭を始めてかれこれ取材旅行は14回。
研修旅行は4回行っているにもかかわらず、
ご紹介できているのは、なんと第5回目のチュニジア取材旅行まで。
研修に至っては、ひとつもアップできていません。

あちゃ〜・・・
ブログでダイジェスト版をアップしてはいるものの、
この遅れはちとまずい・・・

という気持ちに押されて、この夏は地道にやっています。
手を付けているのが、初めて行った2013年11月の研修旅行。
訪れたのは13年振りのバンコクでした。
しばらく埋もれていた写真データを見ていると、
あれこれいろんなことを思い出します。

ああ、スワンナブーム国際空港は初めてだったな、
バンコクに地下鉄が通っていて驚いたよ、
やっぱり現地で食べた屋台のタイ飯は格別だ、
という具合に次々と・・・

そうそう、思い出すと言えば、
こうして写真を見たり、旅行の話をしている時に限らず、
ぜんぜん関係ない掃除中や通勤で歩いている際に、
旅で見た光景が心に浮かんでくることがあります。

不思議なのは、それがエッフェル塔や自由の女神、
はたまたローマのコロッセオのような絵になるランドマークではなく、
何のとりえもない、ありふれた光景だということ。

たとえばパラグアイの地方都市、エンカルナシオンのバスターミナルとか、
ネパールのカトマンドゥにあるタメル地区の横丁で入ったカフェ、
はたまたチュニジアのメディアの迷路などなど・・・

数多ある思い出の中から何故そのワンシーンが選ばれたのか、
自分の頭のことながら、まったく理由が分かりません。

時にはその光景が何処だか分からず、
「ねぇ、山間の村で石畳の道があって、
 崩れた遺跡に行ったのは、どこだったっけ?」と、
 ともこに訊いてみることもあります。

そしてそこからまた連鎖反応的に、
脈略なくシャッフルされた思い出が次々と浮かび上がって・・・

ふんふん、あの村はペルーのオリャンタイタンボだったか。
ペルーと言えばクスコのピザは、
ローマのトラステヴィレ地区のピッツアリアに匹敵していたな。
あれはぜひもう一度食べたいものだよ・・・
うん。
うまいと言えば、珍しいポークのシャワルマも絶品だった。
あれはどこだっけ? ・・・ああ、アルメニアのエレバンだ!
あそこで買ったジャズのCDは掘り出し物だったよ。
でもジャズのライブならコペンハーゲンさ。
偶然やっていたステイシー・ケントのショーは最高だった。
ステージのすぐ近くで聴けたんだからな。
だけどデンマークまでは遠かったよ、ほんと。
なんてったって安い航空券を選んだから北欧に行くのに、
経由地が南国のタイときたもんだ。
あの時もうちょっと時間があったらバンコクでストップオーバーして、
屋台のタイ飯が食べれたのに、残念だったよ。
うん。久し振りのバンコクだったのにな。
バンコク・・・?

あれ・・・何やってたんだっけ?

ん? そうだ!
タイの研修旅行の写真ページを作ってるんだった!

という具合にコースアウトしちゃうもんですから、
なかなか先に進みません。
仕事まで旅と同じくドリフトしてちゃ、しょうがないですね。

なんとか次の週末までにアップしなくては。
がんばります。

えーじ
posted by ととら at 15:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年08月31日

夏の終わりと終わらない旅

今日で8月も終わり。
東京は霧雨が降る涼しい秋の入り口です。
来月もまだ暑い日があるとは思いますが、
気分的にはもう夏ではありませんね。

ととら亭でも今日からポタージュを温製に変え、
おしぼりを温めて出しています。
そうそう暖簾も、
ととらレッドが基調のスリーシーズン用に変えなくては。

皆さんにとって、この夏はどんなことがありましたか?
今でこそ僕らは仕事に明け暮れていますけど、
20歳代のころは、夏といえば冒険の季節でした。

といっても植村直己さんやトール・ヘイエルダール氏のように、
前人未到の冒険に挑戦するのではなく、
それは自分にとって未知の世界へ足を踏み入れることです。

その意味でなら冒険は誰にでも出来ることですし、
実際、意識するかしないかは別として、誰もがやっているのですよ。
たとえば、それが隣町であったとしても、
行ったことがないのであれば、それも一つの冒険ですからね。

僕たちは例外なく、生まれて間もなくは、
幻想と想像の世界に住んでいます。
そして少しずつ、
長い年月をかけながら体験を通し、
自分を取り巻く世界という現実を知るのです。
それは言い換えると人生そのものが冒険の旅だと言えるでしょう。

いろいろなことを知った大人であっても、
この旅が終わったわけではありません。
世界は僕たちの想像を超えた広がりを持っていますからね。

衛星写真やインターネットの情報で切り取られたものは、
部分と全体の文脈でいえば、
砂丘の砂粒程度のものでしかありませんし、
そもそも情報は幾ら積み重ねても現実に還元できません。
それは体験するしかないのです。

先日、酷暑の昼下がり、
平和の森公園でジョギングしていた時に、
空を見上げて大きく息を吸ったら、
ライダーの頃、
この時期に夏を追いかけて走った南への旅を思い出しました。

ああ、この風の匂いは、
焼けた国道で感じたものと同じじゃないか。

乾いた4ストロークエンジンのエグゾーストとヘルメットに当る風の音。
眩しい太陽と吹き付ける熱気。
どこまでも青い空を背に湧き上がる積乱雲。

あの陽炎が揺れる道の彼方に何があるんだろう?
もう1時間走ってみようか。
もう1時間。
そしてもう1時間。

旅を続けて知ったことのひとつは、
青春のころに走り始めた道には終わりがないということでした。

そう、今でも僕は、
あの日差しに焼けた冒険の道を走っているのですよ。

えーじ
posted by ととら at 16:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年08月26日

『お休み』の裏側で

今月から金曜日のランチをお休みさせて頂くことにしました。

ウェブサイトの【おしらせページ】にも書きました通り、
理由は「仕込みが間に合わないため」。
と言うと、
ともこだけの都合のように聞こえてしまうかもしれませんが、
実は僕の方もかねてから仕事が溜まる一方で、
時間の調整は積年の懸案事項だったのですよ。

そんな訳で今は13時45分。
普段ならランチタイムですが、暖簾を下げた店の中で、
二人ともそれぞれ地味に仕事をしています。

ともこはさっき届いたムール貝の山と格闘中。
南アフリカ料理特集の前菜で、
『ムール貝のカレークリーム煮』がありますよね?
あれの素材の下処理です。

具体的に何をしているのかというと、
貝の表面の汚れ落とし。
これは単純に砂や海藻を取り除くだけではなく、
親亀子亀式にこびりついた他の貝を、
ゴリゴリ金タワシで剥がす難作業。
これが男性のコックさんでも音を上げたくなる重労働なのですよ。
そしてキレイになったら下茹でです。

僕の方は明日から変わるアンコールメニューの刷り物作りと、
ウェブサイトの更新を黙々とやっています。
今回はアンコールではなく、
新しい旅の料理を追加で紹介するプラス1なので、
キャプション書きや写真撮影など、追加のタスクが盛りだくさん。

さて、ウェブページが形になりましたから、
来月の営業スケジュールも合わせてアップしましょうか。

→ おしらせ

ほんと、こうしていると時の流れの速さにため息が出ます。
9月3日でととら亭を始めて7年半になるんですよ。
再現した世界各国の料理も96種類。
今年中には100の大台に乗せられるかな?
頑張りたいと思います。

えーじ
posted by ととら at 02:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年08月23日

数字じゃなくて

ある日のディナーで。

「ねぇ、えーじさん、
 会社員をやってたころにどんなストレスがありました?」

カウンターからそう訊いてきたのは、40歳台前半の管理職の女性。
いつも元気溌剌とした彼女が今夜はちょっとブルーな様子です。

「スーツを着ていた頃のストレス? そうだねぇ・・・」

僕はこと自分自身に関してならかなり楽観的なので、
あんまりイライラしないたちなんですが、
やっぱり組織で働くとなると話が変わります。

「ぱっと思い浮かぶのはふたつかなぁ・・・」

ストレスのひとつ目は『評論家』。
これは会議の席上では基本的に沈黙し、
その後、誰かのやった仕事について、
あれこれ批評を展開する人たちです。

「ではどうしたらいいとお考えですか?」
と質問すると、
「それを考えるのはそちらの仕事じゃないですか」
と返すのが得意技。
たいてい職務権限表と組織図で白黒はっきり理論武装していますから、
グレーゾーンでこぼれ球を拾わにゃならん僕たちには始末におえません。
けしてユニフォームを着てグラウンドに降りることはせず、
安全な観客席からヤジだけを飛ばしてきます。
とにかく批判の矛先が向くテーゼはけして出して来ない。

僕のいた部隊はユーザーさんと直結しているケースが多く、
絶望的に限られたリソースで、
どうにか結果をひねくり出さねばならないというミッションの性格上、
しばしば超法規的動きをしていましたから、
彼らの格好のターゲットにされていました。
ま、社外でドンパチ戦って帰ったら社内で後ろからパン!
と撃たれるのはストレス以前の話でしたけどね。

もうひとつは個人的にもっとも衝撃的だったもの。

それは『変化を嫌う人々の多さ』です。

たとえば、
『業務上の事件が起こり、関係者がどひゃ〜っ!となる』
で、
→『火事場に投入されて何とかする』
→『焼け跡で原因を調べる』
→『再発防止策を立案する』

ここまではいいんです。
しかし・・・

→『再発防止策を実行』しようとすると・・・

このしらけた現場の温度差はなんだろう?

あ〜、思えば僕も青かった!

先般発生したA事案の原因はBでした。
そこで原因Bを取り除く対策のCを立案しました。
C案を実行することにより現場の業務環境は改善されます。

ハラショーでしょ?
こんな単純なロジックで、ことが前に進むと楽観していたのです。

ところが、
現状業務に何らかの変化が起こると分かった時に示されたネガティブな反応は、
僕の想像を超えたものでした。
そしてようやく学習したのです。
多くの人々にとって現状が良くなるか悪くなるかという『結果』は、
あまり大きな問題ではない。
避けたいのは変化そのものなのだ! という事実を。

「とにかくさ、100点満点は狙わず、
 オフィシャルには言えなないけど、
 妥当な落としどころを目指して落着させる、
 って個人的政治的戦略が必要だったんだろうね」
「はぁ〜・・・ですよね〜・・・」

大変だなぁ・・・

彼女と話していて、
業種が違っても中間管理職の悩みはあんまり変わらないんだな、
と思いました。

で、今はどうだって?

幸いそうしたストレッサ―がととら亭にはありませんから、
月400労働時間超/1人のブラック環境にもかかわらず、
僕は7年半もやりがいを持って働いています。

思えば昨今世間を騒がせている労働環境にかかわる諸々の問題は、
とどのつまり労働時間や賃金という雇用条件が示す数字より、
むしろ個々人のメンタリティーに起因しているのではないか?

そしてその集合体が、
社風、校風などと呼ばれる、もわんとした独特な心理空間を作り、
それに染まれるか否かで個人のモチベーションが決まる。

じゃないのかな?

うん。
数字ではないんですよ。

えーじ
posted by ととら at 15:02| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記

2017年08月19日

奇妙な採用面接

僕が会社員のころ、
不幸にも僕に採用面接を担当された方たちがいました。

システム管理の部署でしたので、
自ずとその方面の質問をするのですが、
よくある「資格は何をお持ちですか?」とか、
「以前の業務経験はどのようなものですか?」ではなく、
「WindowsOSサーバーでブルースクリーンになり、
 STOP:の後に16進数のコードが表示された場合、
 あなたはどうしますか?」
とか、
「オフィスで使用しているあなたのPCのアンチウイルスシステムが、
 ネットワークワームを検知した場合、あなたはどうしますか?」
など、実戦でしか学べない質問をすることで、
即戦力となる経験値を確かめていたのです。

しかしそれ以上に候補者の方々が面食らったのは、

「この職場では1日に100メートル走が4、5本ありますけど、
 大丈夫ですか?」

という質問でしょう。

え? 何それ?

まぁ、これはオンサイトユーザーサポート業務での話ですけど、
緊急時には同じビル内(といってもかなり広い)の現場まで、
急いで駆けつけねばならなかったのです。
しかもそうした事案が頻発していました。

一般的にIT稼業と言えば、
涼しくてきれいな印象を持っている方が少なくなかったのですが、
実はネットワークチームなんかに回されると、
スーツを着ててもヘルメットを被って、
天井裏や床下に潜り込むなんて日常茶飯事。
ですから将来有望な若者たちが「こんなはずしゃなかった!」
とならないよう、つつみ隠さず現実的な質問をしていたのです。

そんな話を思い出したのも先日入った一本の電話から。
ともこが出てみると、

「あるバイとわ、ボシュウしていマスか?」

と、聞こえてきたのはたどたどしい日本語。
深刻な人手不足が世界的に有名な日本の飲食業界ですから、
あわよくば仕事を! と思った外国人の方でしょう。

しかしながら僕たちには『雇わず雇われず』という、
ととらルールがありますし、
残念なことに、そもそも従業員を雇う経済的余裕がありません。
そこでお返事は「ごめんなさいね」になってしまったのですが、
もし、面接するとしたら、今度はどんな質問をすべきでしょう?

たとえば『株式会社ととら亭』で正社員を募集したなら、
僕らとほぼ同じ仕事をすることになります。
となると・・・

調理師免許の有無?

いや、そんなことよりも・・・

【勤務地の条件】
 本社内における就労場所の温度差は、
 気温マイナス2度から36度の幅があります。
 また出張先ではマイナス20度から44度となり、
 殆どのケースで冷暖房の設備はありません。
 標高はマイナス400メートル(死海)から5500メートル
 (ウユニ塩湖からチリのサンペドロ・デ・アタカマへ抜ける山岳地帯)
 が就労範囲です。

【求められる身体的スキル】
 ・飛行機のエコノミーシート、空港のベンチ、テント内など、
  どんな場所でも眠ることができますか?
 ・時差ボケしない体質ですか?
 ・夏バテしない体質ですか?
 ・20キロ以上のバックパックと5キロ以上のサブザックを背負って、
  山道を終日歩けますか?
 ・なんでも食べられますか?
 ・2週間以上繰り返し、空腹ではない状態でも満腹以上まで食べられますか?

【求められる知的スキル】
 ・言葉の通じない環境でひとり、宿を探し食事をすることが出来ますか?
 ・スマホやPCがなくても情報収集ができますか?
 ・火災や事故、暴動に巻き込まれた時に冷静に対処できますか?
 ・軍隊や警察官にカツアゲされている時にジョークを一つ以上言えますか?
 ・身ぐるみはがされた場合でも必要最低限のものを現地調達できますか?
 ・行動に支障が出るレベルで体調不良となった場合に、
  ひとりで対処できますか?

とまぁ、こんなことを質問しなくてはいけないと思います。
しかし最初に、

トイレも紙も水もない状況で大小問わず用をたせますか?

と訊くだけで、たいてい面接は終了するでしょうね。

あ、いちばん現実的な質問は、やっぱりこれかな?

あなたの年収は当社の代表取り締まられ役と同等になりますが、
それでもよろしいでしょうか?


えーじ
posted by ととら at 16:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年08月15日

『話せばわかる』世界へ

僕は暴力が嫌いです。

そしてこのブログを読まれている方は、
僕らが旅先で多くの人々に助けられていることから、
しばしば「地球人は基本的に親切だ」
と言っているのを覚えているでしょう。

助けられて成り立つ旅。
これはまぎれもない事実ですし、
僕が人間性善説に立っている理由に他なりません。

しかし、現実には大きな矛盾があります。

これまた皆さんがお気付きのように、
僕らの旅のセキュリティは、100パーセント人間性悪説に立っているのですよ。

たとえば、
空港や駅などで笑顔を浮かべて近付いてくる人を、
僕は完全に悪党だと見なしていますし、
荷物から目を放すことは絶対にしません。

公衆環境で話しかけてきた相手の言うことは一応聞きますけど、
何か仕掛けてきているという前提に立っているので、
物理的にも心理的にも距離を置いています。

また鍵が壊れていたり、
容易に侵入できる構造の部屋に泊ることはしませんし、
場合によっては、反射するショーウィンドウなどを利用して、
追跡者の有無もチェックしています。

これは今までの旅を通じて学んだ数々のイタイ教訓から、
自ずと身に付いた、いや、付いてしまった習慣なのです。

確かに地球人はやさしく親切です。
しかし残念なことに、バカッタレはけしてゼロではありません。
そして不運にもそうした連中に遭遇してしまった場合の代償は、
時に取り返しがつかないものになることがあります。

加えてもうひとつ。

正直申し上げますと、
僕は軍隊が好きではありません。
さらに本音を言ってしまうと、警察も嫌いです。
なぜなら共通点として彼らは武装しているから。

武器。

それは使われた相手を傷つけるもの以上でも以下でもないでしょう。

では僕は純白のローブをまとった平和主義者なのか?

そうです。

と言ってしまったら、そりゃ呑気なご都合主義者だ、
との誹りを免れないでしょう。
なぜなら、旅先で自分のことは自分で守っているように見えても、
実はここでも多くの人々に助けられているのですから。

そう、僕たちが暗黙のうちに依存し、助けてもらっている相手。
法の支配を守り、治安を維持している人々。
僕らの旅のセキュリティも、
僕が嫌いな軍隊や警察の存在を前提としてこそ成り立つものなんですよ。

今日は8月15日。

昨今では自衛隊の法的な位置づけについて、
多くの方々が議論を始めています。

しかし、僕にはどうもよく呑み込めないものがあるのですよ。
いずれの議論も自衛隊という『手段の是非』がフォーカスされ、
なぜか手段の前提となる『目的の原因』についての意見がぼやけているから。

『話せばわかる』を対案として挙げているハラショーな意見もありますが、
少なくとも僕たちが不幸にも旅先で出会ったバカッタレたちは、
『話せばわかる』相手ではありませんでした。
もちろん彼らがそうなった境遇は考慮すべきですけど、
当事者として対峙している瞬間にそんなことを慮る余裕はありませんし、
なによりマジでキンタマが縮みますよ。

『対話による解決』。
これは正しい。究極的にね。

しかし、まず考えなくてはならない現実的な問題は、
『話せばわかる』ようになるまでの険しい道のりを、
僕たちはどうやって歩いて行くのか?
なのだと思っています。
しかも、のんびりやっている暇はない。

だから、永田町のセンセーたちに答えを考えて頂くのではなく、
僕たち個々人が、自分で自分の意見を持つこと。
それが『話せばわかる』世界への最短距離なのではないか?

僕はそう信じているのですよ。

えーじ
posted by ととら at 12:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2017年08月13日

ちょっとおせっかい

今から9年前に作ったととら亭の事業計画書には、
さまざまな理念が書いてありました。
その中の一つが、

『お客さまの幸せの量は、
 入店時より退店時の方が多くなければならない』


この逆はおカネと時間をととら亭に投資したお客さまにとって、
最悪の結果でしょう。
そして僕たちにとっては、ビジネス的な『終わり』を意味します。
そのお客さまは2度と来てくれませんし、
野方は一見さんばかりの観光地ではありませんから。

ところが、7年余りもこの仕事をやっていると、
この『崇高な』理念が、
必ずしも僕たちだけの努力で、
実現するとは限らない現実に気付いたのです。

たとえばある日のディナーで・・・

「いらっしゃいませ」

ご来店されたのは20歳代後半のカップル。
お二人の表情から少し緊張感が読み取れましたから、
初めていらっしゃったのだと思います。
こういうオヤジがホールにいる店は馴染みがないのかもしれません。

「こちらのテーブルにどうぞ。今夜は蒸しますね」

しかしこうして笑顔で話しかければ、
すっと緊張が解けるもの・・・

なのですが、二人の表情にはまだどこか、
楽しい食事をする前に相応しくない『何か』が感じられます。

ん? ケンカでもしたのかな?

テーブルの心理学によれば、
精神的に感応しているカップルは同じ姿勢を取るといいます。
特に二人が前傾姿勢の場合は、いわゆる『ラブラブ』状態。
ところがこの二人、料理を待つ間、楽しく語らい合うでもなく、
彼女はスマホに目を落とし、彼はぼんやり手持ちぶたさ。

おいおい、せっかくのデートなのになんてこった・・・

料理をサーブした時には彼女に笑顔が戻りましたが、
それも一瞬の花火のよう。
またすぐに沈黙が降り、あわや二人の恋は風前の灯火に・・・

そうはさせねぇ。

この状況を分析すると、へそを曲げているのは彼女の方。
であれば、恋のリカバリーオペレーションはプランAで行くべきです。

「食後にデザートはいかがですか?」

そう、これです!
名付けて Always sweets makes her smile. 作戦。

僕は4種類用意してあったデザートを、
彼の方を向いて2種類、
それから話すペースを若干落とし、
彼女の方を向いて残りの2種類を説明しました。
すると、

「僕はマルヴァプディング」
「え〜、それにするの? じゃあ・・・」

しばらく考え込んだ彼女は、

「私はアンズのソルベをお願いします」

Yes! それでいい!
キャラクターの違うデザートを2種類オーダーしたな。
ターゲットはレールに乗ったぜ!

僕は最初に彼女のアンズのソルベを、
次に彼女の視線を横切るようにゆっくりと、
彼のマルヴァプディングをサーブしました。

そしてプランAのキー。
アンズのソルベには2本のスプーンを、
マルヴァプディングには2本のデザートフォークをそれぞれ置いたのです。

完璧だ。

僕がパントリーに戻るとすぐ後ろから声が・・・

「ちょっとぁ! あたしにもそれちょうだいよぅ!」
「やだよ、これ、オレが頼んだんだから」
「いいじゃない、けちっ!」

彼が取られまいとするマルヴァプディングに、
彼女は素早くデザートフォークを突き刺し、
大きく切り取ったと思ったら一口パクリ!

「あ〜! とったな!」
「お〜いし〜!」
「それじゃそっちもくれよ!」
「やだ! あげない!」

席に着いた時とは様子が一変しています。

ふ、それでいい。

ととら亭は旅の食堂。
しかし、時にはこんなオペレーションもあるのでございます。

えーじ
posted by ととら at 15:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記